自律神経失調症
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れることで起こるさまざまな症状を総称したものです。医学的に正式な病名ではなく、診断書などで診断名として用いられる際はストレスや不安などからくる軽症うつ病や、いわゆる神経症などの症状が一部含まれてくると考えられます。症状はさまざまで、身体的な症状としてはだるい、眠れないなどの全身症状と、頭痛、動悸、息切れなどの部分的な症状が、精神的な症状としては情緒不安定、いらいら、不安感などがあります。これらの症状があるにもかかわらず、体に医学的異常所見がなく、明らかな精神的疾患もない場合に、自律神経失調症と暫定的に診断されることがあります。こうした背景により、自律神経失調症は誰にでも発症する可能性がありますが、不規則な生活やストレス、ホルモンの乱れなどが原因になることから、不規則な生活を送っている人やストレスを感じやすい人、更年期でホルモンバランスが乱れやすい人などに起こりやすいと考えられます。自律神経失調症の症状はさまざまで、人によって現れやすい症状が異なります。たとえばお腹が痛くなりやすい人は下痢や腹痛などのお腹の症状が現れやすく、肩がこりやすい人はひどい肩こりが起こりやすくなります。また、複数の症状が一度に現れたり、治ったと思ったら別の症状が現れたりすることがあります。自律神経失調症で現れやすい症状は、倦怠感、疲労感、熱っぽい感じ、手足のしびれ、動悸、息切れ、めまい、頭痛、不眠、寝汗、食欲不振、胃痛、吐き気、肩こり、背中の痛み、腰の痛み、腹痛、下痢、便秘などです。
漢方と鍼灸
自律神経失調症は漢方の得意分野の一つです。食養生、運動、睡眠の質、休息時間を改善し健康の土台作りをしましょう。その上で的確な漢方、ツボなどが生きてきます。
・半夏厚朴湯(半夏・厚朴・紫蘇葉・茯苓・生姜)『金匱要略』
咽喉部に炙った肉片がくっついているように感じる方に使います。厚朴は緊張を緩め、半夏は鎮静作用があります。紫蘇葉は気分を晴れやかにします。
・桂枝竜骨牡蛎湯(桂枝・芍薬・生姜・甘草・大棗・竜骨・牡蛎)『金匱要略』
桂枝湯に竜骨と牡蛎が加わった方剤です。竜骨・牡蛎には鎮静作用・抗不安作用があります。
・滋陰至宝湯(当帰・白朮・芍薬・茯苓・陳皮・知母・貝母・香附子・地骨皮・麦門冬・薄荷葉・柴胡・甘草・生姜)『万病回春』
・逍遥散(当帰・芍薬・柴胡・黄芩・川芎・熟地黄・半夏・人参・麦門冬・甘草・生姜)『寿世保元』
・女神散(当帰・川芎・桂枝・白朮・木香・黄芩・黄連・人参・甘草・香附子・大黄・檳榔・丁香)『浅田家方』
・巫神湯(茯苓・白朮・猪苓・沢瀉・桂枝・乾姜・黄連・木香)『原南陽』
・奔豚湯(甘草・川芎・当帰・半夏・黄芩・葛根・芍薬・生姜・李根皮)『金匱要略』
など(薬局製剤以外も含む)