尿崩症
尿崩症とは、” 1日に3L以上の尿が排出されるようになる“多尿を引き起こす病気の1つです。尿崩症は、①水を体内に保つ作用を持つ抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が欠乏することによる“中枢性尿崩症”と、②ADHの効きが低下することによって尿量が増える“腎性尿崩症”の2つのタイプに分けられます。いずれのタイプも発症すると、多尿の結果として、脱水となり、強い喉の渇きを感じたり、失った水分を補うために多量の水分摂取につながったりします。また、体内から尿と共に水分がどんどん排出されていくため、十分な水分を補わないと脱水や電解質異常に陥りやすく、血圧低下などを引き起こすこともあります。低血圧やショック状態によりめまい、動悸などの症状を引き起こすことがあります。また、多尿が継続することで、水腎症や巨大膀胱など尿の排泄経路の異常を引き起こすことも報告されています。特に中枢性尿崩症・腎性尿崩症ともに遺伝性のものは、胎児期から母体の羊水の増加など出生前から徴候がみられます。また、新生児期には嘔吐、便秘、発熱、成長の遅れなどがみられ、体から水分が失われることで体内の電解質(ナトリウム)の濃度が高くなり、けいれんを生じることもあります。適切な治療の開始が遅れると知的障害などの後遺症を残すことも少なくありません。尿崩症の原因は遺伝子の異常や自己免疫的な機序、電解質異常、脳の病気・外傷、薬の副作用などさまざまであるため、治療方法も原因によって異なります。また、それ以外に妊娠中にまれに起こる一過性の尿崩症もあります。①抗利尿ホルモン(ADH)は脳下垂体後葉と呼ばれる部位から分泌されるホルモンですが、欠乏する原因としては、頭部外傷、腫瘍、脳梗塞、脳出血、脳炎、髄膜炎などによる視床下部~下垂体の損傷が考えられます。一方で、遺伝的要因による発症が疑われるケースや原因がはっきり分からないケース(特発性)もあります。特発性中枢性尿崩症では自己免疫的な機序の関与が想定されています。②主な原因は、遺伝子の異常によるものでX連鎖性潜性遺伝形式を示すタイプが先天性の腎性尿崩症の約90%を占めます。また、電解質異常(高カルシウム血症・低カリウム血症)も後天性の腎性尿崩症を引き起こす大きな要素です。一部の薬剤は抗利尿ホルモン(ADH)の腎臓へのはたらきかけを減弱させる作用を持つものもあり、副作用として腎性尿崩症を発症することがあります。特に、リチウムは長期内服することで高頻度に腎性尿崩症を引き起こします。リチウムによる腎性尿崩症はリチウムの内服を中止しても腎性尿崩症は治らない(非可逆性)場合があります。尿崩症では体内に必要な水分がどんどん排出されていくため、血液中のナトリウムなどの濃度が高くなります。一方で尿は濃縮が起きず、薄くなるのが特徴です。尿崩症の治療法は発症原因によって異なります。中枢性尿崩症の場合は、欠乏した抗利尿ホルモン(ADH)を補うため、 ADHと同様に水を体の中に保つ作用のあるデスモプレシンと呼ばれる薬の投与が行われます。一方、遺伝子変異による腎性尿崩症は、厳格な減塩に加えて一部の利尿薬や非ステロイド系抗炎症薬を用いることで水分の排出を抑える治療が行われていますが、十分な有効性は立証されていません。根本的な治療はなく、脱水を予防するための十分な水分補給を継続していく必要があります。また尿崩症の明確な予防法は確立されていません。
漢方と鍼灸
遺伝子の異常の場合は難しいかもしれませんが、視床下部~脳下垂体の損傷、自己免疫なら漢方の可能性はありそうです。損傷部位、脳の病気の箇所から反応をとって経絡に落とし込んで漢方、食養生、ツボを選択します。