喉が渇く
口が渇く・喉が渇く、といった現象は、日常生活においてよくあることですが、それを自覚する時、体内では何かしらの要因によって水分が欠乏している状態がほとんどです。こまめな水分の摂取により状態が改善すれば問題ないですが、いくら飲んでも喉が渇く、尿量が異常なほど多い、などの場合は病気の疑いもあります。日頃から自身の体の声に耳を傾け、サインを見逃さずに何事も早期に発見することが大切です。
病気によるものは、更年期障害:更年期による多汗、頻尿も口渇の原因とされていますが、エストロゲンの減少により自律神経のバランスが崩れ、唾液の調整が乱れることで口や喉が渇きます。また更年期による精神的な症状も喉の渇きと関連があると考えられています。月経前症候群(PMS):月経開始の3~10日前ぐらいに、喉の渇きを含めた身体的・精神的症状が出やすくなります。生理:生理中はホルモンの働きが活発化され、子宮の強化や乳腺を発達させるため、水分を貯めようとして体内の水分が使われます。妊娠:妊娠中はホルモンの影響で喉の渇きを感じることが多くなります。また体内の血液量が普段より40%も増え、赤ちゃんが育つために多くの水分が必要になります。糖尿病の発症により高血糖になると、インスリンの不足により体内で吸収できなかった糖が尿に交じって排出されるようになります。すると多尿となり結果的に体内の水分が減少し喉が渇く、といった症状が出てきます。シェーグレン症候群の代表的な症状は、口の渇きと目の渇きです。自己免疫疾患のひとつで、異常な免疫システムが自身の唾液腺や涙腺を攻撃してしまい、その機能が低下してしまう病気です。中年以降の女性に多く、目や口の渇きや倦怠感などといった症状は日常でもありがちな状態なので、病気に気づかない人が非常に多いと言われています。尿崩症は一日の排尿量が3リットル以上となり、多尿に伴って口や喉の渇き、飲水の増加がみられる病気です。抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌低下や腎臓の異常により引き起こされます。排尿量より飲水が追い付かないと脱水となることもあります。甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され新陳代謝が必要以上に活発になる病気で、様々な症状を引き起こしますが、口の渇きもそのうちの一つです。副甲状腺機能亢進症は副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、骨からのカルシウム放出などにより血中のカルシウム値が高くなりすぎることがあります(高カルシウム血症)。その結果、尿中にカルシウムが排出され、多尿となることから脱水や喉の渇きを引き起こす原因となります。
体の状態で「喉が渇く」ということは、脱水・唾液量の減少・汗をかくなどにより体内の水分が減少していると知らせるサインの一つです。体内の水分が減少する原因は、日々の生活の様々な場面で遭遇します。脱水・発熱は汗をかくことで体内の水分が大量に失われるため。
緊張状態になる場合、注目を浴びる・恥ずかしい思いをするなどの一時的な緊張やストレスにより唾液の分泌が減るため。空気が乾燥すると口腔内の水分も消失するため。大声を出す・長時間歌うなどで声を出し続けることにより、口内の唾液量が減少するため。加齢に伴う体内の水分量減少に比例して、口内の唾液分泌量も減少するため。主に抗アレルギー薬、高血圧の薬、抗うつ薬などに含まれる「抗コリン薬」と呼ばれる成分によって唾液の分泌が抑えられてしまうため。塩分を過剰に摂ると血液中のナトリウム濃度が上昇し、その血液を薄めるために細胞内の水分が使われるため。アルコールの過剰摂取は、アルコールには利尿作用があるため、尿量が増えて体内の水分が少なくなるため。口呼吸は風邪や花粉症などで鼻が詰まったり、マスク生活に慣れつい口を開けてしまったりすることが習慣化して口呼吸になり、口腔内が乾燥状態になるため。では養生法をみていきましょう。
①水分補給
まずは水分補給をしましょう。人間が一日に必要な水分量は2.5ℓ程ですが、このうち飲水での摂取は1.2ℓ程度と言われています。一度にたくさん摂るのではなく、少量をこまめに摂るようにします。脱水の場合は、経口補水液の摂取も有効です。
②適度な糖分を摂らないように注意する
糖分は腸管内での水分の吸収率を高める働きが期待できますが、糖分の多いジュースを飲みすぎると体は高血糖状態となり、多尿→脱水→喉の渇きから更にジュースを飲むといった悪循環になるので糖分の入っている飲料の過度な飲みすぎは禁物です。スポーツ飲料も同様で、偏った飲み方には注意しましょう。
③できるだけ温かいものを飲むようにする
熱すぎる飲み物は、水分が蒸発して喉が乾きやすくなることもありますし、逆に冷たすぎるものは体を冷やしてしまいます。腸での水分吸収を高めるには、熱すぎず適度に温かいものを飲む、または常温での摂取が良いとされています。
④乾燥しないように加湿等を行うようにする
特に冬は空気の乾燥が強まる為、口の渇きや喉の渇きを感じることがあります。加湿器の使用や室内に濡れたタオルを干すなど対策して部屋の中を加湿しましょう。
⑤日頃から塩分の摂りすぎに注意する
食生活において、塩分の濃い食事や外食・スナック菓子を日頃から控えるように心がけましょう。また、塩分の排出を促すカリウムの多い食品(例:バナナ・里芋・海藻類など)を一緒に摂るなどの工夫も有効です。
⑥アルコールの過剰摂取に注意する
アルコールだけを飲んでも水分補給にはなりません。アルコールの利尿作用により体内の水分が抜けやすくなりますので、特に夏場は水分もきちんと摂るように気を付けましょう。
⑦一日に摂取する水分の平均量は体重1キロにつき約35ml、およそ1,500~2,500mlとされています。喉の渇きで病院に行くべき症状とは、この摂取量を大幅に超える水分を摂取しても喉が渇くと感じる場合や、唾液の分泌量が減ってきて口が渇くと自覚している場合は、病気が原因の可能性があります。また、病気が原因となっている場合は腎臓系統の疾患の可能性が高いため、内科(腎臓内科や糖尿病内科など)を受診しましょう。
漢方と鍼灸
東洋医学でのどの渇きを口渇、激しい口渇を煩喝と言います。のどの渇きは体に内熱、血熱があるとき口渇になります。舌診でも舌苔や舌質が渇いている、赤味が強い、黄色い苔など内熱の状態があれば口渇があります。胃炎は胃の中が炎症をおこしているので口渇になります。また水分の偏在と言って体の一部には水がたっぷりあるのに他の部分にはいきわたっていない状態もあり、治療としては余っている水を足りない方へ移動させる漢方を使います。原因となる更年期、女性ホルモン、糖尿病、甲状腺、自己免疫疾患、腎臓のツボから経絡に落とし込んで臓腑経絡、補寫などを調べます。病名に惑わされずに証に従って漢方やツボ、食養生をお伝えいたします。