膵石症
膵石症とは、膵臓の膵管と呼ばれる部位にできた石のことで膵管の内圧が上昇し、上腹部痛や炎症に伴う発熱などの症状が生じることがあります。膵石の主成分は炭酸カルシウムやリン酸カルシウムであり、慢性膵炎の方に多く見られます。膵石の有無は慢性膵炎の診断基準のひとつとなっています。慢性膵炎は膵臓に繰り返し炎症が生じることで起こる疾患ですが、長い経過の中で膵石が形成されると、膵管内圧が上昇し、痛みや仮性嚢胞の原因となるので、慢性膵炎の悪化につながります。また、膵がんを発症しやすくなるというデータもあります。膵石の外観は、白くゴツゴツと硬いのが特徴です。大きさはごく小さなものから、50gを超える巨大なものまであり、膵臓全体に多発性に散在するケースが多いです。明確な原因は判明していませんが、アルコールの大量摂取が主原因であると考えられています。アルコールの過剰摂取により、膵管内がたんぱく質の固まったもので塞がれ、これにコラーゲンやカルシウムが沈着して、膵石が形成されると推測されています。ほかには、胆道系の疾患や副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症も原因として挙げられています。膵液の流出が妨げられることで起こる、食後の上腹部痛や背部痛が代表的な症状です。この痛みは前かがみの姿勢をとると軽減することが特徴です。また、膵管内で炎症が乗じることで、発熱などの症状が起き、重症な場合はDIC(播種性血管内凝固症候群)や敗血症に陥ることもあります。慢性膵炎がさらに進行してしまうと、膵臓の機能不全状態となり、腹痛などの症状が現れなくなります。代わりに、消化吸収障害のために下痢や脂肪便(脂肪が多く含まれている便)、内分泌機能低下による糖尿病が前面に現れるようになります。
膵石の治療は症状が安定していれば、禁酒や低脂肪食を中心とした食事療法、薬物療法が主体となります。低脂肪食は膵液の分泌を抑制しますので、膵臓を休ませることにつながります。症状が強いときには急性膵炎に準ずる治療が行われます。また、治療に反応しない頑固な疼痛や、持続性・反復性の疼痛があるときには、膵石を除去するように積極的な治療が行われることになります。