低胃酸症
胃酸は胃壁から分泌される消化液で、主成分は塩酸と消化酵素のペプシノゲンからできています。胃酸の主な働きは食物の消化です。
胃酸の働きは、消化以外にも食品や、口、喉に付着している細菌、ウィルス、カビ、寄生虫などを消毒して食中毒や感染症を予防してくれます。
この消化にも感染症予防にも必要な胃酸の分泌が不足している状態を低胃酸症と呼びます。
最新の研究では人口の30%程度が胃酸不足と推測され、年齢とともに胃酸の分泌は低下する傾向にあります。
適切な胃酸は食事の消化に欠かせません。特にタンパク質、ビタミンB12、鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルの消化には胃酸が欠かせません。胃酸の分泌が低下すると、これらの栄養素を吸収することができなくなります。タンパク質は分解されてアミノ酸になり、筋肉、毛髪、つめ等の様々な部品に使われ、気分や感情などを制御している物質の原料にもなります。ビタミンB12不足は疲労や麻痺、ミネラル不足は骨粗しょう症、貧血、疲労など様々な病気の原因になります。
胃酸は消化に必要なだけでなく殺菌効果としても重要で、雑菌やカビの繁殖を抑える働きがあります。胃酸が少ない方は細菌による感染症や異常繁殖により下痢やガスが溜まりやすいのが特徴です。
食後の胸焼け、膨満感、ゲップもしくは胃酸逆流症などの症状から胃酸過多と診断されている方でも、胃酸の分泌量を測ると実際は低胃酸症の方がおられます。このような症状は胃酸の分泌量が少ないため消化能力が落ち、胃の中に食べ物が長く停滞するために起こります。酸の分泌量が少ない胃では、消化に時間がかかり食物は胃に長時間留まることになります。そして食道と胃の間の弁(下部食道括約筋)が時間の経過と共に緩んだ時に胃の内容物が食道へ逆流する事になります。胃酸過多に比べて胃酸の量は少なく、食物を消化するには十分な濃度の酸ではありませんが、本来胃酸に晒されることのない食道にダメージを与えるには十分な濃度の酸です。このような方は、レモン水などを食事と一緒に摂ると胸焼けを起こしにくくなります。
低胃酸症の症状のなかで勘違いされているのが、胸焼けです。胸焼けは胃酸過多と思われることが多いのですが、実際には胃酸不足で消化ができず、胃もたれから胸焼けになることがあります。
胃酸が不足すると有害な細菌が腸内で繁殖しやすくなり、下痢や、腸内毒素症と呼ばれる腸内細菌バランスの乱れによる体全体への不調、カンジタ菌の繁殖などにつながります。
胃酸は大きな塊のタンパク質を、より小さいペプチドと呼ばれるアミノ酸の集合体に分解してくれます。このペプチドは更に小さく消化されるか、ペプチドのまま腸から吸収されます。胃酸とペプシンが不足すると大きな塊のタンパク質は消化、吸収されないので栄養不足、筋肉の萎縮などを引き起こします。また消化できなかったタンパク質は、食品アレルギーや食品不耐性を引き起こすこともあります。
原因には様々が考えられますが、ストレス、更年期、薬、ピロリ菌は胃酸の分泌を低下させる原因の一つです。
漢方と鍼灸
問診は、ストレス、食事内容、夕食の時間、嗜好品(コーヒー、辛い物など)、睡眠、鎮痛剤有無、などを聞いていきます。胃の状態は腹部の緊張具合、背部の状態・ストレスのツボ・胃経のライン・癌のツボなどを確認して漢方薬、食養生食品を選択、希望があれば鍼灸治療も致します。どんな種類の胃薬も飲むと反応して痛くなる場合、鍼灸治療がいい場合もあります。ご相談ください。