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腹水

 腹水はおなかに水がたまった状態です。もともとお腹の中には腸がスムーズに動くために50ml程度の腹水が存在しています。しかしこの腹水が検査で目に見えるようになると腹水貯留といいます。通常、腹水は腹膜などで産生され、同じく腹膜や血管で吸収されてバランスを取っています。 腹水は少量であれば自覚症状はあまりみられません。大量になるとお腹が膨らんで蛙腹になったり、おへそが飛び出ることもあります。胃が圧迫されて食事がとれなくなったり吐き気が出ることもあります。腸が圧迫されると便秘になります。肺との境界である横隔膜を押し上げて肺が膨らみにくくなり息切れを感じることもあります。足に行った血液が心臓に戻りにくくなるため足首がむくむこともあります。腹水は「腹水が過剰に産生」されたり「腹水の排出が妨げ」られて発生します。特に腹水が増加するときに関係しているのは血管内圧の上昇(門脈圧亢進)とアルブミンです。

 血管内圧とは普段皆さんが腕で測定する血圧ではなく、特にお腹の中の血管の圧を意味します。不要になった腹水は血管に引き込んで排出されていますが、お腹の中の血管の内圧が高いとそれ以上の液体を引き込めなくなり、腹水の吸収ができなくなります。さらに圧が高いことで逆に血管から水がしみ出て腹水が増える原因にもなります。

 腹水の排出がうまくできないもう1つの原因がアルブミンの減少です。アルブミンはたんぱく質の1つです。アルブミンは血管の中の水分量を保ったり、余分な水分を血管に取り込む役割をしています。このアルブミンが不足すると腹水を血管内に取り込めなくなり、場合によっては血管内の水分が血管の外にしみだして腹水になるのです。アルブミンの基準値は3.9g/dL以上とされています。 また、3.7〜3.8g/dLは要注意、3.6g/dL以下は異常値とされます。

 この両方の原因がおきる代表の疾患が肝硬変です。肝硬変自体は大量飲酒、 脂肪肝、またはウイルス性肝炎に起因することが最も一般的です。肝臓は全身の血液を集めて栄養を蓄えたり解毒したりしていますが、肝臓が硬く変化してしまうと血液が肝臓に入りにくくなり、滞った血液がしみ出る形で腹水になります。さらに肝硬変の場合は肝臓で作られるアルブミンの量が減るため血管内に水分がとどまりにくくなり、水分が血管からお腹にしみ出やすくなります。また腹水を作ったり排出したりして調節している腹膜に炎症が起きるとこの調節が崩れて腹水が増加することがあります。腹水はたんぱく質がどれくらい含まれているかによって滲出液と漏出液に分類されます。非炎症性のものでは0.1~2.0g/dL、癌性では2.0~4.0g/dL、炎症性では4.0g/dL以上とされ、総蛋白量によりある程度原因疾患の鑑別が可能です。

 滲出性腹水は、腹膜の血管透過性亢進やリンパ流の鬱滞等により、蛋白質や細胞成分を多く含んだ血漿成分が腹腔内に滲出したものである。 癌性腹膜炎によるものが最も多いようです。滲出液は主に炎症が原因細菌性腹膜炎、癌性腹膜炎(大腸・肝・胆道・膵臓・胃・卵巣・子宮)、急性膵炎などで多くなります。

 漏出性腹水は、腹膜自体に病変がなく、低蛋白血症や門脈圧亢進症により血中の水分が腹腔内に漏出したものである。肝硬変によるものが最も多いようです。非炎症性で、主に血管内圧の上昇やアルブミン不足が原因で肝硬変、門脈圧亢進、うっ血性心不全、腎不全、ネフローゼ、卵巣刺激症候群などで多くなります。

腹水の合併症

 特発性細菌性腹膜炎(はっきりとした理由がないのに生じる腹水の感染)が起こることがあります。この病態は、腹水と 肝硬変がみられる患者によく起こり、アルコール依存症があると、さらに発生頻度が高まります。特発性細菌性腹膜炎を発症すると、通常は腹部に不快感が現れ、腹部に圧痛を感じることもあります。発熱や体調不良がみられるほか、錯乱や見当識障害に陥ったり、眠気を覚えたりすることもあります。治療しないと死に至ることがあります。生存の見込みは、適切な抗菌薬による早期の治療を行えるかどうかにかかっています。

 腹水の治療は安静と塩分制限、腹水を尿として排出するための利尿剤を使用します。低ナトリウム食と利尿薬によって、過剰な体液の排出を促します。安静にして横になっている時間を増やすことで、肝硬変の人の場合は肝臓に血液が入り込みやすくなり腹水の産生が減ります。また腎臓に血液が届きやすくなり余分な水分を尿として排出しやすくなります。塩分は体に水分をためやすくなり、利尿剤を使用していても効きにくくなってしまうため制限が必要です。病状によっては摂取する水分量も制限されることがあります。症状が強く、急いで腹水を減らす必要があるときにはお腹に針を刺してある程度の腹水を排出します。腹水には水だけでなく体に必要な栄養分も含まれているため、場合によっては抜いた腹水から水分を取り除いて点滴として体に戻す、腹水濾過濃縮再静注法とよばれる治療が行われることもあります。アルブミンの不足が腹水の原因である場合は、血液製剤であるアルブミンの点滴を行うこともあります。アルブミンの点滴は使用日数に制限があります。

漢方と鍼灸

 本治と標治にわけて漢方を選択します。例えば漏出性の肝硬変を良くする漢方、食養生は本治。門脈圧亢進、アミノ酸補充、腎機能改善、心機能改善などは標治。滲出性では癌に対して免疫力をあげる方法は本治。炎症を抑える、随伴症状をとる、抗菌漢方などは標治。
癌のツボ、腹水箇所、細菌やウイルスのツボ、門脈、心臓、腎臓など関係するところから波長をとって経絡に落とし込んで漢方食養生ツボを選択します。いい結果が出ないようでしたらご相談ください。