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脊椎すべり症

 背骨(脊柱)は、椎骨と呼ばれる骨がいくつも連なって構成されています。椎骨には椎孔という穴があいていますが、椎骨がいくつも縦に連なることにより、椎孔も連なり、一本のトンネルのような脊柱管と呼ばれる空間が形成されます。脊柱管の中には神経(脊髄、馬尾)が通っています。腰椎すべり症とは、腰の部分で椎骨が正常な位置からずれた状態をいいますが、椎骨がずれる(すべる)ことにより脊柱管が狭くなります。それにより、脊柱管の中にある神経組織が圧迫され、さまざまな症状が現れます(主な症状は脊柱管狭窄症と同じです)。具体的には、長い距離を歩いたり、長時間立っていたりすると腰から足にかけて痛みを生じるようになります。また、足のしびれや麻痺まひ、排尿障害を生じることもあります。
 腰椎すべり症は大別して、腰椎変性すべり症と腰椎分離すべり症の2種類に分けられます。このうち頻度が高いのは変性すべり症です。変性すべり症は加齢に伴い生じ、中年以降の女性に多い傾向があります。腰椎変性すべり症・腰椎分離すべり症ともに、画像上ずれ(すべり)を認めても、症状がない場合には積極的な治療は行いません。痛みがある場合は、まず、理学療法、薬物療法、装具療法、ブロック注射などを行います。これらの治療で思わしい結果が得られない場合、手術を選択する形が一般的です。脊柱管の中には重要な神経である脊髄が入っています。腰のあたりになると脊髄はバラバラにほどけた形態をとるようになり、見た目の様相が馬の尻尾のような形態をしていることから馬尾神経と呼ばれます。腰椎すべり症では椎骨がずれることによって脊柱管が狭くなり、馬尾神経や神経根などが圧迫されます。腰椎すべり症は大きく分けて、腰椎変性すべり症と腰椎分離すべり症の2種類にわけられますが、先天的な要因から発症する形成不全性すべり症もあります。
 腰椎変性すべり症加齢に伴って椎間板(腰椎の間にあるクッションとなる組織)や椎間関節が変性し、腰椎が正常な位置からずれてしまいます。特に第4腰椎と第5腰椎の間に生じることが多いといわれています。腰椎分離すべり症は腰椎分離のための力学的脆弱性と長期間かけて腰椎の変性が進むことによって起こります。第5腰椎の分離症が多く、その場合、第5腰椎とその下の仙椎の間ですべりが生じます。形成不全性すべり症生まれつき骨の形成の状態が悪いために起こるすべり症です。腰椎の分離も伴っていることが多く、高度なすべりに進行する可能性があります。一定の距離を歩くと足にしびれや痛みが生じ、休む(しゃがむ・座るなど)ことにより再び歩けるようになる間欠跛行が代表的な症状です。似たような症状を呈する病気に脊柱管狭窄症や下肢の血流障害(閉塞性動脈硬化症など)があります。そのほかにも、下肢のしびれや麻痺、尿の出が悪くなるなどの症状がでることがあります。腰椎すべり症では、レントゲン写真やMRIなどの画像検査を行います。レントゲン写真では腰椎のずれ具合を確認することができます。MRIでは神経の圧迫具合を確認できます。形成不全性すべり症では、仙骨と呼ばれる背骨の一番下の骨(背骨と骨盤を連結する)の形が正常と異なります。仙骨の上縁が丸い形をしており、すべりが進行しやすい状態となっています。一般的な腰椎すべり症(腰椎変性すべり症や腰椎分離すべり症)では、最初は間欠跛行や疼痛、しびれが主な症状で、運動麻痺をみとめることは多くありません。そのような場合、まず、理学療法、薬物療法、装具療法などによる治療を開始します。こうした治療が奏効しない場合にはブロック注射を行います。保存療法で十分な効果が得られない場合、筋力低下がある場合、形成不全性すべり症などでは手術的な治療が行われます。
 初期治療としては、腰痛に対して消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などを処方し、症状の軽減を図ります。脊柱管狭窄によって馬尾神経が圧迫されて生じる下肢痛やしびれなどの症状に対しては、馬尾神経の血流を促進する末梢循環改善薬や神経障害性疼痛治療薬が処方されます。その他の保存療法として温熱療法や牽引けんいん療法、また痛みに対して神経ブロック療法を行うことがあります。

温熱療法:腰部の筋肉を温め、さまざまな症状の改善を図る治療です。
牽引療法:縦方向に腰部を引っ張る医療機器で腰部を伸ばし、さまざまな症状の改善を図る治療法です。
神経ブロック療法:原因となっている神経や部位に薬剤(局所麻酔薬)を投与し、痛みの軽減を図ります。長期間にわたり疼痛とうつうが消失することもあります。
 
 薬物療法、理学療法(腰椎の牽引・温熱療法)、神経ブロック療法などを行っても症状が改善しない場合には、手術療法が選択できます。

 具体的な手術療法は、腰椎の「ずれ」の程度や「動き」(不安定性)の程度を考慮し、決定します。神経の圧迫を解放する方法(除圧術)と、除圧に追加してずれ(すべり)を矯正し、腰椎を固定する方法(固定術)があります。手術介入のタイミングや手術方法については、症状や生活への影響を考慮し、慎重に検討する必要があります。

漢方と鍼灸

 ズレを生じた箇所から最適な漢方食養生サプリツボを選択して治療すれば良くなります。一度ご相談ください。

骨端症・ケーラー病・シーバー病

ケーラー病

 原因は完全には明らかになっていませんが、舟状骨の外傷や慢性的な圧迫がきっかけになることが指摘されています。骨の外傷の治癒過程に異常が生じることで病気の発症に至る可能性があります。ケーラー病は「骨端症」といわれる、小児に特有の骨の病気の一種です。骨端とは骨の端の軟骨で、骨の成長が起こる部分です。骨よりは強度が弱いので荷重などの負荷や外傷の際に傷つきやすい場所です。舟状骨は足のアーチ(土踏まずのカーブ)の頂点に位置するため荷重するときに負荷がかかりやすい場所です。骨の成長に伴って徐々に骨端が固まり骨が強くなっていきますが、舟状骨はこの過程が他の骨に比べて遅い傾向があります。舟状骨への血液の供給が十分でないこともあり、骨がうまく成長できずに徐々に腐ってつぶれてしまい、ケーラー病の発症に至るとも考えられています。土踏まずに当たる部分(舟状骨が存在する部分)に痛みや腫れを生じます。痛みは徐々に進行し、足に体重をかけることが難しくなることもあります。痛みにより、足を引きずるなど上手に歩くことができなくなります。ケーラー病では舟状骨への血流が障害され、骨の形が徐々に変形します。しかし、時間経過とともに血流が元通りになり、骨の変形が改善することも期待できます。ケーラー病による症状は、両側に生じることもありますが、片側に障害をみることのほうが多いです。ケーラー病は、足のレントゲン写真により診断されます。罹患した側と罹患していない側を比べると、進行の程度の評価に役立ちます。レントゲン写真では、舟状骨の硬化(レントゲン上白い色が濃く見える)や変形が確認されますが、この変形は時間経過とともに改善することも期待できます。レントゲン写真を継続的に撮影することで、骨の形が戻る様子を確認することができます。ケーラー病は、足に体重をかけることで症状が増悪することが懸念されます。そのため、足への荷重を避けるために、靴の中敷き(土踏まずを盛り上げることで体重を分散)やギプスを着用することが検討されます。症状が強くない場合には、こうした処置を行うことなく、経過観察にとどめることもあります。経過中に運動制限をかけることもあります。症状に合わせた治療を行うことで、ケーラー病の症状は1年ほどで改善することが期待できます。

シーバー病

 シーバー病とは、発育期の成長途上のかかとの骨の端(踵骨骨端部)に負荷がかかることで、骨の壊死えしや骨軟骨炎が生じ、痛みなどの症状を引き起こす病気のことです。踵骨骨端症と呼ばれることもあります。かかとを押したときの痛みや軽度の腫れ、歩行時の痛みなどがみられることがあります。10歳前後の男児によく起こる病気で、頻度は高くありませんが女児に起こることもあります。スポーツによる負荷によって発症しやすいためスポーツ障害の1つともされており、激しい運動の後にかかとの痛みを訴えるときはこの病気が疑われます。シーバー病は一般的に予後良好で、骨の成長が終われば自然治癒します。シーバー病は、発育期の子どもの踵骨骨端部と呼ばれる部位に負荷がかかることで起こります。発育期のかかとの骨は完全に骨化しておらず、骨端軟骨(成長板)と呼ばれる軟らかい組織が存在しています。この状態のかかとに運動などで負荷がかかったり、アキレス腱がかかとを引っ張る力が持続的にかかったりすることで踵骨に血流障害が起こり、軟骨の炎症や骨端軟骨より先の踵骨骨端核と呼ばれる部分に壊死がみられるようになります。シーバー病の主な症状はかかとを押したときの痛み、かかとの軽い腫れ、歩行時の痛みなどです。症状は激しい運動をした後に起こることが多いでしょう。また、症状は片足のみにみられることも、両足にみられることもあります。症状が軽い場合は、1日程度で痛みが治まり歩行にも支障をきたしませんが、痛みが続いたり、症状を繰り返したりする場合もあります。たとえば、かかとが痛いためにかかとを地面に着けられず、つま先歩きになることがあります。また、慢性化してしまうと、1年〜数年単位で症状が続くこともあります。シーバー病は、症状を基に診断されることが多いです。シーバー病を発症しやすい10歳前後の男児(まれに女児)が激しい運動の後にかかとの痛みを訴える場合は、この病気を疑うことがあります。X線検査で、踵骨骨端核に硬化像や分裂像が認められれば診断がつきます。なお、シーバー病はかかとの骨の局所的な骨壊死であり、一般に血液検査では異常はみられません。シーバー病の治療は局所の安静が基本です。激しい運動を行っている場合は中止します。痛みが強い場合や痛みが続く場合は、かかとに負荷がかからないようにするため、靴の中敷きを使ったり、かかとにシリコン製のクッションを置いたりするようにします。症状が軽ければ自然に軽快しますが、症状が治まったからといって運動を続けると症状を長引かせる原因となります。シーバー病はスポーツ障害の1つであるため、運動前の十分なウォームアップやストレッチングが大切です。また、シーバー病を含むさまざまなスポーツ障害を予防するためにも、スポーツ後のアイシング、足に合ったシューズの使用、足底装具(足の負担を軽減する中敷きのような治療用装具)の使用などを実践するとよいでしょう。シーバー病はそれほど強い負荷でなくても、繰り返し同じ場所に負荷がかかることで発症することがあります。腫れや関節機能障害などの明らかな異常がないことも多いため、病気に気が付かずに運動を続ける原因となることも少なくありません。子どものスポーツ障害は周りの大人が異常に気付くことが重要なため、シーバー病にかかりやすい10歳前後の子どもがかかとの痛みを訴えたときには、運動を休ませて安静にし、症状が改善しない場合は早めに医療機関を受診することが大切です。

漢方と鍼灸

 骨化するまでは軟骨の状態なので痛みがでます。痛みの部分より最適な漢方食養生サプリ、痛みを緩和するツボを選択して改善を促します。

骨髄炎・化膿性骨髄炎

 骨髄炎とは、骨の中に存在する「骨髄」と呼ばれる組織に炎症が生じる病気です。黄色ブドウ球菌などの病原体の侵入により、上腕骨や大腿骨などに炎症が生じます。発症すると、発熱や全身倦怠感(全身のだるさ)、炎症が生じた骨の痛み、皮膚の発赤、腫れなどが出現します。治療では、原因となる病原体に効果が期待できる抗生物質などが用いられます。薬剤での治療効果が不十分と判断される場合には、手術も検討されます。慢性化すると極めて治りにくくなってしまいます。小児の場合は全身的な感染症(敗血症)に伴う事が多いです。また、骨髄炎は化膿性骨髄炎と呼称される場合もあります。本来無菌状態である骨髄の中に病原体が侵入することで骨髄炎が発症します。黄色ブドウ球菌を始めとして、抗酸菌や真菌なども原因となりえます。骨髄へ病原体が侵入する状況としては、いくつか知られており、体の他の部位に存在する病原体が、血液を介して骨髄へ入り込む。虫歯や歯科処置、肺炎・尿路感染や感染性心内膜炎など内臓の感染症等が原因になりえます。虫歯から直接的に下顎骨へと病原体が侵入する、骨折(開放性骨折といって骨折に皮膚の傷を伴うもの)により骨髄が空気にさらされ、環境中の病原体が侵入する、人工関節など、手術に関連して病原体が侵入するなどが考えられます。骨髄炎は、糖尿病の罹患やステロイドの長期間使用、抗がん剤などにより免疫力が低下すると、発症するリスクが高くなります。その他、自己免疫の異常により骨髄に炎症が生じることもあります。このようにして発症する骨髄炎を慢性再発性多発性骨髄炎といい、難病指定を受けています。骨髄炎の好発部位は、上腕骨や大腿骨、椎骨などです。発症すると、典型的には発熱や全身倦怠感、炎症が生じた骨の痛みや皮膚の発赤、腫れなどが出現しますが、痛み止めの薬などの影響で熱が押さえられて典型的な症状が出ないことも珍しくありません。骨の強度が障害を受けて、周囲の臓器・器官にも障害が及ぶことがあります。たとえば椎骨で異常が生じた場合には、手足のしびれや運動障害につながることがあります。骨髄炎は、比較的ゆっくりと病気が進行することもあります。この場合には、数か月以上に渡り骨の痛みを感じることになります。骨髄炎では、下記のような検査により診断を行います。血液検査:白血球数やCRP、赤沈などを確認する。画像検査:レントゲン写真やMRI検査、骨シンチなどを行う。培養検査:血液や排泄された膿うみ、生検(針などで感染部位から組織をとる)・手術で得られた検体などを用いる。病原体が培養検査で特定できる場合には、抗生物質に対する効果を判定するための薬剤感受性検査も行います。原因となる病原体に対する効果が期待できる抗生物質や抗真菌薬などにより治療します。原因が特定できない場合もあるので、その場合は頻度の高い病原体に対する抗菌薬を使用することになります。数週間に渡る治療が必要となります。痛みを緩和するためには、局所の安静を保ったり、痛み止めを使用したりします。薬剤での治療効果が不十分と判断される場合には、手術も検討されます。自己免疫の異常により発症するタイプの骨髄炎(慢性再発性多発性骨髄炎)の場合、治療方法は完全には確立されていませんが、非ステロイド性抗消炎剤などにより治療を行います。

漢方と鍼灸

 菌や真菌に対して効果のある抗菌、抗真菌漢方を使います。自己免疫異常の場合、免疫を調整するものを選びます。炎症を起こしている部位から最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。

【症例】足の親指の骨髄炎と診断を受け、抗生剤を服用するも改善なし。
遠方よりご相談のお電話を頂き、漢方を送りました。
 本日お電話を頂き、菌がいなくなったとドクターから言われたとご報告を頂きました。一か月ちょっとで良くなったので喜んで頂きました。

骨粗鬆症

 骨粗鬆症とは、骨の強度が低下してもろくなり、骨折しやすくなる病気です。骨の強度が低下する主な要因としては、主に女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏、加齢、運動不足などの生活習慣が考えられます。一般的に広く認識されている“原発性骨粗鬆症”に関しては、加齢ならびにエストロゲン欠乏のために、とりわけ閉経後の女性が発症しやすいことが知られています。骨粗鬆症は骨折しやすくなるだけでなく、体全体の不調を招きかねない病気です。骨粗しょう症は、骨の強度が低下することで引き起こされます。骨の強度(骨の強さ)は、骨の量の指標となる骨密度と骨の質 (骨質)の2つの要因によって決まります。骨の強度に関しては、70%が骨密度、残りの30%は骨質に影響されるといわれています。骨粗鬆症には、原発性と続発性の2つがあります。原発性骨粗しょう症は、原因となる明らかな病気などがなく、主に女性ホルモンの低下や加齢によって引き起こされるものです。一般的に広く認識されている骨粗鬆症です。健康な骨の維持には骨の形成や吸収といった代謝のバランスが鍵となります。加齢に伴うビタミンDや副甲状腺ホルモンのはたらきの変化により骨代謝のバランスが崩れていきます。さらに女性の場合、閉経や加齢により、骨の分解を抑制するエストロゲンというホルモンの分泌が急速に低下します。その結果、骨の形成が吸収に追いつかなくなり、より骨を壊す方向へと傾いてしまいます。このほか、無理なダイエットや偏食により栄養バランスが偏ると、カルシウムやタンパク質、ビタミンD、ビタミンKなどが不足し、骨量が減りやすくなります。また、遺伝的要因が関わっていることも知られています。続発性骨粗しょう症は、特定の病気や薬の影響によって二次的に起こります。甲状腺機能亢進症やクッシング症候群などの内分泌疾患、胃切除や吸収不良症候群など栄養に関連した病気、ステロイドなどの薬剤、糖尿病などの生活習慣病、先天性疾患などさまざまな原因が挙げられます。前述したように、骨の強度は骨密度と骨質によって規定されます。骨粗鬆症は自覚症状がほとんどありません。1番問題となるのは、転倒やくしゃみなどのわずかな衝撃でも骨折しやすくなることです。骨粗鬆症で骨折しやすい骨の部位としては、背骨の柱となる“椎体”や太股の付け根にあたる“大腿骨近位部”、手首の骨である“前腕骨遠位部”、腕の付け根にある“上腕骨近位部”などが挙げられます。骨が折れると痛みが生じ、体が動かしにくくなることがあるほか、変形によって全身にさまざまな悪影響が及ぶことがあります。たとえば、椎体が押しつぶされるように折れると、背中が丸くなることがあるほか、それによって消化器や呼吸器などの機能障害が現れる恐れがあります。また、そのほかの部位の骨折でも活動性が低下し、運動不足になりがちです。運動不足により、ますます骨が弱くなることがあるため注意が必要です。国が実施している骨粗しょう症の検診では、生活習慣や食生活に関する問診と測定機器を用いた骨密度の測定が行われます。検査の結果によっては、より詳細な検査のために医療機関の受診をすすめられる場合があります。骨評価や骨密度測定の検査にはDXA (デキサ) 法が標準的に用いられています。DXA法は、エネルギーの低い2種類のX線を使って骨量を測定する方法です。骨粗鬆症の診断時には、背骨の腰に近い部分 (腰椎)と大腿骨近位部の2つの部位を測定することが推奨されています。定量的超音波測定法であるQUS法では、超音波が骨の中を通過する超音波伝播速度と、減衰する程度を示す超音波減衰率を測定して骨評価を行います。この検査のみでは骨粗鬆症の診断をすることはできませんが、人間ドックや検診などでスクリーニング検査として広く用いられています。MD法が用いられることもあります。このほか、X線やCT、MRIといった画像検査、血液検査や尿検査による骨代謝マーカーの測定、身長測定が実施されることがあります。骨粗しょう症では薬物治療が中心に行われます。骨粗鬆症の治療に用いられる薬は、骨吸収を少なくする薬 (骨吸収抑制薬)、骨形成を助ける薬 (骨形成促進薬)、痛みを取り除く薬などさまざまな種類があります。また、ホルモン剤やビタミン剤など不足したものを補う薬が処方されることもあります。将来の骨折予防のためにも、自己判断で服薬を中止することなく、医師の指示に従うようにしましょう。骨粗鬆症の予防には、バランスのよい食事と適度な運動が効果的です。食事では、牛乳などに多く含まれるカルシウムや魚に豊富に含まれるビタミンD、納豆や海藻などに含まれるビタミンK、そのほかリンやマグネシウムなどを積極的に取るとよいでしょう。適量のタンパク質も大切です。喫煙や過度な飲酒は骨粗しょう症の危険因子となるため、控えましょう。そのほか転倒に注意しながら、適度な運動や日光浴を心がけるとよいでしょう。

漢方と鍼灸

 大腿骨、腰椎、腸骨、骨密度の値の低い箇所、女性ホルモンの反応穴などから最適な漢方食養生サプリ、ツボを選択して治療や予防をしていきます。閉経されてから食事以外に天然のタンパク質、ビタミン、ミネラル、コラーゲン、エラスチンの摂取を継続しているとお元気な方が多いですよ。自分と相性のいい物を摂ることが大切ですので、ご相談ください。

腱鞘炎・ドケルバン病・ばね指

 腱鞘炎とは、骨と筋肉をつないでいる“腱”と腱を包む“腱鞘”と呼ばれる組織に摩擦が生じることによって炎症が生じる病気のことです。腱や腱鞘は全身のさまざまな部位に存在していますが、症状は主に動きの多い手首や指に発症します。代表的なものでは、スマホの使い過ぎなどによって手首の母指(親指)側にある腱鞘に発症する“ドケルバン病”、指の腱鞘に発症する“ばね指”などが挙げられます。腱鞘炎を発症すると、指や手首に痛みが生じるだけでなく、腱鞘が腫れて狭窄する(狭くなる)ため、腱のスムーズな動きが妨げられて手首や指の動きが悪くなることも少なくありません。また、周辺の神経を刺激することでしびれが走ることもあります。腱鞘炎は、手首や指を酷使することで腱と腱鞘に過剰な摩擦がはたらくことで炎症が引き起こされます。そのため、腱鞘炎は主にキーボード操作やピアノ演奏など指と手首を長時間動かす作業を日常的に行っている人、何かを強く握って行うスポーツをしている人、育児中の人などが発症しやすいとされており、近年では長時間のスマホ操作も腱鞘炎のリスクを高めるとして注意喚起がなされています。腱鞘炎は特に手首や指を酷使していない場合にもよく見られることから、加齢に伴い腱鞘が硬くなることや女性ホルモンのバランスの変化なども発症に関与しているのではないかと考えられています。腱鞘炎を発症すると、炎症が生じた腱鞘の周囲に痛み、腫れ、発赤などが現れます。また、腱鞘が腫れることで腱がスムーズに動かなくなり、腱がつながる指の動きが悪くなるのも特徴です。代表的な腱鞘炎の1つであるドケルバン病では、腱鞘にガングリオンというしこりが生じて、母指が動かしにくくなります。一方、ばね指は指の腱鞘に炎症が生じるためその指を動かしにくくなり、動かそうと試みると突然ばねのように指が伸びる“ばね現象”という特徴的な症状が現れます。また、炎症が悪化すると周囲を走行する神経に刺激を与えて痛みの原因になることもあります。腱鞘炎は、医師による問診や視診、触診などによって診断を下すことができるため特別な検査は必要ないことがほとんどです。しかし、重度の腱鞘炎は関節の障害や骨折など別の病気との区別が必要になる場合もあり、診断を下す際にはレントゲン、CTやMRIなどの画像検査を行うことがあります。特にMRIは腱や腱鞘の状態を詳しく描出することができるため、狭窄の程度などを調べるのに有用なことがあります。ドケルバン病では母指をできるだけ動かさないよう注意しますが、ばね指の場合には初期には指を反らすようにストレッチを行います。基本的には痛みに対する鎮痛剤や湿布、超音波などが使用されますが、症状が強い場合には腱鞘の内部に炎症を抑えるステロイド薬を直接注射する治療が行われます。多くはこれらの治療で次第に症状が改善しますが、重症の場合やこれらの治療で改善しない場合は、炎症を起こして狭窄した腱鞘を切り開いて腱との摩擦を防ぐ手術を行う必要があります。また、腫瘍が原因の場合は、根本的な治療として腫瘍を切除して腱鞘への圧迫を解除する手術が行われます。上でも述べたとおり、腱鞘炎は指や手首を酷使することによって引き起こされます。そのため、腱鞘炎を予防するには、長時間手首や指を酷使する作業を避ける、手首や指のだるさを感じたら作業をやめるなどの対策が必要です。

漢方と鍼灸

 患部の炎症をとる漢方、腱の摩擦をスムーズにする漢方を選択します。患部から最適な漢方、食養生やサプリツボを選択して改善していきます。根本療法は、筋や腱の潤いを付けていくことで再発を防いでいきます。ご相談ください。

自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群・自閉症・広汎性発達障害)

 アスペルガー症候群は、自閉症にみられる特徴(社会性発達の質的障害、興味や活動の偏りなど)を共通の類似点として持っています。自閉症では知的障害や言語発達に遅れを伴うことがありますが、アスペルガー症候群ではそれらはありません。知的レベルが正常であり、言葉の発達に遅れはないことなどから、一見すると「ちょっと変わった人」程度に認識されることもあります。しかし、アスペルガー症候群の方が社会生活を送る際に困難さを伴う点においては自閉症と相違はなく、治療や支援を行うことはとても大切です。アスペルガー症候群と自閉症には重複する部分も多く、近年は「自閉スペクトラム症」として1つの疾患概念に含めて考えられるようになってきています。アメリカ精神医学会による最新診断マニュアル(DSM-5)では、アスペルガー症候群と自閉症の診断名は削除され、自閉スペクトラム症に統一されました。

人と関わることが苦手、ひとりで好きなことをして過ごすほうが性に合っているといった性質は、自閉スペクトラム症ではない方にも多くみられます。その性質が極端で、本人の社会生活に影響が出ている、もしくは周囲の人が困っている場合、障がいの範囲に入ります。正常から重症の範囲まで、境界が曖昧で連続性があるということから、スペクトラムと呼ばれています。自閉スペクトラム症は、発達障害のひとつです。発達障害の中でももっとも頻度が高く、発症率は約100人に1人いるといわれています。また、女性よりも男性のほうが約4倍多いです。自閉スペクトラム症の本質的な症状、つまり中心症状は、2~3歳頃から明らかになります。そして、中心症状自体は一生続くものだと考えられています。自閉スペクトラム症の中心症状は、通常、人と関わるときには、表情、視線、ジェスチャー、声色、言葉などを使って交流します。自閉スペクトラム症の方は、表情や視線などをうまく使ったり、情報として受け取ったりすることが困難です。そのため、うまくコミュニケーションをとることができず、本人の社会生活や集団生活に深刻な影響が及んでいます。自閉スペクトラム症の方は、同じような行動パターンを繰り返す傾向があります。身の回りで何か変化が起こったとき、柔軟に対応できず混乱してしまうことがあります。また、関心を持つ事柄が偏りやすく、自分が関心を持っていることは繰り返し実行しても、ほかの人や物には関心を持ちにくいという方が多いです。社会的コミュニケーションの障害や、反復的で常同的という中心症状があることにより、自閉スペクトラム症の方は、さまざまな状況に対してうまく適応することが困難です。そのために、不眠、不安、抑うつといった、さまざまな症状が出てくることがあります。たとえば、就職して会社勤めをするようになると、それまでとは異なる環境に身を置くことになります。新しい環境にうまく適応できず、うつ状態になり、精神科にかかってうつ病と診断される方もいらっしゃいます。その場合、治療を受け、休職して自宅で自分らしく過ごしていると、多くの方はうつ状態が回復してきます。しかし、職場に戻ると、適応の問題で再びさまざまな症状が出てきます。併発しやすい精神疾患─うつ病、不安症、解離性障害などです。自閉スペクトラム症の方の約半数が、知的障害をもっています。てんかんを合併することも多いです。また、うつ病、不安症、解離性障害や転換性障害などを発症しやすいといわれています解離性障害や転換性障害とは、心理的な原因により、意識や記憶、運動機能や知覚の一部分を切り離すという症状を示し、困難な状況で起こることが多いです。自閉スペクトラム症の方は、困難なことが起こったとき、周囲の人に相談したり助けを求めたりすることが苦手な傾向があります。自分の状況について言葉でまとめることが難しいため、うまく喋れなくて固まってしまったり、自分の感情に鈍感で、つらいと言えず体に症状が出てきてしまったりすることがあります。またADHDは発達障害のひとつで、不注意や多動を特徴とする障がいです。自閉症とは別の障がいですが、自閉症に併発することがあります。また、ADHDの症状が強い方は、自閉症の症状もみられるという、相関があることが分かってきています。なかには、自閉症の症状はなく、周囲の人への配慮などが問題なくできるという方もいらっしゃいます。学生時代はとくに問題が起こらなかったという方でも、働き始めてから自閉スペクトラム症の症状に気づくことがあります。また、仕事を始めてしばらくは問題がなくても、役職がつくと生活に影響が出てくる方もいます。たとえば、勤め始めて間もない頃は、与えられた仕事をしっかりとこなせばよい職種の場合、仕事に支障が出ないことがあります。しかし、昇進して役職がつくと、部下に仕事を任せたり割り振ったりという、対人交渉が必要な場面が増えてきます。そこで、生活に影響が出てきて、自閉スペクトラム症に気づくことがあります。自閉スペクトラム症の診断において重要なのは、子どもの頃から他者と関わることが苦手なのか、ほかの病気の影響で苦手になったのかということです。たとえば、統合失調症という精神疾患も、自閉スペクトラム症と同じく、社会生活が困難になることがある病気です。しかし、幼い頃からではなく成長してから症状がみられるようになったという方の場合、発達障害ではなく、統合失調症を含め、ほかの精神疾患による可能性を考えます。成人の方で、自閉スペクトラム症と似たような症状があって困っているという場合、まずは子どもの頃の経過を確認することが重要です。これまで、「自分は周りと何かが違う」「周りができることでも自分はできない」などと感じていた方が、テレビやインターネットで自閉スペクトラム症のことを知り、自分もその特徴に当てはまると思って病院にかかる、ということが増えているように思います。病院で診断がつくと、自分の特徴を客観的に認識することができ、困ったときはどのように対処すればよいのか分かるようになって、楽になった、うまくいきやすくなったという方は多くいらっしゃいます。子どもの頃に診断がついた方の場合、医療機関や施設で相談したうえで、本人に向いている職業についたり、障害者手帳を取得して障害者就労をしたりと、自分の居場所ができている方もたくさんいらっしゃいます自閉スペクトラム症はなるべく早く診断を受けて対策を取ることが重要です。自閉スペクトラム症の治療では、不安や抑うつなどの併発症状が出たとき、それに対しての治療を行うことが一般的です。そのほか、心理教育といって、本人や周囲の近しい方にどのような特徴があるのか理解してもらうことも欠かせません。診断がついたあとで重要になるのは、就労支援などの社会資源の活用です。医療機関以外にも、自閉スペクトラム症の方が活用すべき施設として、発達障害者支援センター、就労支援センター、就労移行事業所などが挙げられます。
 基本的には、年齢を重ねるとともに問題が減っていく方が多いです。自分の特徴を客観的に把握できると、本人に適した仕事に就きやすくなります。たとえば、きちんと作業が分担されていて、自分のペースで取り組んだり、同じ作業を繰り返したりするような仕事は得意です。反対に、チームワークや共同作業を求められる仕事は苦手というように、向き不向きがはっきりしています。自分に向いていないことは諦めて、得意なことに取り組むことも大切です。周囲もそれを理解して、本人の得意なことはなるべく頼み、苦手なことは頼まないという流れができてくると、本人もうまく対応していけるようになり、周囲の方の負担もかえって減っていきます。自閉スペクトラム症の方の中には、精神的に安定していて、専門職や研究職などで自分の得意なことを仕事にできている場合、中心症状が強くても問題なく過ごせている方もいます。身近に自閉スペクトラム症の方がいる場合、その方の特徴を理解しておくことは重要です。たとえば、自閉スペクトラム症の方は、相手に失礼にあたることでも悪気なく口に出してしまうことがあります。もし、身近な方から失礼なことを言われたら、腹が立ったり、見下されていると感じたりするかと思います。しかし、自閉スペクトラム症の方は悪気なく口にしていることが多く、相手を怒らせても気づかないということもあります。自閉スペクトラム症の方は裏表がないと理解しておくだけでも、よりよいコミュニケーションにつながると思います。自閉スペクトラム症の方は、仕事のなかで何か苦手なことを求められると、うまく適応できなくなる可能性があります。小学生の頃までは、ひとりで好きなことをして遊んでいてもよく、時間ごとにやるべきことが決まっているため、マイペースに過ごすことができたと思います。しかし、高校生や大学生になると、集まって自由に話し合ったり、自由に選択したりする機会が増え、社会生活が難しくなってくる方は多いです。一方、自分のペースで物事を進めていられるときは、あまり問題になりにくいことが特徴です。職場などでは、本人が苦手なことを求めないように、周りの方が配慮することも大切です。

自閉スペクトラム症の症状のまとめ

 重症度は様々ですが、言葉の遅れ、反響言語(オウム返し)、会話が成り立たない、格式張った字義通りの言語など、言語やコミュニケーションの障害が認められることが多くなっています。乳児期早期から、視線を合わせることや身振りをまねすることなど、他者と関心を共有することができず、社会性の低下もみられます。学童期以降も友だちができにくかったり、友だちがいても関わりがしばしば一方的だったりと、感情を共有することが苦手で、対人的相互関係を築くのが難しくなります。また、一つの興味・事柄に関心が限定され、こだわりが強く、感覚過敏あるいは鈍麻など感覚の問題も認められることも特徴的です。

自閉スペクトラム症の併存症

 様々な併存症が知られていますが、約70%以上の人が1つの精神疾患を、40%以上の人が2つ以上の精神疾患をもっているといわれています。特に知的能力障害(知的障害)が多く、その他、ADHD(注意欠如・多動症)、発達性協調運動症(DCD)、不安症、抑うつ障害、学習障害(限局性学習症、LD)がしばしば併存します。
 また医学的併存疾患としては、てんかん、睡眠障害、便秘を合併しやすいことが知られています。てんかんの併存は、知的障害が重い人ほど多く認められます。

自閉スペクトラム症の原因

 自閉スペクトラム症の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と考えられています。胎内環境や周産期のトラブルなども、関係している可能性があります。親の育て方が原因ではありません。

漢方と鍼灸

 脳の機能障害ですが、証を診て判断します。また脳の波長(気の流れ)を捕えて漢方を選択していきます。また脳と腸は相関関係があるので胃腸が弱ければ、丈夫にしていきましょう。とくに悪い腸内環境は整えましょう。脳波から漢方食養生サプリツボを的確に選択して整えていきます。

・抑肝散加陳皮半夏(柴胡・茯苓・白朮・甘草・当帰・川芎・釣藤鈎・陳皮・半夏)『本朝経験方』
この薬方の主薬は釣藤散で、中枢性の鎮静、鎮痙作用と催眠作用があります。
・柴胡加竜骨牡蠣湯(桂枝・茯苓・牡蛎・竜骨・柴胡・黄芩・人参・半夏・生姜・大棗・大黄)『傷寒論』
柴胡はイライラや緊張を緩和し、茯苓・竜骨・牡蛎には鎮静作用があります。
・甘麦大棗湯(甘草・大棗・小麦)『金匱要略』
・桂枝加竜骨牡蛎湯(桂枝・芍薬・生姜・甘草・大棗・竜骨・牡蛎)『金匱要略』
・菖蒲丸(石菖蒲・丹参・人参・赤石脂・天門冬・麦門冬)『閻氏小児論』
・抑肝散(柴胡・甘草・川芎・当帰・白朮・茯苓・釣藤)『保嬰撮要』
など(薬局製剤以外も含む)

ぶどう膜炎(サルコイドーシス・フォークト・小柳・原田病・ベーチェット病・急性前部ぶどう膜炎・HTLV-1関連ぶどう膜炎・Fuchs(フックス)虹彩異色性虹彩毛様体炎など)

 ぶどう膜とは、眼球内の組織のうち、虹彩、毛様体、脈絡膜の3つをまとめた名称で、ぶどう膜とその周囲の組織に炎症が起こる病気をぶどう膜炎といいます。全体としては女性の患者のほうがやや多く、40歳代~60歳代に多く発症しますが、これらは原因となる病気によっても異なります。ぶどう膜炎の3大原因としてサルコイドーシス、原田病(フォークト・小柳・原田病)、ベーチェット病が挙げられます。サルコイドーシスでは20〜30歳代と50〜60歳代の女性に多く、原田病では女性にやや多く、ベーチェット病では20~40歳代の男性において目の症状が現れることが多いといわれています。発症すると目の充血や痛み、目がかすむ、光がまぶしい、ものが見えにくいなどの症状が現れます。また、ぶどう膜炎にはさまざまな病気が合併しやすく、これに伴って重篤な視力障害につながる場合もあるため、早期診断・早期治療が大切です。治療は薬物療法が中心となります。主に副腎皮質ステロイド点眼薬や散瞳薬が使用されますが、感染性の場合は抗ウイルス薬や抗菌薬など原因微生物に効果のある薬も使用されます。合併症がある場合などは目の手術が必要になることもあります。ぶどう膜炎の原因として特に多いのが、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病の3つで、いずれも自己免疫疾患に分類されます。自己免疫疾患は本来自分の体を守るはずの免疫系が正常に機能しなくなり、自分の体を攻撃してしまう病気を指しますが、詳細な原因はまだはっきりと分かっていません。

サルコイドーシス

 肉芽腫という、炎症によって出来る炎症細胞の塊のようなものが全身の臓器、特に肺と眼に出来て様々な障害を引き起こす病気です。ぶどう膜炎の原因疾患として最も多いものです。ぶどう膜炎は前眼部の激しい炎症から硝子体の混濁、網膜血管炎まで、眼球全体に様々な所見を呈します。眼所見からサルコイドーシスが疑われる場合には肺に病変がないかレントゲン写真で検査したり、他に血液検査やツベルクリンの検査を行います。完全に原因はわかっておらず、厚生労働省の特定疾患に指定されています。

Vogt-小柳—原田病

 メラノサイトという色素細胞に対する自己免疫疾患です。免疫というのは本来、外界から入ってきた異物を排除するために私たちが持っている機構ですが、これが誤って自分のものに対して攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。この病気は自己の持つメラノサイトを誤って攻撃してしまうために起こります。典型的には風邪様症状があった後に急激な視力低下やゆがんで見える症状が起こります。眼所見からこの病気が疑われる場合には血液検査に加えて髄液検査が必要です。血液検査では白血球のタイプを調べるHLA検査が診断の助けとなります。この病気の人はHLA-DR4いう型を持っている場合がほとんどであることがわかっています。

ベーチェット病

口内炎や皮膚の紅斑といった、全身の炎症が悪くなったり良くなったりを繰り返す病気です。ぶどう膜炎も発作的に炎症が出ては一旦よくなり、またしばらくして炎症発作を起こすという特徴があります。炎症発作を繰り返すことで眼の組織が不可逆的にダメージを受け続け、次第に視力が低下する病気です。ベーチェット病ではいかにこの炎症発作を起こさせないようにするかが治療の鍵となります。“解夏”という映画ではこの病気のために次第に視力を失って行く若者が描かれています。以前は失明する病気の代表でしたが、現在はインフリキシマブ(後述)という治療薬がベーチェット病によるぶどう膜炎に適応認可されており、劇的に炎症発作が押させられるようになりました。この病気も原因はわかっておらず、厚生労働省の特定疾患に指定されています。

急性前部ぶどう膜炎

 急性に眼の中の前の部分(前眼部)に激しい炎症を起こすぶどう膜炎です。上述のHLAに相関するもの(HLA-B27)や、自己免疫疾患(関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病等)に相関して起こる場合があります。慢性化すると炎症が眼底にも及んで眼底病変を起こすことがあります。

HTLV-1関連ぶどう膜炎

 成人T細胞白血病を起こすHTLV-1というウイルスにより起こるぶどう膜炎です。ウイルスそのものが起こす炎症いうよりは、ウイルスに対する免疫反応で起こる炎症と考えられています。このウイルスは九州、特に長崎と佐賀で持っている人が多く、したがってこのぶどう膜炎も九州では比較的よく経験しますが九州以外では滅多にいないと言われています。

Fuchs(フックス)虹彩異色性虹彩毛様体炎

 比較的頻度の高いぶどう膜炎で、虹彩異色(虹彩の色が左右眼で異なる)が特徴のひとつです。原因は明確にはわかっていませんが、風疹ウイルスやサイトメガロウイルス等と関連があるもと言われています。白内障や硝子体混濁を併発することがあり、視力が低下すればそれらに対する手術治療が必要になることがあります。

そのほかの原因として、以下のようなものが挙げられます。細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの感染、膠原病(全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど)、糖尿病、炎症性腸疾患、悪性腫瘍などです。ただし、ぶどう膜炎と診断を受けた患者のうち、3人に1人程度は検査をしても原因を特定できないことがあるといわれています。ぶどう膜炎が生じると、眼球内の透明な部分に炎症細胞が出てくることで以下のような症状が現れます。
・霧視:霧きりがかかったように目がかすんで見えること
・飛蚊症:目の前に小さな虫や糸くずのようなものが飛んで見えること
・羞明感:光のまぶしさを強く感じること
・視力低下:眼内の前の部分(前眼部)に強い炎症があったり、眼の奥に濁りが出たり、また網膜の中心部に炎症が及ぶと視力が低下します。

 また、炎症が強い場合には目が充血します。充血はアレルギーや細菌・ウイルス感染などによって引き起こされる結膜炎でよくみられる症状ですが、ぶどう膜炎での充血は結膜炎とは異なり、目やにを伴いません。そのほか、目の痛みや頭痛、視力低下などの症状を伴うこともあります。このような症状は両目に出る場合もあれば片目だけの場合もあります。また、症状が徐々に悪化する場合や、軽快と悪化を繰り返す場合もあるなど、症状の現れ方や経過はさまざまです。ぶどう膜炎は目の病気ですが、全身の免疫異常と関係することもあります。そのため、一般的な眼科検査や蛍光眼底造影検査(FAG)、光干渉断層撮影(OCT)などの目の検査に加え、詳細な問診と身体診察、全身検査も行われます。全身検査では、血液検査、胸部X線検査、ツベルクリン反応検査などを行い、原因となる全身性の病気がないかを調べます。また、目の検査では目の組織を採取したり、診断と治療を兼ねて手術が行われたりする場合もあります。ぶどう膜炎の治療は薬物療法が基本となります。主に炎症を抑えるための“副腎皮質ステロイド点眼薬”と、炎症による虹彩後癒着(虹彩と水晶体がくっつくこと)を防ぐための“散瞳薬”が用いられます。ステロイド薬の投与法には、点眼のほかに注射、内服、点滴があり、炎症の程度や場所に応じて使い分けられます。上記の治療でよくならない場合や炎症が強い場合など、免疫抑制薬や生物学的製剤といった治療薬を投与することもあります。ウイルスや細菌などの病原微生物が原因の場合には、その病原微生物に対して効果的な薬(抗ウイルス薬・抗菌薬・抗真菌薬・抗寄生虫薬など)が用いられます。ぶどう膜炎は、白内障や緑内障、網膜剥離、硝子体混濁など、さまざまな合併症が生じる病気です。このような合併症が生じると、薬物療法に加えて手術が必要になる場合もあります。

漢方と鍼灸

 ただの目の炎症ではないということです。ブドウ膜の反応穴、自己免疫の反応穴、風毒塊、上咽頭などから最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。

煎じ

越婢加朮湯(麻黄・石膏・生姜・甘草・白朮・大棗)『金匱要略』
充血があって、羞明・流涙の著しい時に使われます。
小青竜湯(麻黄・芍薬・細辛・乾姜・甘草・桂枝・五味子・半夏)『傷寒論』
炎症・充血があり、頭痛・羞明・流涙などがあるときに使われます。
防風通聖散(防風・川芎・当帰・芍薬・大黄・薄荷・麻黄・連翹・芒硝・石膏・黄芩・桔梗・滑石・甘草・荊芥・白朮・山梔子・生姜)『宣明論』
眼目が赤く腫れ、疼痛がある時に使われます。
桂枝茯苓丸(桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬)『金匱要略』
充血、鬱血がある時に使われます。
桃核承気湯(桃仁・大黄・甘草・芒硝・桂枝)『傷寒論』
小柴胡湯(柴胡・黄芩・人参・半夏・甘草・生姜・大棗)『傷寒論』
炎症充血の初期刺激症状の去った時に使われます。
小建中湯(桂枝・芍薬・甘草・生姜・大棗・膠飴)『傷寒論』
炎症充血は少なく、体力の衰えた時に使われます。
当帰芍薬散(当帰・川芎・芍薬・白朮・茯苓・沢瀉)『金匱要略』
充血などは少なく、冷え性・貧血気味の方に使われます。
洗肝明目湯(当帰・川芎・芍薬・地黄・黄連・黄芩・山梔子・石膏・連翹・防風・荊芥・薄荷・姜活・蔓荊子・菊花・蒺蔾子・桔梗・決明子・甘草)『万病回春』
炎症・充血などの刺激症状の強い時に使われます。
・謝導人大黄湯(大黄・芍薬・細辛・甘草・黄芩)『外台秘要方』
眼目赤腫疼痛がひどいときに使われます。
など(薬局製剤以外も含む)

【難病、代謝・内分泌】の症状でお悩みの方に

 「もしも、親や身近な人、あるいは自分自身が【難病、代謝・内分泌】の病気になったらどうしよう…」そんな不安を抱いたことはありませんか。
 身近な症状として、糖尿病痛風・高尿酸血症貧血などの増加が問題となっています。また悪性の病気、悪性関節リウマチ全身性エリテマトーデスシェーグレン症候群ベーチェット病の方も増えています。成人・高齢化社会において、【難病、代謝・内分泌】の病気の病気の解消は非常に重要です。

 当院の【難病、代謝・内分泌】の病気へのこだわりは漢方薬の選薬鍼灸の施術食養生を大切にしていることです。どこに行っても良くならなかった方の最後の砦になりたい、そんな気持ちでアドバイスさせていただきます。

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【難病、代謝・内分泌】の病気と漢方東洋医学

悪性関節リウマチ全身性エリテマトーデスシェーグレン症候群ベーチェット病クローン病潰瘍性大腸炎再生不良性貧血突発性血小板減少性紫斑病網膜色素変性症糖尿病痛風・高尿酸血症脂質異常症甲状腺機能亢進症・低下症・甲状腺炎

 自分自身や家族・同僚、友人など周りの人について癌など【難病、代謝・内分泌】の病気と思われる症状に気づいたら一人で悩まず、不二薬局にご相談ください。

■漢方の不二薬局、はりきゅう治療院 藤巻一心堂へのアクセスはこちら

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ベーチェット病

 ベーチェット病とは、全身のさまざまな部位に炎症が繰り返し生じることが特徴的な病気です。免疫のはたらきが過剰になって自身の体の組織を攻撃してしまう膠原病の一種と考えられていますが、現時点で明確な発症メカニズムは解明されていません(2020年10月時点)。ベーチェット病の症状の現れ方には大きな個人差がありますが、主な4つの症状は口腔内のアフタ性潰瘍・外陰部の潰瘍・皮疹などの皮膚症状・ぶどう膜炎(目の炎症)とされています。このような症状がよくなったり悪くなったりしながら繰り返し現れるのがベーチェット病の特徴ですが、重症の場合には内臓や神経、血管などにも炎症をもたらし、ときには命に関わることも多々あります。また、治療は炎症を免疫のはたらきを抑えるステロイドの投与が行われますが、それぞれの症状を緩和する治療も同時に行わなければならないため、治療に難渋することも少なくありません。また、重症の場合は免疫抑制剤を使用しなければならないケースも多く、さまざまな副作用に注意する必要があります。現在のところ、ベーチェット病の明確な発症メカニズムは解明されていません(2020年10月時点)。一方、遺伝などで“この病気を発症しやすい体質”が根底にあり、そこに免疫をつかさどる血液細胞の一種である白血球が過剰にはたらく感染症などが生じることが発症の引き金になるとの説もあります。近年では、どのような遺伝子の異常が関与しているのか多くの研究が進められているのが現状です。ベーチェット病は体のさまざまな部位に繰り返し“炎症発作”が引き起こされる病気です。症状の現れ方は人によって異なりますが、発症するとほぼ100%で口の中になかなか治らない口内炎や外陰部の粘膜に潰瘍が多数できるようになります。また、皮膚には1~数cmほどの赤いしこりやにきびのような発疹が見られることも多く、目の網膜などを含む“ぶどう膜”と呼ばれる部分に炎症を引き起こすぶどう膜炎を発症することが多いとされています。これらの症状はよくなったり悪くなったりを繰り返し、次第に症状が悪化していくことも少なくありません。特にぶどう膜炎は悪化すると失明を引き起こすことがあるため注意が必要です。そのほか、重症な場合にはこれらの症状だけでなく、関節や副睾丸などに炎症を起こしたり消化管・血管・神経といった重要な器官にも炎症が及んだりすることがあり、消化管に穴が開く、形成された動脈瘤が破裂するといった命に関わる症状が引き起こされることもめずらしくありません。ベーチェット病は膠原病の一種ですが、ほかの膠原病のようにその病気の特徴的な“自己抗体(自分の組織を攻撃するたんぱく質)”は存在しません。そのため、口内炎・外陰部潰瘍・皮膚症状・ぶどう膜炎といった4つの代表的な症状が見られるかなどを参考にして診断されます。一方、この病気が疑われるときは体の炎症の程度を調べるために血液検査が行われ、それぞれの症状に適した検査が行われます。具体的には、皮疹に対する病理検査(皮疹の組織を採取して顕微鏡で詳しく観察する検査)、吐血や下血に対する内視鏡検査、視力低下に対する細隙灯検査、神経症状に対する髄液検査・頭部MRI検査などが挙げられます。ベーチェット病の治療は、症状の現れ方にかかわらず薬物療法が主体となります。基本的に“炎症発作”が生じたときは、炎症と免疫のはたらきを抑えるステロイド剤が使用されますが、消化管・血管・神経などに炎症が及ぶような重症のケースでは免疫抑制剤が使用されるケースも多々あります。ベーチェット病では炎症を抑える根本的な治療以外にも、それぞれ現れる症状を改善するための対症療法も行われます。具体的には関節炎の痛みに対する鎮痛薬の投与、血管炎に伴う血栓症に対する抗凝固剤投与などの薬物療法も必要となり、消化管に穴が開くといった場合には手術が必要となります。ベーチェット病は発症メカニズムが解明されていないため、明らかに効果のある予防法はないのが現状です。しかし、疲れやストレスなどが原因で症状が悪化・再燃しやすくなることが知られているため、ベーチェット病と診断された場合は十分な休養・睡眠を確保し、生活リズムを整えて食生活などにも注意することが大切です。また、近年の研究では喫煙習慣も症状を悪化させることが分かっているので、喫煙習慣がある方は禁煙を目指す必要もあります。

漢方と鍼灸

 標治は、各炎症を鎮める漢方を使います。免疫が過剰に亢進するのを元の状態に持っていくのを本治といいます。自己免疫の反応穴、口腔内のアフタ性潰瘍・外陰部の潰瘍・皮疹などの皮膚症状・ぶどう膜炎(目の炎症)の箇所、上咽頭、小腸の反応穴から最適な漢方食養生サプリツボを選択し標本治療をしていきます。

シェーグレン症候群

 シェーグレン症候群とは、免疫のバランスが崩れることによって涙や唾液を産生する涙腺・唾液腺などの臓器を攻撃し、眼乾燥(ドライアイ)や口腔乾燥(ドライマウス)を主にきたす病気のことです。自己免疫性疾患(免疫の異常によって自分自身を攻撃してしまう病気)の一種であり、涙腺や唾液腺だけでなく全身の関節、肺、皮膚、消化管、腎臓などさまざまな部位にダメージが及ぶこともあります。シェーグレン症候群を発症すると目や口の乾燥が目立つようになりますが、多くの人は症状とうまく付き合いながら治療の必要なく生活していると考えられています。一方、一部の人には目や口の乾燥以外にもさまざまな症状が現れ、腎臓、肺、皮膚などにも病変が現れたり、まれに悪性リンパ腫の合併が見られたりすることもあります。また、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどほかの自己免疫疾患に合併する二次性シェーグレン症候群もあります。なお、この病気は中年以降の女性が発症しやすいという特徴がありますが、明確な発症メカニズムは解明されていないのが現状です。シェーグレン症候群は、免疫のバランスが崩れることにより、涙腺や唾液腺をはじめとする自分自身の臓器にダメージが起こる病気です。どのような原因で免疫の力が過剰にはたらいて涙腺や唾液腺を攻撃するのかはっきりとは分かっていません。まれですが、シェーグレン症候群の約2%は同一家系内で発症するとのデータもあり、遺伝との関連も指摘されています。そのほか、何らかのウイルス感染、女性ホルモンの変動、たばこなどの環境要因もあり、ひとつの要因だけでなくいくつかの要因が重なり合って発症するものと考えられています。シェーグレン症候群を発症すると、もっとも多く見られる症状が目や口の乾燥です。これは涙腺や唾液腺がリンパ球という血液細胞に攻撃を受けることで機能が低下し、涙や唾液の分泌が減少するためです。その結果、目の痛みや充血、口臭、虫歯、歯周病などさまざまな症状を引き起こします。一方、シェーグレン症候群は一部に目や口の乾燥以外の症状が現れることが分かっています。これは、シェーグレン症候群を発症すると、リンパ球や自己抗体(自分の臓器を攻撃するたんぱく質)および過剰に増えた免疫グロブリン(抗体のたんぱく質)が、全身のさまざまな臓器にダメージを与えるからです。これらの症状は多岐に渡り、関節炎・甲状腺炎・間質性肺炎・慢性気管支炎・自己免疫性肝炎・胃炎・間質性腎炎/尿細管性アシドーシス(尿に酸を排泄できなくなり、血液が酸性になること)・皮疹などが挙げられます。また症状の重症度は人によって大きく異なり、大多数は軽度な目や口の乾燥のみしか見られませんが、全身にさまざまな症状が引き起こされるケースもあります。また、日本では比較的まれですが悪性リンパ腫を合併することがあり、重症度がさまざまなのもシェーグレン症候群の特徴のひとつです。シェーグレン症候群が疑われるときは次のような検査が行われます。口や目の乾燥の程度を調べる検査です。ガムテストは口の中でガムを10分間かんで、サクソンテストは綿を2分間かんでその間に分泌された唾液の量を計測する検査です。シルマーテストではまぶたに検査用の紙を挟んで涙の分泌量を調べます。これらの検査によって、口や目の乾燥の程度を評価することが可能です。シェーグレン症候群では、“抗核抗体” “リウマトイド因子”“抗SS-A抗体”や“抗SS-B抗体”と呼ばれる自己抗体が血液中に産生されるようになります。そのため、血液中にこれらの自己抗体が存在するか調べる目的で血液検査を行うのが一般的です。また、そのほかにも全身の炎症の程度なども評価します。X線写真に描出されやすいよう加工された“造影剤”を唾液腺内に注入し、唾液腺の状態を観察するための検査です。シェーグレン症候群による唾液腺の異常を発見することができますが、痛みなどを伴うため近年はほとんど行われません。MRCTを用いたMRシアログラフィーによって唾液腺造影と同じような異常を観察することができます。唾液腺超音波検査、唾液腺MRCT、唾液腺シンチグラフィーは超音波やMRCTによって耳下腺や顎下腺の内部構造の異常を調べることができます。唾液腺シンチグラフィーで唾液腺の機能を調べることができます。涙腺・唾液腺生検は、涙腺や唾液腺の組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。局所麻酔による痛みを伴いますが、シェーグレン症候群では組織にリンパ球が攻撃した特徴的な跡が見られるため確定診断を下すうえでも重要な検査となります。シェーグレン症候群を根本的に治す方法は、現時点では解明されていません。そのため治療は、目の乾きに対しては目薬(人工涙液などが使われ、さまざまな種類があります)や、乾燥所見が強い場合は涙点プラブや涙点焼灼術などの処置により涙が鼻に降りていかないような処置を行うことがあります。口の渇きに対しては、食後や就寝前の歯磨き、口腔衛生の指導、人工唾液の定期的な噴霧、唾液分泌を刺激する内服薬(セビメリン、ピロカルピン)などそれぞれの症状を改善するための対症療法が行われます。全身にさまざまな症状が現れた場合は、それぞれの症状に合った治療が進められていきます。
 一方で、対症療法は一時的に症状を緩和することはできても病気の進行を遅らせることはできません。近年では免疫抑制剤の一種がシェーグレン症候群の進行を遅らせるのに有用との報告もなされており、治療の実用化に向けて研究が進んでいるところです。

漢方と鍼灸

 口や喉の乾燥を改善する治療は対症療法で、免疫の暴走を止め中庸の状態にすることが根本療法です。自己免疫の反応穴、上咽頭、各炎症部位、涙腺、唾液腺から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。

煎じ

・麦門冬湯(麦門冬・半夏・人参・甘草・粳米・大棗)『金匱要略』
麦門冬・人参・甘草・粳米・大棗は滋潤作用があり、水分を保ち脱水を防ぎます。
・滋陰降下湯(当帰・川芎・芍薬・黄柏・知母・熟地黄・括蔞根・甘草・玄参・桔梗・竹茹)『寿世保元』
口渇・口渇があり、皮膚は浅黒く渇いている方に使います。便秘傾向があります。
・白虎加人参湯(知母・石膏・甘草・粳米・人参)『傷寒論』
発汗が盛んで、脱水のため口渇して水を飲もうとするときに使います。
・黄連地黄湯(黄連・地黄・括蔞根・五味子・当帰・人参・葛根・茯苓・麦門冬・甘草・生姜・大棗・竹葉)『万病回春』
・袪風清熱飲(当帰・芍薬・川芎・地黄・黄連・黄芩・山梔子・連翹・薄荷葉・防風・荊芥・姜活・桔梗・枳殻・甘草・白芷・燈心草)『寿世保元』
・柴葛解肌湯(柴胡・葛根・甘草・黄芩・芍薬・姜活・白芷・桔梗・生姜・大棗・石膏)『傷寒六書』
・四物竜胆湯(当帰・川芎・芍薬・地黄・防風・竜胆・防已)『医学入門』
など(薬局製剤以外も含む)