くも膜下出血
くも膜下出血とは、脳を覆う3層の膜の隙間である“くも膜下腔”に出血が生じる病気です。脳は外側から硬膜・くも膜・軟膜と呼ばれる三つの膜で重なるように包まれており、くも膜下腔はくも膜と軟膜の隙間を指します。発症原因は多々ありますが、多くはくも膜下腔を走行する動脈の分岐部に“動脈瘤”が形成され、それが破裂することによって発症します。くも膜下出血の原因の8~9割は脳動脈瘤の破裂とされています。脳動脈瘤とは、くも膜下腔を走行する動脈にできる風船のように膨らんだ“こぶ(瘤)”のことです。動脈瘤の壁は薄くなっており、血圧が一時的に上昇したときなどに破裂するリスクが高くなります。そして、動脈瘤が破裂すると圧力の高い動脈の血液がくも膜下腔内に流れ込むことでくも膜下出血を発症するのです。
40歳以降から発症者が増え始めるといわれています。また、動脈瘤以外にも頭部外傷や先天的な血管の形態異常などが原因で引き起こされることも少なくありません。発症すると、意識のある場合は突然バットで殴られたような激烈な頭痛や吐き気・嘔吐を生じることが特徴です。また、出血量が多い場合は脳が圧迫されることで意識を失うことも多く、突然死の原因となり得ます。また、脳内に出血を伴う場合には手足の麻痺や言葉が出ないといった神経症状を伴います。さらに、手術などの治療によって救命できた場合でも後遺症が残るリスクが高く、非常に恐ろしい病気のひとつとされています。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、発症すると3割近くがそのまま命を落とすとされています。また、命を落とさない場合でも、くも膜下腔内の出血が脳を圧迫する状態が続くと脳にダメージが加わって重篤な後遺症を残すことも少なくありません。無事に治療を終えたとしても、続発する脳血管れん縮(くも膜下腔の出血がそこを通る脳動脈を収縮させ、脳の血流が乏しくなる現象)、水頭症などのリスクもあるため、発症する前とほぼ変わらない状態で社会復帰できるのは4人に1人とされています。
くも膜下出血の主な症状は次のとおりです。
・今まで経験したことのない突然の激しい頭痛
・極度の疲労感や気分不良
・睡眠の問題
・感覚や運動障害
・光に対する過敏症(羞明)
・かすみ目、または複視
・脳梗塞のような症状(ろれつが回らない、体の片側の麻痺など)
・意識消失、または痙攣
くも膜下出血の原因は、特にお酒の飲み過ぎは危険と言われています。また、他の病気でも危険因子と言われている高血圧や喫煙習慣は、くも膜下出血でも危険因子となっていますので、改善していくことが大切です。逆に、コレステロール値や心臓病、糖尿病などは、くも膜下出血を起こす直接的な危険因子であるかどうか、まだ明らかになっていません。また、肥満については、やせ型の人のほうが発症しやすいという報告があり、肥満でないから大丈夫といった過信はよくありません。たばこを吸っていてやせている人、高血圧でやせている人は、くも膜下出血を発症しやすいという報告もあります。
<くも膜下出血後の後遺症>
くも膜下出血は治療後の回復も、時間がかかるものであり、次のような後遺症が発生するのが一般的です。右か左の手足が動かしづらくなる、痺れや脱力感、物が飲み込みづらい、半分の空間がうまく認識できない、言葉がうまく話せない、理解がうまくできないなどの失語症、注意・集中ができない、物事をうまく実行できない、最近の出来事を直ぐ忘れてしまう
などが挙げられます。その他にみられる後遺症は、歩行不安定、尿便失禁、てんかんを繰り返す発作、記憶などの認知機能障害、うつ病などの気分の変化です。記憶の問題に関しては、発症前の記憶は通常影響を受けませんが、新しい情報や事実を思い出すのが難しくなります。気分や思考にみられる後遺症は、気分が落ち込み、希望がなく、人生を楽しむことができない、何か恐ろしいことが起こるのではないかという絶え間ない不安と恐怖感、人は悪夢やフラッシュバックを通じて以前の外傷的出来事を追体験することが多く、孤立感、過敏性、罪悪感を経験することがある。このような後遺症は、長期化するケースも稀ではなく、治療後のリハビリなどが重要になります。特に、認知機能障害はくも膜下出血の一般的な後遺症であり、ほとんどの人がある程度影響を受けます。
漢方と鍼灸
まず脳動脈瘤が見つかった場合、それ以上大きくしないようにまた小さくする漢方や鍼灸治療をおこないます。後遺症の治療は、各症状によって治療をおこなうのを標治、本治は、出血後による神経の損傷で腎気丸、四物湯をベースに加味合方していくことが多いです。