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潰瘍性大腸炎

 大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を 炎症性 腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といい、狭義にはクローン病潰瘍性大腸炎に分類されます。潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患 です。特徴的な症状としては、血便を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。わが国の潰瘍性大腸炎の患者数は166,060人(平成25年度末の医療受給者証および登録者証交付件数の合計)、人口10万人あたり100人程度であり、米国の半分以下です。発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳ですが、若年者から高齢者まで発症します。男女比は1:1で性別に差はありません。虫垂切除をした人では発症リスクが低いことや、喫煙をする人はしない人と比べて発病しにくいことが報告されています。原因は明らかになっていません。これまでに腸内細菌の関与や本来は外敵から身を守る免疫機構が正常に機能しない免疫反応の異常、あるいは食生活の変化の関与などが考えられていますが、まだ原因は不明です。潰瘍性大腸炎は家族内での発症も認められており、何らかの遺伝的因子が関与していると考えられています。欧米では患者さんの約20%に 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎あるいはクローン病)の近親者がいると報告されています。近年、世界中の研究者によりこの病気の原因を含めた 特異的 な遺伝子の探索が続けられています。発病に関与する可能性のある多くの遺伝子が報告されており、それぞれの遺伝子で発病しやすい型があることがわかっていますが、その型を持っていたからと言って必ず発症するわけでもありません。遺伝的要因と食生活などの環境要因などが複雑に絡み合って発病すると考えられています。症状としては下痢(便が軟らかくなって、回数が増えること)や血便が認められます。痙攣性または持続的な腹痛を伴うこともあります。重症になると、発熱、体重減少、貧血などの全身の症状が起こります。また、腸管以外の合併症として、皮膚の症状、関節や眼の症状が出現することもあります。原則的には薬による内科的治療が行われます。しかし、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要となります。現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科的治療はありませんが、腸の炎症を抑える有効な薬物治療は存在します。治療の目的は大腸粘膜の異常な炎症を抑え、症状をコントロールすることです。潰瘍性大腸炎の内科的治療に5-ASAには従来からのサラゾスルファピリジンと、その副作用を軽減するために開発された改良新薬のメサラジンがあります。経口や経直腸から投与され、持続する炎症を抑えます。炎症を抑えることで、下痢、血便、腹痛などの症状は著しく減少します。5-ASAは軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に有効で、 再燃 予防にも効果があります。ステロイドでは代表的な薬剤としてプレドニゾロンがあります。経口や経直腸、あるいは経静脈的に投与されます。この薬剤は中等症から重症の患者さんに用いられ、強力に炎症を抑えますが、再燃を予防する効果は認められていません。最近では、肝臓で速やかに分解されるブデソニドという新しいステロイドを使った注腸製剤も使われています。薬物療法ではありませんが、血液中から異常に活性化した白血球を取り除く治療法で、GCAP(顆粒球除去療法)、血球細胞除去用浄化器があります。副腎皮質ステロイドで効果が得られない患者さんの活動期の治療に用いられます。免疫調整剤・抑制剤ではアザチオプリンや6-メルカプトプリン( 未承認 )はステロイドを中止すると悪化してしまう患者さんに有効です。また、シクロスポリン(未承認)やタクロリムスはステロイドが無効の患者さんに用いられます。抗TNFα拮抗薬のインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブといった注射薬が使用されます。効果が認められた場合は、インフリキシマブは8週ごとの点滴投与、アダリムマブでは、2週ごとの皮下投与、ゴリムマブでは4週ごとの投与が行われます。アダリムマブとゴリムマブでは自己注射も可能です。抗接着分子抗体といいベドリズマブはリンパ球に発現した接着分子に結合し、炎症を引き起こすリンパ球が腸管粘膜に侵入するのを防ぎます。ベドリズマブは8週ごとの点滴投与が行われます。抗インターロイキン12/23拮抗薬のウステキヌマブは炎症を引き起こす分子であるインターロイキン12およびインターロイキン23を抑えます。ウステキヌマブは12週ごとの皮下投与が行われます。ヤヌスキナーゼ阻害薬であるトファシチニブは免疫細胞に作用して炎症を抑えます。トファシチニブは経口投与で用いられます。多くの場合、内科治療で症状が改善しますが、内科治療が無効な場合(特に重症例)や副作用などで内科治療が行えない場合、大量の出血、穿孔(大腸に穴があくこと)、癌またはその疑いがある場合は外科手術(大腸全摘術)が行われます。多くの患者さんでは症状の改善や消失(寛解)が認められますが、再発する場合も多く、寛解を維持するために継続的な内科治療が必要です。また、あらゆる内科治療で寛解とならずに手術が必要となる患者さんもいます。また、発病して7-8年すると大腸癌を合併するリスクが高くなってきますので、そのような患者さんでは、症状がなくても定期的な内視鏡検査が必要になります。しかし、実際に、一生のうちに大腸癌を合併する患者さんはごく一部です。重症で外科手術になる患者さんなど一部の患者さんを除けば、ほとんどの患者さんの 生命予後 は健常人と同等です。

漢方と鍼灸

 胃に潰瘍やびらんが生じるように小腸・大腸にも同じようにできるのでしょう。食事の内容、例えばアルコール、香辛料の強いもの、添加物の多い加工食品などは炎症を助長しやすいものと考えます。胃と腸の違いはとどまっている時間。それらが腸に溜まっている間、腸の粘膜、腸内細菌を乱すのでしょう。またストレスも活性酸素を多く出しますので炎症が起きやすいですね。例えばストレス性胃炎がわかりやすく、ストレスで胃の粘膜に炎症が起きます。
腸から出血を起こしている場合は止血の漢方、腸内の炎症を抑える漢方、免疫の反応穴2か所を確認し選択、ストレスが大きい場合や睡眠が悪い場合は気の巡りを良くする漢方、下痢が治らない場合、腸を丈夫にする漢方や腸内環境をよくする食養生をお勧めいたします。腸をくまなく見て一番反応の強いところと大腸の反応穴から経絡に落とし込んで漢方食養生ツボを選択します。