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ブドウ膜炎

 ぶどう膜は眼球内の組織のうち、虹彩、毛様体、脈絡膜の3つをまとめた名称で、ぶどう膜とその周囲の組織に炎症が起こる病気をぶどう膜炎といいます。全体としては女性の患者のほうがやや多く、40歳代~60歳代に多く発症しますが、これらは原因となる病気によっても異なります。ぶどう膜炎の3大原因としてサルコイドーシス、原田病(フォークト・小柳・原田病)、ベーチェット病が挙げられます。サルコイドーシスでは20〜30歳代と50〜60歳代の女性に多く、原田病では女性にやや多く、ベーチェット病では20~40歳代の男性において目の症状が現れることが多いといわれています。発症すると目の充血や痛み、目がかすむ、光がまぶしい、ものが見えにくいなどの症状が現れます。また、ぶどう膜炎にはさまざまな病気が合併しやすく、これに伴って重篤な視力障害につながる場合もあるため、早期診断・早期治療が大切です。治療は薬物療法が中心となります。主に副腎皮質ステロイド点眼薬や散瞳薬が使用されますが、感染性の場合は抗ウイルス薬や抗菌薬など原因微生物に効果のある薬も使用されます。合併症がある場合などは目の手術が必要になることもあります。ぶどう膜炎の原因として特に多いのが、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病の3つで、いずれも自己免疫疾患に分類されます。自己免疫疾患は本来自分の体を守るはずの免疫系が正常に機能しなくなり、自分の体を攻撃してしまう病気を指しますが、詳細な原因はまだはっきりと分かっていません。そのほかの原因として、以下のようなものが挙げられます。細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの感染、膠原病(全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど)、糖尿病、炎症性腸疾患、悪性腫瘍などです。ただし、ぶどう膜炎と診断を受けた患者のうち、3人に1人程度は検査をしても原因を特定できないことがあるといわれています。ぶどう膜炎が生じると、眼球内の透明な部分に炎症細胞が出てくることで以下のような症状が現れます。

霧視:霧きりがかかったように目がかすんで見えること
飛蚊症:目の前に小さな虫や糸くずのようなものが飛んで見えること
羞明感:光のまぶしさを強く感じること

 また、炎症が強い場合には目が充血します。充血はアレルギーや細菌・ウイルス感染などによって引き起こされる結膜炎でよくみられる症状ですが、ぶどう膜炎での充血は結膜炎とは異なり、目やにを伴いません。そのほか、目の痛みや頭痛、視力低下などの症状を伴うこともあります。このような症状は両目に出る場合もあれば片目だけの場合もあります。また、症状が徐々に悪化する場合や、軽快と悪化を繰り返す場合もあるなど、症状の現れ方や経過はさまざまです。ぶどう膜炎は目の病気ですが、全身の免疫異常と関係することもあります。そのため、一般的な眼科検査や蛍光眼底造影検査(FAG)、光干渉断層撮影(OCT)などの目の検査に加え、詳細な問診と身体診察、全身検査も行われます。全身検査では、血液検査、胸部X線検査、ツベルクリン反応検査などを行い、原因となる全身性の病気がないかを調べます。また、目の検査では目の組織を採取したり、診断と治療を兼ねて手術が行われたりする場合もあります。ぶどう膜炎の治療は薬物療法が基本となります。主に炎症を抑えるための“副腎皮質ステロイド点眼薬”と、炎症による虹彩後癒着(虹彩と水晶体がくっつくこと)を防ぐための“散瞳薬”が用いられます。ステロイド薬の投与法には、点眼のほかに注射、内服、点滴があり、炎症の程度や場所に応じて使い分けられます。上記の治療でよくならない場合や炎症が強い場合など、免疫抑制薬や生物学的製剤といった治療薬を投与することもあります。ウイルスや細菌などの病原微生物が原因の場合には、その病原微生物に対して効果的な薬(抗ウイルス薬・抗菌薬・抗真菌薬・抗寄生虫薬など)が用いられます。ぶどう膜炎は、白内障や緑内障、網膜剥離、硝子体混濁など、さまざまな合併症が生じる病気です。このような合併症が生じると、薬物療法に加えて手術が必要になる場合もあります。

漢方と鍼灸

 ただの目の炎症ではないということです。ブドウ膜の反応穴、自己免疫の反応穴、風毒塊、上咽頭などから最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。

【難病、代謝・内分泌】の症状でお悩みの方に

 「もしも、親や身近な人、あるいは自分自身が【難病、代謝・内分泌】の病気になったらどうしよう…」そんな不安を抱いたことはありませんか。
 身近な症状として、糖尿病痛風・高尿酸血症貧血などの増加が問題となっています。また悪性の病気、悪性関節リウマチ全身性エリテマトーデスシェーグレン症候群ベーチェット病の方も増えています。成人・高齢化社会において、【難病、代謝・内分泌】の病気の病気の解消は非常に重要です。

 当院の【難病、代謝・内分泌】の病気へのこだわりは漢方薬の選薬鍼灸の施術食養生を大切にしていることです。どこに行っても良くならなかった方の最後の砦になりたい、そんな気持ちでアドバイスさせていただきます。

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【難病、代謝・内分泌】の病気と漢方東洋医学

悪性関節リウマチ全身性エリテマトーデスシェーグレン症候群ベーチェット病クローン病潰瘍性大腸炎再生不良性貧血突発性血小板減少性紫斑病網膜色素変性症糖尿病痛風・高尿酸血症脂質異常症甲状腺機能亢進症・低下症・甲状腺炎

 自分自身や家族・同僚、友人など周りの人について癌など【難病、代謝・内分泌】の病気と思われる症状に気づいたら一人で悩まず、不二薬局にご相談ください。

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ベーチェット病

 ベーチェット病とは、全身のさまざまな部位に炎症が繰り返し生じることが特徴的な病気です。免疫のはたらきが過剰になって自身の体の組織を攻撃してしまう膠原病の一種と考えられていますが、現時点で明確な発症メカニズムは解明されていません(2020年10月時点)。ベーチェット病の症状の現れ方には大きな個人差がありますが、主な4つの症状は口腔内のアフタ性潰瘍・外陰部の潰瘍・皮疹などの皮膚症状・ぶどう膜炎(目の炎症)とされています。このような症状がよくなったり悪くなったりしながら繰り返し現れるのがベーチェット病の特徴ですが、重症の場合には内臓や神経、血管などにも炎症をもたらし、ときには命に関わることも多々あります。また、治療は炎症を免疫のはたらきを抑えるステロイドの投与が行われますが、それぞれの症状を緩和する治療も同時に行わなければならないため、治療に難渋することも少なくありません。また、重症の場合は免疫抑制剤を使用しなければならないケースも多く、さまざまな副作用に注意する必要があります。現在のところ、ベーチェット病の明確な発症メカニズムは解明されていません(2020年10月時点)。一方、遺伝などで“この病気を発症しやすい体質”が根底にあり、そこに免疫をつかさどる血液細胞の一種である白血球が過剰にはたらく感染症などが生じることが発症の引き金になるとの説もあります。近年では、どのような遺伝子の異常が関与しているのか多くの研究が進められているのが現状です。ベーチェット病は体のさまざまな部位に繰り返し“炎症発作”が引き起こされる病気です。症状の現れ方は人によって異なりますが、発症するとほぼ100%で口の中になかなか治らない口内炎や外陰部の粘膜に潰瘍が多数できるようになります。また、皮膚には1~数cmほどの赤いしこりやにきびのような発疹が見られることも多く、目の網膜などを含む“ぶどう膜”と呼ばれる部分に炎症を引き起こすぶどう膜炎を発症することが多いとされています。これらの症状はよくなったり悪くなったりを繰り返し、次第に症状が悪化していくことも少なくありません。特にぶどう膜炎は悪化すると失明を引き起こすことがあるため注意が必要です。そのほか、重症な場合にはこれらの症状だけでなく、関節や副睾丸などに炎症を起こしたり消化管・血管・神経といった重要な器官にも炎症が及んだりすることがあり、消化管に穴が開く、形成された動脈瘤が破裂するといった命に関わる症状が引き起こされることもめずらしくありません。ベーチェット病は膠原病の一種ですが、ほかの膠原病のようにその病気の特徴的な“自己抗体(自分の組織を攻撃するたんぱく質)”は存在しません。そのため、口内炎・外陰部潰瘍・皮膚症状・ぶどう膜炎といった4つの代表的な症状が見られるかなどを参考にして診断されます。一方、この病気が疑われるときは体の炎症の程度を調べるために血液検査が行われ、それぞれの症状に適した検査が行われます。具体的には、皮疹に対する病理検査(皮疹の組織を採取して顕微鏡で詳しく観察する検査)、吐血や下血に対する内視鏡検査、視力低下に対する細隙灯検査、神経症状に対する髄液検査・頭部MRI検査などが挙げられます。ベーチェット病の治療は、症状の現れ方にかかわらず薬物療法が主体となります。基本的に“炎症発作”が生じたときは、炎症と免疫のはたらきを抑えるステロイド剤が使用されますが、消化管・血管・神経などに炎症が及ぶような重症のケースでは免疫抑制剤が使用されるケースも多々あります。ベーチェット病では炎症を抑える根本的な治療以外にも、それぞれ現れる症状を改善するための対症療法も行われます。具体的には関節炎の痛みに対する鎮痛薬の投与、血管炎に伴う血栓症に対する抗凝固剤投与などの薬物療法も必要となり、消化管に穴が開くといった場合には手術が必要となります。ベーチェット病は発症メカニズムが解明されていないため、明らかに効果のある予防法はないのが現状です。しかし、疲れやストレスなどが原因で症状が悪化・再燃しやすくなることが知られているため、ベーチェット病と診断された場合は十分な休養・睡眠を確保し、生活リズムを整えて食生活などにも注意することが大切です。また、近年の研究では喫煙習慣も症状を悪化させることが分かっているので、喫煙習慣がある方は禁煙を目指す必要もあります。

漢方と鍼灸

 標治は、各炎症を鎮める漢方を使います。免疫が過剰に亢進するのを元の状態に持っていくのを本治といいます。自己免疫の反応穴、口腔内のアフタ性潰瘍・外陰部の潰瘍・皮疹などの皮膚症状・ぶどう膜炎(目の炎症)の箇所、上咽頭、小腸の反応穴から最適な漢方食養生サプリツボを選択し標本治療をしていきます。

シェーグレン症候群

 シェーグレン症候群とは、免疫のバランスが崩れることによって涙や唾液を産生する涙腺・唾液腺などの臓器を攻撃し、眼乾燥(ドライアイ)や口腔乾燥(ドライマウス)を主にきたす病気のことです。自己免疫性疾患(免疫の異常によって自分自身を攻撃してしまう病気)の一種であり、涙腺や唾液腺だけでなく全身の関節、肺、皮膚、消化管、腎臓などさまざまな部位にダメージが及ぶこともあります。シェーグレン症候群を発症すると目や口の乾燥が目立つようになりますが、多くの人は症状とうまく付き合いながら治療の必要なく生活していると考えられています。一方、一部の人には目や口の乾燥以外にもさまざまな症状が現れ、腎臓、肺、皮膚などにも病変が現れたり、まれに悪性リンパ腫の合併が見られたりすることもあります。また、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどほかの自己免疫疾患に合併する二次性シェーグレン症候群もあります。なお、この病気は中年以降の女性が発症しやすいという特徴がありますが、明確な発症メカニズムは解明されていないのが現状です。シェーグレン症候群は、免疫のバランスが崩れることにより、涙腺や唾液腺をはじめとする自分自身の臓器にダメージが起こる病気です。どのような原因で免疫の力が過剰にはたらいて涙腺や唾液腺を攻撃するのかはっきりとは分かっていません。まれですが、シェーグレン症候群の約2%は同一家系内で発症するとのデータもあり、遺伝との関連も指摘されています。そのほか、何らかのウイルス感染、女性ホルモンの変動、たばこなどの環境要因もあり、ひとつの要因だけでなくいくつかの要因が重なり合って発症するものと考えられています。シェーグレン症候群を発症すると、もっとも多く見られる症状が目や口の乾燥です。これは涙腺や唾液腺がリンパ球という血液細胞に攻撃を受けることで機能が低下し、涙や唾液の分泌が減少するためです。その結果、目の痛みや充血、口臭、虫歯、歯周病などさまざまな症状を引き起こします。一方、シェーグレン症候群は一部に目や口の乾燥以外の症状が現れることが分かっています。これは、シェーグレン症候群を発症すると、リンパ球や自己抗体(自分の臓器を攻撃するたんぱく質)および過剰に増えた免疫グロブリン(抗体のたんぱく質)が、全身のさまざまな臓器にダメージを与えるからです。これらの症状は多岐に渡り、関節炎・甲状腺炎・間質性肺炎・慢性気管支炎・自己免疫性肝炎・胃炎・間質性腎炎/尿細管性アシドーシス(尿に酸を排泄できなくなり、血液が酸性になること)・皮疹などが挙げられます。また症状の重症度は人によって大きく異なり、大多数は軽度な目や口の乾燥のみしか見られませんが、全身にさまざまな症状が引き起こされるケースもあります。また、日本では比較的まれですが悪性リンパ腫を合併することがあり、重症度がさまざまなのもシェーグレン症候群の特徴のひとつです。シェーグレン症候群が疑われるときは次のような検査が行われます。口や目の乾燥の程度を調べる検査です。ガムテストは口の中でガムを10分間かんで、サクソンテストは綿を2分間かんでその間に分泌された唾液の量を計測する検査です。シルマーテストではまぶたに検査用の紙を挟んで涙の分泌量を調べます。これらの検査によって、口や目の乾燥の程度を評価することが可能です。シェーグレン症候群では、“抗核抗体” “リウマトイド因子”“抗SS-A抗体”や“抗SS-B抗体”と呼ばれる自己抗体が血液中に産生されるようになります。そのため、血液中にこれらの自己抗体が存在するか調べる目的で血液検査を行うのが一般的です。また、そのほかにも全身の炎症の程度なども評価します。X線写真に描出されやすいよう加工された“造影剤”を唾液腺内に注入し、唾液腺の状態を観察するための検査です。シェーグレン症候群による唾液腺の異常を発見することができますが、痛みなどを伴うため近年はほとんど行われません。MRCTを用いたMRシアログラフィーによって唾液腺造影と同じような異常を観察することができます。唾液腺超音波検査、唾液腺MRCT、唾液腺シンチグラフィーは超音波やMRCTによって耳下腺や顎下腺の内部構造の異常を調べることができます。唾液腺シンチグラフィーで唾液腺の機能を調べることができます。涙腺・唾液腺生検は、涙腺や唾液腺の組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。局所麻酔による痛みを伴いますが、シェーグレン症候群では組織にリンパ球が攻撃した特徴的な跡が見られるため確定診断を下すうえでも重要な検査となります。シェーグレン症候群を根本的に治す方法は、現時点では解明されていません。そのため治療は、目の乾きに対しては目薬(人工涙液などが使われ、さまざまな種類があります)や、乾燥所見が強い場合は涙点プラブや涙点焼灼術などの処置により涙が鼻に降りていかないような処置を行うことがあります。口の渇きに対しては、食後や就寝前の歯磨き、口腔衛生の指導、人工唾液の定期的な噴霧、唾液分泌を刺激する内服薬(セビメリン、ピロカルピン)などそれぞれの症状を改善するための対症療法が行われます。全身にさまざまな症状が現れた場合は、それぞれの症状に合った治療が進められていきます。
 一方で、対症療法は一時的に症状を緩和することはできても病気の進行を遅らせることはできません。近年では免疫抑制剤の一種がシェーグレン症候群の進行を遅らせるのに有用との報告もなされており、治療の実用化に向けて研究が進んでいるところです。

漢方と鍼灸

 口や喉の乾燥を改善する治療は対症療法で、免疫の暴走を止め中庸の状態にすることが根本療法です。自己免疫の反応穴、上咽頭、各炎症部位、涙腺、唾液腺から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。

全身性エリテマトーデス

 全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus:SLE) とは、自分の免疫システムが誤って自分の正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫性疾患の1つで、全身のさまざまな臓器に炎症や組織障害が生じる病気です。全身性エリテマトーデスでは、この病気で特徴的に認められる検査異常に加えて全身に多様な症状が現れます。指定難病の1つであり、日本全国の患者数は約6~10万人と推定されています。男女比は1:9で、妊娠可能な女性に起こりやすく、女性ホルモンが発症に関与すると考えられています。2020年現在は、治療法の進歩により生命・機能予後がよくなっています。2020年現在、全身性エリテマトーデスの原因はいまだ明らかではありませんが、遺伝素因に環境要因が加わり、複合的な要因で発症する自己免疫疾患と考えられています。自己免疫とは本来、細菌やウイルスから身を守る免疫系が自分自身に対して起こる反応であり、その結果病気に至ると考えられています。細菌やウイルスを攻撃する抗体はBリンパ球によりつくられますが、全身性エリテマトーデスでは、そのBリンパ球の異常な活性化を伴う自己抗体(自分の成分に対する抗体)産生をはじめとする種々の免疫異常が観察されます。患者さんの同胞(兄弟・姉妹)内発症率は一般の人よりも高い傾向にあることから、遺伝的要因も発症に関与していると考えられています。まったく同じ遺伝子を持つ一卵性双生児が2人とも病気を発症する確率は約25~60%と高い数字が報告されています。近年、網羅的に全ての遺伝子を調べる全ゲノム解析がさまざまな病気で行われていますが、全身性エリテマトーデスでは自己免疫異常に関与する約50個の疾患関連遺伝子が同定されています。また、全身性エリテマトーデスの血縁者における全身性エリテマトーデス以外の自己免疫疾患の発症、病気に至らないまでも血液検査での自己抗体陽性率の高さも、こうした遺伝素因と関連すると考えられます。しかし、一卵性双生児の発症一致率が100%でないことから分かるように全身性エリテマトーデスは決して遺伝病ではありません。現時点では遺伝素因に性ホルモン、紫外線、ウイルス感染などの環境要因が関わって発病すると考えるのが妥当といわれています。

 全身性エリテマトーデスでは、全身のさまざまな臓器に多様な症状が現れますが、その症状の出現パターンや重症度は患者さんによって異なります。また、治療によって改善しても経過中に病気が悪化すること(再燃)を繰り返します。悪化したときには発熱、全身の倦怠感など全身症状とともに多彩な症状が現れます。以下は、診断につながる特徴的な症状です。皮膚症状のタイプはさまざまですが、蝶形紅斑は全身性エリテマトーデスに特徴的です。蝶形紅斑とは、顔に蝶のような形の発疹が出現する皮膚症状で、鼻筋を蝶の体に見立てると、ちょうど蝶が左右に羽を広げたような形のように盛り上がった紅斑を認めることからこのように名付けられています。このほか、円板状に盛り上がった紅斑、光線過敏症(強い紫外線を浴びた直後に露光部に皮膚症状が出てしまう)や脱毛が半数以上の患者さんに認められ、痛みを伴わない口内炎が生じることもあります。関節痛、関節炎は特に病初期に頻度の高い症状で、左右対称に多関節に生じます。原則として関節リウマチのように変形をきたすことはありません。約半数の全身性エリテマトーデスの患者さんには、ループス腎炎と呼ばれる腎臓の病気が現れます初期にはたんぱく尿など尿検査の異常だけで特に自覚症状はありませんが、進行に伴って顔や足のむくみが出現するようになります。腎臓に炎症が続くと徐々に腎機能が低下し、適切な治療がなされない場合には腎機能が破綻し、透析療法や腎移植が必要になることもあります。患者さんによっては、胸膜や心膜に炎症が生じる胸膜炎や心膜炎が発症したり、けいれん、精神症状、脳血管障害などの中枢神経が障害されたりすることもあります。特に中枢神経病変は腎病変とともに重症病態とされています。全身性エリテマトーデスの診断には、先の症状に加えて血液検査が必須です。全身性エリテマトーデスの患者さんには、白血球や血小板の減少、貧血が認められます。また、ほぼ全ての患者さんで抗核抗体が陽性となります。疑われる場合には、さらに抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗カルジオリピン抗体などの病気に特徴的な自己抗体を確認します。さらに、診断、重症度の評価のためには尿検査、画像検査、場合によっては病理検査や腰椎穿刺検査で、心臓・腎臓の障害、関節炎、胸膜炎、心膜炎、消化器病変、中枢神経病変など各臓器の障害の程度を調べることも重要で、多くの場合は入院が必要となります。全身性エリテマトーデスの治療は、薬物治療が中心となります。もっとも一般的な治療薬は副腎皮質ステロイドです。副腎皮質ステロイドは長期使用による副作用が懸念されるため、重症度に応じた用量の調節が重要です。特に重症な場合には、副腎皮質ステロイドを点滴で大量投入するパルス療法が行われます。また、副腎皮質ステロイドの効果を高めること、または副腎皮質ステロイドの減量を目的に免疫調整薬、免疫抑制薬、分子標的薬を併せて用いることがあります。特にループス腎炎や中枢神経障害などの重症例に対しては初めから免疫抑制薬を併用し、これを軸として早期に寛解(病状が良好な状態)を目指します。寛解が達成されたら、再燃を防いで寛解を長期にわたって維持すること、副腎皮質ステロイドを最小量または中止することが重要です。

漢方と鍼灸

 自己免疫の反応穴、副腎、腎臓、各炎症を起こしている関節、上咽頭の反応穴から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。
ループス腎炎(https://fuji-kampo.com/archives/2415)も合わせてご覧ください。

過呼吸症候群(過換気症候群)

 過換気症候群とは、何らかのきっかけで急に呼吸過多となり、息苦しさや動悸、めまい、頭痛、手足のしびれ、吐き気、失神など、さまざまな症状が現れる病態を指します。“過呼吸症候群”とも呼ばれます。主な原因として精神的不安や極度の緊張などが挙げられ、性格的に几帳面な方や心配性な方に多いといわれています。また若者、特に10~20歳代の女性に多くみられます。まれに意識を失ったり、けいれんを起こしたりすることがありますが、過換気症候群によって命を落とすことはありません。一般的に予後は良好で、30分~1時間程度で症状が治まります。過換気症候群の原因には、心理的要因(不安・緊張・恐怖など)、身体的要因(発熱など)、激しい運動、疲労、睡眠不足などが挙げられます。私たちは、空気を吸い込むことで酸素を体内に取り込み、息を吐くことによって体内でできた二酸化炭素を体外に出しています。この一連のガス交換を“呼吸”といいます。過換気症候群では、上記のような要因が引き金となって過呼吸状態(息を何度も強く吸ったり吐いたりする状態)になります。すると二酸化炭素が過剰に排出されて血液中の二酸化炭素濃度が低下し、呼吸をつかさどる脳の呼吸中枢によって呼吸が抑制されます。その結果、息が吸えない、窒息しそうな息苦しさが生じるようになるのです。また、過呼吸状態が続くと血液中の二酸化炭素濃度が大きく低下し、体がアルカリ性に傾くことでさまざまな症状が現れるようになります。なお、過呼吸症候群は特に病気がなくても起こりますが、心臓や呼吸器の病気、パニック障害などの症状として起こることもあります。上記のような要因をきっかけとして、突然息が吸いにくくなって息苦しくなります。こうなると不安や恐怖から浅くて速い呼吸となり、体内がアルカリ性に傾くことで、動悸、胸痛、めまい、頭痛、ふらつき、手足のしびれ、吐き気などの症状が現れます。こういった症状によってパニック状態に陥ることもあり、死の恐怖を感じることもあります。また、まれに意識を失ったり、けいれんを起こしたりすることもありますが命の危険はありません。症状が出てくると不安や恐怖を感じて、浅く速い呼吸を続け、その結果症状がさらに悪化するという悪循環に陥ります。しかし、ゆっくりとしたリズムで呼吸することで症状が治まってくるため、発作時には患者本人も周囲も落ち着いて対応することが大切です。発作時に典型的な症状がある場合に過換気症候群を疑います。また、発作時に動脈血液の酸素と二酸化炭素の濃度を測ることで診断がつきます。しかし、過換気症候群は心臓や呼吸器の病気、パニック障害などの症状として起こることもあります。そのため、このような病気を除外する目的で、胸部X線検査や心電図などの検査が行われる場合もあります。過換気症候群は心臓や呼吸器の病気、パニック障害などによって起こることもあります。このような病気が背景にある場合には、その病気に対する治療が必要となります。特に病気がない場合には、発作を起こすきっかけを作らないよう、日頃から体調を整えておくことが大切です。不安が強い患者に対して抗不安薬などの投薬が行われる場合や、カウンセリング、リラクゼーションが効果的な場合もあります。発作時には不安や恐怖から悪循環に陥りがちですが、一般的には30分~1時間で症状が治まり、命に関わることはありません。そのため、発作が起こったときには周りの人は患者本人を落ち着かせ、ゆっくりと呼吸するように声をかけましょう。なお、発作時の対応として、以前は口に袋を当てて吐いた息を再度吸わせるペーパーバック法が有効だといわれていました。しかし、この方法では酸素が不足したり、二酸化炭素が増えすぎたりして窒息死の危険があるため、最近では推奨されていません。

漢方と鍼灸

 精神不安や極度の緊張が続き、それを受ける側の疲労や不規則な生活、睡眠不足、栄養不足など抵抗力が弱っている時と重なって引き起こされるようですね。10~20代女性という敏感な時期ですからなおさらですね。自律神経の反応穴、生理の反応穴から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。パニック障害で使われる漢方も選択肢の1つです。

【症例】突然動悸がして息がしにくくなり死にそうになる症状でご相談。漢方を6か月服用 発作は起きなくなったが怖いのでしばらくは服用していた。

脂質異常症

 脂質異常症とは、血液中の脂肪分(コレステロールや中性脂肪)が多すぎる、あるいは少なすぎる状態をいいます。従来は高脂血症と呼ばれていた病態も脂質異常症の一部に含まれます(高脂血症という用語は病態を正しく表していないとして、2007年に日本動脈硬化学会が診断名を「脂質異常症」に改訂しました)。血液中の中性脂肪TGやLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が基準値よりも高すぎても、逆にHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)の値が低すぎても、動脈硬化を引き起こすリスク因子になります。このため、脂質異常症は、心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化によって発症する可能性のある血管系の病気の引きがねになると考えられています。脂質異常症の多くは生活習慣によって起こります。多くは運動不足や偏った食事、肥満などが原因で成人以降に発症します。生まれながらの体質的な要因が関係することもあり、他の病気と関係なく発症するものを原発性脂質異常症といいます。遺伝子の異常が原因で血液中にコレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまう病気に家族性高コレステロール血症などがあります。他の病気や服用している薬の影響で、血液中の脂質のバランスが悪くなることによって脂質異常症を発症することがあります。他の病気や服用している薬など、なんらかの原因があるものを二次性(続発性)脂質異常症といいます。脂質異常症と関係がある病気には、糖尿病やその他の内分泌疾患(クッシング症候群・先端巨大症など)のほか、甲状腺機能低下症・肝胆道系疾患・腎臓病(ネフローゼ症候群)などが知られています。また、原因となる薬剤として、ステロイドホルモン、β遮断薬、経口避妊薬などが知られています。脂質異常症は基本的に症状が現れないことが多いです。原発性高脂血症や高コレステロール血症では皮膚に特徴的な黄色腫を生じることがあります。また、眼球に角膜輪と呼ばれる白い輪がみられたり、高カイロミクロン血症による肝腫大がみられたりすることもあります。脂質異常症をそのまま放置していると、動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気を起こしやすくなります。また、中性脂肪TGの値が高いと、冠動脈疾患・脳梗塞・脂肪肝・急性膵炎などのリスクが高まります。

脂質異常症の診断では、空腹時の血液中に含まれる脂質の値が重要になります。そのため、血液検査を行い、LDLとHDLの2つのコレステロールの値と、中性脂肪の値を測定します。

LDLコレステロール     140mg/dL以上         高LDLコレステロール血症
          120~139mg/dL     境界域高LDLコレステロール血症**
HDLコレステロール    40mg/dL未満           低HDLコレステロール血症
TGトリグリセライド    150mg/dL以上(空腹時採血*)     高トリグリセライド血症
175mg/dL以上(随時採血*)

 中性脂肪(トリグリセライド:TG)は、グリセロールに脂肪酸がエステル結合したものです。TGの値は食事の時間や内容、アルコール摂取の影響を受けるため、原則として10~12時間以上絶食し、空腹時に採血を行います。女性ホルモンとして知られているエストロゲンには、LDLコレステロールの分解と排泄を助けるHDLコレステロールの合成を促すという作用があります。このため、閉経によってエストロゲンが低下するとコレステロール値が高くなることがあります。しかし、「閉経後の女性の高LDLコレステロールが動脈硬化のリスクとなるのは糖尿病や喫煙習慣などの要因が重なったときであり、もしこれらの要因がなく、LDLコレステロールが高いだけなら、ただちに動脈硬化そのものや動脈硬化による心血管のリスクであるとはいえない」という見解もあります。女性は男性に比べて動脈硬化性疾患の発症リスクが低く、必ずしも薬物治療が必要な場合が多いわけではありません。食事や運動療法の効果が期待でき、しかも治療に取り組む意欲が比較的高いので、生活習慣の改善を最大限に図っていくことが大切です。ただし、高リスク病態が存在する場合はこの限りではありません。脂質異常症の他にも糖尿病や高血圧などの危険因子(リスクファクター)をもっていると、それだけ動脈硬化になる危険性が高まることが知られています。また、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患になった経験がある人は、再発も心配されます。そのため、脂質異常症の他には何も異常がない方に比べると、さらにコレステロール値を下げなくてはなりません。健康診断のときに計測されるのは、食事から取り込まれた中性脂肪(外因性トリグリセリド)ではなく、余分なエネルギーとしていったん肝臓に取り込まれた脂肪が再び血液中に分泌された中性脂肪(内因性トリグリセリド)の値になります。したがって、健康診断の前日は20時以降の食事や飲酒を制限し、当日の朝食を抜いて受診する(検査前10~14時間は絶食にする)必要があります。要再検査になるケースは、うっかり検査当日に朝食を食べてしまい、外因性の中性脂肪により検査値が高くなった場合が多いようです。
 脂質異常症の治療は、生活習慣が原因である場合には生活習慣の改善が基本となります。それだけでは十分な改善がみられない場合は薬物治療が考慮されます。生活習慣の改善には、禁煙、食生活の内容を見直し、食べ過ぎをやめること、お酒の飲み過ぎを控えること、さらにウオーキングや水泳、ラジオ体操などの有酸素運動を取り入れることが有効です。薬物治療には大きく2種類の薬があります。1つは、コレステロールの値を下げる薬で、代表例はスタチン系薬とよばれるものです。もう1つは中性脂肪の値を下げる薬で、代表例はフィブラート系薬やエイコサペンタエン酸とよばれるものです。コレステロール値が高くなる要因となる糖尿病や腎臓の病気がある場合には、原因となる病気の治療も併せて行われます。
 脂質異常症を予防するためには食生活などの生活習慣に配慮することが大切です。肉や卵などの動物性脂肪、お菓子やアルコールなどの摂りすぎを控えるようにしましょう一方、野菜などの食物繊維や青魚、大豆製品は血清脂質値を下げ、動脈硬化の予防にもつながるため、積極的に摂取するようにしましょう。また、食生活以外の点では適度な運動が効果的です。体を動かすことにより体重管理に効果が期待できるほか、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の増加にも役立ちます。

 高LDLコレステロール血症では、コレステロールと飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身・内臓・皮、乳製品、卵黄、トランス脂肪酸を含む菓子類、加工食品を控える。食物繊維と植物ステロールを含む未精製穀類、大豆製品、海藻、野菜類を多めに摂る。

 高トリグリセリド(TG)血症では、糖質を多く含む菓子類、飲料、穀類の摂取を減らし、アルコールを控える。n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚類を多めに摂る。

 先に食物繊維を食べてから炭水化物や脂肪食を摂った方がいいのは、ほとんど消化吸収されないためエネルギー源にはなりませんし、むしろコレステロールの吸収を抑える働きがあるからです。糖質にはパン類・麺類・ご飯・イモなどに含まれるデンプンをはじめ、お菓子などに含まれているショ糖(砂糖)、果実に多く含まれているブドウ糖や果糖などがあり、いずれも肝臓で脂肪酸に作り変えられ、中性脂肪の原料となります。糖質のなかで特に注意が必要なものは、デンプンなどに比べて体内での分解吸収が早く、中性脂肪に合成されやすい砂糖・果糖・ブドウ糖です。砂糖は1日50g以上摂取すると、中性脂肪の数値が上昇することがわかっています。清涼飲料(スポーツドリンクも含む)や炭酸飲料、ジュース類は500mlのペットボトル1本に砂糖が20~50gも入っていますので、これらを飲む機会が増える夏場は気をつけましょう。またカロリーの多い食品と、コレステロールの多い食品は必ずしも同じではありませんので注意が必要です。お酒に含まれている糖分によっても中性脂肪は増えますが、アルコールは肝臓で水と二酸化炭素に分解され、その分解過程で中性脂肪の合成を促す酵素が発生し、そのため中性脂肪が増えます。逆に中性脂肪を下げるために積極的に食べたいのが、アジ・イワシ・サバ・サンマ・マグロなどの青魚です。これら青魚の脂には、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。ただしプリン体も多く含まれているので尿酸値が高い人は注意が必要です。このEPAとDHAには、肝臓での中性脂肪の合成を抑えて、血中の中性脂肪を減らす作用があります。そのうえ、血液を固める働きのある血小板が凝集するのを防ぐため、心筋梗塞や脳梗塞の引き金となる血栓ができるのを予防してくれます。

漢方と鍼灸

 脂質異常の反応穴、肝臓の反応穴から最適な漢方食養生サプリツボをお選びして治療していきます。

【症例】LDL232 HDL33 TG139 
漢方食養生で6か月 
    LDL156 HDL47 TG102
【症例】LDL189 HDL43 TG237
漢方食養生で5か月
    LDL138 HDL59 TG180
※症例多数

糖尿病

 糖尿病とは、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気のことです。

糖尿病診断基準(2023)

●“糖尿病型”の判定基準:以下のいずれか 1 つを認めた場合
① 血糖値 空腹時血糖値≧126mg/dl
② 血糖値 75g 経口負荷試験(OGTT)2 時間値≧200mg/dl
③ 随時血糖値 ≧200mg/dl 以上
④ HbA1c≧6.5%

●糖尿病の診断
1. 上記の血糖値(➀②③のいずれか)と④HbA1c が同一採血で“糖尿病型”を示せば、初回検査だけで「糖尿病」と診断。血糖値と HbA1c の同時測定を推奨。
2. 血糖値の➀②③いずれかが“糖尿病型”を示し、かつ以下のいずれかを満たす場合には、初回検査だけで「糖尿病」と診断。血糖値が“糖尿病型”に加えて、糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)または確実な糖尿病網膜症。
3. ➀~④のいずれかが“糖尿病型”と認められた場合、別の日(なるべく 1 ヶ月以内)の再検査で再び血糖値➀から③の“糖尿病型”が確認されれば「糖尿病」と診断。HbA1c のみ反復検査では糖尿病と診断できない。
4. “糖尿病型”のいずれかを認めるが「糖尿病」と確定できない場合は、「糖尿病疑い」として 3-6 か月以内に「血糖値と HbA1c と同時に測定」して再判定する。

 私たちは食事をすると血糖値が上がります。そして、血糖値の上昇が感知されると膵臓から“インスリン”と呼ばれるホルモンが分泌され、肝臓や筋肉ではブドウ糖を“グリコーゲン”と呼ばれるエネルギー源に換え、脂肪組織では“脂肪”として、蓄える仕組みが作動します。この仕組みが備わっているため、私たちの血糖値は飲食しても一定に保たれているのです。一方、糖尿病ではインスリンの分泌量が減少したり、インスリンのはたらきが弱くなったりするため、血糖値が高い状態が続くようになります。この状態が長期間に及ぶと全身の血管に障害が起こるようになり、重症化すると失明・腎不全・足の切断などQOL(生活の質)を大きく低減させるような合併症や心筋梗塞や脳梗塞などの病気を引き起こすことがあります。日本では1,000万人ほどが糖尿病に罹患していると推定されており、注意すべき病気のひとつです。しかし、昨今の糖尿病の負の面を強調した情報が社会における糖尿病に対する偏見を助長してしまった面は否めません。誤った情報により糖尿病に対する負のイメージが定着してしまったことから、周囲に病気のことを話せない、幼稚園や保育園の入園を断られる、生活に必要なサービスが受けられないといった事例も報告されています。このような、社会の糖尿病に対するスティグマ(負の烙印)に多くの患者がストレスを感じています。この現状を受けて日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、糖尿病をもつ人が病気を隠したりせずに安心して生活を送れる社会の実現を目指す活動(アドボカシー活動)を始めました。アドボカシー活動では、一般の人に向けて糖尿病に関する正しい知識を広めるために、新聞へ意見広告を掲載するなど偏見や差別をなくすための活動を行っています。糖尿病は、治療の継続により良好な血糖コントロールができていれば普通の人と変わらない健康な生活を送ることができます。糖尿病の治療には周囲の病気や治療への正しい理解やサポートが得られる環境づくりも大切です。糖尿病の原因は、血糖値を降下させる作用のある“インスリン”と呼ばれるホルモンの分泌量が低下したり、はたらきが悪くなったりすることです。インスリンの分泌量やはたらきに異常が生じる原因としてもっとも多いのは、高脂肪・高カロリー・食物繊維不足などの食生活や、運動不足、ストレス、睡眠不足、喫煙習慣などの生活習慣の乱れが挙げられます。このような生活習慣の乱れによる糖尿病を“2型糖尿病”と呼び、全ての糖尿病患者の9割以上を占めるとされています。一方、糖尿病の中には免疫のはたらきの異常により、インスリンを産生する膵臓の細胞が破壊されることで発症するタイプのものもあります。このようなタイプの糖尿病は“1型糖尿病”と呼ばれ、生活習慣の乱れなどは発症に関与しないものの、明確な発症メカニズムは解明されていません。そのほか、妊娠をきっかけに発症する糖尿病、膵炎・膵がんなど膵臓の病気で発症する糖尿病などもあります。糖尿病の根本的な病態は“慢性的に高血糖が続く”ことです。そのため、中には糖尿病を発症すると、喉の渇き、尿量の増加、倦怠感、体重減少などが現れるケースもありますが、多くは自覚症状がないとされています。一方、血糖値が高い状態が続くと、血液中に多量に存在するブドウ糖が血管を傷つけることが分かっています。その結果、目や腎臓、神経などにも十分な血液が流れにくくなることで網膜症、腎不全、末梢神経障害などいわゆる“三大合併症”を引き起こすことも多々あります。そして最終的には、失明、人工透析、足の切断など、日常生活に極めて大きな支障をきたす状態に陥る可能性も生じます。また、心筋梗塞や脳卒中などの病気の発症リスクも高くなります。そのほかにも糖尿病を発症すると免疫力が低下していくため、風邪をはじめとした感染症にかかりやすくなり、高齢者では肺炎や尿路感染症などが重症化して命に関わる状態に陥るケースも少なくありません。血液検査では血糖値や過去1~2か月の血糖値の状態を反映するHbA1c値を調べるほか、インスリンの分泌能力などを評価することも可能です。また、1型糖尿病が疑われる場合は、GAD抗体などの“抗体”と呼ばれるたんぱく質の有無を調べる検査も行われます。経口ブドウ糖負荷試験では、早朝の空腹時に一定量の糖分が含まれた飲料を摂取し、摂取前後の血糖値の変化を調べる検査です。糖尿病を発症すると空腹時の血糖値が高くなったり、摂取後の血糖値の下がりが悪くなったりするといった特徴的な結果が見られるため、糖尿病の確定診断に用いられる検査のひとつとなっています。糖尿病が疑われるときや糖尿病と診断された場合は、網膜の状態を調べる眼底検査、腎機能検査、腱反射、動脈硬化の程度を調べる検査などが必要に応じて行われます。糖尿病と診断された場合は次のような治療が行われます。
 生活習慣の乱れが発症に大きく関与している2型糖尿病では、第一に原因となる食生活や運動習慣の乱れを正す生活指導が行われます。発見された時点で早急な治療を要する重症な場合を除き、1~2か月ほど生活改善を行ったうえで薬物療法など次のステップの治療に進むか否かを判断するのが一般的です。生活改善などを行っても血糖値が十分に下がらない場合は、血糖値を下げる薬による薬物療法が行われます。血糖値を下げる薬にはいくつかの種類の飲み薬や注射薬(GLP-1受容体作動薬)があり、自身に合うタイプや量を決めていきます。薬物療法の効果が十分にない2型糖尿病、インスリンの分泌量が大幅に低下している1型糖尿病、胎児への影響により血糖値を下げる薬を使用できない妊娠糖尿病では、人工的にインスリンを補う“インスリン治療”が行われます。インスリンの投与は“自己注射”によって行われ、治療のほかにも厳密な食事管理なども必要です。上でも述べたとおり糖尿病にはいくつかのタイプがあり、免疫の異常による1型糖尿病を予防する方法は現時点ではないとされています。一方、生活習慣が関わる2型糖尿病や妊娠糖尿病は問題となる生活を改善することで発症や悪化をある程度予防することが可能です。規則正しい食生活、運動を心がけ、ストレスや喫煙習慣など生活上の習慣に注意するようにしましょう。

漢方と鍼灸

 美味しい物が好きな方が多いですね。遺伝性もありますがなかなか食養生がうまくいきません。口渇が激しい、頻尿、体重減少、免疫低下による感染症になりやすい、神経障害に痛みや神経痛、血流障害による循環器疾患、眼科疾患など多岐に及ぶので気を付けていきたいですね。食事は朝多目、夕は軽めが基本。アルカリ性食品、根菜類、種子類、海産物をバランスよく食べましょう。膵臓、糖尿病の反応穴、症状が出ている箇所から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。

【症例】HbA1c8.3 漢方食養生を6か月、5.9まで改善 手の痺れも消失
【症例】HbA1c7.8 漢方食養生を3か月、6.2まで改善 後頭部の痛み消失
【症例】HbA1c8.0 漢方食養生を3か月、6.0まで改善 血圧も下がる
【症例】HbA1c7.5 漢方食養生を5か月、5.9まで改善 眼圧も下がる
※症例多数

網膜色素変性症

 網膜色素変性とは、目の中の網膜に異常が起こる遺伝性の病気です。厚生労働省により難病に指定されており、国内での発症頻度は4,000〜8,000人に1人程度と報告されています。網膜は目の内側に位置し、目に入る光を電気信号に変えて脳に伝える役割があります。目に入った光は角膜や水晶体、硝子体を通って網膜に到達し、視細胞によって電気信号に変換され、視神経を通じて脳へと伝わります。この一連の流れにより、私たちは初めて光を感じることができます。視細胞は、大きく2つに分けられ、視野の広さや暗いところでの見え方に関わる杆体細胞と、色覚や視力に関わる錐体細胞があります。網膜色素変性では、発症早期には杆体細胞が障害され暗いところで物が見えにくくなったり、見える範囲が狭くなったりします。病状が進行すると、錐体細胞が障害され視力の低下や色覚異常が現れます。網膜色素変性には遺伝性が疑われるケースがあります。一方で、家系内に患者がいない孤発型も多く見受けられます。いずれにしても、ほとんどのケースは遺伝子に何らかの異常があることで発症すると考えられています。網膜色素変性の一般的な症状として、暗いところで物が見えにくい“夜盲”、視野が狭くなる“視野狭窄”、視力低下が挙げられます。発症初期には、杆体細胞の障害に伴い夜盲の症状が生じるケースが多くみられます。続いて視野狭窄によって見える範囲が狭くなるなどの症状が現れ、さらに病状が進行して錐体細胞が障害されると、視力の低下や色覚異常の症状がみられます。しかし、進行の程度には個人差があるため、発症初期から視力が低下するケースや、数年から数十年かけて進行するケース、生涯において生活に必要な視機能が保たれるケースもあります。遺伝性の疾患は、基本的にひとつの病気に対してひとつの遺伝子異常が原因となります。一方、網膜色素変性は多数の種類の遺伝子が原因となって同じ「網膜色素変性」という病気を生み出すため、進行程度もまちまちであり、原因の特定も困難であれば経過の予測も容易ではありません。また遺伝性疾患の場合、遺伝子治療は必ず検討される方法ですが、網膜色素変性の場合は原因遺伝子がたくさんあるため、遺伝子治療のアプローチがしづらいという難点があります。網膜は光を電気に変える働きを持ちます。光が網膜に当たってから電気信号になるまでに、たくさんの蛋白質が絡んできます。関与する蛋白質が多いほど、勿論そこに関わる遺伝子も多くなります。どの遺伝子が異常を起こしても網膜色素変性を発症するため、たくさんの遺伝子が原因になりうるのだと考えられています。人によって網膜色素変性の進行速度は全く異なり、進行が速い場合は、物心ついたときから見えづらい方もいます。一方、徐々に進行し、60代くらいになってから顕著に見え方が悪くなり、年齢を考えて白内障を疑い、検査してみたら網膜色素変性であったというケースもあります。これだけ進行速度の差が出る理由はよくわかっていません。同じ遺伝子の異常でも進行速度が異なる場合がありますが、同じ遺伝子なのに何が影響しているのかも現在、原因は不明です。とはいえ、基本的に網膜色素変性は緩やかに進行する疾患であり、突然目が見えなくなるようなことはありません。根治治療を急ぐよりは、進行スピードを少しでも緩めるような治療が望まれます。網膜色素変性の初期症状は夜盲や羞明、視野狭窄です。杆体細胞が障害されるため、夜盲が初発症状であることが多いといわれています。その後、病状が進行すると視力低下や色覚異常が生じます。羞明とは夜盲(やもう:暗いところで目が見えづらい)の真逆の状態であり、「眩しくないと感じるレベルが狭まる」のが特徴です。網膜色素変性の患者さんは夜盲となる暗さの程度が通常の方よりも低い(通常の方が暗いと感じないレベルでも暗く、見えづらい)のですが、これに羞明の症状を伴うと、暗いところでは見えず、明るいところでも眩しくて見えないということになります。網膜色素変性の患者さんは白内障や緑内障を合併しやすいことが知られています。しかし、白内障の合併が多い理由はよくわかっていません。白内障を合併した場合、白内障手術を受けていただくことがあります。ただし、網膜色素変性の合併症としての白内障手術は、網膜色素変性に伴う白内障手術をしっかりとやっている施設で受けることをおすすめしています。そういった施設は網膜色素変性の合併症対策も経験豊富だからです。
 診断では、眼底検査や視野検査、網膜電図検査、蛍光眼底検査、眼底自発蛍光検査などが行われます。眼底検査は網膜や視神経の状態を調べる検査です。瞳孔を散大させる点眼薬を投与した後、眼底カメラなどの機器を使って眼底の状態を撮影します。視野検査は、物が見える範囲を調べるための検査です。片目ずつ正面の固視点を見た状態で、見える範囲に光指標があるかどうかを確認します。網膜電図検査は、網膜色素変性では、発症初期から電気信号が微弱になるため、網膜が正常にはたらいているかどうかを検査します。角膜に電極を乗せ、目に光を当てたときに網膜からの電気信号を確認します。蛍光眼底検査では、網膜の萎縮の程度などを評価する検査です。造影剤を腕から点滴で投与しながら眼底カメラで撮影します。眼底自発蛍光検査は、専用の撮影装置を使い、造影剤を投与せずに網膜の状態を調べる検査です。白内障の合併により視力の低下が悪化している場合は、手術で濁った水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入しますが、網膜色素変性に対する根本的な治療方法は確立されていません。しかし、治療法の開発に向けて遺伝子治療や人工網膜、網膜移植などの研究が世界中で進められており、今後の実用化が期待されています。中でも遺伝子治療は、原因遺伝子の機能を補う新しい治療法です。薬剤を目に直接注射することで、暗いところで見えにくいなどの症状の改善が期待できます。このほか、現在はそれぞれの患者の症状に応じて現在残されている視機能を生かし、社会生活を送りやすくするための“ロービジョンケア”が中心に行われます。ロービジョンケアの主な取り組みとしては、遮光眼鏡で眩しさを和らげたり、ルーペを使って文字を読みやすくしたりといったことなどが挙げられます。

漢方と鍼灸

 水晶体、網膜の異常細胞に働きかける漢方食養生サプリツボを選択し少しでも進行を遅らせる方向でやっていきます。

再生不良性貧血

 再生不良性貧血とは、造血幹細胞と呼ばれる血液細胞の減少により、白血球、赤血球、血小板といった血液成分が減少する病気です。白血球の減少による感染症、赤血球の減少による貧血症状、血小板の減少によるあざや出血など、さまざまな症状がみられます。再生不良性貧血には先天性と後天性があり、ほとんどが後天性です。また、その中でも原因不明の“特発性再生不良性貧血”が90%を占めるといわれています。先天性の再生不良性貧血はファンコニ貧血と呼ばれることもあります。国の指定難病の1つで、年間100万人あたり約8人が再生不良性貧血と診断されています。男女比は同じくらいで、どちらも10~20歳代と70~80歳代で頻度が高くなります。再生不良性貧血は、造血幹細胞が障害され、減少することによって起こります。造血幹細胞とは赤血球、好中球、血小板といった血液細胞の元となる細胞のことで、通常は骨髄中にあり、これらの血液細胞を補給し続けています。造血幹細胞が障害される原因はいくつかあり、生まれつきの染色体の異常によって起こる場合があります(ファンコニ貧血)。後天性の場合は薬剤・薬物、放射線などが原因になることがありますが(二次性再生不良性貧血)、多くは原因不明です(特発性再生不良性貧血)。特発性再生不良性貧血の多くは、免疫細胞が自分自身の細胞を攻撃する自己免疫的な異常によって起こるのではないかと考えられています。再生不良性貧血では赤血球、好中球、血小板が減少することによって、さまざまな症状が現れます。赤血球減少による症状では赤血球による酸素運搬が障害されるため、全身のさまざまな臓器で酸素が欠乏します。脳の酸素欠乏によるめまい、頭痛、筋肉の酸素欠乏による倦怠感、疲れ、心臓の酸素不足による胸の痛みが現れることがあります。また酸素不足を解消するために、息切れや動悸などがみられることもあります。好中球とは、白血球のうち細菌を殺す役割を持つ細胞です。好中球が減ることで細菌感染症にかかりやすくなり、感染による発熱がみられたり、肺炎や敗血症といった重い細菌感染症にかかりやすくなったりします。血小板は出血を止めるはたらきがあり、血小板が少なくなることで出血傾向がみられるようになります。出血しやすくなると、皮膚の点状出血、紫斑(青あざ)、鼻出血、歯肉出血がみられるようになり、さらに症状が進むと眼底・脳出血、血尿、下血などがみられることもあります。血液検査によって赤血球、好中球、血小板が減少する汎血球減少と呼ばれる症状がみられた場合に、再生不良性貧血が疑われます。確定診断として行われる検査には骨髄検査があります。また、再生不良性貧血と同様に汎血球減少がみられる病気との鑑別のために、骨髄の染色体検査や脊椎MRI検査などが行われることもあります。再生不良性貧血の治療は、重症度に応じて免疫抑制療法、造血幹細胞移植、タンパク同化ステロイド療法、トロンボポエチン受容体作動薬、支持療法といった治療が行われます。軽症で汎血球減少が進行していなければ治療をせずに様子を見ることもあります。造血幹細胞を攻撃しているリンパ球のはたらきを抑えて血液細胞をつくる機能を回復させる治療法です。抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとシクロスポリンと呼ばれる治療薬があります。造血幹細胞移植とは、健康な人の造血幹細胞を点滴投与して、患者の造血力を再生する治療です。一方で、移植は体への負担が大きいため、重症の場合やほかの治療法による効果がない場合に行われます。通常、HLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる白血球の型が合うドナーが家族内や骨髄バンクにいることが条件となります。タンパク同化ステロイド療法は、赤血球を増やすはたらきや造血幹細胞の増殖を促す効果があるともいわれています。トロンボポエチン受容体作動薬は、造血幹細胞に作用し、造血力を回復させる治療です。支持療法とは、病気の症状を改善する治療のことです。貧血や血小板減少に対する輸血や、白血球を増やすホルモン(G-CSF)の使用、感染症に対する抗菌薬治療などがあります。

漢方と鍼灸

 免疫の狂いから造血幹細胞が減少することから骨髄の反応穴、脾の反応穴、各症状部位から最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。補血の漢方を中心に組み立てます。