視神経脊髄炎
脳や脊髄では複雑な神経活動が活発に行われており、情報伝達には神経線維を伝わる電気信号が重要な役割を担っています。電気信号をより効果的かつ素早く伝えるために、神経線維はミエリン(髄鞘)と呼ばれる構造物で覆われています。視神経と脊髄および大脳の神経線維を覆うミエリン(髄鞘)が何らかの原因によって変性・脱落する病巣が生じることで視力低下や感覚異常などを繰り返す病気で、指定難病の1つに定められています。免疫の異常によって自分の体の組織が攻撃される自己免疫疾患の1つで、アクアポリン4というタンパク質に反応する自己抗体(抗アクアポリン4抗体)によって、脳・脊髄・視神経が攻撃されて発症すると考えられています。発症は子どもから高齢者まで幅広く、特に女性に多いことが分かっています。視神経脊髄炎では、ダメージが生じた部位に応じてさまざまな神経症状が現れます。最近では、再発を予防するための治療に複数の生物学的製剤が使用できるようになり、徐々に普及が進んでいます。しかし、何かしらの原因をきっかけにミエリンが変性・脱落すると(脱髄)、電気信号を伝える情報伝達経路に障害が生じます。視神経脊髄炎では、視神経や脊髄、大脳を中心に脱髄病巣が生じ、脱髄部位に関連した症状が誘発されます。視神経脊髄炎では、抗アクアポリン4抗体という自己抗体が産生されることでダメージが生じると考えられています。視神経脊髄炎は、同じく脱髄を繰り返す“多発性硬化症”という病気の一亜型であると考えられていましたが、視神経脊髄炎の患者に多くに抗アクアポリン4抗が確認されたことによって、多発性硬化症とは別の病気であると区別されるようになりました。しかし、なぜ免疫機構が自分自身(アクアポリン4)に対する抗体を産生するのかなどを含めて、詳しいメカニズムは解明されていません。視神経が障害された場合は、視力低下や視覚障害が現れることが多く、重い場合には失明することもあります。脊髄に障害が及んだ場合は、手足の麻痺、胸や腹部などのしびれや痛み、感覚低下、排尿障害などを認めることもあります。また、視神経脊髄炎では、視神経や脊髄以外にも炎症が及ぶことがあります。脳幹部が障害された場合は難治性のしゃっくり、吐き気、片麻痺をはじめ、呼吸循環機能など生命維持に欠かせない機能に障害が及ぶこともあります。大脳に炎症が及ぶと、認知機能の低下など高次脳機能の障害が現れることもあります。なお、視神経脊髄炎はさまざまな神経症状の再発を繰り返す点が特徴ですが、重症の場合には一度の発作で失明や麻痺など重篤な後遺症を残すこともあります。また、再発するたびに障害の度合いが蓄積して重篤な障害を招きやすいといわれています。視神経脊髄炎が疑われるときは、MRI検査や血液検査、脳脊髄液検査などを行います。MRI検査は、脳や脊髄を対象にMRI検査を行って障害部位を特定します。髄液検査は、髄液中の細胞やタンパク質の増加を確認するため髄液検査を行います。多発性硬化症では、髄液内で産生されるIgGという抗体のうち特定のクローンが著しく増加する現象(オリゴクローナルバンド)がみられますが、視神経脊髄炎ではみられないことが多いため、こうした違いを参考にしながら診断を進めます。視神経脊髄炎患者の多くで抗アクアポリン4抗体が確認されるため、この病気が疑われれば血液検査を行ってこの抗体の有無を確認します。これらの検査のほか、神経系の機能を評価するために、視覚誘発電位や体性感覚誘発電位などを測定することもあります。視覚誘発電位とは、電極を頭につけながら白黒点滅するモニターを見て、視神経から大脳皮質視覚野までの電気信号の伝達に異常がないかを調べる検査。また体性感覚誘発電位は、末梢感覚神経―脊髄―大脳皮質のどこが障害されているのか確認するために、手首や足首の神経に微弱な電流を与えて感覚神経の反応を調べる検査。視神経脊髄炎の症状が急速に悪化した際は、短期間のうちに副腎皮質ステロイドを大量に投与して自己免疫を抑える“ステロイドパルス治療”を行います。期待した治療効果が得られない場合は、血液中に存在する免疫物質(抗アクアポリン4抗体など)を取り除く“血液浄化療法”や、免疫グロブリン製剤を点滴投与する“免疫グロブリン大量静注療法(IVIG療法)”を行うこともあります。視神経脊髄炎は症状の再発時に高度の障害を起こすことがあるため、再発予防治療は大切です。これまではステロイドや免疫抑制薬による治療が一般的でしたが、ステロイドの副作用や感染症の併発が課題でした。最近では、補体C5 、IL-6 受容体、B細胞を標的とする生物学的製剤の再発予防効果が臨床研究で確認され、エクリズマブやサトラリズマブ、イネビリズマブなどの薬剤5種類が国内で保険承認されて徐々に普及しています(2024年4月現在)。再発の不安からの解放や、医療の標準化を目指す中で、生物学的製剤の役割は重要性を増しています。
生物学的製剤とは、バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療のために使われます。生物学的製剤は高分子の蛋白質であり、内服すると消化されてしまうため、点滴あるいは皮下注射で投与します。バイオあるいはバイオ製剤とも呼ばれます。主な対象疾患はリウマチ膠原病領域では、関節リウマチに対して最も使用されていますが、巨細胞性動脈炎や高安動脈炎、ANCA関連血管炎、全身性エリテマトーデス、ベーチェット病などの膠原病のほか、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎など様々な疾患に対して使用されています。特定の分子を標的とした生物学的製剤は、一般的に治療効果が高く、また併用するステロイド内服量を減らせることも多いです。ただ、必ずしも全員に効果があるわけではなく、また各生物学的製剤が有効かどうかを事前に推測することは難しいです。薬剤ごとに特徴があるため、血液検査結果、合併症の有無、点滴製剤か皮下注射製剤かなど、様々な点を考慮して患者さんにとって最適な薬剤を選択する必要があります。感染症に注意が必要です。予防のために、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは積極的に接種しましょう。高熱、呼吸器症状(咳・痰、呼吸困難)、腹痛、皮膚の腫れなどがみられた際は早めに相談してください。帯状疱疹のリスクが高い製剤もあるため、ピリピリとした痛みや水ぶくれを伴う赤みがみられたら、すぐに医療機関に相談してください。また、結核やB型肝炎の潜在的な感染が考えられる場合、投薬を要することもあります。心不全や慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症のような脱髄疾患がある患者さんには使用が難しい薬剤もあるので、そのような持病がある方は主治医にお伝え下さい。一般的に高額ですが、対象とする疾患や加入する健康保険の種類によって負担額は異なります。高額療養費制度などを利用することで負担を軽減できることもあるため、主治医に相談するようにしてください。ンナ病変型で膀胱を拡張すると点状出血、五月雨状出血を有する場合には、間質性膀胱炎と診断されます。
漢方と鍼灸
自己免疫疾患ですから免疫の調整、炎症を抑えることが大切です。のどの反応穴、自己免疫の反応穴、小腸の反応穴から漢方、食養生、ツボを選択していきます。