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酒査

 鼻や頬、顎などが赤くなる病気を指します。20歳以上の女性から受診の機会が増加していきます。特徴的な症状として、いわゆる“赤ら顔”と呼ばれる、皮膚の赤みと火照りが挙げられ、また“敏感肌”とも呼ばれる、外的な刺激に過敏に反応して赤くヒリヒリする肌質ともいえます。また、ぶつぶつとした皮膚の赤い盛り上がりがみられるようになると、ニキビと間違われることもありますが、両者は異なるものです。酒さの原因は、まだ完全に明らかになっているとはいえません。遺伝的な要因や環境因子が複雑に関与していると推定されています。毛細血管が広がり、通常よりも多くの血液が流れることから酒さの症状は現れます。そのため、毛細血管が広がることを促進するようなことが、酒さの症状が悪化する因子であるといえます。具体的には、以下が挙げられます。辛いものなど刺激物を多く摂取する、アルコールやカフェインを多く飲む(このことから酒さという病名が付いたようですが、あまりお酒を飲まない方にも多いのが実情です)、寒暖がはっきりした環境で長時間過ごす(特に寒冷曝露が悪化因子)、太陽の光を長時間浴びる(紫外線が悪化因子)、感情が高ぶる状況、過度の運動ホルモンバランス異常(更年期のhot flush に伴うことも)喫煙習慣などがあります。また、皮膚の症状が気になるあまり、ファンデーションで症状を隠し、それを落とすときのクレンジングで症状を悪化させる可能性もあるかもしれません。酒さによる症状は、顔のなかでも鼻や頬、顎、額などに見られます。症状のはじまりは周囲の皮膚と比べて頬や鼻などが淡く赤くなります。初期段階では皮膚の盛り上がりはなく赤みが目立ちますが、症状が進行すると毛穴の部分が小さく盛り上がりを示すようになります。さらに、鼻においても皮膚の盛り上がりが起こることがあります。鼻の盛り上がりは、女性よりは男性に起こりやすい症状です。鉄腕アトムに出てくるお茶の水博士の鼻が、鼻瘤と呼ばれる酒さの重症型ですが、日本人での頻度は少なめです。皮膚の赤みや盛り上がり以外にも皮膚の火照り(burning)を感じたり、ぴりぴりとした軽い痛み(刺激感:stinging)を感じたりすることもあります。酒さで見られる症状は、1日のなかで変動することも特徴です。原因に挙げたような増悪因子があると、症状が悪化することがあります。さらに、酒さでは目の症状を自覚することもあります。具体的には目の乾燥感、しばしばした感覚、目の充血などです。酒さの診断は、その特徴的な皮膚症状や増悪因子の有無などをもとにしてなされます。皮膚の症状を目立たなくするために化粧品を使用されている方もいますが、化粧をしていない状態で皮膚を観察するとより判断しやすくなるため、診断を受ける際には化粧などをせずに受診することが大切です。初期の酒さは、ほんのり赤い肌質であり、脂漏性皮膚炎と呼ばれる眉間や鼻脇の皮膚炎とよく似ています。脂漏性皮膚炎としてステロイド外用薬による治療を継続して酒さのような症状が出る場合は酒さ様皮膚炎と呼ばれ、ステロイド外用薬の副作用とされますが、実ははじめから酒さであったかもしれないのです。
 赤いぶつぶつや中心が白い膿疱を伴う場合、ニキビにとても似てきます。この場合は、demodex と呼ばれるニキビダニが原因の場合があります。ぶつぶつの先端をつまんで顕微鏡で検査すると極小さな芋虫のようなダニが2~3匹検出されます。体質的な要因が強く、さまざまな悪化要因があるため、短期間で症状をなくすことは難しいため、長期間の治療介入が必要となります。経過中によくなったり悪くなったりすることもありますが、根気よく治療を継続することが大切です。酒さでは、原因に挙げたような要因をもとにして症状が悪化することもあります。そのため、治療の一環としてこれらの要因を避けることも必要です。
 治療薬としては、ビタミン剤や抗生物質の内服を検討します。もっとも多く用いられるのがテトラサイクリン系の抗生剤(特にミノサイクリン)の内服で、ニキビ様のぶつぶつだけでなく、びまん性の赤ら顔にも効果的です。赤く火照る状態に対して外用ステロイドを使用したくなりますが、個々では絶対に避けるべきであり、抗生物質入りのクリームあるいは非ステロイド系の外用薬がかつては用いられていましたが効果は乏しく、治療が長期化しました。最近では、タクロリムス軟膏などのアトピー性皮膚炎に対する新しいステロイドでない外用薬が登場し、酒さの赤く火照る炎症を鎮静化してくれるようになりました。タクロリムス軟膏もステロイド外用薬と同様、酒さを悪化させるという報告もありますが、先に述べたニキビダニに注意していれば問題ないと考えられています。ニキビダニ(demodex)による酒さ反応の悪化は、かなり高頻度と思われ、この場合、ミノサイクリン内服やタクロリムス軟膏の外用は無効となります。この状態で有効なのが、イオウ含有ローションです。外用治療によりかえって乾燥症状が悪化することもあるため、注意しながら併用することが大切です。ニキビダニ対策では、ほかにもメトロニダゾールやイベルメクチンなどのほかの病気の薬が用いられることもあるようです。鼻の盛り上がりが強い場合(鼻瘤)には、皮膚を削る処置がとられることもあります。赤みが目立つため、常時マスクを使用される方もいますが、マスクをすることで皮膚の刺激になることも考えられます。また、化粧についても過剰になりすぎて皮膚に負担をかけないよう考慮が必要です。そのためには刺激の少ないマスクや化粧品の選択も重要といえます。酒さは、赤ら顔や敏感肌など、北国のリンゴほっぺの子どものように体質的なもので皮膚疾患ではないと思われている場合も少なくないようです。軽い症状はそのままでもいいのですが、かゆみが出たり、かさつきが出たりして、安易にステロイド外用薬を塗るとかえって悪化していく場合があります。普段からのスキンケアが予防になります。安易な顔面へのステロイドの外用も禁忌と考えましょう。毛細血管拡張症に対して、Vビームによる治療をやっているところがあります。Vビームは血液中のヘモグロビンに反応し、吸収・凝縮することで、毛細血管拡張症、赤ら顔、赤アザ、ニキビ跡、ケロイドなどの治療に使用されています。レーザー照射の際は周囲の組織へのダメージは少なく、体への影響はないといわれています。また真皮層にあるコラーゲンやエラスチンなどを生成する線維芽細胞を刺激し、肌のハリやツヤをアップする効果が期待できます。一般的なレーザーは黒色のメラニンに反応しますが、Vビームレーザーは赤色の色素に反応するのが特長。そのため、血液中のヘモグロビン(赤血球)に反応し、赤アザや赤ら顔の治療に効果が期待できます。しかしうまくいかない場合も書いてあります。

漢方と鍼灸

 「毛細血管が広がり、通常よりも多くの血液が流れる」とはどういうときにおこるでしょうか。毛細血管が多いところは頬や鼻。血管の拡張は熱の放散のためでもあります。気の上昇によって熱も上にあがります。例えば緊張した時、汗が出たり赤ら顔になったり、お酒をのんで赤くなったり、暖房の部屋に入った時など熱の調整で拡張したりします。またホルモンとの関係でも拡張します。更年期障害で急にカーと熱くなったり汗がでたりしますね。もう一つは血液中の老廃物を汗とともに排出するためです。ですから赤血球にレーザーを当てるのはどうかなと思います。東洋医学的には、上昇の熱をとる漢方、ホルモンを安定させる漢方、お血の漢方などを証に合わせて考えます。酒査の部分から最適で安全な漢方食養生サプリ、化粧品、ツボを選択し治療していきます。

多汗症

 多汗症とは、異常な量の汗をかく状態を指します。通常、汗は熱や運動に関連してかくものですが、多汗症になると生理的に汗をかく状況ではなくても多量に汗をかくようになります。多汗症には、腋わきや手など限定された場所のみに汗をかく場合と、全身に汗をかく場合があります。また、思春期前後から多汗症を発症することもあれば、成人期になってから多汗症を発症することもあります。汗を多量にかくため、日常生活に支障がでたり、精神的な負担につながったりすることも少なくありません。原因を正確に判断し、適切な対処法をとることが大切です。全身性多汗症は、背中や足、腹部など全身に多量の汗をかくものです。全身性多汗症のなかでも何かしらの原因が特定できるものを続発性全身性多汗症と呼びます。原因には、甲状腺機能亢進症や低血糖、更年期、褐色細胞腫、感染症、薬剤(オピオイドの離脱症状など)などが挙げられます。局所性多汗症は、主に手のひらや足の裏、腋下など、ある部位から多量の汗がでるものを指します。なかでも原因が特定できない「原発性局所性多汗症」の頻度が高いとされています。原発性局所性多汗症では自律神経の調整がうまくいかないことを原因として、多量の汗がでます。また、家族内で発症することもあるため遺伝的な要素も疑われています。運動時や気温の高い状況で汗をかくのは生理的な反応ですが、多汗症になると、生理的反応の範囲を超えて多量の汗をかくようになります。多汗症では、運動や気温などの要因がない状況においても手のひらや腋、なかには全身に多量の汗をかく方もいます。手や足の汗は滑り止めとしての役割を持っていますが、汗が多量にでることから、ものを持つときなどに滑ってしまうことがあります。その結果、日常生活のちょっとした動作に支障がでるようになります。また、多汗症は、精神的なストレスや緊張下において悪化することがあります。原発性局所性多汗症の場合は、幼少期や思春期に発症することが多いです。日中に多量の汗をかく一方、就寝中は汗が止まります。多汗症の診断では、本人の訴えがもっとも重要になります。病院を訪れた際に汗をかいているとは限らないため、診断のための確立した検査方法はありません。汗が多い部位を客観的にみるために、ヨード紙や発汗記録計を使用します。多汗症は、どの程度本人が困っているかという視点が重要視される病気であるといえます。しかし、なかには甲状腺機能亢進症や低血糖など何かしらの病気が隠れていることもあります。汗以外の症状があり、病気の存在が疑われる際には、原因となる病気に応じて検査が追加検討されることになります。多汗症では原因となる病気の有無によって治療法が異なります。続発性多汗症で、多汗の原因となっている病気が明らかであれば、その病気の治療を行います。原発性局所性多汗症に対する治療としては塩化アルミニウムの外用があります。これは古くから行われる治療法ですが健康保険が適用されず、どこの医院や病院でも出してもらえる薬ではありませんでした。しかし、最近では腋窩の多汗症に対して健康保険が適用となる抗コリン作用をもつ外用薬が登場しました。手のひらや足の裏の局所性多汗症に対しては、皮膚に電流を流して発汗を抑制する「イオントフォレーシス療法」という方法もあります。イオントフォレーシス療法で用いるのは微弱な電流なので痛みや副作用はありませんが、繰り返して治療する必要があります。
 また、ボトックス(ボツリヌス菌毒素)を注射する治療も行われています。この注射は1回打つと半年ほどの期間効果があります。さらに、腋窩多汗症に対しては電磁波であるマイクロ波を使って汗腺を破壊するという方法もあります。また重症の局所性多汗症に対しては、汗腺支配神経である「胸部交感神経」をブロックする「交感神経遮断術」があります。症状が出現する部位や日常生活への支障の具合を見極めつつ、治療法を選択することになります。多汗症はQOL(生活の質)に大きくかかわってくるのですが、何に困っていて、どの程度治したいのか、治療法にはどのような副作用があるのかなどを十分に認識し考えたうえで、治療法を選択することが重要です。

漢方と鍼灸

 ストレスやホルモン異常などによって交感神経が興奮し発汗することが多いようです。自律神経の調節やホルモンの安定をする漢方を選択します。また水分の摂りすぎも汗がでやすいので要注意です。尿の回数、量もチェックします。毛穴の調整、発散は肺の支配をうけています。気虚(疲れがひどいなど)も汗を止める力がないため漏れてしまいますね。漏れを防ぐ漢方を使います。また汗をかくのは体熱を発散して熱がこもらないように体を守っているためです。

爪甲剥離症

 爪甲剥離症とは、従来下の皮膚と付着しているはずの爪が先端から剥がれ、浮き始めてしまうことをいいます特に女性に多くみられることが特徴です。爪が付着している部分の皮膚を“爪床”、爪床の上に付着している部分の爪を“爪甲”といい、通常両者は強く付着しているため、剥がれることはほとんどありません。しかし、爪甲剥離症では爪甲が爪床から剥がれてしまい、剥がれた部分の爪甲は表面から見ると白や黄色に見えることが一般的です。時には爪床と爪甲の間にゴミやホコリが入って、内部が汚れて見えてしまう場合もあります。このような場合、無理に内部の汚れを取り除こうとすると皮膚に刺激が加わり、さらに悪化する可能性もあるため注意しましょう。爪甲剥離症では複数の原因が考えられる一方で、検査などを行っても具体的な原因が分からない場合もあります。また症状が現れる爪の本数も1本で済む場合もあれば、複数の爪に生じることもあります。特に手足の複数の爪に変化がある場合には、甲状腺機能亢進症などの全身疾患が疑われますので、速やかに医療機関を受診することが大切です。爪甲剥離症の多くは、原因の分からない特発性のものです。老化に伴う乾燥症状があり、爪の恒常性が保たれていないことが多いです。一方で甲状腺機能異常や強皮症などの全身疾患、乾癬などの皮膚疾患、不適切なマニキュアなどの使用による慢性の一次刺激接触皮膚炎、カンジダ菌への感染、末梢循環不全などさまざまなことが原因となって、爪甲剥離症が起こることが分かっています。爪甲剥離症を引き起こす全身疾患としては、甲状腺機能亢進症が代表的です。甲状腺機能亢進症とは、甲状腺の機能が活発になることにより甲状腺ホルモンが多く分泌され、食べても痩せてしまう、疲れやすい、眠れないなどの症状が現れる病気です。時に爪が平たくなったり、反り返ったりすることによって爪甲剥離症が生じます。このような症状を“プランマーズ・ネイル”と呼ぶことがあります。はじめは1本の爪から症状がみられますが、徐々に複数の爪に症状が現れるようになります。そのほか、強皮症、貧血、甲状腺機能低下症、糖尿病、肺がんなどの肺の病気でも爪甲剥離症を引き起こす場合があります。爪甲剥離症を引き起こす皮膚疾患としては、強皮症の強指症、乾癬、掌蹠多汗症などが挙げられます。これらの病気では先に皮膚症状などが現れ、診断に至ることが一般的です。爪と皮膚の間に棘など細いものが刺さることによって起こるものや、マニキュアや除光液、洗剤、有機溶剤、ガソリンなどに触れることによって起こるもの(接触皮膚炎)があります。爪甲剥離症を引き起こす主な感染症として、カンジダ症や爪白癬などが挙げられます。カンジダ症による爪甲剥離症(カンジダ性爪甲剥離症)の場合、剥がれた爪の下の皮膚がカサつくことが特徴です。紫外線を浴びることで症状が現れることがあります。太陽の光が強い5月ごろから夏場に悪化しやすく、冬は軽快しやすいことが特徴です。また、爪の症状だけでなく紅斑などの皮膚の症状も併せて現れる傾向があります。爪甲剥離症では、爪が先端から剥がれて浮き上がり、剥がれていない部分よりも白く、あるいは黄ばんで見えるようになります。症状が現れる爪の本数は原因によっても異なりますが、手足の複数の爪に症状が現れている場合には、全身疾患が疑われます。爪甲剥離症には、全身疾患、皮膚疾患、外部からの刺激、感染症などさまざまな原因が存在し、原因に応じた治療を行うことが大切です。そのため丁寧な問診などを行い、何らかの病気が疑われた場合には、疑われた病気に応じた詳しい検査を行うことが一般的です。たとえば、カンジダ性爪甲剥離症が疑われた場合、剥がれた爪甲をできる限り取り除き、爪床の角質を採取して、カンジダ菌が存在しているかどうかを顕微鏡で観察します。また、検鏡で検出されないこともあるので、真菌培養を行うことも大切です。全身疾患や皮膚疾患などが原因で生じている爪甲剥離症の場合、原因疾患を治療することで症状が軽快することが一般的です。またカンジダ性爪甲剥離症の場合は、抗真菌薬の飲み薬や塗り薬を使用することが一般的です。その際に、医師はカンジダ菌に有効な薬なのか、水虫菌に有効な薬なのかを、添付文書で確認することが必須です。原因がはっきり分からない爪甲剥離症の場合、ステロイド薬の塗り薬や角質に浸透しやすい保湿剤、末梢循環改善を期待してビタミンE類似のトコフェロールニコチン酸エステルなの飲み薬などによる薬物療法などが検討されることが一般的です。一般的に原因不明の爪甲剥離症は治りにくい場合も少なくなく、まずはマニキュアなどによるネイルケアと上述の治療を根気強く続けていくことが大切です。これらの治療をしてもよくならない場合、爪疾患の治療経験の多い皮膚科の医師にセカンドオピニオンを求めるのも大事です。

漢方と鍼灸

 まず原因疾患を問診からつかんで治療していきます。なぜ爪がはがれたり変形したり異常な状態になるのかを考えます。爪に栄養を送っているのは末梢の血流です。末梢の血流不全がないかをまず確認していきましょう。菌や真菌のチェックもします。異常な爪から最適な漢方食養生サプリ、軟膏、ツボを選択し治療していきます。
【症例】60歳 女性 夏になる頃、決まって爪の症状が出るという相談。漢方を出して毎年徐々に良くなっていき3年目からほとんど出なくなりました。

白癬

 白癬は、“皮膚糸状菌”と呼ばれるカビが皮膚の表面、爪、毛などに感染することによって引き起こされる病気です。白癬は多くは同居家族から、あるいはスポーツ活動などを通じてヒトからヒトへと接触感染しますが、最近ではコンパニオンアニマル(ペット)からの感染例も知られるようになりました。白癬は体の表面から見え、またかゆみを伴うことも多いため、“水虫”、“たむし”、“いんきんたむし”、“しらくも”など多くの呼び名がつけられ、世間で広く認知されている病気です。しかし、同じような症状でも皮膚糸状菌が原因ではない、つまり白癬でない場合もしばしばあります。したがって、視診だけでは診断の難しい病気で、診断の確定には真菌検査による菌の検出が必要です。白癬は、カビの一種である皮膚糸状菌(白癬菌)が皮膚の表面、爪、毛に感染することによって引き起こされます。日本には10種類ほど皮膚糸状菌が存在することが分かっています。皮膚糸状菌はケラチンと呼ばれる皮膚の最外層にある頑丈なタンパク質を溶かして成長することができます。ケラチンはほかの生物にはなかなか消化できませんが、これを栄養にできるのが皮膚糸状菌の最大の特徴です。皮膚糸状菌の感染経路は接触感染です。ヒトやペットから住環境に落ちた菌が床、足ふきマットやスリッパなどを介して主に家庭内で間接的に感染するケース、柔道などの格闘技で皮膚同士が接触する、手の白癬などから自分の体表を触って広げる、あるいはペットなどに直接接触して感染するケースが挙げられます。白癬は菌が感染する部位によって、また個人の免疫や局所の皮膚の状態によって症状が大きく異なり多彩です。白癬の中でもっとも患者数が多いのは足白癬(いわゆる水虫)で、国民の4人に1人が足白癬であろうと推測されています。趾の間、足の裏、かかとなどに感染し、発赤、小さな水疱や角質の剥がれ、びらんが現れます。かゆさはさまざまで悪くなるときに強いかゆみを伴う一方、まったくかゆみがない場合もあります。手にも同様に手白癬が生じることがあります。四肢から体幹、顔面に発症するものは体部白癬(いわゆるたむし)股を中心に生じたものは股部白癬(いわゆるいんきんたむし)といいますが、赤い皮疹が輪になって周囲に広がり、真ん中はしばらくすると少し治ってくることがあります。これらはいずれも強いかゆみがあります。頭の白癬(しらくも)はあまりかゆみがなく、フケが出たりその部分の脱毛が生じたりします。頭では時に急に膿んできて強い痛みが出たり、頭頚部のリンパ腺が腫れて痛んだりすることがあります。そのほか、足や手白癬から爪に広がって爪白癬になる場合があります。超高齢化の進行で爪白癬の増加が懸念されています。爪白癬では爪が白色や黄色に濁って見えるようになります。爪白癬が進行すると、爪の厚みが増し、ぼろぼろになって崩壊していきます。爪が分厚くなると靴などに押されて痛みが出ることがあります。
 診断を確定するには、症状が起きている部位に原因菌が存在することを証明することが必要です。そのため、皮膚科外来では皮膚表面の角質、爪、毛など白癬が疑われる部位の組織の一部を取り真菌検査を行います。組織を取るといっても、通常は病巣の上の角質を剥がしたり、毛を2~3本抜いたり爪を切ったりする程度で、出血するような検体採取ではありません。真菌検査はまず顕微鏡で観察する“直接検鏡”を行います。場合によっては培養検査を行うこともあります。白癬が疑われてもよく似た症状を示す病気はたくさんあり、白癬の症状も多彩なため、技術力のある皮膚科専門医などを受診することが大切です。基本的に皮膚糸状菌に効果のある抗真菌薬の塗り薬を患部に適切に使用することによって改善します。足のかかとなど皮膚の角質が厚い部分に生じた場合や体の広範囲に生じて十分な外用ができない場合、爪・毛に感染した場合は塗り薬だけでは効果が不十分なことが多く、抗真菌薬の飲み薬が必要になることもしばしばです。治療期間は症状によってさまざまです。体部白癬や股部白癬であれば塗り薬を2週間ほど使用すれば治ります。しかし、足白癬はかゆみがない部分にも菌が拡散していることが多いため、爪先から趾間、足底、かかとやアキレス腱の部分まで、最低でも4週間にわたる抗真菌薬の塗布が必要となります。量的には10gのチューブを7~10日で塗り切ることになります。足白癬を放置して爪白癬になると、内服抗真菌薬でも3~6か月、外用抗真菌薬では1年は継続する必要があります。感染予防には感染源の治療による菌量の減少がもっとも効果的です。特に足白癬は家庭内での感染が多いため、同居家族の足白癬の適切な治療が最優先になります。あわせて足ふきマットやスリッパの洗浄、床の掃除を行うことになりますが、白癬患者が菌を散布している条件下ではいくら清潔に気を付けても同居者に菌が付着することを予防することはできません。一方、病巣への抗真菌薬の外用がはじまると、散布される生きた菌の量は劇的に減少することが知られています。そのほか、靴の着用で足の湿度が高い人に白癬の割合が高いこと、健康サンダルによる擦れがかえって白癬の治療を妨げること、角質に傷をつけると菌の侵入が早まることが知られています。足の乾燥に留意し、角質に傷をつけないフットケアの実践が大切です。

漢方と鍼灸

 そもそも白癬に感染しにく人がいるのなぜでしょう。それは免疫力がしっかり働いているからです。しかし足先は血流が悪くなりやすく、冷え性の方も多いですね。血流の血液は何を運んでいるのでしょう。白血球など免疫に関係するものも運んでいます。それらが末端まで来なかったら防衛力は弱いですね。白癬菌の治療をしても再度感染する人は多いです。また足先がほてる人もいて蒸れる原因です。この場合血熱の状態なので余分な熱を取ってあげなければいけません。白癬菌が増殖するのはなぜか?「木をみて森をみよ」とは東洋医学の考え方です。もちろん局所治療は大事です。患部から最適な漢方、軟膏、食養生サプリツボを選択し治療していきます。

レイノー病

 冷気に触れたときや精神的に緊張したときに、手足の指先の小動脈が収縮し、血流が一時的に悪化する状態をレイノー現象と呼びます。典型的には、まず血流が悪くなると蒼白になり、さらに悪化すると紫になり、その後血流が戻ると赤になるといった、3色の色調の変化として見られます。色調の変化は通常境界が明瞭なのが特徴で、よく「冷え性」と呼ばれる、指が冷たくて全体的に色が白い状態とは異なります。
 レイノー現象を診断する際には、①指が寒冷刺激に対して通常以上に反応する、②指が冷気に触れたとき色が変わる、③色が白、紫、あるいはいずれも見られる、の3つとも満たすことが必要です。レイノー現象は、他の病気に伴って生じる場合は二次性(レイノー症候群)、特に原因が明らかでない場合は原発性(レイノー病)と呼ばれます。ここではレイノー病について解説していきます。レイノー現象を来たす患者さんの約8割はレイノー病とする報告もあります。レイノー病はどの年齢層でも起こりえますが、15~30歳代の女性多いとされています。家族にレイノー病の方がいる場合、発症リスクが高まります。手足の指先へ血液を送る血管が、冷気やストレスなどをきっかけとして発作的に収縮し、細くなると血液の供給が乏しくなり、指の色が白く変化します。血液が乏しい状態がしばらく続くと、酸素の供給も滞り、チアノーゼの状態となり、表面上は紫色に見えるようになります。血管の収縮を起こした原因がなくなってしばらくすると血液の流れが元通りになり、指先の色調が元に戻ります。ただ、詳細なメカニズムはまだよくわかっていません。レイノー現象では、手足の指先の皮膚の色が白から紫、紫から赤と順次変化します。色調の変化は、数分から20分程度で回復し、「一時的」あるいは「発作的に」生じるのが特徴です。特に、暖かい場所から寒い場所に急に移って外気温が変化した際に生じやすく、一番起りやすいのは冬場の寒いときです。しかし、夏は冷房の効いた建物に入ったときや、冷蔵庫に手を入れたときなど、急な温度の変化により誘発されます。ほとんどの場合は手の指先、特に人差し指、中指、薬指によく見られます。足の指もよく見られる一方、鼻、耳、唇などいずれも体の末端部で外気に触れ、寒冷にさらされやすいところにも生じることがあります。極端に血流が悪いときは冷感だけでなく、痛みやしびれを感じることもあります。原発性では症状は軽度であることが多いく、自然に症状が出なくなって治ってしまう場合もあります。レイノー現象は、色調変化についての3つの問診(上記のレイノー現象の項参照)、あるいは写真で診断できるため、必須の検査はありません。3色の色調変化が典型的ですが、2色以上あればレイノー現象と診断します。専門的な評価のために、サーモグラフィーや指尖脈波が行われることがあります。冷水誘発試験はかつて行われましたが、今はあまり推奨されていません。次に、レイノー病と診断するにあたり、動工具や薬剤、全身の病気などレイノー現象を生じる二次性の要因がないか問診で確認する必要があります。レイノー現象は、膠原病の中でも強皮症、混合結合組織病でほぼ必発し、しかも初発症状であることが多いので、これらの病気が疑われる場合は血液検査(自己抗体の測定など)や尿検査、画像検査などが適宜検討されます。また、他の身体状況から特にこれらの疾患が疑われなくとも、スクリーニングとして抗核抗体は一度検査した方がよいと思われます。レイノー現象の治療のゴールは、発作を起こらないようにすることです。生活指導は、誘因を避けることがレイノー現象の予防につながるため、手袋や靴下を着用する、冬季に車に乗る際には暖房などで温度調節をおこなう、夏場でも直接冷房にさらされないようする、冷蔵庫の開閉の際に注意する、精神的なストレスを抱えないようにする、禁煙(タバコが細い血管を収縮させるため)などを心がけることが大切です。レイノー現象の程度が強い場合には、お薬を内服する治療も考慮されます。カルシウム受容体拮抗薬という種類の血圧を下げる薬は血管拡張作用を持つため、原発性レイノー現象(レイノー病)に対して有効であることが国際的な研究で示されています。薬剤のみではコントロールできない場合には、交感神経ブロックを行い血管が広がりやすくすることもあります。レイノー病は時間経過とともに自然に改善することも期待できる病気です。一方、強皮症、混合結合組織病などの膠原病の初発症状であることもありますので、経過観察することも重要です。

漢方と鍼灸

 基本的に冷え性の方が多いですね。まず末梢の血流改善と冷え性改善に取り組みましょう。女性は筋肉が少ないので、運動や少し筋肉を鍛えるといいですよ。運動した後、タンパク質やアミノ酸を摂取し筋肉がつきやすいようにしましょう。すると毛細血管が新生してきます。また朝ご飯はしっかりお米を食べましょう。お味噌汁も大事です。体が温まる食材を積極的に摂りましょう。生野菜は体を冷やします。ストレスの反応穴、一番症状がきついところから最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。

やけど

 やけどとは、皮膚に高温の液体・金属・炎や、紫外線、化学物質などが触れることにより、皮膚やその下に存在する皮下組織にダメージを引き起こす外傷のことです。やけどは日常的にもありふれた外傷の1つですが、ダメージを受けた範囲やダメージが及ぶ深さによっては命に関わることも少なくありません。一般的にやけどはダメージの深さによってI~III度に分類され、重症度を判定する際に“Artzの基準”が用いられることが多いです。Artzの基準では、II度熱傷が全身の30%、III度熱傷が全身の10%に及ぶと重症と定義されます。ただ、II度熱傷が15%以上となってくると外来では治療が難しく入院となることもあります。また熱傷の範囲の計算法はいくつかありますが、成人の場合では手のひらを全身の約1%、腕1本を約10%、足1本を約20%として計算します。ただし、やけどの範囲や深度にかかわらず、部位によっては重症なやけどとして治療にあたる必要があります。たとえば、手指や足のIII度熱傷は機能的な後遺症を残す恐れがあるため、たとえ1%であっても重症とされます。また、気道(息の通り道)や会陰部の熱傷は、深度が浅い場合でも窒息の危険性や緊急手術を要することがあるため、同様に重症例として治療を行います。また、やけどの治療方法は重症度によって大きく異なります。軽度で狭い範囲のやけどであれば、痛みや炎症を抑える効果のある塗り薬などが使用されますが、皮膚の再生が期待できないような重度のやけどでは、ダメージを起こした皮膚を広範囲にわたって切除する“デブリードマン”と呼ばれる治療や、失われた皮膚を移植する治療が必要となります。やけどした皮膚はバリア機能が損なわれるため、細菌感染を起こしやすくなります。さらにやけどをした皮膚からは水分が失われるため、重度のやけどでは全身の慎重な管理が必須です。やけどは、皮膚に高温の液体や蒸気、金属、炎などが触れたり、紫外線などの刺激にさらされたり、酸性度やアルカリ性度の高い化学物質などに触れたりすることによって発症します。一般的によく見られるやけどは、アイロンや沸騰したお湯など温度の高いものに触れることによって引き起こされます。ホットカーペットや湯たんぽなど、通常であればやけどを起こさない温度のものでも長時間触れることによりやけどを起こし、これを低温やけどといいます。また、紫外線の刺激を長時間受けることによる日焼けもやけどの一種です。酸性度やアルカリ性度の高い化学物質などは、“化学熱傷の原因となり、長時間かけて皮膚と皮下組織にダメージを与えて壊死えしを引き起こすため、重症化しやすく注意が必要です。
 やけどの症状は皮膚がダメージを受けた範囲や深さによって大きく異なります。一般的に、やけどはダメージが及ぶ皮膚の深さによってI~III度に分類され、それぞれの症状は次のとおりです。I度熱傷皮膚のごく浅い表皮と呼ばれる部位のみにダメージが及んだやけどのことです。もっとも軽度なやけどであり、皮膚の赤みやむくみなどが生じて痛みを感じますが、数日で自然に治り、ほとんど痕も残らないとされています。浅達性II度熱傷表皮の奥にある真皮と呼ばれる部位にまでダメージが及んだやけどのことです。I度よりもやや症状は重く、水ぶくれが形成され強い痛みを伴います。治るのに1~2週間ほどかかりますが、通常は痕が残りません。ただし、まれにダメージを負った部位に色素沈着が生じることもあります。深達性II度熱傷は浅達性II度よりも真皮のさらに奥にまでダメージが及ぶやけどのことです。水ぶくれが形成されますが、神経なども巻き込まれるため非常に強い痛みを感じます。深達性II度であっても、III度に近い場合には痛みは逆に減っていきます。また、治った後は皮膚にケロイドのような痕が残る可能性が高いです。III度熱傷皮膚の最下層(真皮の下)にある皮下組織にまでダメージが及ぶ重度なやけどのことです。水疱などは形成されず、また神経や血管がほぼ全滅してしまうため、白っぽい色調となり、痛みはほとんど感じなくなります。治るまでに1~3か月以上かかり、手術をしないと引きつったような目立つ傷あとが残ります。深達性II度やIII度のやけどは、皮膚のバリア機能が著しく低下するため感染症にかかりやすくなります。やけどの部分から水分が出て行ってしまうので、脱水状態や電解質異常に陥り点滴治療が必要になることも少なくありません。そのほか、熱のダメージや皮膚が固くなることによる血流障害の影響で筋肉が壊れて、急激に重度な腎不全を引き起こすことや、腸管への血流が低下することで腸管の運動が麻痺してイレウス(腸の動きが悪くなる状態)を引き起こすこともあります。とくに、幼児や高齢者などはこれらの重篤な合併症を引き起こしやすいとされ、注意が必要です。やけどは受傷時の状況や皮膚の状態などから容易に診断を下すことが可能です。そのため、I度熱傷のような軽度なケースでは基本的には特別な検査が必要になることはありません。一方で、深達性II度やIII度熱傷のような重度な熱傷では、炎症や脱水、腎機能など全身の状態を把握するために血液検査や尿検査が行われます。やけどの治療としては感染の予防が非常に重要です。そのため、日々傷の処置をして、受傷した皮膚を清潔に保つことがどの重症度であっても必須となります。I度や浅達性II度のやけどの場合は、受傷部を十分に冷却した後に、ダメージを受けた部位の乾燥を防いで炎症の改善を図るため、塗り薬や受傷部を覆う“創傷被覆材”などを使用した治療が行われます。一方で、深達性II度やIII度のやけどの場合もまず皮膚を清潔にして塗り薬や受傷部を被覆材で対応います。しかし、皮膚の再生が期待できないケースも少なくありません。そのため、最終的にはダメージのある皮膚は切除し、広範囲にわたる場合には皮膚を移植する治療が必要となります。重症のやけどでは、感染症や脱水を起こしやすい状態となり集中治療が必要です。さらに、熱風や煙を吸い込み、気道の粘膜にダメージを起こしている可能性がある場合には、窒息を予防するために気管挿管を行う必要があるため、やけどの面積が小さくても、ほかに浅いやけどしかなくても高度医療機関での治療が必要になります。やけどを予防するには、皮膚にダメージを与える熱源、紫外線、化学物質などを避けることが大切です。具体的には、以下のことに気をつけるようにしましょう。
 化学物質が付いたらすぐに洗い流す、衣類の上から熱湯を被った場合は、衣類は脱がずに冷却する、紫外線を防ぐために日焼け止めを使用する、低温やけどを防ぐために、かいろを長時間同じ部位に当てないようにする、こたつで寝ないようにする、湯たんぽの温度が高くならないようにする など。特に低温やけどや化学熱傷は、気付かぬうちに皮膚の深い部位にまでダメージが及ぶことがあるため注意が必要です。

漢方と鍼灸

 重症はできませんが治りかけやの痛みや傷のあとなどには有効だと思います。傷の治りを良くしたり痛みを緩和する漢方があります。患部から最適な漢方、軟膏、食養生サプリツボを選択し治療していきます。
【症例】40歳 男性 殺虫剤を持つ手にたばこの火が引火。治るのに一か月はかかると言われて帰宅。相談をうけ漢方の軟膏と飲み薬を渡し、その後2週間できれいに完治。ドクターも痕が残ると思っていたそうです。
※軽いものは症例多数

いぼ(疣贅)

 いぼとは、皮膚の一部が盛り上がってできる“できもの”のことを指す一般用語で、医学用語ではありません。医学的には、ヒトパピローマウイルスが小傷から皮膚の内部に入り込むことによって発症するものを尋常性疣贅と呼びます。また、ほかのウイルス感染によるものや、“ペンだこ”や“魚の目”などのように皮膚の一部に慢性的な刺激が加わることによって生じるものもあります。いぼ(疣贅)は発症する部位や原因によって見た目・痛みの有無などが大きく異なります。また、ウイルス感染が関与する場合には、いぼ(疣贅)がどんどん広がっていくこともめずらしくありません。特に目立った症状もなく、広がりがないケースでは治療の必要はありませんが、痛みなどの症状がある場合や、外見的に問題となる場合、広がっていく場合などは治療が必要なこともあります。いぼ(疣贅)の多くは、皮膚の小傷などからヒトパピローマウイルスや伝染性軟属腫ウイルスなどが感染することによって引き起こされます。これらのウイルスは、特にアトピー性皮膚炎などによって角質層のバリア機能が低下しがちになると感染しやすいとされています。そのほかにも、靴や筆記用具などによる慢性的な刺激が皮膚に加わることによって生じる胼胝べんち(たこ)や、骨の突出による刺激で生じる鶏眼(うおのめ)、首や腋わきの下などに生じる軟性繊維腫もあります。また、皮膚の悪性腫瘍がいぼの様な外見を示すケースもあり、慎重な鑑別が必要となります。いぼの症状は原因や発症部位によって大きく異なります。ウイルス感染によって生じるいぼ(疣贅)は、膝、顔、指、肘など皮膚の小傷ができやすい部位に発症するケースが多く、通常は痛みやかゆみなどを伴うことはありません。ヒトパピローマウイルス感染による尋常性疣贅は固く表面がザラザラしている一方、伝染性軟属腫ウイルスによる“水いぼ”は柔らかくぶよぶよした状態であるのが特徴です。また、これらのウイルス感染によるいぼは、内部に潜んでいるウイルスがいぼの周囲に広がるため、多発しやすいのも特徴の1つとなっています。そのほか、摩擦によって生じるいぼ(疣贅)は徐々に大きくなり、色素沈着を引き起こすことも多く、痛みやかゆみを伴うケースもめずらしくありません。いぼ(疣贅)は外観的な見た目から容易に診断を下すことはできますが、中には悪性腫瘍によるものもあるため慎重な診断が必要になることもあります。いぼ(疣贅)の原因を詳しく調べるには、皮膚の深層までの状態を詳しく観察するためのダーマスコピー検査などが行われますが、確定診断のためにはいぼ(疣贅)の組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく観察するための病理検査が必要となります。なお、ダーマスコピー検査などで悪性腫瘍の可能性がある場合は、手術でいぼ(疣贅)を切除した後に病理検査を行うこともあります。
 いぼは基本的に痛みやかゆみなどの症状を引き起こすことはないため、悪性腫瘍でなければ治療の必要がないケースも多々あります。一方で、目立ちやすい位置に発生した場合や多発している場合、何らかの症状を伴う場合などは積極的な治療の対象となります。現在、いぼに対して行われている治療は以下のとおりです。冷凍凝固療法で液体窒素を浸した綿棒をいぼに当てて冷凍し、凝固する治療方法です。通常は一度で完全にいぼを切除することはできず、数回にわたって治療を繰り返す必要があります。電気焼灼法はいぼに電流を当てて焼き切る治療法です。通常一回で完治しますが、場合により冷凍凝固療法と同じく、複数回にわたる治療が必要となることもあります。また、電気焼灼法は跡が残りやすいため、足の裏など目立ちにくい部位に用いられるのが一般的です。電気の代わりにレーザーを用いて焼灼する方法もあります。悪性腫瘍が疑われるようなケースや冷凍凝固療法などを繰り返しても再発するケースなどではいぼ(疣贅)の周囲の正常な皮膚を含めて切除する手術を行うことがあります。効果には個人差がありますが、漢方薬の一種であるヨクイニンの内服サリチル酸・トリクロロ酢酸・フルオロウラシルなどの塗り薬を使用するといぼ(疣贅)が縮小・消失することがあります。軽度ないぼ(疣贅)では、まずこれらの薬を用いた薬物療法を行うケースも少なくありません。尋常性疣贅は皮膚の小傷からヒトパピローマウイルスなどの病原体が侵入することによって引き起こされます。このようなウイルス感染を完全に予防する方法は現在のところ解明されていませんが、角質層の構造が乱れることによって皮膚のバリア機能低下が生じると感染が起こりやすくなることが分かっています。そのため、いぼを予防するには、皮膚の保湿を心がけるなどバリア機能をキープするケアを行うことが大切です。また、サイズが合わない靴や強い筆圧なども胼胝や鶏眼の原因となるため注意が必要でしょう。

漢方と鍼灸

 柔らかいイボにはお灸も有効です。固いものは漢方の軟膏を塗り、ヨクイニンを末にして漢方と合わせて使います。ヨクイニンは量が大事ですのでイボの波長から調べてお伝えいたします。イボから最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。
【症例】80歳 女性 頭に固いイボが何十年とあり死ぬまでに絶対取って欲しいと相談。やや時間がかかりましたが、亡くなる1年前にぽろっと取れ完治。月約3000円

接触皮膚炎

 接触皮膚炎は、皮膚に接触した物質により引き起こされる皮膚炎のことです。そのなかでもアレルギー性接触皮膚炎は、アレルギーの原因物質になる「アレルゲン」が、皮膚に接触したことで引き起こされるⅣ型アレルギーといわれる免疫反応です。俗に「かぶれ」といわれ、金属アレルギーや植物アレルギーが知られています。多くの場合、アレルゲンが皮膚に触れることで感作が成立し(自分自身の免疫反応がアレルギーを覚えること)、その後、同じアレルゲンに接触すると免疫反応がはたらいて「かぶれ」を引き起こします。つまり、アレルギー接触皮膚炎は、初回の接触では発症しません。これまでに接触したことがある、つまり感作が成立した方にしか発症しません。しかし、一度感作がおこると、微量のアレルゲンであっても発症します。アレルギー性接触皮膚炎の原因となるアレルゲンは、無数にあるといわれていますが、なかでも職業・趣味・化粧品・日光など日常生活で使われるさまざまなものに含まれていることが多いです。症状を認めた部位によって原因が異なることが多いです。頭部に症状がある場合:ヘアダイ・シャンプー・育毛剤など、顔に症状がある場合:化粧品・外用薬・サンスクリーン剤・眼鏡など、眼囲に症状がある場合:点眼薬・眼軟膏・花粉・睫毛エクステなど、手に症状がある場合:あらゆる日用品・職業などです。原因となりやすいものとして以下のものが挙げられます。金属:コバルト、ニッケル、クロム、銀、金、植物:ウルシ(ウルシール)、サクラソウ(プリミン)、ギンナン(ギンコール酸)、キク、ユリ、食物:マンゴー(ウルシオール)、ギンナン、レタス、タマネギ、日用品:デスクマットなどの抗菌製品、ゴム製品(MBT)、衣類、洗剤、歯磨きペースト、化粧品:白髪染め(パラフェニレンジアミン)、香料、保存料、医薬品:NSAIDs外用薬・貼付薬、消毒薬、点眼薬、ステロイド外用薬、職業性:各種金属、樹脂類レジン、ゴム製品、機械油
 外来性のアレルゲンとなる原因物質が皮膚に接触した部位に限局して湿疹ができます。アレルゲンとの接触後は局所の痒みが始まり、20時間後くらいに紅斑(紅色の斑)、丘疹(ぶつぶつ)へ変化します。症状が強いと水疱(水ぶくれ)となり、慢性化すると苔癬化たいせんか(皮膚が厚くなってゴワゴワした状態)します。ヒリヒリ感やかゆみを伴っていることもあります。原因不明の慢性湿疹のなかには、接触皮膚炎が混じっていることがあるので、身の回りの物がアレルゲンとなっている可能性があることにも注意する必要があります。
 アレルギー性接触皮膚炎では、原因物質を明らかにし、そのアレルゲンを避けることが最も重要です。まず、湿疹を起こしたときの状況を詳細に問診します。問診では、発症時期、発症部位、増悪や緩解の時期と自宅・職場・発汗・日光との関連性、職業歴、趣味、化粧、家事、家族歴、薬物の摂取歴などを詳しく確認します。さらに、湿疹の出現部位、症状から原因となる物質を推測します。原因を特定するためにはパッチテストが有効です。パッチテストは、アレルゲンを付けたパッチテスト絆創膏を健康な皮膚に貼付して、皮膚の反応を調べる検査です。通常、背中に48時間密閉貼付し、48時間後にパッチテスト絆創膏をはがし、皮膚反応を判定基準に従って判定します。さらに貼付72時間後7日後の計3回で皮膚反応を判定します。原因物質を避けることが最も重要です。治療は、ステロイド外用、抗アレルギー薬の内服加療が中心です。湿疹が重症の場合はステロイドの内服加療をすることもあります。

漢方と鍼灸

 接触性皮膚炎も湿疹とアトピー同様に燥と湿で証を判別します。原因物質を特定し接触しないようにすることも大事です。アレルギー反応穴で原因物質を探してお伝えいたします。アレルギー反応が過敏にでるということは免疫の亢進が考えられるので免疫の調整が必要です。免疫をいかに寛容な状態に戻すか、決して免疫抑制ではなく寛容です。また赤味が強い人、かゆみが強い人は、菌や真菌の有無をみます。ステロイドで悪化した場合、真菌を疑いましょう。湿疹三角形(紅班期・丘疹期・小水疱期・膿疱期・糜爛期・結痂期・落屑期)でとらえることもありますが、三陰三陽で判断します(太陽病・少陽病~)。一番ひどい箇所から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。皮膚は内臓の鏡です。接触皮膚炎が出るのには理由があるのでステロイドや抗アレルギーで抑え込んで治っておわりではなく、体の状態を確認し食生活、ストレスなど体のサインに耳を傾けましょう。「未病治」とはそういうものです。

アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみを伴う湿疹がよくなったり悪くなったりを繰り返す病気のことです。子どもの頃に発症することが多く、一般的には成長と共に症状は改善していきますが、成人でも1~3%の人が罹患しているとされています。明確な発症メカニズムは解明されていませんが、遺伝やアレルギーを起こしやすい体質などが発症に関与していると考えられており、喘息ぜんそくや花粉症などアレルギーによる病気を併発しやすいのも特徴です。現在のところ、アトピー性皮膚炎を完治させる科学的に根拠のある治療はありません。治療は、症状を改善させるため皮膚の炎症を抑えるステロイド薬や免疫抑制剤の塗り薬やかゆみ止めなどを用いた対症療法が行われます。また、皮膚のバリア機能を改善させるため、保湿の徹底など日頃のスキンケアも重要となります。2018年、従来の治療法で十分な効果を得られないアトピー性皮膚炎に対し生物学的製剤が使用可能となりました。また、外用JAK【ヤヌスキナーゼ】阻害薬や経口JAK阻害剤が使用可能となっています。
 アトピー性皮膚炎には、サイトカインと呼ばれる炎症物質が関与しています。サイトカイン(細胞外の刺激)を細胞内に伝達する酵素がJAK(ヤヌスキナーゼ)です。サイトカインが細胞にくっつくと、JAK経路が活性化して炎症やかゆみを引き起こします。コレクチム軟膏は、JAK経路をブロックすることで皮膚の炎症やかゆみを抑え、アトピー性皮膚炎を改善します。コレクチム軟膏(一般名:デルゴシチニブ)は、アトピー性皮膚炎を適応とした世界初の外用JAK阻害剤です。0.5%製剤(成人用。小児も使用可能)が2020年6月に、0.25%製剤が2021年6月に国内販売が開始されました。先述したJAKにはJAK1・JAK2・JAK3・Tyk2の4種類があり、コレクチムはこれらすべての作用を阻害する効果があります。細胞内シグナルを阻害することでサイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31など)による過剰な免疫の活性化を抑え(STATの活性化を抑制)、皮膚の炎症を改善します。1日2回、適量(1回あたりの塗布量は最大5g)を患部に塗布します。年齢適応は2歳以上となっています。既存のアトピー性皮膚炎治療薬であるステロイドやタクロリムス(プロトピック)と比較し分子量が小さく、容易に皮膚で経皮吸収されます。ステロイドの長期使用による副作用を軽減する目的で作られた薬剤なので皮膚萎縮や血管拡張などが起こらない為、顔面や頸部などのステロイド外用薬を長期塗布したくない部位での場合にも適していると思われます。しかし反面、ステロイドと比較すると効果は弱い印象があります。しかし、プロトピックの様な刺激感もなく使いやすい薬です。副作用としては、頻度はさほど多くはないですが、免疫抑制剤である為ニキビやヘルペスの様なで皮膚感染症を起こすことがあります。これは他の抗炎症外用薬と同様です。やむを得ず使用する場合には、適切な抗菌・ウイルス・真菌薬による治療・併用が必要です。粘膜やびらん面には使用できず、妊娠または妊娠している可能性のある方や授乳婦の方には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます。治療開始4週間以内に皮疹の改善が認められない場合は使用を中止する事となっています。
 またモイゼルト軟膏(一般名:ジミファミラスト)は、アトピー性皮膚炎を適応とした国内初のPDE4阻害剤です。2022年6月1日より販売が開始されました。1%製剤(成人用。小児も使用可能)と3%製剤(小児用)があります。ホスホジエステラーゼ(PDE)4という酵素があり、PDE4は多くの免疫細胞に存在する酵素で、cAMPという物質を分解する働きがあります。cAMPの分解が亢進し細胞内のcAMP濃度が低下すると、免疫細胞からの炎症性物質の産生が亢進してしまいます。つまり、PDE4は炎症物質を分解しにくくする働きがあるという事になります。モイゼルト(ジミファミラスト)は、このPDE4の働きを阻害することによって炎症細胞内のcAMP濃度を高め、過剰な炎症物質の産生を制御することにより皮膚の炎症を抑制します。1日2回、適量(コレクチム軟膏、プロトピック(タクロリムス)軟膏と異なり、塗布量に制限は無し)を患部に塗布します。年齢適応は2歳以上となっています。こちらもコレクチムと同様、ステロイドの長期使用による副作用(皮膚萎縮や血管拡張など)が起こらない為、顔面や頸部などのステロイド外用薬を長期塗布したくない部位での場合にも適していると思われます。
 アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が低下することが原因で引き起こされる病気です。私たちの皮膚は4つの層で構成されており、もっとも外側を“角質層”と呼びます。角質層には皮膚内部の水分が蒸発して皮膚が乾燥したり、病原体や異物が侵入したりするのを防ぐはたらきがあります。このようなはたらきをバリア機能と呼びますが、アトピー性皮膚炎はこのバリア機能が低下するため皮膚に異物が侵入しやすくなり、アレルギー反応を引き起こすことで発症すると考えられています。一方で、どのようなメカニズムで皮膚のバリア機能が低下するのか明確には解明されていないのが現状です。しかし、遺伝やアレルギー体質などが関与しているとの考えもあり、近年ではアトピー性皮膚炎患者は皮膚の水分保持を担うフィラグリンと呼ばれるタンパク質が少ないために皮膚が乾燥しやすい状態であることが分かっています。アトピー性皮膚炎はかゆみを伴う湿疹が生じ、よくなったり悪くなったりを繰り返す病気です。特にダニ、カビ、汗などによる物理的な刺激やストレスなどはアトピーの症状を悪化させることが知られています。アトピー性皮膚炎の多くは1歳未満で発症し、発症直後はかゆみを伴うじくじくとした赤い発疹が顔から首、頭皮、手、腕、脚などに現れます。そして1~2か月ほど経過すると、患部が乾燥して皮膚が厚くなったように変化していくのが特徴です。発症部位、かゆみの程度などには個人差がありますが、一般的に乳児は体の広い範囲に湿疹ができることが多く、成長すると首の全面や膝・肘の内側など限られた部位にのみ現れるようになります。また、かゆみは非常に強いことが多く、患部をかきむしってしまうことで皮膚のバリア機能がさらに低下し、アトピー性皮膚炎の症状がさらに悪化するという悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。さらに、そこからウイルスや細菌などが侵入して感染症を合併することもあり、長期間アトピー性皮膚炎を患っている人で特に顔の症状が強い場合は10~30歳代で白内障や網膜剥離もうまくはくりなどを引き起こすケースがあるため注意が必要です。
 アレルギーが生じているときに高値となるIgE抗体と呼ばれるたんぱく質や、アトピー性皮膚炎を発症すると産生が増加するTARCと呼ばれる皮膚の細胞から作られる物質の量を調べるために、血液検査を行うことがあります。ここでTARC検査は、アトピー性皮膚炎の症状の勢いを調べることができる血液検査です。アトピー性皮膚炎の治療を正確にすすめるために初めて日常診療での応用の方法を見出した検査でもあります。TARCとは、簡単にいうと“炎症が起こっているときにTh2細胞が出す物質”です。Th2細胞から放出されたTARCは皮膚に広がり、血液に入り込んで全身をめぐるため、採血をするとその量が分かります。皮膚の炎症を“火事”にたとえて考えるとイメージしやすいかもしれません。皮膚という現場でどれくらいの規模の火事が起こっているのか、その火の勢いを調べる検査ということです。TARC検査には次のようなメリットがあります。初診でTARC値を測定すると、患者さんが自分の状態を客観的に把握することができます。症状が長く続いていると、どれくらい悪いのか自分では分からなくなってしまうため、数値で確認することが有用です。症状が落ち着いていると思っても、TARC値が高かったり上下したりするときは、症状をコントロールできていないのだと意識することが大切です。例外として、慢性的に重症の状態にある患者さんや結節が皮膚症状の主体となっている患者さんでは、TARC検査に重症度が反映されないケースがあるため、TARC値が正常だから安心とは限らないことに注意が必要です。アトピー性皮膚炎では、症状が軽いように見えても実は皮膚の中で炎症が続いていることが少なくありません。TARC値が少し下がって見た目がよくなると、治ったと思い治療を止めてしまう患者さんがいますが、見かけだけで判断して治療を止めると、体の中に残っている炎症が再燃して症状の悪化を繰り返す可能性があります。TARC値が高いときは体の中に炎症が残っているのだと意識しましょう。
 また、特定のアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)の有無を調べるためにアレルギー検査を行う場合もあります。アレルゲンを特定するため、アレルゲンが疑われる物質を皮膚に晒さらして反応を観察するパッチテストや針で皮膚に少量のアレルゲンを注入して反応を観察するブリックテストなどを行うことがあります。アトピー性皮膚炎を根本的に治す方法は残念ながらありません。そのため、アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚のバリア機能を改善・維持するためのスキンケア、かゆみや湿疹症状を改善するための薬物療法、そして症状を悪化させる要因を排除することが治療の主体となります。スキンケアは皮膚を清潔にキープして乾燥を防ぐため、保湿剤などを用いて行います。一方、症状を改善させるためには皮膚の炎症やアレルギーを抑えるステロイド薬や免疫抑制剤の塗り薬を使用したり、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬などの塗り薬や飲み薬を使用したります。外用療法ではステロイド外用薬、カルシニューリン阻害外用薬、JAK阻害外用薬、PDE4阻害薬を使い、全身療法には炎症やかゆみを抑える飲み薬(カルシニューリン阻害内服薬、JAK阻害内服薬)、生物学的製剤の注射、紫外線療法(ナローバンドUVB療法など)を行います。
 ここでカルシニューリンとは、神経伝達を調整する作用を持ち、脳神経疾患や中枢神経系疾患の発症に影響を及ぼす酵素のこと。カルシニューリンは、体内のカルシウム濃度が上昇することによって活性化し、遺伝子の発現を調節するほかシナプスを使った神経伝達に影響を及ぼす。ただし、どのような影響を及ぼすのか詳細は未だに解明されていない。カルシニューリンの減少・もしくは増加が、統合失調症やダウン症候群、アルツハイマー病といった脳神経疾患や、糖尿病、肥大型心筋症といった中枢神経系疾患の発症に影響を及ぼすことが判明している。例えばマウスを使った実験で、カルシニューリンが作用していないマウスには、統合失調症に似た症状が見られた。この実験により、カルシニューリンが働かないことが統合失調症の発症に結びつくということが明らかになっている。この作用を逆手にとり、カルシニューリンの作用を阻害し、細胞内情報伝達作用を操作することにより、免疫担当細胞の活動を抑制することができる。そのため、一部の免疫抑制剤(タクロリムスやシクロスポリン)は、このカルシニューリンの阻害を目的として作られている。
 アトピー性皮膚炎の治療の基本は外用療法(塗り薬)です。医師が薬を処方して塗る量の目安をお伝えし、患者さん主体で治療を行います。皮膚の炎症が抑えられてきたら、徐々に塗る量、塗る回数を減らしていきます。そして、症状を悪化させる要因を排除するには吸水性の高い肌着を身につける、身の回りを整えてダニやホコリなどを極力減らすといった対処が必要です。また、アトピー性皮膚炎は上述した対症療法で症状が改善したとしても再発を繰り返すのが特徴です。そのため、症状が改善した後もその状態をキープするためにステロイド薬の塗り薬の使用を続け、徐々に薬の量を減らしていくのが一般的です。2018年、ステロイド外用剤などの従来の治療法で十分な効果を得られないアトピー性皮膚炎に対し、注射薬である生物学的製剤が登場しました。また、経口JAK阻害剤も使用可能となっています。ステロイド外用剤の副作用の1つに、長期外用に伴う皮膚の菲薄化がありました。そのため、新規外用剤の開発が待たれていました。2020年、ステロイド外用剤とは作用機序がまったく違う外用JAK阻害薬が登場しました。今後も多くの新規薬剤が登場予定です。ただしアトピー性皮膚炎の明確な発症メカニズムは解明されていないため、確実な予防法はありません。しかし、アトピー性皮膚炎はダニ、ホコリ、汗、ストレスなどによって悪化しやすいため、発症した場合はできるだけ皮膚への刺激を避けて規則正しい生活を送ることが大切です。また、日頃から保湿を中心としてスキンケアを行う必要があります。
 リアクティブ療法は、症状が出たら薬を塗り、症状が引いたら塗るのをやめるという、従来の治療概念です。滅多に症状が出ない場合にはこの方法で十分ですが、同じ部位または全身のあちこちに頻回に症状を繰り返す患者さんは多くいらっしゃいます。症状を繰り返す理由として、実は薬を塗って症状がおさまったように見えても炎症が残っていることが分かってきたため、近年では後述のプロアクティブ療法という考え方が重視されてきています。
 プロアクティブ療法は、症状がおさまった後も頻度を減らしながら薬を塗り続け、症状の出ていない状態をできるだけ長く保つことを目指す、新しい治療概念です。症状を繰り返したり、症状が悪化したりしている場合には、プロアクティブ療法を行うことをおすすめします。
 アトピー性皮膚炎の治療の最終目標は“症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること”です(日本皮膚科学会『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018』より)。アトピー性皮膚炎は寛解と増悪を繰り返す病気なので「よくなったり悪くなったりするのは仕方がない」と思う方は多いかもしれません。しかし、プロアクティブ療法をしっかりと行うことで、やがて炎症がおさまり、ほとんど薬を使わず、スキンケアのみで維持できるくらいの状態になる患者さんも数多くいらっしゃいます。患者さんが目指したいゴールは、症状がない状態を保つことだと思います。そのためには、最初は思い切って薬を使い、早くゼロレベルにして、その後は皮膚のよい状態をキープしながら薬の塗布日数を徐々に減らしていくことが大切です。症状がおさまれば、悪循環による悪化因子を減らすことにもつながるので、薬は徐々に少ない量で維持できるようになっていくわけです。薬をできるだけ使いたくないからと、塗ったり止めたりしているうちに悪化してしまう患者さんもよくいらっしゃいますが、薬を適切に使うことが、薬を最小限に抑え、長く快適に過ごすために重要です。プロアクティブ療法を成功させるためのポイントは薬を塗るべき場所を最初に決めること。プロアクティブ療法では、どこに薬を塗るべきか医師が判断し、患者さんが塗る場所を間違えないよう適切に伝えることが課題だと考えています。薬を塗るべき場所は患者さんによって異なります。全身に塗らなければならない患者さんもいますが、全身ではなく、局所だけに症状を繰り返している方も多いです。たとえば肘と膝に症状が出る場合はそこだけというように、特定の場所に薬を塗ることで改善が期待できます。症状がおさまって薬を塗る場所が分からなくなったという患者さんのために、当院では、治療を開始する前に、人体図のイラストを描いて薬を塗るべき場所にマークをつけ、患者さんにお渡ししています。プロアクティブ療法を行う際に注意していただきたいのは、薬を塗る回数をすぐに減らせるわけではないということです。重症の方ほど、急に回数を減らすとまたすぐに症状が出てしまいます。自己判断で薬を減らさず、医師の指示に従いましょう。当院では、TARC検査で症状の再発のないことを予測したうえで、正常値をキープできるように薬の減量を行っています。毎日薬を塗って症状がおさまったら、2日に1回、3日に1回、週に2回、週に1回と徐々に回数を減らし、スキンケアだけで症状が落ち着いている状態を目指しましょう。

漢方と鍼灸

① 季節性で考える 2月頃、梅雨、夏、秋以降
② できる部位で考える 陰面(湿気がたまりやすい)膝裏、肘裏、首のしわ、首全体、髪の生え際、髪の中 陽面(乾燥しやすい)首筋、肘、手首、背中
③ 痒くなるタイミングで考える 突発、自律神経、逍遥熱、ストレス、生理前、熱くなる、食後、外出時
④ 痒みの激しさで考える 自律神経、逍遥熱、真菌、アレルギー反応
⑤ 痒くなる場所で考える 長時間、花粉症、黄砂、PM2.5、光線過敏症
⑥ ステロイドの使用期間、頻度、強度 有無で考える
⑦ 皮膚の乾燥状態で考える 燥 中間 湿
⑧ 皮膚が汚いか 汚くないか
⑨ 肌から考える ウエット オイリー 地黄肌 もち肌 色白 色が濃い
⑩ 痒みの度合い 掻き壊しで皮膚が肥厚
⑪ 大切な養生から考える 掻かない 皮膚を保護・保湿 黄砂・花粉の除去 白砂糖 チョコレート・洋菓子 酸化した油 赤い色素 春先の新芽 灰汁のつよいもの 外来種 唐辛子 お酒 もち米 せんべいの禁止
⑫ 三陰三陽で考える
⑬ 慢性は少陽病か太陰病で考える
⑭ 浸出液の色と量で考える
⑮ 睡眠から考える
⑯ 真菌・菌の有無を考える
⑰ アレルギーの体質改善を考える 免疫の調整
⑱ 便通を考える 便秘 下痢

一番反応の強い患部、皮膚の反応穴から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。

手湿疹(主婦湿疹)

 手湿疹とは、何らかの外的な刺激やアレルゲンに触れることで、手に生じる湿疹のことです。接触性皮膚炎の一種であり、紅斑や丘疹、水疱、苔癬化など、さまざまな形態の皮疹がみられるのが特徴です。手湿疹は、慢性的な刺激が加わったり、長期間アレルゲンに曝露されたりすることで、慢性の接触性皮膚炎となり、炎症が続くことでまず手の皮膚が厚くなって苔癬化を生じます。このように苔癬化した皮膚の一部は、炎症を伴う紅斑や丘疹などの急性の症状も現れるため、さまざまな形状の皮疹が混在した状態となります。手湿疹は職業病として頻度が高い病気であり、特に主婦・理・美容師、看護師、調理業の方に多くみられます。これらの職種は、手が薬液消毒液などに晒される機会が多く、このような外的刺激が発症の誘因であると考えられています。手湿疹は女性に多いとされていますが、これは遺伝的な要因ではなく、女性のほうがこれらの仕事の場以外にも家事などで手の皮膚にさまざまな刺激を受けやすいためです。このように、手湿疹は水仕事の多い家事を行う主婦にも多くみられることから、主婦湿疹と呼ばれることもあります。手湿疹の発症原因は次の3つに分けられ、それぞれの特徴は以下の通りです。①種々の薬液や洗剤などの物理的・化学的な刺激が皮膚に直接ダメージを与えることが原因の場合があります。手湿疹の約70%は、このような直接的な刺激が原因であると考えられています。②アレルゲンへの暴露が手湿疹を引き起こすことがあります。アレルゲンは、花粉やハウスダストなどよりも、金属や洗剤などの化学物質であることが多く、指の間や側面などアレルゲンが残りやすい部位に強い症状が現れるのが特徴です。また、ダニやハウスダストのようなタンパク質をメインとするアレルゲンに触れた場合には、即時型アレルギーによって蕁麻疹が現れます。通常、蕁麻疹はアレルゲンが除去されると数時間程度で自然に消えるものですが、繰り返しアレルゲンに曝露されて蕁麻疹の発症を繰り返すことで、掻いた部位を中心に湿疹を生じることがあります。③アトピー性皮膚炎が手に発症して、さまざまなタイプの湿疹を引き起こすことがあります。アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下するため、水仕事などで荒れた手に炎症を起こしやすく、重度な湿疹ができるのが特徴です。
 湿疹とは、皮膚の炎症によって生じる病変のことであり、かゆみを伴う紅斑を生じ、続いて丘疹になります。さらに丘疹は水疱や膿疱、びらん、痂皮かさぶたなどを形成して、さらに進行すると色素沈着や苔癬化を生じます。手湿疹は長期間の刺激やアレルゲン曝露によって引き起こされる皮膚炎であるため、特定の段階の皮疹が見られるのではなく、さまざまな段階の皮疹が混在しているのが特徴です。手湿疹の原因としてもっとも多い物理的・化学的刺激によるものでは、一般的に利き手の指先や爪の周りなどから皮疹が現れ、やがて手全体に広がっていきます。皮膚症状は軽度な紅斑や乾燥などからはじまり、刺激が長期間に及んだ場合や短期間に非常に強い刺激が加わった場合には水疱を生じ、炎症が慢性化すると皮膚が乾燥した状態で肥厚(苔癬化)して、指先などを中心に皮膚に亀裂が入るようになります。
 また、アレルギーによるものでは、物理的・化学的刺激で生じる湿疹よりも重度なことが多く、強いかゆみを伴う水疱や紅斑を生じることも少なくありません。湿疹はアレルゲンに曝露された部位から生じ、指の間や側面などのアレルゲンが残りやすい部位に生じやすいとされています。さらに、アトピー性皮膚炎によるものでは、主に手の甲に苔癬化を伴う紅斑や水疱、丘疹などが見られます。皮膚のバリア機能が低下しているため、外的な刺激に弱く、悪化しやすいのが特徴です。手湿疹は見た目や症状から容易に診断することができますが、治療法を検討するためにどのような原因で手湿疹が生じているのか調べることがあります。現在、主に行われている検査は次の通りです。アレルギー性の手湿疹が疑われる場合に広く行われ、特定のアレルゲンに対するIgE抗体価を調べてアレルギーを起こす可能性のあるアレルゲンを特定するための検査です。アレルゲンを詳しく調べる検査であり、検査方法にはパッチテストとブリックテストがあります。パッチテストはアレルゲンと推測される物質を皮膚に貼付し、反応を調べる検査で、ブリックテストはアレルゲンを皮下に注入してアレルギーが生じるかを調べる検査です。手湿疹は、白癬・疥癬などの感染症、乾癬、皮膚筋炎、掌蹠膿疱症などの皮膚疾患との鑑別(見分けること)が難しいことがあります。このため、確実な診断のために湿疹の組織を採取して病理組織検査を行うことがあります。手湿疹を治すには、原因となる外的刺激やアレルゲンを避け、刺激を与えないようにすることが重要です。しかし、日常生活を送るうえでは手を全く使わないことは困難でしょう。このため、湿疹に対する治療には主に外用薬と内服薬が用いられます。外用薬は皮膚の炎症を抑えるためのステロイド外用薬、皮膚を保湿するための保湿剤などが使用されます。ステロイド外用薬は皮膚の炎症を抑える効果がありますが、手湿疹を根本から治す効果はなく、漫然と使用を続けると皮膚が薄くなったり、病変部に細菌・真菌感染を起こしやすくなったりするので注意が必要です。また、アレルギーが原因の手湿疹では、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などの内服治療が行われます。これらの内服薬は湿疹によるかゆみを改善する効果があり、皮膚を掻きむしることで生じる湿疹の悪化を防ぐこともできます。

漢方と鍼灸

 湿疹とアトピーは燥と湿で証を判別します。また赤味が強い人、かゆみが強い人は、菌や真菌の有無をみます。ステロイドで悪化した場合、真菌を疑いましょう。湿疹三角形(紅班期・丘疹期・小水疱期・膿疱期・糜爛期・結痂期・落屑期)でとらえることもありますが、三陰三陽で判断します(太陽病・少陽病~)。アレルギーがある場合、何が反応しているかアレルギーの反応穴で調べます。一番ひどい箇所、アレルギーの反応穴から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。皮膚は内臓の鏡です。湿疹がでるのには理由があるのでステロイドで抑え込んで治っておわりではなく、体の状態を確認し食生活、ストレスなど体のサインに耳を傾けましょう。「未病治」とはそういうものです。薬剤、コロナでアルコール消毒、洗剤などの接触をさけるためゴム手袋などをするようにしましょう。ゴムにアレルギーがある方はビニール製のものや工夫が必要ですが、直接触れないようにしましょう。どうしても触れた場合速やかに水で洗い流し保湿の軟膏などで必ずコーティングしましょう。女性の場合、ホルモンの影響も考えないといけません。