アレルギー性紫斑病(IgA血管炎・血管性紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病)
IgA血管炎とは、皮膚に紫斑(出血性の皮疹)、腹痛、関節痛、腎炎などの症状を呈する、免疫の異常による病気です。“IgA”と呼ばれる抗体がさまざまな臓器の小さな血管に沈着して血管に炎症が起き(血管炎)、症状が出現しますが、発症原因は解明されていません。IgA血管炎は3~10歳の子どもに多く、やや男児に多い傾向があります。日本における患者数の正確なデータはありませんが、欧米の報告では10万人あたり10~20人とされています。成人の患者数は全体の25~30%程度です。発症には季節性があることが知られており、秋と冬に多く夏には少ない傾向があります。一般的に成人期に発症したIgA血管炎は小児期の発症と比較し、再発率が高く、重度の腎障害をきたすことが多い特徴があります。IgA血管炎の発症のきっかけとして、溶血性連鎖球菌を代表とする細菌やウイルス(水疱や風疹など)の急性感染症、副鼻腔炎や深い虫歯などの慢性感染症、薬剤、悪性腫瘍、食物が知られていますが、明らかな原因が分からない場合がほとんどです。これらの病原体や物質は、IgAと結合する抗原であると考えられています。IgA血管炎では、IgAと抗原が結合した免疫複合が血管の壁に沈着し、炎症反応が生じ血管が障害され発症に至ると考えられています。IgA血管炎のIgAは、正常のIgAと異なり糖鎖が欠損している異常なIgAであることが特徴です。IgA血管炎の血管炎は大動脈や冠状動脈などの大きな血管ではなく、むしろ小さい血管に生じます。皮膚、腎臓、消化管、関節などの小さい血管が障害された結果、皮膚の紫斑、腎炎、消化器症状、関節痛などの症状が出現します。
IgA血管炎で見られる皮膚症状は“紫斑”と呼ばれるものであり、血管からの出血により生じます。紫斑は下肢に左右対称に認めることが多いのですが、上肢や顔などにも出現します。指先で皮疹を押しても、皮下出血が原因であるために、消えたり色が薄くなることはありません。また、周囲の正常な皮膚の表面と比較して、かすかに盛りあがっています。重症では血液を含んだ水ぶくれのようになることもあります。腹部症状はIgA血管炎の発症早期に半数程度の患者に合併し、臨床上大きな問題となります。腹痛、嘔気、嘔吐などの症状が多く見られます。激しい腹痛や下血など症状もしばし経験されます。紫斑の出現以前に腹部症状がでる場合があり、その場合は診断に難渋することもあります。IgA血管炎における関節症状は、膝や足関節の腫脹や痛みが一過性に生じます。運動時に痛みの増強が見られることもありますが、日常生活に支障をきたすほど重症化することはまれです。半数の患者においてたんぱく尿や血尿や浮腫などの腎炎の症状が出現します。腎炎はIgA血管炎の発症まもない急性期に発症する場合がほとんどです。実は、ほとんどの小児患者では、腎炎の発症から半年程度で自然治癒することが多く、1-2割のみが治療対象となります。一方、成人では腎障害が慢性化することもあり、注意が必要です。
IgA血管炎を診断するための特異的な検査はありません。小児においては、臨床症状や超音波などの画像検査をもとにIgA血管炎と診断します。一方、成人では、同じような紫斑を呈する病気としてANCA関連血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎、続発性血管炎などがあります。これらを鑑別するために、皮膚生検を行い、直接蛍光抗体法という検査で小型血管にIgAの沈着があるかどうかを確認し診断することがあります。腎炎の評価のために定期的な尿検査を行い、血尿・たんぱく尿の有無と程度を評価します。また、必要に応じて血液検査で腎障害の程度を評価します。高度たんぱく尿や腎機能障害などの重い症状がある場合は、腎生検により腎炎の重症度を評価し、治療方針を決定します。腹部症状がある場合には、腹部エコー検査で腸管の浮腫、腸重積、腸管穿孔を確認し、腸からの出血を確認するために検便を行います(便潜血)。IgA血管炎では、軽症の場合であれば無治療でも自然に軽快することが多いです。原則的に、軽症例に対しては安静と対症療法をしながら経過観察を行います。
薬物治療では、中等度以上の消化器症状や関節症状に対して短期の副腎皮質ステロイドの投与を行います。腹部症状は副腎皮質ステロイドがよく効く場合が多く、減量や中止により再発することが少なくありません。腎炎については、腎生検の組織所見を参考に、重症度に準じた治療が選択されます。組織所見が重症の場合は、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を選択します。小児では腎炎の治療反応性は良く、再発もまれですが、成人では腎機能障害や尿異常の遷延を認めることがあります。腹部症状や関節症状には、副腎皮質ステロイドが主に選択されますが、血液を固めるために必要な因子である第XIII因子の低下を認める場合は第XIII因子製剤が投与されることもあります。小児においては比較的予後良好な病気ですが、成人では腎障害を残すこともあるため注意が必要です。
ここで免疫とは、侵入した細菌やウイルスなどの異物から身体を守る、体内の老廃物やがんなどの異常な細胞、死んだ細胞などを処分する、傷ついた細胞があれば修復するなど、身体の異常に気づいて正常な状態に戻す、身体全体の調子を整えるシステムのことです。免疫における感染防御では、異物が体内に入ると、排除しようと働く免疫グロブリンが作られ、健康な状態を維持しています。免疫グロブリンは抗体としての機能や構造を持っているタンパク質の総称で、細菌やウイルスなどの病原体が侵入した時に、排除しとうと働く「抗体」の機能をもち、血液や体液中に存在しています。免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、それぞれに働く場所や分子量が異なります。その中の一つの「IgA」は、病原菌やウイルスの侵入を防御するという重要な役割を担っています。「IgA」は、体内では2番目に多い免疫グロブリンで、鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在しています。IgAは、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止する働きがあります。また、免疫グロブリンには、特定の細菌やウイルスにのみ反応する「特異性」があるため、基本的に多種類の感染症の予防はできません。しかしIgAは、特定の細菌やウイルスだけに反応するのではなく、多くの種類の細菌やウイルスに反応するという特徴があるため、さまざまな感染症の予防ができるのです。IgAは、母乳、特に、出産後に数日間分泌される濃い母乳の「初乳」にも多く含まれています。生まれたばかりの赤ちゃんは自分でIgAを作ることができません。しかし、母乳によって赤ちゃんの体内にIgAを移行できるため、細菌やウイルスによる感染から守ることができるのです。腸管には、身体全体の60%以上のIgAが存在し、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合して毒素を中和し、体内への侵入を防いでいます。腸管の主な働きは消化吸収ですが、 多くの細菌やウイルスも口から入り腸を通って体内に侵入するため、身体を守る器官としてもとても重要です。そのため、腸管の壁には、異物が侵入した時に異物の排除を指令する役割があるリンパ組織「パイエル板」が存在しています。パイエル板の外側にはM細胞があり、異物を発見するとその情報がマクロファージや樹状細胞、ヘルパーT細胞やB細胞に伝わります。するとB細胞はIgAなどの抗体を作り出し、異物を撃退するのです。また、IgAを作るB細胞は腸管だけでなく、口や鼻など身体全体の粘膜を移動してIgAを作り出すため、全身で異物の侵入阻止に貢献しています。一方で、IgAには基準値があります(110〜410mg/dL)。基準値範囲外の場合には、さまざまな疾患が考えられます。
漢方と鍼灸
標治と本治で分けて考えます。標治では出血を止めること、腹痛を和らげること、吐き気を止めること、関節痛を抑えること、腎炎をとめることです。しかし副腎皮質ステロイドで炎症を抑え込んでも本治にはなりません。本治は免疫の異常を起こす原因をつかむことです。子供の場合、肝より脾の異常を考えた方がいいでしょう。大人は脾より肝の場合の方が多いと思います。発症の原因はまだわかりませんが、ウイルスや細菌、添加物、薬剤などが挙げられています。IgAとはどんなものかは上に載せておきましたが、まだ腸管免疫のしっかりしていない子供が未知のウイルスや細菌、抗生剤、添加物などに反応して過剰にIgA産生してしまうのではないでしょうか。その中には異常なIgAも含まれている。秋や冬に発症するのは寒くなって免疫が落ち風邪が流行る頃だからではないでしょうか。大人の場合は、ストレスや仕事疲れなど弱っている時に免疫の異常が起こるものと考えられます。出血箇所、炎症箇所、ウイルスや菌の反応穴、免疫の反応穴などから最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択しお伝えいたします。なかなかステロイド治療でうまくいっていない場合、長期服用する前、併用したい場合にご相談ください。