尋常性乾癬
皮膚の表面の細胞が過剰に増殖することで銀白色の皮膚の粉(鱗屑)が付着した赤い皮疹(紅斑)が全身に生じる病気のことです。乾癬は併発する症状に応じていくつかのタイプに分かれています。乾癬には大きく5つのタイプがあります。1乾癬の大部分を占めるのは、皮膚の所々に皮疹が現れるタイプの“尋常性乾癬”です。2その次に多いのが、“乾癬性関節炎”です。これは、皮膚症状に加えて関節に痛みや腫れが生じるタイプの乾癬を指します。3また、皮疹がほぼ全身に広がったものを“乾癬性紅皮症”、4全身の皮膚の赤みや鱗屑に加えて、白い膿の入った袋状のもの(膿疱)ができるタイプのものを“膿疱性乾癬”と呼びます。膿疱性乾癬ではこうした皮膚症状に加えて発熱やむくみなどの全身症状を伴い、全身の炎症が続くことで時に命を脅かすこともあります。5また、感染症を契機として小さな皮疹がポツポツとできる“滴状乾癬”というものもあります。ほかの4つの乾癬が慢性的な病気であるのに対し、滴状乾癬の多くは感染症が治った後、遅れて症状は消えてなくなります。ただし、一部の患者さんで尋常性乾癬に移行することもあるため注意が必要です。尋常性乾癬とは乾癬の中でももっとも多い病気であり、乾癬患者の約90%を占めます。尋常性乾癬では、乾癬特有の皮膚症状が全身にみられます。皮膚症状の大きさ・数・形はさまざまで、皮疹同士がくっついて大きな病変をつくることもあります。尋常性乾癬は青壮年期に発症することが多く、発症により生活の質が低下し、精神的な影響が生じることがあります。尋常性乾癬は、重症度に応じて外用治療、光線治療、内服治療、生物学的製剤で治療します。乾癬発症には、遺伝的素因、環境因子、免疫学的要因が関わっていると推定されています。乾癬は家族内発症する割合が高いことから、遺伝的な素因が関与していると考えられています。欧米では家族内発症が20〜40%、日本では4〜5%に見られると報告されています。環境要因として考えられているものは、外傷などの外からの刺激、感染症や薬剤、食事内容、ストレスなどです。乾癬では、ヘルパーT細胞と呼ばれる白血球の一種が病変部位で免疫反応を起こすことが分かっています。TNF-α、IL-17、IL-23という炎症性物質を産生する細胞が炎症に関与していることも知られており、近年それらを抑制する治療法が開発され、実際に効果を示しています。尋常性乾癬では、全身にくっきりと盛り上がった赤い皮疹のような症状が現れます。皮膚は赤く盛り上がり、まわりには銀白色で皮膚に粉がふいたような状態(鱗屑)が見られます。好発部位は、刺激を受けやすい頭・肘・膝・お尻です。約50%の患者で皮膚症状にかゆみを伴います。また、爪が粗く研がれたように変形したり、へこんだりする症状も高頻度でみられます。皮膚などの症状は精神的なストレスとなり、生活の質を低下させます。また、尋常性乾癬ではTNF-αと呼ばれる物質が体内で増加し、これに関連して糖尿病の悪化、心血管病変の形成などを引き起こすことも知られています。尋常性乾癬は症状の出る部位によって、ほかの皮膚疾患と区別がつきにくい場合があります。この場合は、皮膚を少し採取して顕微鏡で確認する病理検査を行います。また、尋常性乾癬では糖尿病や心血管系イベントのリスクが高いため、血圧測定、血液検査(血糖やHbA1c、脂質など)を行うことも大切です。尋常性乾癬に使用される薬剤に関連して副作用を生じることもあるため、副作用の有無を適宜検索するための検査も重要です。尋常性乾癬の治療は、通常は外用薬(塗り薬)から開始します。使用されることのある外用薬としては、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬および、これらの配合外用薬が挙げられます。また内服薬としては、ビタミンA誘導体、免疫抑制剤(シクロスポリン、メトトレキサート)、PDE4阻害薬などが挙げられます。尋常性乾癬では紫外線を全身に当てる紫外線療法が選択されることがあります。紫外線療法は、薬を外用(または内服)後、波長の長い紫外線を照射する治療です。近年では311nm前後の紫外線(ナローバンドUVB)が乾癬に有効であることが示されています。ナローバンドUVBの照射が可能になってからは薬外用(内服)も必要なく、照射時間も短くなり、現在はこのナローバンドUVB照射が急速に普及しています。また、難治の部位にはターゲット型のエキシマライト(308nm)による部分照射を行うことで全身の総紫外線照射量を減らすことが可能です。
重症の尋常性乾癬に対しては、生物学的製剤を使用することを検討します。生物学的製剤の治療効果や奏功率はとても高く、ほとんどの患者において効果を期待することができるといわれています。2010年に認可された抗TNFα製剤に加え、3か月毎投与で効果を維持する抗IL-12/23p40抗体、さらにはIL-17関連抗体や抗IL23p19抗体などが続々と登場し、皮疹が完全に消失する患者さんも出現してきています。生物学的製剤とは、バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療のために使われます。生物学的製剤は高分子の蛋白質であり、内服すると消化されてしまうため、点滴あるいは皮下注射で投与します。バイオあるいはバイオ製剤とも呼ばれます。リウマチ膠原病領域では、関節リウマチに対して最も使用されていますが、巨細胞性動脈炎や高安動脈炎、ANCA関連血管炎、全身性エリテマトーデス、ベーチェット病などの膠原病のほか、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎など様々な疾患に対して使用されています。特定の分子を標的とした生物学的製剤は、一般的に治療効果が高く、また併用するステロイド内服量を減らせることも多いです。ただ、必ずしも全員に効果があるわけではなく、また各生物学的製剤が有効かどうかを事前に推測することは難しいです。薬剤ごとに特徴があるため、血液検査結果、合併症の有無、点滴製剤か皮下注射製剤かなど、様々な点を考慮して患者さんにとって最適な薬剤を選択する必要があります。副作用や注意点としては、感染症に注意が必要です。予防のために、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは積極的に接種しましょう。高熱、呼吸器症状(咳・痰、呼吸困難)、腹痛、皮膚の腫れなどがみられた際は早めに相談してください。帯状疱疹のリスクが高い製剤もあるため、ピリピリとした痛みや水ぶくれを伴う赤みがみられたら、すぐに医療機関に相談してください。また、結核やB型肝炎の潜在的な感染が考えられる場合、投薬を要することもあります。心不全や慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症のような脱髄疾患がある患者さんには使用が難しい薬剤もあるので、そのような持病がある方は主治医にお伝え下さい。費用は一般的に高額ですが、対象とする疾患や加入する健康保険の種類によって負担額は異なります。
漢方と鍼灸
「皮膚は内臓の鏡」と言われています。必ず生活習慣、食事内容、よく噛んでいるか、ストレス、便通は時間をかけて聞いていきます。体内の毒素が表面に出てくるのが皮膚病。毒素は免疫にも影響します。原因の経絡上に出てくることが多いので参考になります。ひどい患部から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択しご提案いたします。