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多発性硬化症

 多発性硬化症は免疫細胞が中枢神経(脳・脊髄)や視神経に炎症を起こして、神経組織を障害する自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、本来、外敵から自分を守るための免疫系に異常が起き、自分の体の一部を外敵と見なして攻撃してしまうことによっておこる病気です。多発性硬化症では神経細胞の突起(軸索)を被う髄鞘(ずいしょう)が主な標的となり、その結果、髄鞘が壊され(脱随)、神経からの命令が伝わりにくくなります。またこの病気は脱髄の空間的、時間的多発性を特徴とします。空間的多発性とは、複数の神経障害部位があるということ、時間的多発性とは、何度も症状の寛解と再発を繰り返すことです。

 有病率は推計で人口10万人あたり7.7人、発症好発年齢は20~30歳前後、3:1の割合で女性に多い病気です。発症リスクとしてストレス、高緯度地域での生活、日照時間の低下、EBウイルス感染、喫煙などが指摘されていますが、自己免疫状態をきたす、その詳しい原因はわかっていません。炎症を起こした後、古くなった脳や脊髄の病巣は硬くなるため、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)という名前がつけられました。

 主な症状は、感覚障害では、触った感触や温度の感覚が鈍くなる、逆に過敏になる。痛みやしびれ感など、異常な感覚が生じる。運動障害では、手足に力が入りにくい。体の片側が動きにくい。ふらついて歩きにくい。目の障害は、霧がかかったようになり見えにくい。視力が急に低下する。視野が狭くなる。ものが二重に見える。排尿障害では、尿の回数が頻回になる。間に合わず失禁する。尿が出にくい。残尿感。認知・精神障害では、理解力の低下やもの忘れがある。気分が高揚する。うつ状態になる。発熱、入浴、運動などにより体温が上がると、それまでにこの病気であったしびれ感などの症状が一時的に悪化することがあります(ウートフ徴候)。また、頚部を前屈すると肩から背中にかけて放散する電撃痛を生じることがあります(レルミッテ徴候)。

漢方と鍼灸

 MRIの画像から白くなっているところが脱髄病変。問診とツボから免疫の状態、感染、炎症などを探り漢方をお出しします。心身が整えられれば免疫も正常化し炎症もなくなります。鍼灸も異常箇所からの波長を読み取って経絡に落とし込み治療していきます。多発性硬化症と診断を受け来店。漢方で良くなった方がおられます。

てんかん

 「てんかん」とは、「てんかん発作」を繰り返し起こす状態です。「てんかん発作」は、脳にある神経細胞の異常な電気活動により引き起こされる発作のことで、突発的に運動神経、感覚神経、自律神経、意識、高次脳機能などの神経系が異常に活動することで症状を出します。そのため、「てんかん発作」ではそれぞれの神経系に対応し、体の一部が固くなる(運動神経)、手足がしびれたり耳鳴りがしたりする(感覚神経)、動悸や吐き気を生じる(自律神経)、意識を失う、言葉が出にくくなる(高次脳機能)などのさまざまな症状を生じます。
脳が発生する過程で生じた構造の異常、代謝異常症、遺伝子の異常などの生下時からの原因だけではなく、頭部外傷、中枢神経感染症、自己免疫性脳炎、脳卒中、認知症等のさまざまな脳の疾患が原因となります。

 「てんかん発作」には様々な種類があり、異常な電気活動を起こしている脳の部位に対応した様々な症状が出現します。「てんかん発作」は、ほとんどの場合数秒~数分間で終わりますが、時には数時間以上続くてんかん重積状態も起こります。

 例えば「全般性強直間代発作」では多くの場合、意識がなくなり、全身が硬くなった後(強直相)、全身をガクガクとさせます(間代相)。症状が軽い場合には、一方の腕や顔の一部だけが数秒間だけ固くなるだけの方もいます。また、突然反応がなくなり数秒間だけ宙をみつめるのが発作の症状の方では、転倒したりけいれんしたりすることもなく、他者からは気づかれないかもしれません。発作の前に決まって何かの臭いを感じるなど、何らかの感覚でこれから発作の起こることがわかる方もいます。こうした前触れの症状は「前兆」と呼ばれます。

 てんかんのある方は1000人に5~8人(日本全体で60万~100万人)と言われています。乳幼児から高齢者のいずれの年齢層でも発症します。特に小児と高齢者で発症率が高くなりますが、30~40代の方でも発症することもあります(厚生労働省hpより)

漢方と鍼灸

 異常な電気活動を起こしている脳の部位から波長をとり、問診による症状と体質、現病歴などから複数の漢方を出していきます。異常波長から経絡に落とし込んで鍼灸治療を行います。

網膜静脈閉塞症・網膜分枝静脈閉塞症

 40歳以上の日本人では網膜静脈閉塞症の有病率は2.1%との報告があります。 男女共に有病率は年齢と共に増加する傾向にあります。網膜静脈閉塞症は、年を重ねると発症しやすい病気で、高血圧や動脈硬化と深い関連があります。網膜静脈閉塞症の患者さんの多くは、高血圧のある方です。これは、高血圧により、血管がダメージを受けること、つまり動脈硬化が影響しています。高血圧のほかにも、血管自体の炎症により発症したり、糖尿病などの血液の粘性が増す病気がある方でも発症しやすくなります。また、緑内障のある方も発症しやすいと言われています。

 網膜静脈閉塞症は、詰まった静脈の場所により、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症などに分類されます。

 網膜中心静脈閉塞症は、網膜中心静脈という血管が、詰まっている状態です。
網膜中心静脈が詰まると静脈の圧力が上がり、網膜の血管が広がったり、蛇行したり、出血したりします。また、網膜に血液中の水分がたまったりして、むくみ(黄斑浮腫)を起こします。

 網膜静脈分枝閉塞症は、網膜の静脈(血管)が詰まっている状態です。主に網膜の動脈と静脈が交差している部分に血栓ができ、血管が詰まります。
網膜の静脈が詰まると静脈の圧力が上がり、網膜の血管が広がったり、蛇行したり、出血したりします。また、網膜に血液中の水分がたまったりして、むくみ(黄斑浮腫)を起こします。

漢方と鍼灸

 高血圧、動脈硬化、糖尿病などを考慮して漢方を出していきます。出血しているなら出血を止める漢方、血栓ができているなら血栓を溶かす漢方、動脈硬化なら血管を柔らかくする漢方、黄斑浮腫を起こしているなら浮腫みをとる漢方を合わせていきます。
鍼灸も中心静脈なのか網膜の静脈なのかを見極め、そこの波長から経絡に落とし込んで治療していきます。

ドライアイ

 ドライアイの症状は「目がかわく」だけでなく「目がかすむ」、「まぶしい」、「目が疲れる」、「目が痛い」、「目がゴロゴロする」、「目が赤い」、「涙が出る」、「目ヤニがでる」などさまざまです。

ドライアイの危険因子として、加齢(加齢で、涙の量や性質が低下)、女性、ライフスタイル(長時間画面を見る)、生活環境(低湿度、エアコン下、送風)、コンタクトレンズ装用、喫煙、飲み薬(涙の分泌を減らす作用のある飲み薬)、目薬(防腐剤など)、涙の油を作るマイボーム腺の病気、加齢でできる結膜(白目)の皺、全身の病気(涙腺が免疫の作用で傷つくシェーグレン症候群や関節リウマチなどの膠原病)などがあります。

 目の表面は、角膜とよばれる透明の薄い膜で覆われています。角膜は5層構造になっていて、その一番外側にある角膜上皮とよばれる層が、目を外の刺激などから守るバリアの役割を果たしています。角膜上皮は目の最も外側にあるため傷つきやすいという特徴がありますが、新陳代謝が活発で、その傷をすぐに自己修復する能力を備えています。しかし、涙が不足すると修復が追いつかず、目の痛みや充血などの症状が出る場合もあります。

 ドライアイになる要因のひとつに、加齢があります。目の表面は涙で覆われており、その涙によって目がうるおった状態になっています。しかし年齢とともに分泌される涙の量が少なくなったり、質が悪くなったりすることで、目に十分な量が行き届かず、乾きやすくなります。

 涙は、油、水、ムチンという3つの成分からなる3層構造をしています。最も外側で空気に触れているのは油層で、外側に油の膜を作ることで涙の蒸発を防いでいます。しかし、この油の分泌量も年齢とともに減ったり、油の質が悪くなったりして、油の膜が正しく作られなくなって水が蒸発しやすくなっていきます。年齢とともにドライアイの症状が出やすくなるのは、このように涙の量が減ったり、涙の質が悪くなったりすることでさらに蒸発しやすくなることが原因です。

 目の表面にある涙は、まばたきによって目の全体に行き渡る仕組みになっています。しかし、画面を注視するVDT作業では、まばたきが不完全(上瞼と下瞼をしっかり閉瞼しないまばたき)となってしまったり、まばたきの回数が通常の1/4程度まで減ってしまうため、目全体に涙が行き渡らず、乾燥した状態になりやすいのです。パソコンやスマートフォンなどを使って仕事をしている人のうち、ドライアイの疑いがある人の割合は非常に高いと言われています。現代では、VDT作業は仕事をする上で必須に近いものとなっており、VDT作業に従事する人は増加傾向にあります。

 コンタクトレンズにはハードレンズとソフトレンズがありますが、水分を含んでいるソフトレンズのほうがドライアイのリスクが高いといわれています。ソフトレンズは、長時間の装用でレンズが乾くと、涙を吸い取って失った水分を補おうとする性質があります。含水率が高いコンタクトレンズほど、蒸発する水分も多く、その分吸い取る涙の量も多くなるため、目が乾きやすくなります。ドライアイを心配している方はコンタクトレンズを選ぶ際に含水率にも気をつけてみてください。また、コンタクトレンズを汚れたまま装用したり、使用期間を過ぎて使い続けたりした場合にも、目が傷ついたり涙のバランスが崩れやすくなります。コンタクトレンズは、使用方法を守って正しく装用しましょう。

 上述の通り涙には油層があり、その油はまつげの付け根付近にあるマイボーム腺から分泌されています。マイボーム腺は上下両目をあわせると100本ほどありますが、アイメイクでふさがれてしまったり、汚れが詰まったりしてうまく分泌されなくなることがあります。油は涙の蒸発を防ぐ役割を持っているため、油の分泌量が不十分だったり、油の質が悪いと涙が蒸発しやすくなり、目が乾燥してしまうのです。

漢方と鍼灸

 まずはまばたきの回数が極端に減っているなど問診で聞き取り、原因を見つけ対策することを一緒にみつけていくことが大切です。加齢による涙の量の減少は陰虚(うるおい不足)傾向なので目を潤す漢方や食養生が必要です。水をめぐらす通り道が塞がれている場合はそこを通す漢方が必要ですね。目の周りの筋肉が緊張している場合、自律神経を緩める漢方だったり、ホットタオルで血流を良くしたり、目の周りのツボの刺激などもいいでしょう。
鍼灸の場合、角膜の乾燥部位の波長を取って経絡に落とし込んで究極のツボの鍼灸治療をしていきます。

白内障

 白内障とは、目の中でカメラのレンズの役割をしている水晶体という部位が濁ってしまう状態のことです。水晶体が濁ってしまうと、視界がぼやける、かすむ、二重に見える、まぶしさを感じるといった症状が起こり、徐々に視力低下が進行していきます。
加齢に伴い白内障の罹患率は増加し、70歳代では80%以上、80歳代はほぼ全ての人が罹患していると考えられ、誰もが発症する可能性のある目の老化現象と捉えることもできます。加齢による白内障の場合、数年単位で徐々に視力の低下やものの見え方の変化が起こるため症状に気付かず、ある程度進行してしまってから発見されることも少なくありません。
視力低下を引き起こす白内障ですが、近視や遠視、乱視などとは異なり、眼鏡やコンタクトレンズでは矯正できないことが特徴です。しかし、現在ではその治療法が確立され、必要とされる場合には手術により視力は回復します。

 白内障の原因でもっとも多いのは加齢です。白内障の初期変化として、加齢により水晶体の弾力性がなくなってピントの調整が難しくなり、徐々に近くのものが見えにくくなる老視(老眼)を生じます。さらに加齢が進むと、レンズ自体がひずみを生じてしまい、乱視、遠視といった屈折の異常が認められることもあります。ここからさらに水晶体が硬くなり白濁し、白内障と診断されます。さらに進行すると水晶体は黄色、褐色になり、放置した場合は失明に至ります。

 加齢以外にも、リウマチ、喘息、膠原病などによって長期にわたり副腎皮質ホルモン(ステロイド)を服用している場合は、白内障発症のリスクとなります。また、糖尿病の人や多量の放射線を受けた人も白内障発症のリスクが高いといわれています。20歳代、30歳代ではアトピー性皮膚炎が白内障のリスクになります。白内障発症時の目の見え方は、患者の水晶体の濁り方によって異なります。水晶体全体に混濁がある場合には、視界全体がぼやける、かすむといった症状が認められます。

 水晶体の中心のみに混濁が認められる場合は、水晶体の屈折力が強くなるため、近くが見やすくなります。一時的に老眼が治ったように感じるのが特徴ですが、進行すると近くも遠くも見えにくくなります。水晶体の一番奥の中心が濁るタイプはステロイド内服で生じやすく、比較的短期間に視力低下が進行します。いずれのタイプも混濁により眼球内で光が散乱してしまうため、明るい場所にいる場合や逆光になった場合にまぶしさを感じて対象物が見えにくくなります。また、対象物が二重に見えてしまうこともあります。夜間の運転など暗いところでものが見えにくいのも白内障でよくある症状です。

漢方と鍼灸

 多くの方は手術でよく見えるようになります。ですが手術ができない方、手術がうまくいかなかった方でご相談に来る方がいらっしゃいます。水晶体の濁りを取っていく漢方を使います。また水晶体の濁りだけを見るのではなく硝子体、目に栄養を送っている組織や血管、身体全体をみることが大切です。「木を見て森を見よ」が東洋医学の神髄です。
鍼灸では濁った水晶体の波長から経絡に落とし込み究極のつぼを見つけ治療していきます。

原発開放隅角緑内障・原発閉塞隅角緑内障・正常眼圧緑内障・続発緑内障・発達緑内障

 緑内障の自覚症状は、徐々に視界に見えない部分(暗点)が出現する、または見える範囲(視野)が狭くなる、などがあります。緑内障の症状は徐々に進んでいくため、初期の段階ではなかなか気がつくことが出来ません。それは、片方の目が緑内障になった場合でも、普段は両目で見ているため、良い方の目が、症状が出ている方の目を補ってしまうためです。そのため、何かしらの異変に気がついて受診した時には、すでに緑内障が進んでしまっていたり、視力の低下がかなり悪化してしまっているケースもあります。緑内障の怖いところは、一度発症してしまうと、治療をしても、失った視野や視力を取り戻すことが出来ないことです。西洋の緑内障の治療は、視界を回復させるのではなく、これ以上視野を失わないために進行を遅らせる治療になります。

 緑内障はほとんどの場合、徐々に進行しますが、まれに急激に隅角が閉じてしまい、かなりのスピードで著しい眼圧の上昇が起こることがあり、この状態を急性緑内障発作といいます。急性緑内障発作では、目のかすみ、目の痛み、充血、頭痛、吐き気などの苦しい自覚症状がみられます。急性緑内障発作による症状が起きた場合は、一晩で失明してしまう可能性もあるため、すぐに治療を受けなければ、光を感じることも難しくなるような状態となる可能性があります。

緑内障は大きく4つに分類されます。

  1. 原発開放隅角緑内障(隅角は正常、シュレム管閉塞)(他に病気なし)
  2. 原発閉塞隅角緑内障(隅角が閉塞、シュレム管閉塞)(他に病気なし)
  3. 続発緑内障(他に病気あり)
  4. 発達緑内障(先天異常あり)

 原発開放隅角緑内障とは、目の中に流れている房水という水が排出する場所が目詰まりして、房水が流れないために、眼圧が上昇するタイプの緑内障です。つまり、原因となる他の病気がないにもかかわらず(原発という)、隅角が見かけ上解放されているのに(開放)、隅角が原因で起こる緑内障です。
原発開放隅角緑内障のうち、眼圧が正常範囲の数値であるにもかかわらず(正常眼圧10~21mmHG)、視神経に障害をもたらす症状の緑内障を正常眼圧緑内障と呼びます。正常眼圧緑内障になる原因は、視神経の血液循環の停滞や遺伝的要因、免疫や酸化ストレスなどさまざまなことが関係しています。正常眼圧緑内障になる人は、他の緑内障と比べて高齢者や近視である人も多いことから、正常眼圧緑内障を発症するリスク因子は、加齢や近視であると考えられています。
 原発閉塞性隅角緑内障は、原発開放隅角緑内障とは違い、他の病気のせいではなく隅角が狭くなり(狭隅角)、やがては閉じてしまうことで(閉塞隅角)、房水が流れることが出来なくなり、眼圧が上昇することで発症する緑内障です。
 続発緑内障は、緑内障を発症する前から持っている、目の病気や全身の病気が原因で、続発的に起こる緑内障です。目の病気や全身の病気が原因で眼圧が上昇して、緑内障を発症します。続発緑内障には、開放隅角タイプと閉鎖隅角タイプがあります。続発緑内障を治療するためには、前から持っている病気や症状をきちんと理解して、その病気をしっかり治すことも必要です。
 発達緑内障は、隅角に先天的な異常があるために起こる緑内障です。生まれてすぐに眼圧が高いと眼球自体が大きくなることから、「牛眼(ぎゅうがん)」と呼ばれることもあります。
乳幼児の緑内障は、進行が早く、眼球の拡大によって目の機能が著しく低下させてしまう場合が多いため、早い時期に手術をすることがほとんどです。

漢方と鍼灸

 東洋医学にあって西洋医学にないもの、それは自然治癒力。傷がついた視神経はもう二度と再生しないはずですが、漢方を飲んで視力が回復したり、視野が改善されれ、眼圧が下がる方もいます。まずはご相談ください。視神経乳頭や紅彩と白目の淵、眼底、硝子体、出血部位など異常箇所を見つけ漢方を組み立ていきます。食養生も大切です。また他の原因が考えられる場合、そちらの分野の問診と治療の併用も必要な場合があります。
鍼灸も異常箇所からの波長から経絡に落とし込んで、、究極のツボを探して治療します

パーキンソン病・パーキンソン症候群・本態性振戦

 パーキンソン病とは中脳の黒質のドパミン産生細胞が減少することにより、パーキンソン病の4大症状である寡動(動きが遅く少なくなる)、筋強剛(筋肉が固くなる)、振戦(ふるえ)、姿勢調節障害などの症状をきたす疾患です。上記のような運動症状に加えて、非運動症状として、便秘や起立性低血圧などの自律神経障害、むずむず脚症候群、嗅覚障害、抑うつや幻視などの精神症状を合併することも知られており、しばしば運動症状の前駆症状として出現します。日本での有病率は10万人に対して100〜300人程度です。

 同様の症状を呈しながら、別の病因に関連している疾患をまとめてパーキンソン症候群と呼んでいますが、原因として脳血管性パーキンソニズム、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などの変性疾患以外の疾患もありますが、特定疾患に認定されているのは進行性核上麻痺 、大脳皮質基底核変性症(大脳皮質基底核症候群)、多系統萎縮症です。

 脳は心身の状態をコントロールする総合司令塔です。
脳が出す指令は「神経伝達物質」によって次から次へと伝言ゲームの様につたえられ、運動したり、いろいろな感覚を感じたりします。
パーキンソン病では、神経伝達物質のうち黒質という部位にある「ドパミン」が減少することにより、うまく運動ができなくなります。α-シヌクレインというタンパク質の異常蓄積により、中脳黒質の神経細胞が少しずつ減少し、その機能が失われてくると考えられています。

具体的症状

 振戦は座って何もしていない時や寝ている時に、手足が小刻みに震えます。動いたり、何かしようとするときには、震えが止まることが多いのが特徴です。パーキンソン病の最も代表的な症状です。ちなみに区別が必要なものに本態性振戦があります。これははっきりした原因がないにもかかわらず、手や頭などが不随意に(意のままにならずに)震える病気のことです。基本的にふるえ以外の症状はありません。多くの場合、安静にしているときにはふるえは生じませんが、何らかの動作をしている最中や、ある一定の姿勢をとったときにふるえが現れます。本態性振戦は精神的な緊張が高まったときに増強することが多く、疲れやストレスなどがたまったときにも悪化しやすくなる傾向があります。また、本態性振戦は家族内で発症するケースが多いとされており、遺伝的要素が関係している可能性も考えられています。
 筋固縮は筋肉がこわばり、身体がスムーズに動かなくなります。歯車のように規則的な動きになる場合を歯車現象、こわばりが続く場合を鉛管(えんかん)現象と呼びます。
寡動・無動は素早い動作ができなくなります。動きが小さくなり、歩いているときにもほとんど手を振らなくなります。一度にいくつもの動作をしようとすると、さらに動きが鈍くなります。
 姿勢反射障害は立っているとき、軽く押されるとバランスを崩してしまいます。バランスを崩すと元に戻しづらくなり、転んでしまうことがあります。これは進行すると出てくる症状です。

パーキンソン病のその他の症状

• 歩行障害
 o 前かがみの姿勢で小刻みにすり足で歩く
 o 歩き出しの一歩が踏み出せない(すくみ足)
 o 歩いているとだんだんスピードが速まる(加速歩行) など

• 姿勢の異常
 o 腰が曲がる
 o ななめに傾いてしまう
 o 首が下がる など

• 無表情
 o まばたきが減る
 o 表情がなくなる「仮面様顔貌」 など

• 嚥下障害
 o 食べ物が飲み込みにくくなる

• 字の変化
 o 字が小さくなる、ふるえる
 o 字を書いているうちにだんだん小さくなる

自律神経の異常

• 便秘
 o 初期からあらわれ、90%以上の患者さんにみられる

• 起立性低血圧
 o 立ちくらみ など

• 排尿障害
 o 夜間に何度もトイレに起きる
 o 尿が漏れてしまう など

精神・認知の異常

• うつ状態
 o 不眠
 o 何をしても楽しくない など

• 認知症
 o 計画をたてることがおっくうになる など

感覚の異常

• 幻覚・妄想
 o ないものが見える(幻覚)
 o 根拠のない思い込み(妄想) など

• 痛み・しびれ
 o 関節痛、筋肉痛
 o 手足のしびれや痛み など

• 嗅覚の低下
 o においが鈍くなる

睡眠障害

• 中途覚醒
 o 朝起きるときの筋肉の痛みやこわばり

漢方と鍼灸

 漢方は脳の神経の伝達をよくするもの、血液脳関門を通過できるもの、血流改善するものなどを選んでいきます。鍼灸も脳に働くツボを選択します。

難聴

 音が耳に入ってから脳に伝わるまでのどこかの段階で障害が起こり、音が聞こえにくくなったり、まったく聞こえなくなったりする症状。音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくい、あるいはまったく聞こえないといった症状のことをいいます。具体的には、音は聞こえているが、何を話しているか分からない。話し声が明瞭に聞き取れず、こもったような音として認識される。大勢の人の中や、雑音がする環境では会話が困難。時計のアラームなど高い音が聞き取りにくいなどです。

 原因には生まれつきの先天的なものと後天的なものがあり、脳腫瘍や薬などが影響することもあります。障害の程度はさまざまですが、音がまったく聞こえなくなってしまうこともあります。先天的な原因としては、妊娠期間中の感染症(たとえばウイルス)や内耳の蝸牛奇形を挙げることができます。後天的な原因として頻度が高いのは、加齢による聴力機能の衰えです。そのほかにも、突発性難聴や脳腫瘍、薬による影響などで内耳や脳の聴覚野の機能が低下し、発症に至ることもあります。また、大きな騒音により聴覚障害が生じる可能性があります。そのほかにも、中耳炎、耳垢などが原因となることもあります。0歳代前半の人によくみられます。近視が中等度以上の人では10年ほど早く発症するといわれています。

 耳の構造は、「外耳」(入り口から鼓膜までの部分)、「中耳」(鼓膜、耳小骨[じしょうこつ]、鼓室[こしつ]と乳突蜂巣[にゅうとつほうそう])、「内耳」(さらに奥の蝸牛[かぎゅう]と三半規管などがある部分)の3つに大きく分かれています。外耳と中耳は音を伝える役割をしており、内耳は音を感じて脳に伝える役割をしています。これらのどこか、あるいは大脳の聴覚中枢に障害が起こると、難聴を発症します。

 難聴は、外耳と中耳の障害によって音がうまく伝わらない「伝音難聴」と、内耳や脳に問題があり、音をうまく感じ取れない「感音難聴」とそれらが合わさった混合性難聴の3種類に分けられます。
• 伝音難聴……中耳炎や外耳炎、耳硬化症、耳あかの詰まり、外耳が閉塞したり、中耳にある鼓膜が破れたり音を伝える耳小骨が骨折などして障害されることにより音が伝わりにくくなる状態
• 感音難聴……加齢性難聴や突発性難聴、ヘッドホン難聴などの音響性難聴、騒音性難聴、低音障害型感音難聴、メニエール病、内耳の蝸牛にある音を感じる有毛細胞が変性・脱落したり、聴神経に腫瘍ができることで音を感じにくくなったりする状態
• 混合性難聴……伝音難聴と感音難聴が合わさった状態

漢方と鍼灸

 何年も経っているものは治しにくいと言われているので早い方がいいでしょう。
やはり標治と本治にわける必要があります。発症当時の聞き取りは大事です。めまいを伴うもの、ストレスと関係するもの、老化によるものなどの関係性を探るのと異常個所を特定することも大事です。聴神経の伝達なのか蝸牛の問題なのかを探っていきます。例えば老化の場合、脳の伝達をよくするもので聞こえも良くなってくることが多いです。

飛蚊症

 飛蚊症とは、眼球の硝子体が濁ることによって視界に蚊が飛んでいるような影が見える現象です。特に明るい場所で視界に蚊のような影が浮遊し、視界をずらしても影が少し遅れてついてきて、まばたきをしても消えません。影の形は糸くず、雲、蚊、ハエ、アメーバ模様、輪状などさまざまで、大きさや色の濃さも原因や程度によって異なります。

 硝子体が濁る原因には、加齢による生理的なものもあれば、網膜裂孔や硝子体出血など病的なものもあり、原因によっては放置すれば失明につながる可能性もあります。
病的な原因の場合には目のかすみや視力の低下を伴うことが多く、生理的な原因で代表的な後部硝子体剥離では飛蚊症の発症前後にピカピカ光るものが見えることがあります(光視症)。生理的な原因は主に加齢によるもので、加齢に伴って硝子体が変化することで起こります。一般的に40歳代くらいになると、水晶体の内部に液体がたまった空間のようなものができてきます。この現象を“液化といい、液化した空間は年齢とともに徐々に大きくなり、それに伴って硝子体が縮小します。この変化によって硝子体が濁ることがあります。また、液化によって生じた空間はやがて破れて内部の液体が流れ出るようになり、これによって硝子体の容積が急激に減少すると硝子体は網膜と接する面から剥がれます。網膜から剥がれた硝子体面には濁りがあるため、突然の飛蚊症を招きます。これを“後部硝子体剥離といい、突然の飛蚊症の原因としてもっとも多く、60歳代前半の人によくみられます。近視が中等度以上の人では10年ほど早く発症するといわれています。

 飛蚊症の原因となる病気には、①網膜裂孔、②硝子体出血、③ブドウ膜炎などがあります。①網膜裂孔とは網膜の一部に穴や裂け目ができる状態を指し、後部硝子体剥離を生じたときに、網膜と硝子体の癒着が強い部分や網膜組織が脆弱な部分に裂孔を生じることがあります。網膜裂孔は網膜剥離の原因になるため、飛蚊症は網膜剥離発症の前駆症状である可能性があります。②後部硝子体剥離を生じたときに網膜血管が裂けると出血し、飛蚊症をきたすことがあります。後部硝子体剥離以外でも網膜に出血を生じる病気では、出血量が多いと硝子体中に出血が散布され飛蚊症を生じます。③ぶどう膜炎は虹彩、毛様体、脈絡膜からなるぶどう膜に炎症が起こる病気で、ウイルスや細菌などによる感染に加えてサルコイドーシスやベーチェット病などによって起こります。

漢方と鍼灸

 硝子体は東洋医学的には陰であり水です。 水の流れを改善しごみを流していくことが大切です。出血があれば止血の漢方を使います。目の組織は活性酸素に弱いところなので抗酸化力の強い食養生も大切です。鍼灸も同様に壊れた箇所や濁った硝子体の波長を取って究極のツボを探して治療していきます。

【症例】
 蚊が飛んでいるように見える。実際の蚊かと思ったら、眼の飛蚊症だったと間違えることもあったよう。
漢方薬食養生品を飲んでもらい、1か月分飲んで頂きました。まだ、少し黒い物は見える時があるが、蚊と間違えるようなことはなくなったとご報告を頂きました。

子宮頸がん

 子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因であることがわかっています。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染します。HPVは男性にも女性にも感染するありふれたウイルスであり、性交経験のある女性の過半数は、一生に一度は感染機会があるといわれています。しかしHPVに感染しても、90%の人においては免疫の力でウイルスが自然に排除されますが、10%の人ではHPV感染が長期間持続します。このうち自然治癒しない一部の人は異形成とよばれる前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頸がんに進行します。予防としてワクチン接種を若い人に行いますが有効率は60~70%と言われています。子宮頸部異形成はその病変の程度によって、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の3種類があります。子宮頸部の扁平上皮病変は、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成・上皮内がん、微小浸潤扁平上皮がん、浸潤がんと段階的に進展することがわかっています。一方で、腺病変に関しては腺異形成と呼ばれる病変から上皮内腺がん、微小浸潤腺がん、浸潤腺がんと進展すると考えられていますが、その自然史は未だ明らかになっていません。子宮頸部異形成は自覚症状を示さないことが多く、子宮頸がん検診(細胞診)を契機に発見されることが多い病気です。言い換えれば、子宮頸がん検診を受けなければ見つからないと考えてよいでしょう。
 子宮頸がんの病気の発生の過程は、がんの前の段階である異形成、子宮頸部の表面だけにがんがある上皮内がん、そして周囲の組織に入り込む浸潤がんに分類されます。
子宮頸がんは通常、早期にはほとんど自覚症状がありませんが進行するに従って異常なおりもの、月経以外の出血(不正出血)、性行為の際の出血、下腹部の痛みなどが現れてきます。

細胞診
Ⅰ 全く異常がありませんⅡa異常なし炎症があったりホルモンバランスのくずれがあると少し活動力のある細胞が出ることがあります。多くは念のため6ヶ月後の検診をすすめられます。
Ⅱb(ⅡRともいいます)異常なし、Ⅱの中でもやや異常細胞に似ているものをⅡbとする事があります。炎症などが原因の事が殆どで3-6ヶ月後に再検査すると異常が消えている事がよくあります。ただたまにクラスⅢの細胞が紛れこんでいる時もあるので再検査をすすめられる事があります。
Ⅲa気を付けて 現在がんが疑われる状態ではありませんが、少し活動力のある細胞が出ている状態です。医師の指示に従い定期的な検診が必要です。しかし、時としてⅢbの状態が紛れ込んでいる時もあるため、時々精密検査をすすめられる時があります。
Ⅲb気を付けて がんではないものの将来がんになる可能性もある。現在のところ、約20%の方が、がんに進行する可能性があると考えられています。この中によく調べると初期のがんが紛れ込んでいる時もあり、この時点では精密検査をうけた方が良いと考えられます。
初期のがんが疑われる
進行したがんが疑われる。

漢方と鍼灸

 ウイルス感染が原因なので免疫の力が大事になってきます。多くの人はがんになる前に叩いてしまうためがんにはなりませんが、何らかの理由で免疫力が弱っていると異形成からがん化してしまう。免疫をあげるものに誰でも合うというものはなく、その人に相性がいいものを選ぶことが大事と思います。

・頸部の異常信号から経絡に落とし込んで鍼灸治療はおこないます。
漢方治療も同じように免疫力が最大限に働くように体質を変えていくものを選択します。食養生も大切ですね。

【症例】65歳 検査で中等度異形成と診断。ご紹介で相談を受け、漢方食養生を2か月服用後、再検査で軽度異形成になっています。検査も半年後でいいですよと言われて喜んでいました。