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柴胡加竜骨牡蛎湯

〔成分・分量〕
柴胡 5、半夏 4、茯苓 3、桂皮 3、大棗 2.5、人参 2.5、竜骨 2.5、牡蛎 2.5、生姜 0.5-1、大黄 1、黄芩 2.5、甘草 2 以内 (大黄、黄芩、甘草のない場合も可)

〔用法・用量〕

〔効能・効果〕
体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:
高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘

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柴梗半夏湯

〔成分・分量〕

柴胡 4、半夏 4、桔梗 2-3、杏仁 2-3、栝楼仁 2-3、黄芩 2.5、大棗 2.5、枳実 1.5-2、青皮 1.5-2、甘草 1-1.5、生姜 1.5(ヒネショウガを使用する場合 2.5)

〔用法・用量〕

〔効能・効果〕

体力中等度以上で、かぜがこじれたものの次の症状:
腹にひびく強度のせき

編集

柴葛湯加川芎辛夷

〔成分・分量〕

柴胡 6、半夏 3.5、黄芩 3、桂皮 5、芍薬 3、葛根 6、麻黄 2、竹節人参 2、甘草 1、大棗 1.2、生姜 2.5、川芎 3、辛夷 2

〔用法・用量〕

〔効能・効果〕

体力中等度以上のものの次の諸症:
慢性に経過した鼻炎、蓄膿症(副鼻腔炎)

柴葛解肌湯

〔成分・分量〕

柴胡 3-5、葛根 2.5-4、麻黄 2-3、桂皮 2-3、黄芩 2-3、芍薬 2-3、半夏 2-4、生姜 1(ヒネショウガを使用する場合 1-2)、甘草 1-2、石膏 4-8

〔用法・用量〕

〔効能・効果〕

体力中等度以上で、激しい感冒様症状を示すものの次の諸症:
発熱、悪寒、頭痛、四肢の痛み、口渇、不眠、鼻腔乾燥、食欲不振、はきけ、全身倦怠

乳汁分泌不全

 赤ちゃんを出産した女性は、2~3日すると、母乳が出始めます。その母乳の出が悪い状態のことを乳汁分泌不全といいます。
 生後1週間の赤ちゃんが1回の授乳で必要な母乳の量は、約30ml~といわれています。この量を下回ると、赤ちゃんが授乳後、熟睡しない、1回の哺乳時間が長いなどの症状がでてきます。
 乳汁分泌不全の原因としては、乳腺の異常や乳頭の異常、乳房の発育不全、乳汁分泌を促すホルモンの異常などがあげられます。また、乳児の乳汁を吸う力が弱いことや、母親のストレスや過労睡眠不足も、乳汁の分泌が悪くなる原因となります。
 乳汁分泌不全の検査方法は、授乳による乳児の体重測定や乳腺炎の検査があります。乳腺炎は外科で触診によるしこりの有無と血液検査による炎症反応が調べられます。乳腺炎がない場合には、授乳後の乳児の体重測定をこまめに行い、規則的に授乳しているにも関わらず体重が減ったり、栄養状態が悪くなっていないか、乳児の健康診断も行われます。
 乳汁分泌不全の改善として、まず十分な睡眠と栄養のバランスの取れた食事を取ることが大切です。乳房のマッサージも効果的です。陥没乳頭など乳頭の問題で乳児が上手く乳汁を吸えていない場合は、乳頭を引き伸ばすなどして乳児が吸いやすくなるようにします。ストレスも乳汁分泌不全の原因となります。できるだけ乳児といて楽しくなることを考えるようにします。多くの場合は、母親の熱意と、赤ちゃんの吸う力が発達してくることで改善します。

漢方と鍼灸

 乳腺は現代医学でも表皮系の器官で、汗腺と脂腺と同類とされていますが、漢方医学的にも(汗腺と同じく)表位または半表半裏の器官と考えることができます。さらに乳腺と汗腺ともに体表に体液を分泌する点でも同じと考えると、乳汁分泌不足は発汗不足のひとつの変形とも考えることができます。
 乳汁分泌不足を漢方医学的に考えると
①乳汁の産生はよく、排出が悪い場合
②乳汁の産生が良くない場合
があります。①の場合は乳汁うっ積による乳房の過緊張が原因で、発表・発散することが大切です。②は体力の虚弱、消耗などによる乳房の低緊張、弛緩などがあり、滋養強壮が必要になります。
 乳汁は気血から生じ、その気血は脾胃で作られるという考え方があります。そのため、乳汁分泌不全は
⑴産後のストレスや精神的なものによる気・血のうっ滞
⑵産後の疲労や出血または、脾胃の虚弱による気・血の不足
が考えられます。それぞれ理気剤・駆お血剤や補気剤・補血剤が適応になります。
さらに漢方では、乳汁促進作用のある生薬(蒲公英、王不留行、通草など)が知られています。
 乳汁分泌不全には、①発表剤(葛根湯、桂枝加葛根湯など)、②駆お血剤と補血剤(桂枝茯苓丸、芎帰調血飲、四物湯など)、③柴胡剤を主とする理気剤(柴胡桂枝湯、加味逍遥散、四逆散など)、④補養剤(十全大補湯、補中益気湯、人参養栄湯、小建中湯など)、⑤催乳剤(蒲公英湯、通乳湯など)があります。
 乳房の状態、血流、疲労、メンタルと自律神経などその方に乳汁分泌不全の原因となっている場所から改善していくよう考えていきます。それぞれの反応穴などから経絡に落とし込んで漢方食養生ツボを導き出します。

・葛根湯(葛根・麻黄・桂枝・芍薬・甘草・生姜・大棗)『傷寒論』
乳腺の発達もよく、乳汁は十分出るべき状態にありながらうっ滞して出ない場合などに使われます。
・芎帰調血飲(当帰・川芎・白朮・茯苓・熟地黄・陳皮・烏薬・香附子・乾姜・益母草・牡丹皮・甘草・生姜・大棗)『万病回春』
産後の悪露を去り、血行を良くし、体力をつけて乳汁の分泌を盛んにします。
・十全大補湯(茯苓・白朮・人参・熟地黄・芍薬・甘草・黄耆・桂皮・当帰・川芎・生姜・大棗)『太平恵民和剤局方』
貧血して元気が衰え、疲労の激しい時に使われます。
・蒲公英湯(蒲公英・山薬・当帰・香附子・牡丹皮)『方輿輗』
乳腺の発育不十分な方に使われます。
・催乳剤(茯苓・薏苡仁・当帰・川芎・酸棗仁・王不留行)『森田幸門』
など(薬局製剤以外も含む)

四苓湯

〔成分・分量〕

沢瀉 4、茯苓 4、蒼朮 4(白朮も可)、猪苓 4

〔用法・用量〕

(1)散:1 回 1-1.5g 1 日 2-3 回
(2)湯

〔効能・効果〕

体力に関わらず使用でき、のどが渇いて水を飲んでも尿量が少なく、はきけ、嘔吐、腹痛、むくみなどのいずれかを伴うものの次の諸症:暑気あたり、急性胃腸炎、むくみ

眼瞼痙攣(けいれん)

 眼瞼痙攣(けいれん)は、目の周りに存在する眼輪筋(がんりんきん・まぶたを閉じる筋肉)と呼ばれる筋肉が痙攣性収縮を起こします。自分の意志に関係なく、眼輪筋が勝手に痙攣(けいれん)し、目が開けにくくなる病気です。
 眼瞼けいれんは特に50~70歳の中高齢者に発症することが多く、女性に多く見られます。
明らかな原因は不明です。発症の原因としては、過度のストレス、睡眠薬や抗不安薬などの薬剤、化学物質などのシックハウス症候群などが考えられます。
 眼輪筋を含めて顔の筋肉は脳から出る顔面神経によってコントロールされています。両側性の眼瞼けいれんの場合は、顔面神経に指令を与える脳の深部(大脳基底核)の異常とされます。一方、片側性のものは脳を離れたあとの顔面神経が、筋肉へ至る途中で血管や腫瘍などに圧迫されて生じます。
初めは下まぶたがぴくぴくすることから始まり、次第に上まぶたに移行します。
 症状が重くなると、自分の意思ではまぶたをあけることができなくなり、視力には問題ないのに視界を妨げることにもつながります。開眼できなくなると、日常生活にも深刻な影響を及ぼします。多くの場合は次第に痙攣の回数が増し、人や物にぶつかるなど日常生活や仕事に大きな支障をきたすことになります。また、症状は通常両目に起こりますが、左右差があることも少なくありません。
 眼瞼けいれんと似ている症状を示す病気はいくつかあります。
片側顔面けいれん、眼瞼ミオキミア、ドライアイ、開瞼失行症、チックなどです。

西洋医学的治療

 内服薬抗てんかん・抗不安薬・筋弛緩薬などの薬、ボツリヌスの注射

漢方と鍼灸

 眼輪筋や神経、自律神経などに異常がないか探していきます。患部・顔面神経・眼の筋肉・血流・自律神経などの反応穴から最適な漢方食養生ツボを選択します。目の周りの筋肉が緊張している場合、自律神経を緩める漢方だったり、ホットタオルで血流を良くしたり、目の周りのツボを刺激することもおすすめです。まれに腫瘍による場合もあるので、癌の反応穴もチェックします。

煎じ

抑肝散加陳皮半夏(釣藤鈎・柴胡・当帰・川芎・白朮・茯苓・甘草・陳皮・半夏)『本朝経験方』
釣藤散(釣藤鈎・橘皮・半夏・麦門冬・茯苓・人参・菊花・防風・甘草・石膏・生姜)『普済本事方』
柴胡加竜骨牡蠣湯(桂枝・茯苓・牡蛎・竜骨・柴胡・黄芩・人参・半夏・生姜・大棗・大黄)『傷寒論』
・加減逍遥散(当帰・芍薬・白朮・茯苓・柴胡・甘草・胡黄連・麦門冬・黄芩・地骨皮・秦艽・木通・車前子・燈心草)『寿世保元』
精神不安、憂鬱などのときに使われます。
など(薬局製剤以外も含む)

しゃっくり(吃逆・きつぎゃく)

 しゃっくりは、続くとつらい症状です。
しゃっくりは、横隔膜の不随意のけいれんの後に声門が音を立てて素早く閉じることが繰り返し起こるものです。横隔膜は腹部と胸部を仕切っている筋肉で、1回1回の呼吸を起こす働きがあります。声門は、声帯間の開口部で、これが閉じることで肺への空気の流れを遮断します。「ヒック」というような独特の音が出る現象のことである。吃逆(きつぎゃく)ともいいます。
短時間発生する急性のしゃっくりは基礎疾患がないことがほとんどで、食べ過ぎ・飲み過ぎや炭酸飲料などによる刺激によって発生する場合が多く見られます。慢性や難治性のしゃっくりの場合、延髄の呼吸中枢付近の障害や脳の疾患、咽頭や消化器、呼吸器などの炎症や腫瘍などが原因になることがあります。また、アルコール摂取や薬剤によることもあります。
 慢性や難治性の場合は長時間続くしゃっくりによって不眠や悪心嘔吐、食欲不振などが起きたり、会話、とりわけ電話での会話が困難となって社会生活に支障を来したりすることがあります。
しゃっくりが2日以上続く場合や、他の症状が加わったりした場合は診察・検査を受け、原因を特定していく必要があります。具体的には現病歴や既往歴、手術歴、家族歴、飲酒や喫煙の有無などの生活習慣を確認した上で消化器症状(胸焼けや嘔吐など)、神経症状(しびれやまひなど)、呼吸器症状(咳など)の有無をチェックします。必要に応じて血液検査、画像検査、生理学的検査などを行い、しゃっくりを引き起こしている原因を探します。

西洋医学的な治療

 急性の場合は、特に治療を行わなくても自然に収まることがほとんどです。症状を緩和するため、息こらえや飲水といった民間療法が行われることもあります。一方、難治性の場合は、反射運動を起こしている原因を探します。

漢方と鍼灸

 吃逆(きつぎゃく)ともいわれるしゃっくりは、気が上衝し、のどに続けてヒックという音がします。冷えやストレス、筋肉の緊張、術後など原因がわかれば、対処方法も考えられます。しゃっくりの原因(冷え・筋肉の緊張・術後など)を探しながら、最適な漢方食養生ツボを選択します。また胃や腸の波長も調べ自律神経と同じなら、原因は自律神経です。違う場合、胃や腸の調子を整える漢方ツボで治療いたします。呉茱萸湯、柿蔕湯、小半夏加茯苓湯、半夏瀉心湯、茯苓飲、半夏瀉心湯、補中益気湯などが使われます。

帯下(おりもの)

 おりものを漢方では、「帯下(たいげ)」といいます。膣粘膜上皮からはげ落ちた細胞、子宮頚管や子宮からの分泌物、デーデルライン杆菌などが混じったもので、女性の膣内部から流れ出る透明な分泌液のことです。おもに思春期から感じるようになり、排卵前は水っぽくサラサラした状態のものから、月経前後にかけて卵白のような粘りを感じるように変化します。おりものは、膣内部のうるおいを保つだけではなく、外部から侵入してくる細菌などから身体を守る働きがあります。また、受精の手助けをします。 排卵期には、粘度が高い、ゼリーのようにおりものになることにより、精子が卵子の元へスムーズに辿り着けるよう、サポートしています。
おりものは、月経周期・年齢・妊娠の初期症状・病気が原因で変化していくことが考えられます。
① 排卵〜月経周期が関係している
 毎月の排卵や月経周期は10代の思春期から閉経を迎える40代までの女性に見られ、そのたびにおりものも変化します。このような状態はホルモンバランスが関係し、月経前から少しずつおりものの量に変化を与えます。
卵胞期;月経のあとの時期です。帯下(おりもの)の性状はさらっとしていて、月経直後は少なく、排卵期に向けて少しずつ量が増えます。
排卵期;排卵期は、おりものの量が最も増える時期です。性状は少し粘度が高い透明なおりものが出ることがあります。
黄体期;排卵後、おりものの量は少し減ります。性状は少し白く濁ったような色になります。
月経前;月経前には、少しおりものの量が増える傾向にあります。白く濁ったようなおりもので、匂いが強くなることがあります。
② 年齢の変化
 おりものの量や性質は、女性ホルモン「エストロゲン」の影響を強く受けます。そのため、年齢を重ねるごとにおりものにも変化が生じます。
「初潮」を迎える方が多い10代では、おりものの量はごくわずかです。20代は、女性ホルモンが活発に分泌されることから、10代に比べておりものの量が増えます。30代は、妊娠・出産などの関係で卵巣機能が成熟し、おりものの量がもっとも多くニオイも増えるでしょう。40代〜閉経を迎える女性は、おりものの量が再び減少します。
③ 妊娠初期症状のひとつ
 おりものが増加する原因として、妊娠初期症状があげられます。妊娠期には、黄体ホルモン(プロゲステロン)が赤ちゃんのベッドとなる大切な子宮の内側を守る役割を果たします。
④ 細菌感染や婦人科系疾患
 おりものの色・におい・量がいつもと違うと感じたら、それは、病気が関係しているかもしれません。例えば、カンジダ膣炎、細菌性膣炎、クラミジア感染症、トリコモナス膣炎、萎縮性膣炎、子宮筋腫、子宮頸がん、子宮体癌などによっておりものの状態が変わることがあります。

漢方と鍼灸

 問診から帯下(おりもの)の状態・色など、また体の状態を確認します。帯下(おりもの)の原因を探し、生理痛・女性ホルモン・感染症・冷え・がんなどの反応穴から最適な漢方食養生サプリツボを選択していきます。当帰芍薬散、温経湯、芎帰膠艾湯、参苓白朮散、清心蓮子飲、苓姜朮甘湯、竜胆瀉肝湯などが使われます。

・当帰芍薬散(当帰・川芎・芍薬・白朮・茯苓・沢瀉)『金匱要略』
下半身にむくみがあり、血行の悪い冷え性の方に良いです。
・温経湯(呉茱萸・当帰・川芎・芍薬・人参・桂枝・阿膠・生姜・牡丹皮・甘草・半夏・麦門冬)『金匱要略』
貧血、冷え性があるが、手の火照り唇の乾燥がある方に使われます。
・清心蓮子飲(蓮肉・茯苓・黄耆・人参・麦門冬・地骨皮・黄芩・甘草・車前子)『太平恵民和剤局方』
冷え症で胃腸虚弱な、米のとぎ汁のような帯下が出る時に使われます。
・竜胆瀉肝湯(当帰・川芎・芍薬・地黄・黄連・黄芩・黄柏・山梔子・連翹・薄荷葉・竜胆・沢瀉・木通・車前子・防風)『一貫堂』
膀胱・尿道・子宮など下焦における炎症に使われます。
・苓姜朮甘湯(茯苓・白朮・乾姜・甘草)『金匱要略』
・芎帰膠艾湯(川芎・阿膠・甘草・艾葉・当帰・芍薬・地黄)『金匱要略』
・参苓白朮散(白扁豆・人参・茯苓・白朮・茯苓・山薬・縮砂・藿香・陳皮・乾姜・蓮肉・訶子・生姜・燈心草)『万病回春』
・加減六合湯(椿根・芍薬・当帰・川芎・熟地黄・陳皮・茯苓・甘草・半夏・貝母・白朮・黄柏・知母・生姜)『万病回春』
・逍遥散(甘草・芍薬・当帰・茯苓・白朮・柴胡・生姜・薄荷葉)『太平恵民和剤局方』
・升陽燥湿湯(黄芩・橘皮・防風・良姜・乾姜・郁李仁・甘草・柴胡・白葵花)『蘭室秘蔵』
・神芎湯(升麻・川芎・人参・甘草・遠志・黄耆・当帰・地骨皮・破故紙・杜仲・白朮・生姜・蓮肉)『医学入門』
・腎著湯(茯苓・白朮・乾姜・甘草・杏仁)『三因極一病証方論』
など(薬局製剤以外も含む)

妊娠中の風邪

 妊娠中気をつけていても風邪をひいてしまうことはあると思います。特に妊娠中は抵抗力が低下しているため、風邪などの感染症にかかりやすい状態です。
 まずは、うがい、手洗い、マスクの着用など予防対策を行うことが大切です。うがいは水でのうがいが勧められます。イソジンなどのヨードを含むうがい薬を使う人が多いのですが、ヨードは胎盤を通過しやすいので注意が必要です。また、インフルエンザワクチンは妊娠中でも接種可能です。
 薬が必要な場合は、咳、鼻、熱などの症状を改善する薬を必要最小限使用するようにします。また、抗菌薬や抗ウイルス薬も、成分によっては服用できるものもあります。インフルエンザに使われるザナミビル(商品名:リレンザ)は吸入薬であるため、妊娠中でも使用は可能です。市販の風邪薬はいろいろな成分が混じっており、必ずしも安全とはいえません。
 かぜ薬はかぜを治すためのものではなく、風邪の症状を和らげるためのものになります。かぜを早く治す方法は、無理をせず十分な休養と水分・栄養をとることです。ただ、症状がどうしても辛い、今だけはどうしても休めない、という場合は妊娠中でも内服できるかぜ薬があります。
 薬を飲む場合、基本的に妊娠初期は避けた方がいいでしょう。妊娠4〜7週を「器官形成期」といい、赤ちゃんの脳や神経などを作る大切な時期です。この時期は薬を飲むと赤ちゃんの発達に影響があるため、薬を飲むことはなるべく避けるようにしましょう。
 器官形成期は妊娠に気がつかない人もいるため、風邪をひいたと思い薬を飲んでしまうことがありますので注意してください。
 妊娠8週〜15週までは、赤ちゃんの重要な器官の形成は終わり、過敏期はすぎていますが、奇形を起こす心配がなくなるわけではありません。そのため、薬を飲むときは必ず医師に確認してください。
 妊娠16週以降は赤ちゃんに奇形を起こすことが問題となることはありませんが、胎盤を通過して赤ちゃんへ移行するため、薬を飲む時は注意しましょう。

漢方と鍼灸

 漢方薬では、桂枝湯、香蘇散、参蘇飲、麦門冬湯などが症状にあわせて使われます。原因となるのはウイルスなので、免疫力が落ちているとかかりやすいです。当院は免疫を見る反応穴から最適な漢方食養生ツボを選択します。十分休息を取り、油を控えた和食(熱いおじやなどがおすすめ)を腹5~6分ぐらいがベストです。妊娠中は免疫を上げて体力をつけることを主に考えます。

・麦門冬湯(麦門冬・半夏・人参・甘草・粳米・大棗)『金匱要略』
発作性に咳が起こり、痰がきれにくく、顔が赤くなって咳こむときに使われます。
・桂枝湯(桂枝・芍薬・甘草・生姜・大棗)『傷寒論』
感冒の初期の発熱・悪寒・頭痛などに使われます。
・香蘇散(陳皮・香附子・紫蘇葉・甘草・生姜)『太平恵民和剤局方』
胃腸の虚弱な方で、感冒の初期に使われます。
・参蘇飲(陳皮・枳殻・桔梗・甘草・木香・半夏・紫蘇葉・葛根・前胡・人参・茯苓・生姜・大棗)『太平恵民和剤局方』胃腸の弱い方で頭痛・発熱・食欲不振などの感冒に使われます。
など(薬局製剤以外も含む)