副鼻腔炎
副鼻腔炎とは、副鼻腔を覆っている粘膜が何らかの原因で炎症を起こしている病気のことです。突然発症し、短期間で治る急性副鼻腔炎と、3か月以上症状が続く慢性副鼻腔炎に分けられます。副鼻腔とは、鼻の周辺にある空洞のことであり、鼻腔と細い管でつながっています。人の顔面には4つの副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)が存在し、それぞれ以下のように呼ばれますが、いずれにも炎症が起こりえます。この中でもっとも炎症を起こしやすいのは上顎洞ですが、副鼻腔炎の多くは複数の副鼻腔に同時に炎症を起こします。
非常に頻度が高い病気であり、小児から高齢者まで幅広い年代に発生します。多くは適切な治療を続ければ完治しますが、なかには髄膜炎や視神経炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあるので注意が必要です。副鼻腔を覆っている粘膜は、喉や鼻の粘膜と同じく粘液を分泌し、線毛という構造を持ちます。線毛は細菌やウイルスなどの異物を捕らえ、体外へ排出するはたらきをします。このため、副鼻腔内に異物が侵入しても、線毛のはたらきによって副鼻腔内はほぼ無菌状態にあるのです。しかし、粘膜の炎症によって線毛のはたらきが悪くなったり、鼻と副鼻腔をつなぐ細い管に閉塞があったりすると、副鼻腔内の異物や粘液が正常に排出できず、副鼻腔内に分泌物がたまります。このような状態が副鼻腔炎であり、副鼻腔に液体が貯留することでさまざまな不快症状を引き起こします。副鼻腔炎の一般的な症状は、鼻汁、鼻閉、後鼻漏(鼻汁が喉の奥に流れること)、頭重感、顔面の痛みや圧迫感、嗅覚障害などさまざまなものがあります。咳や発熱などの症状がみられることもありますが、急性の場合には、急性上気道炎も同時期に発症することが多く、どちらからの症状なのかを判断することは困難です。また、細菌感染による副鼻腔炎では歯痛と口臭が生じることもあり、虫歯を疑って歯科医院を受診した結果、副鼻腔炎と診断されるケースもあります。副鼻腔炎の多くは軽い症状のみですが、炎症が脳内や目に波及すると、脳や目に膿うみがたまったり、髄膜炎や海綿静脈洞血栓症などの重篤な合併症を引き起こしたりすることもあります。副鼻腔炎は発症から治癒までの時間によって急性と慢性に分けられますが、それぞれ以下のような病変が原因となります。
多くは急性上気道炎(いわゆる、かぜ症候群)の波及が原因であり、一般的にはウイルス感染から細菌感染に移行します。病気や薬の影響、あるいは加齢で免疫力が低下している方は真菌感染も起こります。感染性のもの以外には、アレルギー性鼻炎による粘膜のむくみやポリープによって副鼻腔が詰まることが原因となります。また、まれに鼻腔や副鼻腔周辺の腫瘍などが原因となることがあるため、ただのかぜと見過ごせないこともあります。急性副鼻腔炎が慢性化したもので、原因は急性副鼻腔炎とほぼ同様ですが、多くは細菌感染によるものとされています。ただし、副鼻腔炎の症状が長く続くのは炎症やアレルギー症状が続くためではなく、粘膜の炎症やむくみを繰り返すことで線毛のはたらきが低下し、分泌物の排出が正常に行われないためとされています。このため、慢性副鼻腔炎の治療は大変難しく、長期間の治療が必要となることが多いです。また、鼻腔や副鼻腔内のポリープや構造の異常によって物理的に副鼻腔が閉塞していることも考えられます。最近では、治療に抵抗性を示す難治性の好酸球性副鼻腔炎が増えてきています。一般的な慢性副鼻腔炎では炎症部位に“好中球”という白血球が集まっていますが、好酸球性副鼻腔炎では“好酸球”という白血球が集まっていることからこのように呼ばれるようになりました。好酸球性副鼻腔炎では両側の鼻の中に複数の鼻茸(鼻の粘膜が腫れて瘤こぶのように膨らんだもの)ができ、手術をしてもすぐに再発を繰り返してしまうことがあります。また、原因は不明ですが一般的な慢性副鼻腔炎と比べて嗅覚障害が起こりやすい、喘息を合併しやすいといった傾向がみられます。
漢方と鍼灸
ツボによって副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎を鑑別します。副鼻腔炎の場合、鼻の両わきにある上顎洞から膿が溜まっていきやすいようです。次に上顎洞より上側にある篩骨洞・蝶形骨洞に溜まってきやすい。最後にさらに上側にある両眉毛の先頭辺りにある前頭洞まで埋まってきます。したがって前頭洞が痛むのはかなりひどいと思います。副鼻腔炎に葛根湯加川芎辛夷が効くこともありますが、合っていないのに長期飲むのは注意しましょう。もともと葛根湯は風邪薬で発汗剤です。麻黄(エフェドリン)が入っており長期服用するものでもないと思います。副鼻腔炎のツボより臓腑経絡に落とし込んで漢方やツボを選択します。抗生物質の連用も危険ですね。抗生物質で効果がないものでも良くなった症例は多いです。
唾石症
唾石症とは、カルシウム塩が固まってできた唾石(結石)が唾液管を狭窄・閉塞することで、唾液腺が腫れ上がる病気です。唾石症は顎下腺に起こることがほとんどで、耳下腺に起きることはまれです。唾液管内にカルシウムが沈着し、唾石が作られます。顎下腺管は他の唾液管に比べ長いことに加え、唾液内のカルシウム・リン酸塩の濃度が高く、唾液の性状も粘稠であるため、顎下腺では唾石ができやすいといわれています。唾石が小さければ隙間から唾液を排出できるため無症状です。ある程度の大きさになって唾液の排出路を狭窄・閉塞すると、唾液を排出できなくなるため唾液腺が腫れます。唾石症による腫れは、唾液の分泌が盛んになる食中や食後に出現して、時間とともに徐々に改善するのが特徴です。唾石が口腔内近くにあると、舌の裏にある口腔底が腫れることもあります。口腔内細菌により逆行性感染を起こすと、疼痛や発熱を起こします。周囲皮膚や口腔底などに炎症が波及すると、激しい疼痛、発赤、腫脹を伴う蜂巣炎や膿瘍などに進展することもあります。繰り返すうちに慢性的な腫脹になることもあります。
漢方と鍼灸
顎下腺の石の波長を消せるものを選択します。また唾液が出やすくなる舌の体操もして頂きます。
舌痛症
舌痛症とは、舌がぴりぴりと痛い、といった症状があるにもかかわらず、痛みを引き起こすような原因を特定できない状態を指します。とき時に心因性のストレスから舌痛が生じることもあります。痛みは慢性的に持続するため、日常生活の質が低下することもあります。
治療としては、口腔内の清潔を保つ、禁煙をする、虫歯を治す、義歯の不具合を調整するなどの対応をします。舌痛症の原因は明らかではありません。自律神経の失調やうつなど精神的な要因やホルモンバランスの変化などが発症に関与しているとも考えられています。舌痛症は、中高年の女性に多くみられます。舌が痛み、ヒリヒリ、ぴりぴり、じんじん、といった感覚が慢性的に継続します。舌痛症による痛みは持続的であり、日常生活に支障が生じることもあります。舌の痛みを生じるような疾患、すなわち舌炎やアフタ性口内炎、扁平苔癬などの口腔粘膜疾患や、義歯、不良補綴物(ほてつぶつ)よる障害、口腔乾燥症、口腔カンジダ症、舌癌などの疾患の有無を確認します。血液検査や口腔内の細菌培養検査により、鉄欠乏性貧血やビタミン欠乏、亜鉛欠乏、カンジダ症の有無を確認します。これらの検査から舌の痛みを生じる原因が判明しない場合には、舌痛症と診断されます。
漢方と鍼灸
大人から子供まで舌の痛みを訴える方が多いですね。特に多いのがストレスですがビタミン、ミネラル不足、胃炎などもあります。舌痛のする部分の波長をとり臓腑経絡に落とし込んで生薬や漢方を決めます。ストレスの場合、自律神経のツボも確認してみます。
扁桃肥大
口蓋扁桃は口を開けて真ん中に見える口蓋垂の両脇に存在するリンパ組織で、中咽頭の一部です。扁桃肥大は、口蓋扁桃と呼ばれるリンパ組織が通常よりも大きくなった状態です。摂食障害、いびき、睡眠時無呼吸などの原因になります。リンパ組織は口や鼻から入ってきた病原体に対する関所の役割を果たしています。上咽頭や中咽頭は鼻と口から体内に取り込まれた空気等が接触する部位です。病原体と触れ合う機会の多い部位ですから当然リンパ組織が発達しています。成長発達期のお子さんは免疫組織も発達段階ですから多くの異物に免疫反応が生じます。そのため口蓋扁桃は生理的反応で5〜7歳が最も大きくなります。口蓋扁桃の大きさは成人でも個人差があり、口蓋扁桃炎を繰り返すと大きくなる場合もあります。口蓋扁桃が過度に大きくなってしまうと食事や空気の通過に影響が出ます。小児では食が細くなるため、体重が増えにくい原因にもなります。また、気道が狭くなっていますので「いびき」「睡眠時無呼吸」「日中の眠気」「集中力低下」など様々な症状を引き起こします。重篤になると肺性心と呼ばれる病態になることもあります。口蓋扁桃炎を繰り返すことで扁桃肥大が生じている場合、扁桃に細菌が住みつき、一見関係のない組織に障害を引き起こすことがあります。これを扁桃病巣感染症と呼びます。慢性の微熱、掌蹠膿疱症、IgA腎症、胸肋鎖骨過形成症、慢性関節リウマチなどが代表疾患です。口蓋扁桃が大きいことが日常生活に影響している場合や扁桃病巣感染症では口蓋扁桃を摘出します。
漢方と鍼灸
細菌が住み着くので、口蓋扁桃と風毒塊(細菌やウイルスの反応がでるツボ)の波長から臓腑経絡に落とし込んで漢方、ツボ、抗菌生薬、食養生を選択します。
歯肉炎
歯肉炎とは、歯ぐき(歯肉)に炎症が生じる病気のことです。歯と歯ぐきの間には隙間(歯肉溝)があり、その隙間に汚れがたまることが主な原因とされています。歯肉炎を発症すると歯ぐきが赤く腫れた状態になり、炎症が強くなると歯磨きなどの些細な刺激で歯ぐきから出血しやすくなったり、膿が出たりするようになります。このような状態に進行した場合は、歯槽骨(歯を支えている骨)にまで炎症が及ぶことで骨が溶け、最終的には歯が抜け落ちる“歯周炎”の可能性があるため注意が必要です。歯肉炎は丁寧なブラッシングなどで口の中を清潔に保つことにより症状は改善しますが、初期段階では痛みなどの症状が少ないため発症に気付かないことも少なくありません。自覚がないまま歯周炎に進行してしまうことも多いとされているため、日頃から適切な口腔衛生をキープすることが大切です。歯肉炎の主な原因は、上述したように歯磨きの不足などによって歯肉溝に歯垢や歯石などの汚れがたまることです。しかし、歯肉炎は口の中の不衛生さのほかにも、薬の副作用や病気が要因となって引き起こされることがあります。具体的には、抗てんかん薬、免疫抑制剤、カルシウム拮抗薬、経口避妊薬(ピル)などが挙げられます。これらの薬は、歯ぐきの組織を増殖させる副作用が生じることがあり、その結果、歯肉溝にたまった汚れが取れにくくなることで歯肉炎を引き起こしたり、悪化させたりすることが知られています。また、歯肉炎は白血病や糖尿病など免疫力の低下を引き起こす病気、妊娠などによるホルモンの変化、ビタミン不足、歯が完全に生え切らない状態である“半埋伏歯”や“不完全埋伏歯”によって引き起こされることもあります。一方で、歯肉炎はヘルペスウイルスやカンジダ感染が原因で発症することがあります。この場合、汚れによる歯肉炎とは治療法が異なるため注意が必要です。
歯肉炎の初期段階では痛みなどの自覚症状はほとんどなく、本来ならピンク色の歯ぐきが腫れて赤くなります。炎症が進行すると歯磨きや食事などの些細な刺激で歯ぐきから出血が生じるようになるのが特徴です。また、歯肉炎は進行すると歯を支える歯槽骨にまで炎症が及び、歯槽骨を溶かすことで最終的には歯が抜け落ちる歯周炎を引き起こします。この状態にまで進行すると歯ぐきからの出血が目立つようになり、重症な場合には膿が出ることも少なくありません。口臭も悪化するとされています。
漢方と鍼灸
患部の波長をとり臓腑経絡に落とし込んで漢方とツボを選択します。またウイルスや細菌、真菌が原因かどうか調べるツボを使い、生薬を選出します。免疫の漢方をつかって骨が溶けるのを防いだこともあります。歯肉炎によって歯がぐらつき抜くようにすすめられ、相談に来られた方も漢方をのんで抜かずに済んだ事例は多数あります。
喉が渇く
口が渇く・喉が渇く、といった現象は、日常生活においてよくあることですが、それを自覚する時、体内では何かしらの要因によって水分が欠乏している状態がほとんどです。こまめな水分の摂取により状態が改善すれば問題ないですが、いくら飲んでも喉が渇く、尿量が異常なほど多い、などの場合は病気の疑いもあります。日頃から自身の体の声に耳を傾け、サインを見逃さずに何事も早期に発見することが大切です。
病気によるものは、更年期障害:更年期による多汗、頻尿も口渇の原因とされていますが、エストロゲンの減少により自律神経のバランスが崩れ、唾液の調整が乱れることで口や喉が渇きます。また更年期による精神的な症状も喉の渇きと関連があると考えられています。月経前症候群(PMS):月経開始の3~10日前ぐらいに、喉の渇きを含めた身体的・精神的症状が出やすくなります。生理:生理中はホルモンの働きが活発化され、子宮の強化や乳腺を発達させるため、水分を貯めようとして体内の水分が使われます。妊娠:妊娠中はホルモンの影響で喉の渇きを感じることが多くなります。また体内の血液量が普段より40%も増え、赤ちゃんが育つために多くの水分が必要になります。糖尿病の発症により高血糖になると、インスリンの不足により体内で吸収できなかった糖が尿に交じって排出されるようになります。すると多尿となり結果的に体内の水分が減少し喉が渇く、といった症状が出てきます。シェーグレン症候群の代表的な症状は、口の渇きと目の渇きです。自己免疫疾患のひとつで、異常な免疫システムが自身の唾液腺や涙腺を攻撃してしまい、その機能が低下してしまう病気です。中年以降の女性に多く、目や口の渇きや倦怠感などといった症状は日常でもありがちな状態なので、病気に気づかない人が非常に多いと言われています。尿崩症は一日の排尿量が3リットル以上となり、多尿に伴って口や喉の渇き、飲水の増加がみられる病気です。抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌低下や腎臓の異常により引き起こされます。排尿量より飲水が追い付かないと脱水となることもあります。甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され新陳代謝が必要以上に活発になる病気で、様々な症状を引き起こしますが、口の渇きもそのうちの一つです。副甲状腺機能亢進症は副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、骨からのカルシウム放出などにより血中のカルシウム値が高くなりすぎることがあります(高カルシウム血症)。その結果、尿中にカルシウムが排出され、多尿となることから脱水や喉の渇きを引き起こす原因となります。
体の状態で「喉が渇く」ということは、脱水・唾液量の減少・汗をかくなどにより体内の水分が減少していると知らせるサインの一つです。体内の水分が減少する原因は、日々の生活の様々な場面で遭遇します。脱水・発熱は汗をかくことで体内の水分が大量に失われるため。
緊張状態になる場合、注目を浴びる・恥ずかしい思いをするなどの一時的な緊張やストレスにより唾液の分泌が減るため。空気が乾燥すると口腔内の水分も消失するため。大声を出す・長時間歌うなどで声を出し続けることにより、口内の唾液量が減少するため。加齢に伴う体内の水分量減少に比例して、口内の唾液分泌量も減少するため。主に抗アレルギー薬、高血圧の薬、抗うつ薬などに含まれる「抗コリン薬」と呼ばれる成分によって唾液の分泌が抑えられてしまうため。塩分を過剰に摂ると血液中のナトリウム濃度が上昇し、その血液を薄めるために細胞内の水分が使われるため。アルコールの過剰摂取は、アルコールには利尿作用があるため、尿量が増えて体内の水分が少なくなるため。口呼吸は風邪や花粉症などで鼻が詰まったり、マスク生活に慣れつい口を開けてしまったりすることが習慣化して口呼吸になり、口腔内が乾燥状態になるため。では養生法をみていきましょう。
①水分補給
まずは水分補給をしましょう。人間が一日に必要な水分量は2.5ℓ程ですが、このうち飲水での摂取は1.2ℓ程度と言われています。一度にたくさん摂るのではなく、少量をこまめに摂るようにします。脱水の場合は、経口補水液の摂取も有効です。
②適度な糖分を摂らないように注意する
糖分は腸管内での水分の吸収率を高める働きが期待できますが、糖分の多いジュースを飲みすぎると体は高血糖状態となり、多尿→脱水→喉の渇きから更にジュースを飲むといった悪循環になるので糖分の入っている飲料の過度な飲みすぎは禁物です。スポーツ飲料も同様で、偏った飲み方には注意しましょう。
③できるだけ温かいものを飲むようにする
熱すぎる飲み物は、水分が蒸発して喉が乾きやすくなることもありますし、逆に冷たすぎるものは体を冷やしてしまいます。腸での水分吸収を高めるには、熱すぎず適度に温かいものを飲む、または常温での摂取が良いとされています。
④乾燥しないように加湿等を行うようにする
特に冬は空気の乾燥が強まる為、口の渇きや喉の渇きを感じることがあります。加湿器の使用や室内に濡れたタオルを干すなど対策して部屋の中を加湿しましょう。
⑤日頃から塩分の摂りすぎに注意する
食生活において、塩分の濃い食事や外食・スナック菓子を日頃から控えるように心がけましょう。また、塩分の排出を促すカリウムの多い食品(例:バナナ・里芋・海藻類など)を一緒に摂るなどの工夫も有効です。
⑥アルコールの過剰摂取に注意する
アルコールだけを飲んでも水分補給にはなりません。アルコールの利尿作用により体内の水分が抜けやすくなりますので、特に夏場は水分もきちんと摂るように気を付けましょう。
⑦一日に摂取する水分の平均量は体重1キロにつき約35ml、およそ1,500~2,500mlとされています。喉の渇きで病院に行くべき症状とは、この摂取量を大幅に超える水分を摂取しても喉が渇くと感じる場合や、唾液の分泌量が減ってきて口が渇くと自覚している場合は、病気が原因の可能性があります。また、病気が原因となっている場合は腎臓系統の疾患の可能性が高いため、内科(腎臓内科や糖尿病内科など)を受診しましょう。
漢方と鍼灸
東洋医学でのどの渇きを口渇、激しい口渇を煩喝と言います。のどの渇きは体に内熱、血熱があるとき口渇になります。舌診でも舌苔や舌質が渇いている、赤味が強い、黄色い苔など内熱の状態があれば口渇があります。胃炎は胃の中が炎症をおこしているので口渇になります。また水分の偏在と言って体の一部には水がたっぷりあるのに他の部分にはいきわたっていない状態もあり、治療としては余っている水を足りない方へ移動させる漢方を使います。原因となる更年期、女性ホルモン、糖尿病、甲状腺、自己免疫疾患、腎臓のツボから経絡に落とし込んで臓腑経絡、補寫などを調べます。病名に惑わされずに証に従って漢方やツボ、食養生をお伝えいたします。
味覚障害
味覚障害とは「味をまったく感じない」「味を感じにくい」「異常な味がする」といった味覚の異常がある状態のことです。味覚障害には全ての味覚を感じにくくなるものや、特定の味覚のみが障害されるもの、変な味を感じるものなどがあります。2019年に報告された日本口腔・咽頭科学会の調査によれば、現在日本では1年間に推計27万人*が味覚異常を自覚して医療機関を受診するといわれており、患者数は年々増加傾向にあることが指摘されています。幅広い年代の人に起こり得ることが分かっていますが、特に高齢の患者が多く、その理由として長期にわたって病気にかかっていることや心身の活力の低下を示す“フレイル”など、加齢に伴うさまざまなトラブルが関与している可能性が高いと考えられます。また、味覚障害で医療機関を受診する方の多くが女性であることも特徴です。これは日常生活において女性のほうが調理をする機会が多く、味付けの際に異変に気付いたり調理した食事を食べる家族から異変を指摘されたりするなど、気付くきっかけが多いためと考えられています。味覚と近い意味で使用される言葉に“風味”が挙げられます。味覚とは、苦味・酸味・甘味・塩味・うま味といった5大基本味のことですが、近年では第6基本味として“脂肪味”の存在が立証されつつあります。脂肪味とは、その食べ物に含まれる油脂の存在を認識できる味のことを指します。脂肪味の存在が明らかになることによって、摂食や消化吸収などについてさらに研究が進み、大きな影響を与えることが期待されています。そのほか風味とは、イチゴ味やバナナ味、コーヒー味といった、嗅覚が関与するものを指します。味覚と嗅覚を完全に区別することは困難ですが、さまざまな検査を行うことで味覚と嗅覚のどちらに異常が生じているのかを確認することが大切です。味覚障害は、舌に存在して味の伝達に関わる“味蕾”に異常が生じるほか、味覚を脳に伝える神経や味覚を判断する脳そのものに何らかの異常(ストレスやうつ病などの機能異常)が生じることで起こります。ほとんどの味覚障害は味蕾の異常によるもので、味蕾に存在する味細胞の代謝遅延や酵素活性の低下、唾液の分泌が低下することで味覚の異常を引き起こしていると考えられています。また、近年はストレスの蓄積などによって生じる心因性の味覚障害も多く確認されています。味覚障害は、さまざまな原因で引き起こされることがあり、たとえば以下の要因が挙げられます。亜鉛、ビタミン、鉄などの栄養素の不足、加齢、かぜ、新型コロナウイルス感染症 、病気(消化器疾患、肝疾患、腎疾患、口腔疾患、精神疾患、貧血疾患、内分泌疾患、自己免疫疾患、脳疾患、認知症など)、手術や放射線照射などの医療による合併症や薬剤の副作用、
ストレス、外傷などです。唾液量減少味覚障害は、これらの特定の原因によって引き起こされることもあるほか、複数の要因が影響し合うことで発症することもあると考えられています。味覚が減退し、味を感じにくくなったりまったく感じなくなったりします。全ての味覚が減退することが多いですが、“甘味だけ感じない”など、特定の味覚のみが障害されることもあります。異常な味を感じる症状で、口の中に何もないのに味を感じる“自発性異常味覚”と呼ばれるものなどがあります。
漢方と鍼灸
まず味蕾の波長を気功で取ります。ストレスがあれば自律神経のツボもみておきます。また風邪の後やコロナ後遺症があるならば上咽頭と風毒塊の反応もみておきます。生活習慣病など既往歴があればそちらの波長もみておきます。それぞれの波長を経絡に落とし込んで漢方や究極のツボをみつけていきます。食生活の話も聞いて栄養の偏りがある場合、食養生食品をおすすめいたします。
臭覚障害
におい成分は鼻から吸い込まれ嗅細胞に到達します。嗅細胞は嗅粘膜にあり、嗅神経につながります。そして、電気信号になり大脳前頭葉へと伝達され、「におい」として認識されます。嗅覚障害はこの「においの伝達経路」のどこかに障害が生じると発症します。三大発症原因は「慢性副鼻腔炎」「感冒」「頭部外傷」です。また、障害部位により「呼吸性」「嗅粘膜性」「嗅神経性」「中枢性」に分類されます。におい成分が鼻腔内で物理的に遮られてしまい、嗅粘膜に到達しない状態です。ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲症などが原因となります。鼻炎や副鼻腔炎などにより嗅細胞の存在する粘膜が障害されることでも生じます。感冒の原因となったウイルス感染(最近はコロナ)や、テガフールやチアマゾールなどの薬剤によって嗅神経が障害されることもあります。頭部外傷、脳腫瘍、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病などの影響で中枢神経が障害されることでも生じます。本来とは違う匂いに感じることもあります。食事が美味しくないと感じ、よくよく考えてみると嗅覚が減少していたといった場合もあります。調理師、ソムリエ等、嗅覚が職業に直結している方などは仕事のパフォーマンスにも影響が生じます。
漢方と鍼灸
臭粘膜部分の異常な波長を気功でとって経絡に落とし込みます(糸錬功)。ストレスがあるなら自律神経のツボからも波長をとります。それが大腸の瀉なら、その漢方やツボを選択しきれいに波長を消せるものを探します。きれいに波長を消せるものは、漢方やツボだけではありません。食養生食品だったり、アロマだったり、食材にもあるかもしれません。
上咽頭炎
のど(咽頭)は上・中・下咽頭の3つ分けられます。そして、上咽頭は鼻咽腔とも言われ、鼻の一番奥で、鼻と咽頭との境界部分を指します。上咽頭はリンパ組織であり、その粘膜表面にはリンパ球が多数存在し、「免疫応答の場所」として活躍します。小児期には咽頭扁桃として「感染防御の場所」として働きますが、成人になると色んな物に反応する「易反応の場所」になります。呼吸で取り入れた空気は必ず上咽頭を通過します。色々な原因で炎症を起こし、多彩な全身症状が出ます。診断、治療が困難で、慢性化する厄介です。原因として細菌やウィルスの感染、アレルギー性鼻炎、極度の疲労、ストレス、気温や湿度の急激な変化(体にとってはストレス)などです。上咽頭は脳神経である舌咽神経、迷走神経、そして自律神経とも繋がっているため、次のように多彩な症状がでます。
頭、顔、鼻、目、耳、歯、のどなどの痛み、鼻閉、鼻汁、後鼻漏、耳閉感、難聴、耳鳴り、咳、痰、声がれ、違和感、全身倦怠感、めまい、疲労、睡眠障害、胃腸障害と多岐にわたります。原因が感染やアレルギーによる急性炎症の場合、抗生物質やステロイド剤で効果があります。しかし、原因が疲労、ストレスや空調変化による場合や慢性炎症の場合は、鼻洗浄(鼻うがい)1%の食塩水で上咽頭を洗い流す、Bスポット治療(1%塩化亜鉛擦過治療):13歳以上で行います。それでも改善がない場合、アデノイド切除術、上咽頭粘膜焼灼術があります。上咽頭の炎症が慢性化すると、全身の離れた場所に炎症を引き起こします二次疾患(自己免疫疾患)を起こすことがあります。これを扁桃病巣感染症と言い、次のような病気があります。IgA腎症、溶連菌感染後腎炎、突発性腎出血、胸肋鎖骨過形成症、慢性関節リュウマチ、掌蹠膿疱症、尋常性乾癬、アレルギー性紫斑病、ベーチェット病、持続する微熱、コロナ後遺症などです。
漢方と鍼灸
気功を使うと上咽頭に炎症があるかがわかります(診断ではありません)。その炎症がどの漢方で取れるかをみてお出ししています。当薬局で機械を使った鼻洗浄やBスポット療法はできませんが、オイル洗浄によって多数の著効例があります。自分がコロナに罹って朝全身が鉛のように重く起きられなかった時、試してみたら劇的に改善しました。それでご相談の方には養生としてオイル洗浄をおすすめしています。誰でも痛みもなく自宅や外出先でも簡単にできるので安心です。
口臭
不快な口臭のほとんどは、剥がれおちた粘膜のカスや唾液、食物のカスなどに含まれるタンパク質が、口の中にいる細菌により分解・発酵される過程で出るガスです。口臭の素となるガスには主に次のような種類があります。メチルメルカプタン :たまねぎが腐ったようなニオイ 硫化水素 :卵が腐ったようなニオイ ジメチルサルファイド :キャベツが腐ったようなニオイ 特にメチルメルカプタンは口臭の強弱と強い相関があるとされ、口臭を評価する指標となっています。誰でも、ある程度の生理的な口臭はあるものです。口の中から出るニオイは特に唾液の分泌に影響されます。唾液には口の中を洗浄・自浄する作用があり、「噛む」「話す」など口を動かして、唾液腺を刺激することによって分泌が増えます。唾液が減って口の中が乾燥すると自浄作用が低下し、タンパク質を分解する細菌が増えるので、口臭も濃縮されてニオイがきつくなります。睡眠中は、唾液腺が刺激されず唾液の分泌や流れる量が減ってしまうのに加え、口呼吸や水分不足などで口の中が乾燥しやすいため、朝起きたときの口臭は一日の中でもっとも強くなりがちです。長時間食事をしていないときも、唾液の流れる量が減り、口臭が強くなります。唾液の分泌は自律神経(交感神経と副交感神経)が調節しています。分泌が促進されるのは、リラックスして副交感神経が優位になっているときです。緊張したりストレスがあるときには交感神経が優位になり副交感神経の働きが低下するので、唾液の分泌が減り、口臭が強くなります。妊娠時、月経時、思春期、更年期など、特に女性ホルモンが変調するときも口臭が強くなることがわかっています。そのメカニズムはまだ詳しくはわかっていませんが、精神的に不安定になりやすく、その影響で唾液が減る、ホルモンの変化で唾液が濃くなるなどが原因と考えられています。強い口臭を起こす原因としてもっとも多いといわれているのが舌苔です。舌苔とは舌に付着した白っぽい汚れで、口臭を引き起こす細菌やタンパク質を多量に含んでいます。多少の舌苔は健康な人にもありますが、口の中が乾いているとき、体調がよくないとき、胃腸の病気や脱水を伴う病気があるときなどに厚くなると口臭の原因となります。胃腸の調子がよくないときに舌苔が増えるのは、舌の感覚を鈍らせて食欲を減らし、食べる量を減らして胃腸を守るためだといわれています。舌苔の次に多い原因が歯周病です。歯周病によって口の中にたまっている歯垢(プラーク)も、舌苔と同じく多量の細菌とタンパク質の集まりです。炎症が起こっており、多量のタンパク質が細菌に分解されて強い口臭が発生します。血液中に流れる成分のニオイが肺を通して吐く息に出てくることもあります。ニンニクやニラなどを食べた後やお酒を飲んだ後の口臭は、消化吸収された後、血液中に移行したニオイの素となる成分が、肺を通して口や鼻から出てくるものです。空腹や疲労があると、肝臓がからだにエネルギーを供給しようとしてケトン体という物質を作り血液中に放出します。ケトン体が増えすぎると甘酸っぱいニオイのするガス(アセトン)となって肺から出てくるので口臭が強くなります。扁桃腺炎、慢性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)など、感染による炎症が鼻やのどにあると、口の中に膿みが流れ込んでしばしば口臭を発生させます。逆流性食道炎などでは、すっぱい胃液が食道に逆流することによって口が臭うことがあります。その他にも全身の病気による代謝産物が血液中に増えて息が臭うことがあります。肝機能低下(アミン臭)、腎機能低下(アンモニア臭)、糖尿病(アセトン臭)、悪性腫瘍(腐敗臭)などが知られています。また口の中のトラブルもなく、実際に臭ってはいないのに、本人が口臭を気にして社会生活の障害となっているような場合を心理的口臭症といいます。背景に強いストレスや不安などに起因するこころの病が隠れていることがあります。
漢方と鍼灸
たかが口臭と思っていても様々な原因が隠れているので体調など体の声に耳を傾けるのも大事ですね。漢方も有効です。
【症例】女性 臭が気になる。何年も気になっている。
ご相談頂き、漢方を飲んでいただく(月27000円位)
口臭の検査で、ジメチルサルファイドの数値が改善。