発作性上室性頻拍
突然、何かの拍子に(発作性)脈がはやくなり、それが持続する(頻拍)状態で、早い脈が心房およびその付近からでているもの(上室性)が発作性上室性頻拍です。突然脈拍が速くなり、しばらく続いたあとに突然止まる不整脈のことです。「上室」=「上の部屋」。つまり発作性上室性頻拍症とは、発作的に発症する脈の速くなる不整脈で、リエントリー等の不整脈の回路が心室より心房側に存在する、という意味です。心室と心房と結ぶ副伝導路(Kent束)が存在する「WPW症候群」と呼ばれる疾患があります。副伝導路の部位は様々ですが、電気刺激が房室結節を順行し、副伝導路を心室側から心房側へ伝わる正方向性房室回帰性頻拍と、逆に、房室結節を心室側から心房側へ逆行して副伝導路を心房側から心室側へ伝わる逆方向性房室回帰性頻拍とがあります。房室回帰性頻拍との95%は正方向性で、逆方向性は5%程度です。これらの不整脈は、一般にリエントリー(回帰興奮あるいは回帰収縮)と呼ばれる電気の流れによって起こります。発作性上室頻拍とは、正常な電気刺激の通り道以外に別の通り道が存在し、その回路を電気刺激が通ることで脈が早くなるのです。この別の回路を電気が通りグルグル刺激が回り続けることをリエントリーと呼びます。狭義の発作性上室性頻拍には、WPW症候群の房室回帰性頻拍、房室結節リエントリー性頻拍、心房頻拍の3種類が含まれます。本来、正常の脈を出す司令塔(洞結節)以外のところから異常な脈が出続ける場合と、正常な脈の伝導路が異常な脇道を介してループを作り、そこで脈の信号がグルグルとまわって止まらなくなる場合があります。発作は急に、前触れなく起こるので、「突然脈がはやくなった」というのが代表的な症状です。これにより動悸、息切れ、胸の不快感が出現します。脈が極端にはやく、心臓が効率よく動けなくなると、血圧低下や失神などの重い症状がでることもあります。診断は心電図で行います。発作が起きていないときの心電図では特に異常が見つからないことが多いため、発作がおきたときの心電図をしっかり記録することが重要です。発作時に病院を受診して通常の心電図で記録することが第一ですが、難しい場合はホルター検査やイベントモニター(発作時に簡易の心電図を記録することができる携帯用の機械)を使用します。多くの発作性上室性頻拍は基質的心疾患を伴いませんが、治療にあたり心機能や肝臓・腎臓の機能を把握することが重要であり、胸部X線撮影や心エコー図検査、血液検査なども並行して行います。発作性上室性頻拍は、普段は何も異常がなく、前触れなく突然発作を生じるものであるため、発作がおきてから薬を飲んで早く止める方法(頓服)と、普段から薬を飲んでおいて発作をおこしにくくする方法(予防的内服)があり、症状の強さや発作頻度によって薬剤の選択・使用方法を相談していきます。なにが原因の頻拍にせよ、脈が心室まで伝わるまでに必ず房室結節を通ることになりますので、房室結節の伝導を抑える薬が適応となってきます。主にはβ遮断薬とCa拮抗薬と呼ばれるものです。これらを内服することで、頻拍が起こっても脈が速くなることをある程度防ぐことができます。また、頻拍そのものを予防するために抗不整脈薬と呼ばれる薬を内服することがありますが、予防効果としては満足のいく結果を残せてないのが現状です。頓服のかわりに、息こらえをしたり、冷たい水を飲んだりすることで発作が止まる方もいます。しかしこうした方法では発作を十分に抑え込むことが難しい場合が多く、また長期にわたり薬剤を内服することにはデメリットも大きいため、カテーテルアブレーションによる根治をおすすめすることもあります。発作性上室性頻拍に対してはカテーテルアブレーションによる治療も高い成功率(90%以上)がみこまれます。カテーテルアブレーションとは、その異常な回路や異常な部分に対して、カテーテルを用いて焼灼または冷凍凝固を行い、不整脈を抑える治療です。正式には経皮的カテーテル心筋焼灼術と呼ばれ、手術の一つに分類されます。局所麻酔を行い、首、鎖骨の下、足の付け根を走る血管に径2mm程度の管を入れて、血管をたどって心臓の中へと進めます。カテーテルの先端には電極と呼ばれる金属がついていて、カテーテルによって、心臓の中の電気の流れを記録したり、電気刺激したりすることがきます。検査によって診断がつきましたら、治療に移ります。焼灼用のカテーテルを心臓の中に進め、高周波電流を流して心臓の筋肉が温められます。一定の温度以上に上昇するとタンパク質が凝固し、心臓の筋肉が電気を伝えることができなくなるため、不整脈の発生を抑えます。終了後は、カテーテルを抜去し、圧迫止血を行います。止血が終了したら、ベッドに移動して病棟へ帰ります。カテーテルを入れてあった部位からの出血を防ぐ目的で、数時間安静にしていただきます。適応となるのは心房細動、発作性上室性頻拍、心室性期外収縮、心室頻拍などに行われています。また近年では使用する機材の進歩により安全性も確立してきたため、日本循環器学会のガイドラインでも患者さんの症状や状態によっては薬剤治療よりも優先して行うべきとされています。費用は入院費を含め200万円ぐらいでそこから何割負担かによって変わります。カテーテル・アブレーションは100%の成功率ではないこと、ときに合併症があるという限界があります。治療を行ったあとも不整脈を自覚することもります。治療後としては、もとの不整脈がなおっていない、偶然に別な不整脈が起きた、 治療による心臓の筋肉へのダメージが原因となって、もともとの不整脈と少しタイプが違うものが起きた、治療にともなう自律神経活動への一時的な影響で心拍数がやや高めになる、などがあるようです。
漢方と鍼灸
心臓自体には問題がなく電気信号の異常が問題です。よく考えると脳もそうですね。神経伝達の異常で様々な疾患があります。発作性頻脈の漢方がいくつかあり、また心臓の異常信号箇所、脳の波長、基礎疾患があれば関係個所から経絡に落とし込んで漢方、食養生、ツボを選択します。