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自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群・自閉症・広汎性発達障害)

 アスペルガー症候群は、自閉症にみられる特徴(社会性発達の質的障害、興味や活動の偏りなど)を共通の類似点として持っています。自閉症では知的障害や言語発達に遅れを伴うことがありますが、アスペルガー症候群ではそれらはありません。知的レベルが正常であり、言葉の発達に遅れはないことなどから、一見すると「ちょっと変わった人」程度に認識されることもあります。しかし、アスペルガー症候群の方が社会生活を送る際に困難さを伴う点においては自閉症と相違はなく、治療や支援を行うことはとても大切です。アスペルガー症候群と自閉症には重複する部分も多く、近年は「自閉スペクトラム症」として1つの疾患概念に含めて考えられるようになってきています。アメリカ精神医学会による最新診断マニュアル(DSM-5)では、アスペルガー症候群と自閉症の診断名は削除され、自閉スペクトラム症に統一されました。

人と関わることが苦手、ひとりで好きなことをして過ごすほうが性に合っているといった性質は、自閉スペクトラム症ではない方にも多くみられます。その性質が極端で、本人の社会生活に影響が出ている、もしくは周囲の人が困っている場合、障がいの範囲に入ります。正常から重症の範囲まで、境界が曖昧で連続性があるということから、スペクトラムと呼ばれています。自閉スペクトラム症は、発達障害のひとつです。発達障害の中でももっとも頻度が高く、発症率は約100人に1人いるといわれています。また、女性よりも男性のほうが約4倍多いです。自閉スペクトラム症の本質的な症状、つまり中心症状は、2~3歳頃から明らかになります。そして、中心症状自体は一生続くものだと考えられています。自閉スペクトラム症の中心症状は、通常、人と関わるときには、表情、視線、ジェスチャー、声色、言葉などを使って交流します。自閉スペクトラム症の方は、表情や視線などをうまく使ったり、情報として受け取ったりすることが困難です。そのため、うまくコミュニケーションをとることができず、本人の社会生活や集団生活に深刻な影響が及んでいます。自閉スペクトラム症の方は、同じような行動パターンを繰り返す傾向があります。身の回りで何か変化が起こったとき、柔軟に対応できず混乱してしまうことがあります。また、関心を持つ事柄が偏りやすく、自分が関心を持っていることは繰り返し実行しても、ほかの人や物には関心を持ちにくいという方が多いです。社会的コミュニケーションの障害や、反復的で常同的という中心症状があることにより、自閉スペクトラム症の方は、さまざまな状況に対してうまく適応することが困難です。そのために、不眠、不安、抑うつといった、さまざまな症状が出てくることがあります。たとえば、就職して会社勤めをするようになると、それまでとは異なる環境に身を置くことになります。新しい環境にうまく適応できず、うつ状態になり、精神科にかかってうつ病と診断される方もいらっしゃいます。その場合、治療を受け、休職して自宅で自分らしく過ごしていると、多くの方はうつ状態が回復してきます。しかし、職場に戻ると、適応の問題で再びさまざまな症状が出てきます。併発しやすい精神疾患─うつ病、不安症、解離性障害などです。自閉スペクトラム症の方の約半数が、知的障害をもっています。てんかんを合併することも多いです。また、うつ病、不安症、解離性障害や転換性障害などを発症しやすいといわれています解離性障害や転換性障害とは、心理的な原因により、意識や記憶、運動機能や知覚の一部分を切り離すという症状を示し、困難な状況で起こることが多いです。自閉スペクトラム症の方は、困難なことが起こったとき、周囲の人に相談したり助けを求めたりすることが苦手な傾向があります。自分の状況について言葉でまとめることが難しいため、うまく喋れなくて固まってしまったり、自分の感情に鈍感で、つらいと言えず体に症状が出てきてしまったりすることがあります。またADHDは発達障害のひとつで、不注意や多動を特徴とする障がいです。自閉症とは別の障がいですが、自閉症に併発することがあります。また、ADHDの症状が強い方は、自閉症の症状もみられるという、相関があることが分かってきています。なかには、自閉症の症状はなく、周囲の人への配慮などが問題なくできるという方もいらっしゃいます。学生時代はとくに問題が起こらなかったという方でも、働き始めてから自閉スペクトラム症の症状に気づくことがあります。また、仕事を始めてしばらくは問題がなくても、役職がつくと生活に影響が出てくる方もいます。たとえば、勤め始めて間もない頃は、与えられた仕事をしっかりとこなせばよい職種の場合、仕事に支障が出ないことがあります。しかし、昇進して役職がつくと、部下に仕事を任せたり割り振ったりという、対人交渉が必要な場面が増えてきます。そこで、生活に影響が出てきて、自閉スペクトラム症に気づくことがあります。自閉スペクトラム症の診断において重要なのは、子どもの頃から他者と関わることが苦手なのか、ほかの病気の影響で苦手になったのかということです。たとえば、統合失調症という精神疾患も、自閉スペクトラム症と同じく、社会生活が困難になることがある病気です。しかし、幼い頃からではなく成長してから症状がみられるようになったという方の場合、発達障害ではなく、統合失調症を含め、ほかの精神疾患による可能性を考えます。成人の方で、自閉スペクトラム症と似たような症状があって困っているという場合、まずは子どもの頃の経過を確認することが重要です。これまで、「自分は周りと何かが違う」「周りができることでも自分はできない」などと感じていた方が、テレビやインターネットで自閉スペクトラム症のことを知り、自分もその特徴に当てはまると思って病院にかかる、ということが増えているように思います。病院で診断がつくと、自分の特徴を客観的に認識することができ、困ったときはどのように対処すればよいのか分かるようになって、楽になった、うまくいきやすくなったという方は多くいらっしゃいます。子どもの頃に診断がついた方の場合、医療機関や施設で相談したうえで、本人に向いている職業についたり、障害者手帳を取得して障害者就労をしたりと、自分の居場所ができている方もたくさんいらっしゃいます自閉スペクトラム症はなるべく早く診断を受けて対策を取ることが重要です。自閉スペクトラム症の治療では、不安や抑うつなどの併発症状が出たとき、それに対しての治療を行うことが一般的です。そのほか、心理教育といって、本人や周囲の近しい方にどのような特徴があるのか理解してもらうことも欠かせません。診断がついたあとで重要になるのは、就労支援などの社会資源の活用です。医療機関以外にも、自閉スペクトラム症の方が活用すべき施設として、発達障害者支援センター、就労支援センター、就労移行事業所などが挙げられます。
 基本的には、年齢を重ねるとともに問題が減っていく方が多いです。自分の特徴を客観的に把握できると、本人に適した仕事に就きやすくなります。たとえば、きちんと作業が分担されていて、自分のペースで取り組んだり、同じ作業を繰り返したりするような仕事は得意です。反対に、チームワークや共同作業を求められる仕事は苦手というように、向き不向きがはっきりしています。自分に向いていないことは諦めて、得意なことに取り組むことも大切です。周囲もそれを理解して、本人の得意なことはなるべく頼み、苦手なことは頼まないという流れができてくると、本人もうまく対応していけるようになり、周囲の方の負担もかえって減っていきます。自閉スペクトラム症の方の中には、精神的に安定していて、専門職や研究職などで自分の得意なことを仕事にできている場合、中心症状が強くても問題なく過ごせている方もいます。身近に自閉スペクトラム症の方がいる場合、その方の特徴を理解しておくことは重要です。たとえば、自閉スペクトラム症の方は、相手に失礼にあたることでも悪気なく口に出してしまうことがあります。もし、身近な方から失礼なことを言われたら、腹が立ったり、見下されていると感じたりするかと思います。しかし、自閉スペクトラム症の方は悪気なく口にしていることが多く、相手を怒らせても気づかないということもあります。自閉スペクトラム症の方は裏表がないと理解しておくだけでも、よりよいコミュニケーションにつながると思います。自閉スペクトラム症の方は、仕事のなかで何か苦手なことを求められると、うまく適応できなくなる可能性があります。小学生の頃までは、ひとりで好きなことをして遊んでいてもよく、時間ごとにやるべきことが決まっているため、マイペースに過ごすことができたと思います。しかし、高校生や大学生になると、集まって自由に話し合ったり、自由に選択したりする機会が増え、社会生活が難しくなってくる方は多いです。一方、自分のペースで物事を進めていられるときは、あまり問題になりにくいことが特徴です。職場などでは、本人が苦手なことを求めないように、周りの方が配慮することも大切です。

自閉スペクトラム症の症状のまとめ

 重症度は様々ですが、言葉の遅れ、反響言語(オウム返し)、会話が成り立たない、格式張った字義通りの言語など、言語やコミュニケーションの障害が認められることが多くなっています。乳児期早期から、視線を合わせることや身振りをまねすることなど、他者と関心を共有することができず、社会性の低下もみられます。学童期以降も友だちができにくかったり、友だちがいても関わりがしばしば一方的だったりと、感情を共有することが苦手で、対人的相互関係を築くのが難しくなります。また、一つの興味・事柄に関心が限定され、こだわりが強く、感覚過敏あるいは鈍麻など感覚の問題も認められることも特徴的です。

自閉スペクトラム症の併存症

 様々な併存症が知られていますが、約70%以上の人が1つの精神疾患を、40%以上の人が2つ以上の精神疾患をもっているといわれています。特に知的能力障害(知的障害)が多く、その他、ADHD(注意欠如・多動症)、発達性協調運動症(DCD)、不安症、抑うつ障害、学習障害(限局性学習症、LD)がしばしば併存します。
 また医学的併存疾患としては、てんかん、睡眠障害、便秘を合併しやすいことが知られています。てんかんの併存は、知的障害が重い人ほど多く認められます。

自閉スペクトラム症の原因

 自閉スペクトラム症の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と考えられています。胎内環境や周産期のトラブルなども、関係している可能性があります。親の育て方が原因ではありません。

漢方と鍼灸

 脳の機能障害ですが、証を診て判断します。また脳の波長(気の流れ)を捕えて漢方を選択していきます。また脳と腸は相関関係があるので胃腸が弱ければ、丈夫にしていきましょう。とくに悪い腸内環境は整えましょう。脳波から漢方食養生サプリツボを的確に選択して整えていきます。