本文へ

 

とびひ(伝染性膿痂疹)

 とびひ(伝染性膿痂疹)とは、おもに小児期にみられることの多い細菌皮膚感染症です。膿疱(膿汁のたまった水疱)と、かさぶたを伴う皮膚病変(膿痂疹)が見られますが、小さな切り傷やアトピー性皮膚炎等のかき傷から広がることが多く、黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌といった細菌が原因となります。膿痂疹は、容易に別の部位に波及していきます。その伝播の様式があたかも火事が周囲に広がる様に似ていることから、一般的には「とびひ」という別称で知られています。伝染性膿痂疹は、黄色ブドウ球菌とA群β溶血性連鎖球菌という2種類の細菌が原因となります。それぞれ細菌によって皮膚症状が若干異なる部分もあることが知られています。

 水ぶくれが主体となるものは「水疱性膿痂疹」で、おもに黄色ブドウ球菌が原因です。黄色ブドウ球菌による伝染性膿痂疹は、夏場、幼児に流行することが多いです。やけどを起こすと水ぶくれ(水疱)が生じますが、同じような水ぶくれを引き起こす毒素が黄色ブドウ球菌によって作られ、この毒素が原因となり水疱性膿痂疹が発生します。また、発症原因には、通常の抗生物質に耐性を示す市中感染型MRSA(耐性黄色ブドウ球菌)も、原因菌のうち約30%の割合で見られます。
 かさぶたがメインとなる伝染性膿痂疹を、「痂皮性膿痂疹」と呼びます。「痂皮」とは、かさぶたのことです。痂皮性膿痂疹は、A群β溶血性連鎖球菌が原因となって引き起こされ、年間を通して見られる傾向があります。水疱性膿痂疹に伴うものより、局所の炎症所見が強いことも多く、発症年齢層も幼児に限らず幅広くなります。

 伝染性膿痂疹の発症には、いくつかのリスク要因が知られています。皮膚症状は人から人に伝播することから、たとえば保育園や幼稚園等の集団生活、フットボールやレスリング等の接触の多いスポーツなどは、伝染性膿痂疹が流行する危険因子です。また、原因となる細菌は、正常な皮膚バリアが損傷を受けた部位から容易に侵入します。そのため、小さな傷口やアトピー性皮膚炎・湿疹等のかきむしった痕、虫さされなども、伝染性膿痂疹の原因となりえます。

 黄色ブドウ球菌による水疱性膿痂疹の皮膚症状は、痛痒さを伴う赤い発疹ほっしんから始まり、水疱を形成します。水疱の中身に徐々に膿が入るようになり(膿疱と呼びます)、容易に破れます。破れた部位は湿潤な状況が継続し、最終的にかさぶたが形成されますが、きちんと治療しないと症状は広がっていきます。典型的な水疱性膿痂疹は皮膚が傷ついた部位から始まり、鼻(鼻いじりをするお子さんに多いです)や、腕(アトピー性皮膚炎をかきむしった痕に多いです)などの部位に症状が広がります。水疱が破れた痕には細菌が大量に存在するため、タオルや自分自身の手を介して、容易に別の部位に細菌がうつり、同様の皮膚症状を発症します。

 A群β溶血性連鎖球菌が原因となる痂皮性膿痂疹の場合は、炎症が強く、痛みの症状がより強い傾向があります。さらに、全身症状として、発熱やリンパ節の腫れ、喉の痛みを伴うこともあります。伝染性膿痂疹の皮膚症状は、基本的に痕を残すことなく治癒することが期待できますが、なかには瘢痕を残すこともあります。

 

伝染性膿痂疹は、合併症を伴うこともあります。黄色ブドウ球菌による伝染性膿痂疹の場合、毒素が全身に広がり、全身にやけどのような水疱を形成することがあります。この状態を「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」と呼びます。ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群になると、赤い皮疹に触れると簡単に皮膚がめくれるようになります。また、A群β溶血性連鎖球菌が原因の場合は、炎症の表れ方が強い傾向があります。そのため、皮膚の中でもより深くに炎症を引き起こすこともあり、細菌が血液に侵入して全身に細菌が広がることもあります(敗血症)。全身に細菌が広がると、高熱や血圧低下といった症状が現れることがあります。
 さらにA群β溶血性連鎖球菌の場合、伝染性膿痂疹を発症してから数週間の時間をおいて、急性糸球体腎炎を発症することもあります。急性糸球体腎炎になると、まぶたや足がむくんだり、血尿やたんぱく尿が出たりすることもあります。

漢方と鍼灸

 この病気はウイルスではなく細菌が原因です。ですが伝染するので周囲に対して配慮をする必要があります。病院で抗生物質が出ると思いますが、なかなか治りが悪い場合、抗菌漢方を併用するといい場合があります。そして細菌に対して抵抗力がないと増殖を許してしまうことから免疫力も重要です。各症状に対してもお薬が出ますが、うまくいかないときご相談されることがあります。太陽病から陽明病までの漢方で対応し、体の奥(裏)に菌が侵入しないように早めの対処が必要です。