せん妄
せん妄とは、場所や時間を認識する“見当識”や覚醒レベルに異常が生じ、幻覚・妄想などにとらわれて興奮、錯乱、活動性の低下といった情緒や気分の異常が突然引き起こされる精神機能の障害です。夕方や夜間にかけて発生することが多く、大半は数日以内で改善していきますが、昏睡こんすい状態に陥ったり、死に至ったりするケースもあります。また、錯乱状態に陥ることによる転倒や、治療に必要な点滴の自己抜去などさまざまなトラブルを引き起こすことも特徴です。せん妄の原因はさまざまであり、多くは高齢者が発症します。一方で、手術や入院など通常とは異なる状況に置かれると若い方が発症するケースもあります。せん妄の西洋医学的治療は、気分を落ち着かせたり、睡眠を促したりする薬による薬物療法が主体となります。しかし、せん妄を改善するには周囲の環境を整えることも大切であり、適切な対処がなされない状態が続くと症状が急激に悪化することもあるので注意が必要です。
せん妄は内科的な病気や脳の病気などが根本的な原因となって精神的な変調をきたした状態のことであり、その原因は非常に多岐にわたります。年齢が高くなるほど発症率は高くなり、特に脳卒中、認知症、パーキンソン病などの神経や脳に異常をきたす病気の既往がある高齢者は風邪や便秘、脱水、睡眠不足など普段と異なる状況が刺激となって突然発症することがあります。また、若年者でも高熱、肺炎、腎不全など体の状態が著しく低下する病気を発症するとせん妄を起こすこともあります。さらに、せん妄は体の状態だけでなく、環境的な変化によるストレスもひとつの要因となります。具体的には、集中治療室(ICU)をはじめとした閉ざされた環境での入院中、手術後などにせん妄を発症しています。また、そのほかにも鎮静剤や医療用麻薬、抗うつ薬、ステロイドなどの薬剤の副作用としてせん妄が生じることがあります。
せん妄は突然発症するのが特徴であり、見当識(時間、場所などの認識力)、思考力、注意力の低下が生じて妄想や幻覚に支配されるようになります。その結果、過度に興奮して錯乱状態となったり逆に活動性が著しく低下して眠った状態になったりするなど、行動や睡眠リズムに異常をきたします。せん妄は一時的に強い症状が現れますが、適切な治療や対処を行うことで数日以内に軽快するのが通常です。一方で、がんの末期など重篤な状況で発生する場合もあり、改善しないこともあります。また、症状の現れ方は1日の中でも変動があり、一般的には夕方から夜間にかけて悪化して昼夜逆転が生じる結果、日中は活動性の低下が目立ちます。
漢方と鍼灸
脳卒中、認知症、パーキンソン病などの神経や脳に異常をきたす病気、高熱、肺炎、腎不全、癌など体の状態が著しく低下する病気、ストレスなどで発症することからせん妄の症状を緩和する標治と原因となる疾患を改善させる本治が必要となります。脳の異常波長を経絡に落とし込んで、精神的な変調を改善させる漢方や鍼灸治療をしていきます。