夜尿症
夜尿症とは、いわゆる“おねしょ”のことで、夜間睡眠中に無意識のうちに尿が漏れてしまう病気のことです。ヒトは排尿習慣が身につくようになる2~3歳ごろまでは、睡眠中でも無意識のうちに排尿します。このように排尿習慣が未熟なために生じるおねしょを夜尿症とは呼びません。また、排尿習慣が整った後も就寝前に飲み物を多く取ったなど、些細なことが原因でたまにおねしょをするのはよくあることです。しかし、5歳を過ぎても1か月に1回以上の頻度でおねしょをする状態が3か月以上続く場合は“夜尿症”と診断されます。7歳のころは約15%が夜尿症であると考えられていますが、年齢を重ねるごとに有病率は減少していきます。その一方で、成人になっても夜尿症が改善しないケースもあり、夜尿症に気付いた段階で適切な生活指導や治療を開始することが望ましいと考えられているのが現状です。夜尿症の根本的な原因は、膀胱内にたまった尿の量が膀胱の許容量を超えてしまうことです。当然ながら、睡眠中も日中と同じく腎臓では尿が産生されますが、脳下垂体から“抗利尿ホルモン”と呼ばれる尿の産生を抑制するホルモンが睡眠中により多く分泌されるようになるため、尿量は日中よりも減少します。しかし、多くの尿がたまって膀胱の壁が刺激されると、就寝中でも尿意を感じるようになります。通常は睡眠中であっても尿意を感じると目が覚めるものですが、小児は眠りが深いため尿意を感じても覚醒することができず、結果として尿失禁を引き起こすと考えられています。さらに、小児は膀胱の大きさや機能が未熟なため、多くの尿を蓄えられず、尿意を感じる前に膀胱が収縮して尿失禁を引き起こしやすいのも1つの要因です。そのほか、精神的なストレスや環境の急激な変化なども夜尿症の原因となることがありますが、現時点では夜尿症とそれらの要因との関連は解明されていません。また、夜尿症は“おねしょ”以外の症状は見られず、睡眠中に無意識に尿失禁を引き起こすため痛みなどの苦痛はないと考えられています。しかし、年齢が上がっても夜尿症が続く場合は、宿泊を伴う学校行事を極端に嫌がったり、自己否定感が強くなって親や友人とうまくコミュニケーションが取れなくなったりするといった精神的な問題を生じることも少なくありません。夜尿症が疑われるときは尿に細菌などが混入していないかを調べる検査を行うことがあります。これは、頻尿を引き起こす膀胱炎などを鑑別するための検査であり、そのほかにも尿たんぱくの有無や尿の濃さなどで腎機能を簡易的に評価することも可能です。夜尿症を改善するためには生活改善を行うことが必要です。具体的には、夕方以降は水分の摂取を控えめにする、就寝前に排尿を済ませる、利尿効果のあるカフェインを含んだ飲料を控えることなどが挙げられます。生活指導を行っても症状が改善しない場合は、尿の産生を抑える抗利尿ホルモン剤や膀胱の筋肉を緩めて容積を大きくする抗コリン薬などを用いた薬物療法が行われます。下着やオムツに尿漏れを感知するセンサーを装着し、尿失禁が生じる前にアラームが鳴って排尿行動を促す治療法です。尿意が生じても目が覚めずに尿失禁をしてしまうタイプの夜尿症の治療によいとされており、訓練を繰り返すことで自然に尿失禁がなくなっていくケースも多いことが分かっています。夜尿症は前述のとおり、深い睡眠や膀胱の未熟さなどによって引き起こされるものです。これは小児の身体的な特徴でもあるため、夜尿症を高い確率で予防する方法は残念ながらないのが現状です。
漢方と鍼灸
脳、胃腸、腎、膀胱、冷えが原因。小さい子はまだ成長過程で、深い眠りに入りやすく、そのため脳からの指令がうまくいかずホルモンが分泌できない状態です。また胃腸が虚弱で冷えやすく、疲れやすい、気の巡りが悪い状態の場合もあります。自律神経のツボ、脳下垂体、腎臓、膀胱、脾胃から漢方、食養生、つぼを選択します。