上咽頭炎
のど(咽頭)は上・中・下咽頭の3つ分けられます。そして、上咽頭は鼻咽腔とも言われ、鼻の一番奥で、鼻と咽頭との境界部分を指します。上咽頭はリンパ組織であり、その粘膜表面にはリンパ球が多数存在し、「免疫応答の場所」として活躍します。小児期には咽頭扁桃として「感染防御の場所」として働きますが、成人になると色んな物に反応する「易反応の場所」になります。呼吸で取り入れた空気は必ず上咽頭を通過します。色々な原因で炎症を起こし、多彩な全身症状が出ます。診断、治療が困難で、慢性化する厄介です。原因として細菌やウィルスの感染、アレルギー性鼻炎、極度の疲労、ストレス、気温や湿度の急激な変化(体にとってはストレス)などです。上咽頭は脳神経である舌咽神経、迷走神経、そして自律神経とも繋がっているため、次のように多彩な症状がでます。
頭、顔、鼻、目、耳、歯、のどなどの痛み、鼻閉、鼻汁、後鼻漏、耳閉感、難聴、耳鳴り、咳、痰、声がれ、違和感、全身倦怠感、めまい、疲労、睡眠障害、胃腸障害と多岐にわたります。原因が感染やアレルギーによる急性炎症の場合、抗生物質やステロイド剤で効果があります。しかし、原因が疲労、ストレスや空調変化による場合や慢性炎症の場合は、鼻洗浄(鼻うがい)1%の食塩水で上咽頭を洗い流す、Bスポット治療(1%塩化亜鉛擦過治療):13歳以上で行います。それでも改善がない場合、アデノイド切除術、上咽頭粘膜焼灼術があります。上咽頭の炎症が慢性化すると、全身の離れた場所に炎症を引き起こします二次疾患(自己免疫疾患)を起こすことがあります。これを扁桃病巣感染症と言い、次のような病気があります。IgA腎症、溶連菌感染後腎炎、突発性腎出血、胸肋鎖骨過形成症、慢性関節リュウマチ、掌蹠膿疱症、尋常性乾癬、アレルギー性紫斑病、ベーチェット病、持続する微熱、コロナ後遺症などです。
漢方と鍼灸
気功を使うと上咽頭に炎症があるかがわかります(診断ではありません)。その炎症がどの漢方で取れるかをみてお出ししています。当薬局で機械を使った鼻洗浄やBスポット療法はできませんが、オイル洗浄によって多数の著効例があります。自分がコロナに罹って朝全身が鉛のように重く起きられなかった時、試してみたら劇的に改善しました。それでご相談の方には養生としてオイル洗浄をおすすめしています。誰でも痛みもなく自宅や外出先でも簡単にできるので安心です。
煎じ
・桔梗湯(甘草・桔梗)『傷寒論』
咽喉の腫痛に使われます。
・甘草湯『傷寒論』
唾を飲んでも痛い時などに使われます。
・清肺湯(茯苓・当帰・麦門冬・黄芩・桔梗・桑白皮・杏仁・山梔子・天門冬・陳皮・貝母・大棗・竹茹・五味子・乾姜・甘草)『万病回春』痰が多く、咳嗽がなかなか止まらない時に使われます。
・駆風解毒湯(連翹・牛蒡子・防風・荊芥・姜活・甘草)『済生方』
・五虎湯(麻黄・杏仁・甘草・桑白皮・石膏)『万病回春』
・半夏苦酒湯『傷寒論』
など(薬局製剤以外も含む)