蕁麻疹
蕁麻疹とは、皮膚の一部に膨疹と呼ばれる少し膨らんだ発疹が現れる病気を指します。原因の特定できない特発性が多いですが、食物やストレスをきっかけに発症するものもあります。蕁麻疹の膨疹にはかゆみがありますが、多くの場合、数時間で個疹は消失します。症状は数日中に軽快する場合が多いですが、なかには慢性的に経過することもあります。蕁麻疹は、アナフィラキシーショックと呼ばれる重篤(非常に重い)なアレルギー反応として現れることもあります。これは命に関わることもあるため、早急に医療機関を受診して迅速な対応が求められます。蕁麻疹は、マスト細胞を代表とする皮膚に存在する細胞から、ヒスタミンなどかゆみやむくみを誘導する成分が分泌されることで発症します。蕁麻疹を誘発する原因は、まずウイルスなど感染症が例として挙げられますが、そのほかにも卵、牛乳、小麦、蕎麦、甲殻類など食物に対するアレルギー反応もあります。また、食物に関連したアレルギーとして、原因となる食べ物を摂取してから十数分以内に口腔粘膜に腫れを伴う口腔アレルギー症候群と呼ばれるものがあります。そのほか、特定の食物を摂取した後、運動をすることで蕁麻疹やアナフィラキシーが誘発される食物依存性運動誘発アナフィラキシーと呼ばれるタイプのアレルギー反応もあります。このタイプのアレルギーをもつお子さんでは、昼食に小麦製品を食べて午後の体育などの時間に発症するという発症様式をとるケースもあります。また、抗生物質、造影剤、解熱鎮痛剤など薬剤が原因で発症することもあります。さらに、ラテックスゴムや汗、寒冷刺激、温熱刺激、日光、振動、ストレス、緊張などの刺激がきっかけで発症することもあります。なかには、全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群を代表とする膠原病、リンパ腫などの血液疾患などが原因となっている場合もあります。また遺伝的な要素により生じることもあります。遺伝的な要素で発症する蕁麻疹は血管性浮腫と呼ばれる眼瞼や口まわりの粘膜の浮腫を伴うことが多いです。このように、蕁麻疹を引き起こす原因は多岐にわたります。しかし、原因疾患を特定できるケースばかりではなく、原因不明という場合もあります。急激に発症する膨疹が特徴であり、見た目は蚊に刺された痕に似ています。1cmほどの大きさのものから地図状に広く広がることもあります。蕁麻疹の膨疹は非常に強いかゆみを伴い、数時間のうちに体の至る所に広がり、その後、跡形もなく消失します。多くの場合、一度発症しても繰り返すことはないのですが、なかには1か月以上が継続する慢性蕁麻疹に進行することもあります。慢性蕁麻疹は夜間に出現することが多く、原因を特定するのが困難な場合もあります。診断では、丁寧な問診と身体診察を実施します。原因が特定できないことも多く、症状自体一過性なことも少なくないため、丁寧に病状を確認するのみで、特別な検査を行わないこともあります。
しかし、食物アレルギーや膠原病のように、特定の病気によって蕁麻疹を起こしている可能性がある場合には、それぞれ検査を実施することもあります。たとえば食物アレルギーが疑われる場合、プリックテストや血液検査によるアレルゲン検索が行われます。食物アレルギーや薬物のアレルギーでは、疑わしい物質を飲食や接触などにより少量負荷することで、症状誘発の有無を確認することもあります。膠原病が疑われる場合、SLEであれば特徴的な自己抗体が測定されることもありますし、臓器障害の程度を評価するために貧血の程度や尿検査などが追加で行われます。ほかにも遺伝的な蕁麻疹が疑われる場合には、血液検査でC1-INH活性や補体測定などが行われます。特殊なタイプの蕁麻疹もあるため、適宜遺伝子検査や皮膚生検などといった、少し踏み込んだ検査が検討される場合もあります。蕁麻疹の治療では、薬物治療と原因除去を行います。副作用が少なく効果が落ちない第2世代の抗ヒスタミン薬が主体です。症状が出ているときはもちろん、すでに蕁麻疹が消失している場合でも、再発や悪化を予防するため1週間程度内服します。抗ヒスタミン薬で症状が抑えられない場合には、ステロイドの内服などを使用することもあります。これらの治療でもコントロールができない場合は、免疫抑制剤や抗体製剤が使用されることもあります。慢性蕁麻疹では、こうした薬剤を長期にわたり使用するため、副作用が現れないよう慎重に経過を評価して減薬や断薬時期を判断します。再発しないよう、原因となる刺激誘因を避けるようにします。ある特定の食物や薬剤などが原因と判明すれば、これらを摂取(もしくは接触)しないようにします。蕁麻疹では、アナフィラキシーショックを発症することもあります。アナフィラキシーショックを発症した場合には、迅速な医療機関への受診が必要です。また、アナフィラキシーショックを繰り返す場合には、注射薬を携帯することもあります。本人はもちろん、周囲の方がアナフィラキシーの症状がどのようなものか、どんなときに注射薬を使用するべきかなどの知識を身につけることも大切です。
漢方と鍼灸
蕁麻疹や化膿症は三陰三陽で判断します。特に太陽病、少陽病の薬方が多いですね。また解毒機能が正常に働いているかも確認します。食物の場合、肉と魚で薬方が違います。コリン性の蕁麻疹は運動、入浴、緊張などで発症します。皮膚病の反応穴、一番ひどい箇所から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。
湿疹
湿疹(皮膚炎)とは、皮膚が炎症を起こすことで生じるさまざまな変化のことを指します。皮膚炎とほぼ同義に使用される病気ですが、原因は多岐に渡り、重症度や完治までの治療期間もそれぞれ異なります。乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症し、皮膚疾患の中では最もポピュラーな病気です。しかし、なかにはがんなどの重篤な内科的疾患が原因となることもあり、長引く湿疹には注意が必要です。湿疹にはさまざまなものがあり、原因もそれぞれ異なります。接触皮膚炎・アトピー性皮膚炎・脂漏性湿疹・ビタール苔癬などに大別され、どれにも当てはまらないものを尋常性湿疹といいます。
接触皮膚炎はアレルギー反応の一種で、アレルゲンとなる物質が皮膚に触れることで生じます。アレルゲンには多くのものがあり、植物や昆虫が放出する物質や、金属、洗剤に含まれる化学物質などがあります。皮膚が乾燥してバリア機能が損なわれたところに、アレルゲンやストレスなどのさまざまな因子が加わって発症すると考えられています。皮膚のバリア機能や免疫力の低下は遺伝的な要因が大きいとされており、アトピー性皮膚炎の発症は環境的な要因と遺伝による発症のしやすさが大きく関わっています。脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌が多い頭皮や顔、わきの下などに起こりやすい湿疹です。皮脂の過剰な分泌によって毛穴が詰まったり、皮膚に常在するカビであるマラセチアが増殖したりすることによって炎症が生じ、発症します。ビタール苔癬は中年女性の首の後ろや陰部、わきの下などにでき、色素の沈着や脱失を生じやすく、湿疹が白っぽくなります。かゆみが強く、湿疹部分の皮膚が厚くなるのが特徴です。衣類による摩擦や金属アレルギーが原因であると考えられています。また、掻きむしることで炎症が悪化し、治るまでに時間がかかることも多々あります。尋常性湿疹は上記の4つに当てはまらないものです。代表的なものでは貨幣状湿疹やうっ滞性湿疹などです。主な原因は皮膚の乾燥、アレルゲンへの暴露、細菌や真菌感染などです。
湿疹には多くの種類がありますが、一般的な皮膚症状や経過はほぼ同じです。初期にはかゆみを伴う小さなふくらみを持った赤いぶつぶつした皮疹が生じます。その皮疹が皮膚の一定の範囲に生じると、水膨れのようになって水疱ができ上がり、細菌感染を起こしたものでは膿を排出することもあります。水疱が破れるとびらん(ただれ)や潰瘍を形成し、かさぶたや角化した皮膚が散在するようになります。しかし、皮膚は水疱が破れたことによって瑞々しい状態のため、かさぶたや角化した皮膚は剥がれ落ちやすく、潰瘍やびらんの状態が悪化することもまれではありません。急性の経過を辿る湿疹では、赤い皮疹と水疱、びらん、潰瘍、かさぶたとすべての段階の皮膚病変が混在した状態となります。一方、発症してから時間が経っているものは皮膚の表面が厚くなり、色素沈着や脱失を生じることもあります。また、強いかゆみを伴う場合には掻きむしることで皮膚が傷つき、そこに細菌や真菌感染が生じて、痛みや発熱を引き起こすこともあります。湿疹の診断は視診と、発症した状況や誘因、症状などの問診の情報から総合的に行われます。アレルゲンの暴露が原因と疑われる場合には、種々のアレルギー検査が行われます。また、がんをはじめとした内科的疾患が疑われる場合には、血液検査や画像検査で精密検査が行われます。湿疹は皮膚がんの皮膚症状と似ていることがあるため、場合によっては湿疹組織の一部を採取して病理検査を行うこともあります。基本的にはステロイド薬が使用されます。軽度な湿疹であれば、ステロイド薬の塗り薬で症状は改善しますが、自家感染性皮膚炎のように全身性に湿疹が現れるような場合には、ステロイド薬の内服治療が行われます。また、細菌や真菌感染を起こしているものには抗菌薬や抗真菌薬の塗り薬、飲み薬が必要に応じて使用されます。かゆみに対しては、抗ヒスタミン剤の内服で対処するのが一般的です。
漢方と鍼灸
湿疹とアトピーは燥と湿で証を判別します。また赤味が強い人、かゆみが強い人は、菌や真菌の有無をみます。ステロイドで悪化した場合、真菌を疑いましょう。湿疹三角形(紅班期・丘疹期・小水疱期・膿疱期・糜爛期・結痂期・落屑期)でとらえることもありますが、三陰三陽で判断します(太陽病・少陽病~)。一番ひどい箇所から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。皮膚は内臓の鏡です。湿疹がでるのには理由があるのでステロイドで抑え込んで治っておわりではなく、体の状態を確認し食生活、ストレスなど体のサインに耳を傾けましょう。「未病治」とはそういうものです。
12月(年末・年始)1月のお休みと営業時間
【お休み】
12月3日(日)・4日(月)
12月10日(日)・11日(月)
12月17日(日)・18日(月)
12月24日(日)・25日(月)
12月31日(日)
【年末年始の営業時間】
12月30日(土)
1月4・5・6日(木・金・土)
※営業時間:10時から16時まで
【お休み】
1月1日(月)・2日(火)・3日(水)
1月7日(日)・8日(月)
1月14日(日)・15日(月)
1月21日(日)・22日(月)
1月28日(日)・29日(月)
ご予約: 03-3300-0455 までお電話ください。
皆様も、冬の季節と年末年始をリラックスしてお過ごしください。
【美容、抗老化】の対策と漢方
「もしも、親や身近な人、あるいは自分自身が【美容、抗老化】の症状になったらどうしよう…」そんな不安を抱いたことはありませんか。
身近な症状としてしみ、しわなどの増加が問題となっています。年を重ねることで、女性更年期障害、男性更年期障害、認知症などの方が増えています。成人・高齢化社会においても、美容、抗老化の対策は非常に重要です。
当院の【美容、抗老化】の病気へのこだわりは漢方薬の選薬、鍼灸の施術と食養生を大切にしていることです。どこに行っても良くならなかった方の最後の砦になりたい、そんな気持ちでアドバイスさせていただきます。
【美容、抗老化】の病気と漢方(東洋医学)
しみ、しわ、肝斑、老人性色素班、たるみ、いつまでも若くいたい・見られたい、男性更年期障害、女性更年期障害、足腰を丈夫にしたい(フレイル・サルコペニア・ロコモティブシンドローム)、認知症
自分自身や家族・同僚、友人など周りの人について「美容、抗老化」と思われる症状に気づいたら一人で悩まず、不二薬局にご相談ください。
■漢方の不二薬局、はりきゅう治療院 藤巻一心堂へのアクセスはこちら
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低カリウム血症
低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が低下した状態を指します。一般的には血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L未満になった場合に、低カリウム血症と診断されます。カリウムは体内に存在する電解質の1つで、細胞内の浸透圧を調整するはたらきや、神経の興奮や心筋のはたらきを助ける役割も果たしています。また、腎臓の機能が正常な場合は、ナトリウムを体外に排出するのを促す作用を持つため、塩分の取りすぎによる血圧の上昇を抑えるはたらきもあります。そのため、カリウムが不足するとこれらのはたらきが正常に行われなくなり、大きく不足した場合には脱力感、手足のだるさ、筋肉痛、こわばり、麻痺、不整脈、呼吸困難などの症状が出現することがあります。低カリウム血症は、食事からのカリウム摂取不足や低マグネシウム血症(血液中にマグネシウム濃度が低下した状態)によって起こる場合もありますが、典型的には嘔吐や下痢、利尿薬などによって大量のカリウムが体外に排出されることで生じます。また、カリウムの細胞内移動によって起こることもあります。カリウムは、野菜、豆類、魚、果物など多くの食材に含まれています。偏った食事などで摂取量が不足すると低カリウム血症になる場合があります。嘔吐や下痢が続くと消化管から大量のカリウムが失われます。また、利尿薬(ループ利尿薬、チアジド系利尿薬)や漢方薬(甘草)、アミノグリコシド系抗菌薬、グリチルリチン製剤などによって過量のカリウムが尿中に排出されることも原因の1つです。このような薬を原因とする低カリウム血症は薬の服用から数週間後に起こることが多いですが、数年以上経過してから発症することもあります。また、クッシング症候群をはじめとした副腎疾患があると、ホルモンの影響で腎臓から大量のカリウムが排出され、低カリウム血症を引き起こす場合があります。糖尿病の治療薬として知られるインスリンや、気管支拡張剤のサルブタモールなどの特定の薬は血液中のカリウムを細胞に移動させる作用があるため、使用すると低カリウム血症になりやすくなります。軽度の低カリウム血症では、症状が現れることはほとんどありません。血液中のカリウム濃度が3.0mEq/L未満の重度になると、脱力感、手足のだるさ、筋肉痛、筋力低下、こわばり、麻痺、不整脈などの症状がみられます。症状が進行すると、歩行不能や起立不能、呼吸困難、褐色尿、多尿などが生じることもあります。なお、心疾患がある人や心疾患の治療薬であるジゴキシンを使用している人は、軽度の低カリウム血症でも不整脈が起こることもあるといわれています。低カリウム血症を発症しているかどうかは、血液検査で血液中のカリウム濃度を測定することで分かります。一般的には血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L未満の場合に、低カリウム血症と診断します。その後、発症の原因を調べるために薬の服用歴を確認したりしますが、原因がはっきりしない場合には尿検査で尿中に排出されるカリウム量を測定します。低カリウム血症になると不整脈が出現することがあるため、心電図検査で不整脈の有無を確認する場合もあります。低カリウム血症では不足したカリウムを補うことが治療の基本です。通常、カリウムの補充はカリウム製剤の内服によって行い、カリウム濃度が著しく低い重症例などではカリウム製剤を点滴で補充します。
腎機能が正常である場合には、スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬(腎臓からのカリウムの排出を抑える利尿薬)で治療を行うこともあります。また、病気が原因となっている場合にはその病気に対する治療を行い、薬が原因となっている場合には原因薬を中止します。薬を原因とする低カリウム血症では、軽度であれば原因薬を中止するだけで改善する場合もあります。
漢方と鍼灸
昨今、漢方薬による低カリウム血症のことはよく話題になり、漢方薬は怖いというイメージがある方も多いのではないでしょうか?甘草の量が少なくても反応してしまう方もいらっしゃるので少なくすればいいという問題でもないようです。甘草を炙った炙甘草を使うと低カリウム血症になりにくくなります。しかし煎じる漢方ならできますが、エキス顆粒剤では甘草を使っていますので長期服用や高齢者、多種類の漢方を服用するときは注意が必要です。全く甘草が入っていない処方もありますが、入っている処方がほとんどです。漢方薬が3種類出ていてどれも3回飲むよう処方された場合は注意した方がいいでしょう。当院は甘草が体質に合うか炙甘草が合うか入れない方がいいか、量を少なくするか検討しています。また長期飲む場合は、カリウムを多く含むものをしっかり摂ってもらうよう食養生としてお伝えしています。逆にカリウムが多すぎて下がらない方には甘草を使って下げる方法もあります。甘草で悩んでいる方はご相談ください。
尋常性乾癬
皮膚の表面の細胞が過剰に増殖することで銀白色の皮膚の粉(鱗屑)が付着した赤い皮疹(紅斑)が全身に生じる病気のことです。乾癬は併発する症状に応じていくつかのタイプに分かれています。乾癬には大きく5つのタイプがあります。1乾癬の大部分を占めるのは、皮膚の所々に皮疹が現れるタイプの“尋常性乾癬”です。2その次に多いのが、“乾癬性関節炎”です。これは、皮膚症状に加えて関節に痛みや腫れが生じるタイプの乾癬を指します。3また、皮疹がほぼ全身に広がったものを“乾癬性紅皮症”、4全身の皮膚の赤みや鱗屑に加えて、白い膿の入った袋状のもの(膿疱)ができるタイプのものを“膿疱性乾癬”と呼びます。膿疱性乾癬ではこうした皮膚症状に加えて発熱やむくみなどの全身症状を伴い、全身の炎症が続くことで時に命を脅かすこともあります。5また、感染症を契機として小さな皮疹がポツポツとできる“滴状乾癬”というものもあります。ほかの4つの乾癬が慢性的な病気であるのに対し、滴状乾癬の多くは感染症が治った後、遅れて症状は消えてなくなります。ただし、一部の患者さんで尋常性乾癬に移行することもあるため注意が必要です。尋常性乾癬とは乾癬の中でももっとも多い病気であり、乾癬患者の約90%を占めます。尋常性乾癬では、乾癬特有の皮膚症状が全身にみられます。皮膚症状の大きさ・数・形はさまざまで、皮疹同士がくっついて大きな病変をつくることもあります。尋常性乾癬は青壮年期に発症することが多く、発症により生活の質が低下し、精神的な影響が生じることがあります。尋常性乾癬は、重症度に応じて外用治療、光線治療、内服治療、生物学的製剤で治療します。乾癬発症には、遺伝的素因、環境因子、免疫学的要因が関わっていると推定されています。乾癬は家族内発症する割合が高いことから、遺伝的な素因が関与していると考えられています。欧米では家族内発症が20〜40%、日本では4〜5%に見られると報告されています。環境要因として考えられているものは、外傷などの外からの刺激、感染症や薬剤、食事内容、ストレスなどです。乾癬では、ヘルパーT細胞と呼ばれる白血球の一種が病変部位で免疫反応を起こすことが分かっています。TNF-α、IL-17、IL-23という炎症性物質を産生する細胞が炎症に関与していることも知られており、近年それらを抑制する治療法が開発され、実際に効果を示しています。尋常性乾癬では、全身にくっきりと盛り上がった赤い皮疹のような症状が現れます。皮膚は赤く盛り上がり、まわりには銀白色で皮膚に粉がふいたような状態(鱗屑)が見られます。好発部位は、刺激を受けやすい頭・肘・膝・お尻です。約50%の患者で皮膚症状にかゆみを伴います。また、爪が粗く研がれたように変形したり、へこんだりする症状も高頻度でみられます。皮膚などの症状は精神的なストレスとなり、生活の質を低下させます。また、尋常性乾癬ではTNF-αと呼ばれる物質が体内で増加し、これに関連して糖尿病の悪化、心血管病変の形成などを引き起こすことも知られています。尋常性乾癬は症状の出る部位によって、ほかの皮膚疾患と区別がつきにくい場合があります。この場合は、皮膚を少し採取して顕微鏡で確認する病理検査を行います。また、尋常性乾癬では糖尿病や心血管系イベントのリスクが高いため、血圧測定、血液検査(血糖やHbA1c、脂質など)を行うことも大切です。尋常性乾癬に使用される薬剤に関連して副作用を生じることもあるため、副作用の有無を適宜検索するための検査も重要です。尋常性乾癬の治療は、通常は外用薬(塗り薬)から開始します。使用されることのある外用薬としては、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬および、これらの配合外用薬が挙げられます。また内服薬としては、ビタミンA誘導体、免疫抑制剤(シクロスポリン、メトトレキサート)、PDE4阻害薬などが挙げられます。尋常性乾癬では紫外線を全身に当てる紫外線療法が選択されることがあります。紫外線療法は、薬を外用(または内服)後、波長の長い紫外線を照射する治療です。近年では311nm前後の紫外線(ナローバンドUVB)が乾癬に有効であることが示されています。ナローバンドUVBの照射が可能になってからは薬外用(内服)も必要なく、照射時間も短くなり、現在はこのナローバンドUVB照射が急速に普及しています。また、難治の部位にはターゲット型のエキシマライト(308nm)による部分照射を行うことで全身の総紫外線照射量を減らすことが可能です。
重症の尋常性乾癬に対しては、生物学的製剤を使用することを検討します。生物学的製剤の治療効果や奏功率はとても高く、ほとんどの患者において効果を期待することができるといわれています。2010年に認可された抗TNFα製剤に加え、3か月毎投与で効果を維持する抗IL-12/23p40抗体、さらにはIL-17関連抗体や抗IL23p19抗体などが続々と登場し、皮疹が完全に消失する患者さんも出現してきています。生物学的製剤とは、バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療のために使われます。生物学的製剤は高分子の蛋白質であり、内服すると消化されてしまうため、点滴あるいは皮下注射で投与します。バイオあるいはバイオ製剤とも呼ばれます。リウマチ膠原病領域では、関節リウマチに対して最も使用されていますが、巨細胞性動脈炎や高安動脈炎、ANCA関連血管炎、全身性エリテマトーデス、ベーチェット病などの膠原病のほか、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎など様々な疾患に対して使用されています。特定の分子を標的とした生物学的製剤は、一般的に治療効果が高く、また併用するステロイド内服量を減らせることも多いです。ただ、必ずしも全員に効果があるわけではなく、また各生物学的製剤が有効かどうかを事前に推測することは難しいです。薬剤ごとに特徴があるため、血液検査結果、合併症の有無、点滴製剤か皮下注射製剤かなど、様々な点を考慮して患者さんにとって最適な薬剤を選択する必要があります。副作用や注意点としては、感染症に注意が必要です。予防のために、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは積極的に接種しましょう。高熱、呼吸器症状(咳・痰、呼吸困難)、腹痛、皮膚の腫れなどがみられた際は早めに相談してください。帯状疱疹のリスクが高い製剤もあるため、ピリピリとした痛みや水ぶくれを伴う赤みがみられたら、すぐに医療機関に相談してください。また、結核やB型肝炎の潜在的な感染が考えられる場合、投薬を要することもあります。心不全や慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症のような脱髄疾患がある患者さんには使用が難しい薬剤もあるので、そのような持病がある方は主治医にお伝え下さい。費用は一般的に高額ですが、対象とする疾患や加入する健康保険の種類によって負担額は異なります。
漢方と鍼灸
「皮膚は内臓の鏡」と言われています。必ず生活習慣、食事内容、よく噛んでいるか、ストレス、便通は時間をかけて聞いていきます。体内の毒素が表面に出てくるのが皮膚病。毒素は免疫にも影響します。原因の経絡上に出てくることが多いので参考になります。ひどい患部から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択しご提案いたします。
足腰を丈夫にしたい(フレイル・サルコペニア・ロコモティブシンドローム)
フレイル
フレイルとは、加齢や疾患によって身体的・精神的なさまざまな機能が徐々に衰え、心身のストレスに脆弱になった状態のことです。特に高齢者は、糖尿病や高血圧、骨粗しょう症などの慢性疾患、がんなどさまざまな病気を抱えているケースが多く、心身機能の低下と相まって生活機能が落ちたり、心身の脆弱性が加速されたりする危険性が高いことが知られています。一方で、フレイルは完全に介護が必要な状態ではなく、適切な生活改善や治療などを行っていくことで生活機能が以前の状態に改善する可能性があることが示されています。つまり、フレイルとは、健康な状態と介護が必要な状態との中間地点にある状態のことなのです。65歳以上の高齢者が27%を越える日本において、フレイルの改善や更なる進行の予防は非常に重要と考えられており、要介護状態に陥ることを避けるためにも早期に適切な改善がなされるべき状態として広く認識される必要があります。フレイルを引き起こす原因は、脆くなる領域別に“身体”・“心や認知”・“社会性”の3つに分けられます。身体的な面での原因としては、骨・関節・筋肉など運動機能に関わる器官の衰えが挙げられ、歩行や立ち座りなど日常生活を送るうえで必要な動作に支障をきたしている“ロコモ”と呼ばれる状態、筋肉量が減少する“サルコペニア”と呼ばれる状態などが含まれます。慢性疾患や多剤併用などがこれらを加速させ、運動量の低下や食欲減退から、低栄養となり、筋力の低下を起こす悪循環が知られています。一方、心や認知の面での原因としては加齢に伴う認知機能の低下や抑うつ気分などが挙げられ、家事や買い物などさまざまな場面で適切な行動・判断ができにくくなることなどが問題となります。そして、社会性の面での原因としては、社会的に孤立しがちになることで引きこもりや孤食(1人で食事をすること)などが挙げられます。また、フレイルの特徴は、上で述べた3つの原因が重なることでさらに状態が悪化していくことです。たとえば、身体機能の衰えによって外出が億劫になることで引きこもりがちの生活になり、それが社会性の低下を引き起こします。また、引きこもりがちな生活が続くことでさらに身体機能や認知機能が低下することにもつながり、心身の機能がどんどん衰えていくという負のスパイラルに陥るのです。フレイルは、健康な状態と介護が必要となる状態の中間の状態を指します。年齢のせいと間違われる症状が多く、痩せてきた、握力が低下してきた(ペットボトルの蓋が開けにくい)、横断歩道が青信号の途中からでは渡りにくいなどが、診断基準にのっとった症状です。フレイルにおけるもっとも注意すべき症状は転倒、骨折です。その他、排尿障害、視力低下、活力低下、息切れ、物忘れなどが挙げられます。これらを見過ごしていると、更なる心身機能の低下が生じ、風邪をこじらせやすくなって肺炎を発症したり、転倒しやすくなって骨折したりする可能性が高くなり、最終的には介護が必要な状態に陥る危険性が増すとされています。フレイルは健康な状態と介護が必要な状態の中間地点にある状態のことを指すため、身体的・精神的に明らかな異常は見られないことがほとんどです。そのため、血液検査や画像検査などを行っても異常が見られないことも少なくありません。フレイル状態にあるか否かを判断する指標はさまざまありますが、一般的にはFried氏が提唱した基準が用いられます。具体的には、以下の5つの項目の内3つ以上が該当する場合をフレイルとし、1~2つ該当する場合をフレイルの前段階である“プレフレイル”とします。1体重減少(意図せず一年間に4.5㎏または全体重の5%の減少がある)2疲れやすい(何をするのも面倒だと感じる日が週に3~4日以上ある)3歩行速度の低下4握力の低下5身体活動量の低下です。一方で、早くフレイルの状態に進行した場合は、軽度な脳梗塞、潜在性の心不全、腎機能障害、COPD、 腰椎圧迫骨折などの思わぬ病気が隠れている場合もあります。そのため、症状に応じて画像検査や血液検査などを行う必要があります。フレイルの有効な治療法はなく、フレイル状態であると判断された場合は、更なる心身機能の低下を防ぐためのリハビリテーションや生活改善を行う必要があります。体的には、適正な筋肉量や骨量、そしゃくや嚥下など食事を取ることに関わる機能を維持するために必要な栄養バランスの取れた食事、適度な運動習慣、趣味やボランティアなどの社会参加をうまく取り入れた生活を送ることが大切と考えられています。フレイル状態に至ると適切な対処をしなければ介護が必要な状態に心身の機能が低下していくことになります。そのため、まずフレイルに陥りやすい危険因子を十分に調べ、個人にあった予防方法を実践することです。年齢を重ねたら、心身の機能が低下しないよう食事や運動などの生活習慣に注意し、積極的に人と接するなど社会性を失わないよう注意する必要ことが大切です。また、人は年齢を重ねるごとにさまざまな病気を発症しやすくなります。病気はフレイルの状態をさらに深刻化させる危険がありますので、定期的に健康診断などを受けて健康管理を続けていくことも大切なポイントです。
サルコペニア
サルコペニアとは、筋肉量の減少に伴って筋力や身体機能が低下している状態を指す言葉で、ギリシャ語の“サルコ(sarco)=筋肉)”と“ぺニア(penia)=喪失”を合わせた造語です。一般的にサルコペニアの診断は、骨格筋量、握力、歩行速度の3つをもとに、骨格筋量と身体機能が一定以上低下している場合にサルコペニアと診断されます。サルコペニアになると、特に抗重力筋(広背筋・腹筋・膝伸筋群・臀筋群など)の低下が多くみられることから、立ち上がったり歩いたりするのが困難になります。頻繁につまずく、立ち上がる際に手をつくような場合にはかなり症状が進行していると考えられ、進行するほど生活の質(QOL)の低下を招き、寝たきりになってしまうこともあります。しかし、サルコペニアは筋肉量の減少が病態であるため、十分な栄養摂取や運動によって筋肉量を増やし、筋力を強くすることで進行をある程度、抑えることができます。サルコペニアは、加齢による“一次性サルコペニア”と、活動不足や病気、栄養不良によって生じる“二次性サルコペニア”に分けられます。一次性サルコペニアは筋肉量の減少は誰にでも起こるもので、一般的には25~30歳頃から始まり、年齢を重ねるにつれて徐々に進行していきます。このような加齢によるサルコペニアの背景には、運動ニューロンや筋衛星細胞の減少、成長ホルモンやテストステロンの分泌低下、炎症性サイトカインの増加、加齢に伴う食欲不振による体重減少などが関係していると考えられています。二次性サルコペニアは活動が不足すると骨格筋量が減少し、座る姿勢や寝る姿勢が長いと特に下半身の筋力が低下します。また、臓器不全や炎症性疾患、内分泌疾患、がんなどの病気に付随してサルコペニアが起こるほか、病気によって安静を強いられ、不活動になることもサルコペニアの原因です。栄養においては、エネルギー、総タンパク質、必須アミノ酸のうちBCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)の摂取不足がサルコペニアの誘発原因になるといわれています。筋肉量が減少して筋力が低下することで、立ち上がりや歩くのが困難になる、頻繁につまずく、体が思うように動かないなどの症状が現れます。このような症状によってQOLの低下につながるほか、さらなる不活動を招き、寝たきりになってしまうこともあります。転倒や骨折の危険性が高まる原因にもなります。また、筋肉量が減少すると血糖値を調整する力が低下して血糖値が変動しやすくなります。物忘れや、免疫力の低下、嚥下機能低下、呼吸機能低下につながるという報告もあります。 サルコペニアでは、一般的に骨格筋量、握力、歩行速度の3つをもとに診断します。具体的には骨格筋量が一定以上低下していて、握力が男性で28kg未満、女性で18kg未満である、または通常歩行速度が1m/秒未満である場合にサルコペニアと診断されます。
歩行速度の代わりに、5回椅子立ち上がりテストや、SPPB(バランス、歩行テスト、5回椅子立ち上がりテストからなる身体能力テスト)が行われることもあります。骨格筋量の測定には、DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)やBIA法(生体電気インピーダンス法)が選択され、X線や微弱な電気を用いて測定します。サルコペニアの進行を防ぐためには運動と食事が有効であるため、サルコペニアと診断されたら運動指導と食事指導が行われ、患者自身で取り組むことになります。筋肉量を増やして筋力を強くするためには、レジスタンス運動(筋力トレーニング)がもっとも効果的だといわれています。
レジスタンス運動とは筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動のことです。スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操などの標的とする筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動をレジスタンス運動と言います。10-15回程度の回数を反復し、それを1-3セット無理のない範囲で行うことが勧められます。レジスタンス運動にはダンベルやマシンなどの器具を用いて行う方法と、スクワットや腕立て伏せのように自体重を利用して行う方法があります。自体重を用いて行う方法は手軽に行えることから、筋力向上の指導プログラムに広く活用することができます。しかし負荷の大きさを調節しにくいという欠点もあります。例えばスクワットならしゃがみ込む深さを調節する、机などに手をついて行う、何かを持って行うなどの工夫で負荷の調節をすると良いでしょう。筋肉には疲労からの回復の時間が必要です。レジスタンス運動は標的の筋肉に負荷を集中する運動ですから、その筋肉に十分な回復期間としてトレーニング間隔をあける必要があります。毎日行うのではなく、2-3日に一回程度、週あたり2-3回行うくらいの運動頻度が推奨されます。無理のない範囲で「継続的」に行うようにしてください。また、ウォーキングや有酸素運動は、サルコペニアの予防には有効です。サルコペニアの治療には、インターバル速歩など速く歩くことがポイントです。
インターバル速歩のやり方は、視線は約25m先を見て背筋を伸ばした姿勢を保ちます。足はできるだけ大股を意識して踏み出し、踵から着地します。初めは1.2.3と数えて3歩目を大きく踏み出すようにします。肘は90度に曲げて腕を前後に大きく振ります。速歩のスピードは「ややきつい」と感じる程度で行います。3分間の「速歩(さっさか歩き)と3分間のゆっくり歩きを1セットとし、1日5セット以上、週4日以上を目標にします。1日の早歩きの合計が15分になればよいので、朝・昼・夜とこまめに分けて実施しても大丈夫です。1週間で早歩きを60分以上、5か月間続けることを目標とするため、平日に時間がとれない場合は土曜日に早歩き30分、日曜日に早歩き30分を行ってもよいとされます。これらを組み合わせて運動を行い、運動後30分~1時間以内にタンパク質(アミノ酸)を摂取することでより効果的に筋力量を増やすことができます。次にインターバル速歩を行う際の注意点を示します。「さっさか歩き(早歩き)」の時は転び易いため、足元に充分注意し、無理をせずに、足がもつれない程度の速度で実施して下さい。心臓や肺の病気がある人や、脳卒中、パーキンソン病、水頭症などの診断を受けたことがある人は、インターバルトレーニングを実施しても良いか、かかりつけ医と相談してください。インターバル速歩を始める前後にストレッチを行い、怪我や疲労を予防します。とくに下半身のストレッチをしっかり行い、筋肉を柔らかくします。午後3時から午後6時頃は筋肉が柔らかくなっていて肉離れなどの怪我が起こりくい時間とされています。前屈みにならないように胸を張った姿勢を保ち、正しいフォームで歩くようにします。服装は軽い運動ができる程度のもの、シューズは底がやわらかく、曲がりやすいもので、踵にクッション性があるものを選びましょう。インターバル速歩では次の効果が得られます。体力の向上(筋力の向上・持久力の向上):筋力が10%、持久力が最大20%向上)、生活習慣病の改善:低体力の群で高血圧、高血糖、肥満などの生活習慣病指標※1の点数の値が20%改善)、気分障害の改善:うつ指標の値が50%改善)、睡眠の質の改善:睡眠効率(睡眠時間/寝床に入っている時間)が改善)、認知機能の改善:浦上式認知機能テストをPC用にアレンジしたプログラムによる認知機能測定の値が4%向上)。とくに軽度認知障害(MCI)の人たちでは認知機能測定の値が34%改善、関節痛の改善:膝関節痛の症状が、50%の人が良くなったと回答、骨粗しょう症の改善:骨密度が第2-4腰椎で0.9%、大腿骨頭部で1.0%増加、熱中症の予防:インターバル速歩後に糖質・乳タンパクを摂取すると、体温上昇に対する皮膚血管の拡張度、発汗速度が3倍亢進。このようにただ1万歩歩くより効率的に鍛えることができます。
食事においては筋肉量の増加や老化の予防に関わる、タンパク質やBCAAなどの栄養素を多く含む食品を積極的に食べることが大切です。また、ビタミンDとカルシウムも重要な栄養素で、転倒や骨折予防につながります。タンパク質においては肉類や魚介類、卵、大豆製品、乳製品など、BCAAは鶏肉やまぐろの赤身、大豆製品、牛乳などに多く含まれています。このような栄養素を意識しながら、主食、主菜、副菜をそろえたバランスのよい食事を心がけるようにしましょう。
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)とは、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念であり、年齢を重ねることによって筋力が低下したり、関節や脊椎などの病気を発症したりすることで運動器の機能が低下し、立ったり、歩いたりといった移動機能が低下した状態を指します。ロコモ自体は病気ではありませんが、高齢化が進む日本ではロコモから寝たきりや要介護への移行を予防することに力が注がれるようになっています。また、ロコモに該当する高齢者は、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を併発しているケースが多いことが分かっています。ロコモによる運動不足が生活習慣病を悪化させるケースもあれば、重度な生活習慣病に起因する身体活動の低下がロコモを悪化させるなど、互いに影響しあって全身の機能低下を引き起こしていることも少なくありません。そのため、ロコモはできるだけ早い段階で発見し、適切なリハビリテーションや治療を行うことが“健康寿命”の延伸につながると考えられています。コモは、移動機能が低下した状態にあることを指します。その原因は大きく分けて次の2つと考えられています。関節、骨、筋肉など運動器の病気で変形性関節症、骨粗しょう症、脊柱管狭窄症、関節リウマチなど関節や骨に異常を引き起こす病気は年齢を重ねるごとに発症率が上昇します。これらの病気は痛みや腫れが生じるだけでなく、骨折や骨の変形などを引き起こし、その結果、正常な関節運動ができなくなることで運動機能の低下が生じるとされています。もう一つは筋力やバランス力など運動機能の低下や運動器に起こる痛みで、正常な身体活動を行うための筋力やバランス力は加齢に伴って低下していき、それが運動機能の低下を引き起こすこともあります。また、筋力やバランス力の低下は転倒など思わぬけがをしやすくなり、それが原因で運動不足となることがさらにロコモを悪化させるケースも少なくありません。関節などに起こる痛みも運動不足の原因になります。運動器の病気がある場合は、その病気による症状が出現します。関節の病気では痛み・腫れ・変形を伴いますし、脊髄や末梢神経の病気では、痛み・しびれ・筋力の低下を伴います。運動器の病気があっても、骨粗しょう症やサルコペニア(筋肉が減弱する疾患)では症状を伴わない場合もあるので注意が必要です。移動機能が低下することで身体活動量が低下し、肥満などの生活習慣病になりやすいこと、認知機能が低下しやすくなることも問題となります。ロコモかどうかの判定は3つのテストからなるロコモ度テストで行います。3つのテストは、どれくらいの高さの台から立ち上がれるかを測る“立ち上がりテスト”、大股で歩いた距離を身長で割る“2ステップテスト”、日常生活や身体機能に関する25個の質問票に答える“ロコモ25”からなっています。これら3つのテストの結果によってロコモでないか、ロコモが始まっている段階のロコモ度1か、ロコモが進行している段階のロコモ度2か、ロコモがさらに進行して社会生活に支障をきたし自立できなくなるリスクが非常に高まっている段階のロコモ度3に判定されます。ロコモであると判定された場合、筋力やバランス力など運動器の機能低下があれば筋力やバランス力のトレーニングが必要です。また運動器の病気があれば、治療が必要です。特にロコモ度3と判定された場合は何らかの運動器疾患があり、その治療が必要な場合があります。また、ロコモは肥満などの生活習慣病を併発しやすく、互いに影響しあって悪化するという負のスパイラルに陥るケースもめずらしくありません。ロコモに至った高齢者は、単に運動機能の維持・向上に力を入れるだけではなく、生活習慣病の予防や治療を行っていくことも大切です。ロコモが進行すると寝たきりや要介護に至る可能性が高くなります。また、高齢者になる前でもロコモが始まっている場合があり、健康寿命を延ばすためにはロコモかどうかを調べて、日ごろから適度な運動をして骨や筋肉、関節の機能を維持すること、筋肉や骨をつくるために栄養バランスのよい食事を心がけていくことが大切です。さらに、ロコモになっていない場合でもロコモ度テストの性・年代別基準値と比べることで、自分の運動器の状態に気づき、運動器に衰えがあれば生活を変えるきっかけとすることができます。
漢方と鍼灸
足腰、骨、脳、身体を温める、耳、膀胱、保守的な感情、髪、生殖能力を含めて腎(六味丸関連)と言います。腎虚はそれらが衰えること。筋肉の衰えは肝血虚(四物湯関連)と言います。筋肉の運動も血が潤滑剤の働きをしています。補気補血が基本です。補血は腎にも肝にも必要。補気は生きる力です。つらい箇所、基礎疾患の反応穴、腎、肝の反応穴から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択しお伝えいたします。
肌荒れ
肌あれとは、カサカサしてかゆい、赤く腫れて痛い、など不快な肌トラブルの総称です。ほとんどの方が一度は経験するもので、肌の弱い方は頻繁に起こることでしょう。こうした肌あれは乾燥によるものが大半を占めますが、中には病気が原因になっていることもあります。また、症状によっては早期の治療がすすめられる場合もあります。肌あれは主に皮膚の乾燥によって起こります。何らかの原因によって肌の潤いを守るバリア機能が低下し、肌内部の水分が外に逃げてしまうことで乾燥が起こります。そして乾燥すると外的刺激を受けやすくなり、肌あれが引き起こされるようになります。乾燥以外では、病気や花粉・化学物質の刺激なども肌あれの原因に挙げられます。肌あれの多くは乾燥による炎症で、肌あれの原因のうち約7~8割を占めるといわれています。乾燥は空気の乾燥で生じることが多いですが、シャンプーやボディーソープ、洗顔料などでも引き起こされることがあります。保湿などのスキンケアが不十分であることも原因のひとつです。肝臓の機能低下や内臓のがんによって、全身に紅斑(皮膚が赤くなること)などの皮膚症状が出現することがあります。そのほか、皮膚の病気が原因になっている場合もあります。花粉や化学物質、薬の副作用なども肌あれの原因になりえます。花粉が皮膚に触れることで紅斑やかゆみなどの皮膚症状が生じます。化学物質においては空気中に浮いている物質、化粧品や洗剤などに含まれている物質の肌への刺激が主な原因となります。下記のような日常生活上の要因も肌あれを引き起こすことがあり、肌あれだけでなく体の不調が起こることも多くあります。例えばストレス、ホルモンバランスの乱れ、環境(低湿度)、喫煙など。このような生活習慣が続くと内臓の病気の原因になることもあるため注意が必要です。下記のように、肌あれにはさまざまなものがあります。カサカサする、赤くかぶれる、ブツブツとした発疹ができるなどです。
また、肌あれは全身に生じる場合もありますが、頬や目・口のまわりなどによく起こります。
内臓の病気などによって、全身に紅斑などの皮膚症状を伴うこともあります。このような肌あれの症状や部位によって、何が原因になっているかは異なります。乾燥が原因の場合には保湿を行うことが治療の基本です。保湿剤を使用して乾燥を防ぐほか、下記のような日常生活上の取り組みも重要になります。熱いお湯に触れない、加湿を行う、バランスのよい食事を心がけるなどです。かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬、炎症が強い場合にはステロイド外用薬が処方されることもあります。病気が原因の場合は、その病気の治療を行うことが原則です。皮膚の症状に対しては、ステロイド外用薬、抗ヒスタミン内服薬が使用されます。また、食生活の見直しなど日常生活上の取り組みが必要になることも多くあります。花粉や化学物質、金属などのアレルゲンにできる限り触れないようにすることが何より大切です。症状が出ているときには、下記のような薬により症状を抑える治療が行われます。抗ヒスタミン薬、ステロイド外用薬ストレスの発散、規則正しい生活、バランスのよい食事、禁煙など、日常生活上の取り組みが重要になりますが、原因に応じた漢方や薬が処方される場合もあります。喫煙習慣があるなど一部の原因においては、改善が難しい場合に多角的かつ長期的な治療が必要になることもあります。
漢方と鍼灸
肌荒れの原因を四診から判断し最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択しご提案いたします。経絡上に出る皮膚の異常も関係が深いことが多いので参考にします。乾燥は中からと外からの保湿が必要ですが、なぜ乾燥するのかをしっかり調べる必要があります。保湿の標治と乾燥する原因を突き止めて良くする本治が大切です。対症療法だけにならないようにしましょう。
ニキビ
にきび(尋常性ざ瘡)とは、毛穴を中心に起こる慢性的な炎症疾患です。毛穴の中には、毛根を包んでいる“毛嚢”と呼ばれる袋状の組織があります。毛嚢には脂を分泌する“脂腺”と呼ばれる腺が付いており、これが毛嚢の中に皮脂を分泌しています。しかし、ホルモンバランスが崩れる(女性では生理前後が多い)と、皮脂の分泌が過剰になることで毛嚢の中が皮脂で充満し、皮膚表面が盛り上がってきてしまいます。これが、にきびの始まりである白にきび(白色面ぽう)です。その後進行すると、炎症が生じたり、膿うみがたまったりするようになり、治癒後ににきび跡やケロイドが残ってしまうこともあるため、適切な治療を行うことが大切です。ケロイドは、通常傷が治っていくのに1年半〜2年くらいかかります。ただし、治癒していく過程でも傷あとに痛みやかゆみ(炎症)が続き、傷あとが盛り上がって赤みが出てくる体質の人がいます。カニの足のように傷あとから周囲に赤みと盛り上がりが広がってくる状態を真正ケロイドと呼びます。にきびはさまざまな年齢の人にみられますが、特にホルモンバランスの崩れやすい思春期の人によくみられます。成人以後のにきびは、ホルモンバランスのみでなく肝障害や薬剤の影響でみられることがあります。皮脂の分泌量が増え、毛穴の出口が詰まることによって皮膚表面が盛り上がった状態皮脂の中では、皮膚の中にいるアクネ菌の増殖がみられます。面ぽうには、ごく初期段階で自分にはほとんど目に見えない“微小面ぽう”のほか、角栓によって毛穴の出口が詰まっている“閉鎖面ぽう(白にきび)”と、毛穴が開き酸化によって皮脂が黒く見える“開放面ぽう(黒にきび)”があります。閉鎖面ぽうは時間の経過とともに開放面ぽうへと変化することもあれば、炎症を引き起こして紅色丘疹などに発展することもあります。紅色丘疹(赤にきび)とは、面ぽう内部でアクネ菌がより増殖し、炎症が起こった状態をいいます。“赤にきび”などと呼ばれ、痛みを伴うこともあります。紅色丘疹が進行したもので、膿を伴います。“黄にきび”と呼ばれることもあります。炎症により毛穴の壁が壊され、より広い範囲で炎症が起こるようになります。にきびの中でも特に重症の状態を指し、炎症が皮膚の深くまで進行することにより皮膚の一部が固く盛り上がったようになります。にきびの主な原因は皮脂の分泌が盛んになることと、毛穴の出口が固くなること(異常角化)です。いずれも男性ホルモンのはたらきが大きく関与していることから、ホルモンバランスの乱れやすい思春期に多くみられます。また、異常角化にはアクネ菌の存在も影響しているといわれています。なお、にきびを引き起こしたり悪化させたりする因子として、肌に合わないスキンケアや過剰洗浄による皮膚の乾燥のほか、便秘、ストレスの蓄積、睡眠不足などが挙げられます。また、女性の場合、月経前は女性ホルモンが低下することでにきびが起こりやすくなる人もいます。にきびでは炎症の有無、度合いに応じてさまざまな症状が現れます。通常、面ぽう、紅色丘疹、膿疱が混在してみられることが一般的で、特に皮脂が分泌されやすい顔・胸・背中周辺によく現れます。放置していると、炎症後の色素沈着、にきび跡やケロイドとなり、皮膚に残ってしまう可能性もあります。にきびの診断は主に医師による視診などで行われ、特別な検査はしないことが一般的です。
しかし、膿がひどいときには細菌培養検査を行ったり、真菌(カビ)やダニが発症の原因となっている可能性があるときには皮疹の顕微鏡検査を行ったりします。成人以後の治りにくいにきびはアトピー性皮膚炎や酒査など、ほかの病気と合併していることもあるため、必要に応じて詳しい検査も検討されます。
漢方と鍼灸
男性ホルモン優位になると悪化するので優位にならないように工夫が必要です。また思春期では、まだ肝臓が十分に整っていない時期で脂の解毒がうまく働かないので皮膚に出てくるようです。またストレスもホルモンを乱す原因となりますので要注意です。便秘はお血を生み出しますので改善しましょう。甘いもの食べると腸内細菌も乱れてすぐ肌に出ますので注意しましょう。男性ホルモンを抑える漢方やお血の漢方も種類がありますし、血虚の漢方も証に合わせて使います。脂の解毒に使う漢方やストレスを解消する漢方もあります。アクネ菌を除去する漢方も必要です。また食べ過ぎや胃腸虚弱で出るニキビもあるので胃腸の改善が必要な場合もあります。紫根を使ったスキンケアも取り扱っていますのでダブルチェックで合うものを調べておススメいたします。ニキビのひどい箇所から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択してお伝えいたします。
老人性色素班
老人性色素斑とは、いわゆるしみの1種です。褐色から黒色の1cm前後の色素斑であり、主に紫外線を浴びることの多い顔や手の甲などに生じます。年齢とともに認める頻度が増え、60歳代以降では目立つようになります。中には20歳代で色素斑を呈する方もいます。
老人性色素斑そのものにより健康を損なうことはありませんが、中には悪性黒色腫を代表とする悪性疾患との鑑別が必要になることもあります。また、美容的な面で影響を与えることから、治療を希望される方もいます。老人性色素斑は、盛り上がりが大きくなると“脂漏性角化症”と呼ばれ、腫瘍性病変としての側面を有するため、レーザー治療による破壊・除去が有効です。そのほかトレチノイン・ハイドロキノン療法や、フォトセラピーと呼ばれる方法もあり、状況に応じて適宜使い分けることになります。角化とは表皮のいちばん内側の基底層で、細胞分裂によって毎日新しいケラチノサイト(角化細胞)が生まれています。ケラチノサイトは、後から分裂する細胞に徐々に押し上げられて角層に達し、角層細胞に変化します。その後、体の部位や環境などによっても異なりますが、さらにおよそ2週間かけて角層のいちばん上に到達し、少しずつ自然にはがれ落ちていきます。
表皮のこの営みを「角化(かくか)」あるいは「ターンオーバー」といい、基底層で新しいケラチノサイトが生まれてからはがれ落ちるまで、およそ4週間以上の周期で繰り返されています。細胞間脂質を構成する「セラミド」や角層細胞の中でうるおいを保つ「NMF(天然保湿因子)」などの角層のうるおいを保つ因子は、角化の過程でつくられています。ですから、角層のうるおいが適度に保たれるためには、角化が正常に行われることも大切です。老人性色素斑はもっとも代表的なしみで、角化細胞(皮膚の表面を覆う細胞)の良性腫瘍です。角化細胞が紫外線に当たるとDNAに異常をきたし、良性腫瘍化します。角化細胞の腫瘍化に加えて、メラニン産生も増加することで“しみ”として認識されることになります。老人性色素斑は紫外線の照射により出現するため、日光に当たりやすい部位、特に顔や手の甲、腕などに多く発生します。老人性色素斑はしみの1種であり、褐色調から黒色調の色素斑を認めます。紫外線を浴びることが原因の1つであることから、顔や腕、手の甲などに認めることが多いです。大きさもまちまちであり、数mmほどの大きさであることもあれば、5cmくらいまでの大きさになることもあります。老人性色素斑が、通常の皮膚と比べて悪性化する頻度が高いというわけではありません。しかし、中には悪性黒色腫と呼ばれる悪性疾患との鑑別が必要となることもあります。悪性黒色腫は、皮膚色素の色全体が不均一であり、周囲の皮膚との境界も不明瞭で不整です。周囲の正常の皮膚と比べて色素部位が盛り上がりを呈することもあり、形も非対象性です。老人性色素斑と悪性黒色腫は、どちらも“皮膚のしみ”としての症状を引き起こしますが、治療方法がまったく異なるため両者を鑑別することは重要です。また、老人性色素斑と同じくしみの代表格として、肝斑と呼ばれるものがあります。肝斑は老人性色素斑と異なり腫瘍ではありません。皮膚への摩擦、紫外線、女性ホルモン、加齢が原因でメラノサイトが過剰産生されることにより発生します。メラノサイトは、妊娠中にも増えます。30歳代〜60歳代の女性に見られ、頬や目の下、額などに左右対称に薄茶色のしみとして現れます。一般的なレーザーを肝斑に照射しても不変であったり増悪したりするため、最初に老人性色素斑と肝斑を見分けることも重要となります。老人性色素斑の診断は、基本的には見た目の特徴からなされます。ただし、ときに悪性黒色腫を始めとした悪性疾患との鑑別が必要となることもあります。より詳細に皮膚を観察するために、ダーモスコープと呼ばれる拡大鏡を用いることがあります。この器具を使用することで、皮膚の病変部位をより詳細に観察することが可能となります。老人性色素斑はレーザーで破壊・除去します。レーザーを使いたくない方は、“トレチノイン・ハイドロキノン療法”という方法で薄くすることも可能です。また、“フォトセラピー”という方法もあります。フォトセラピーは濃いしみを薄くするのに利用される治療法で、肌へのダメージが少ないという特徴があります。老人性色素斑では、同じくしみの代表格である肝斑を合併することがあります。肝斑に対してレーザー治療を行うとしみが増悪することもあるため、両者が混在している状況では第一選択としてレーザー治療を照射することはできません。このような場合、まず肝斑の治療を行います。具体的にはトラネキサム酸の内服にピーリングやイオン導入、ときにレーザートーニングを組み合わせて肝斑を治療します。その後、レーザーで残った老人性色素斑を取ります。老人性色素斑の治療は、自由診療となることから医療費が高額になります。そのため、自身にとって適切な治療法を医師に相談し、納得したうえで治療を進めていくことが必要です。
漢方と鍼灸
色素班から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択してお伝えいたします。肝斑と考え方は同じですが、角化しているので少し違う生薬を使います。