バレリュー症候群
むちうち(頚椎捻挫)を受傷すると、首の痛み以外にも、頭痛、めまい、耳鳴り、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの自律神経失調症状が出ることがあります。フランス人医師のBarréとLiéouが、首の外傷後に自律神経の働きがおかしくなって、これらの自律神経失調症状をきたすと報告しました。それ以来、むちうちに自律神経失調症状が合併した病態は、Barré-Liéou syndrome(バレリュー症候群)と呼ばれています。むちうちでは、頚部への外傷の影響で交感神経性の椎骨神経叢が刺激されることがあります。交感神経が刺激されると、内耳動脈が収縮して前庭迷路の血流低下を来して、耳鳴りやめまいを発症すると言われています。バレリュー症候群は自律神経失調症状をきたしますが、その原因のひとつとして、ストレス、寝不足、疲労などが挙げられます。ストレスと自律神経失調症状は密接に繋がっていると思って差し支えありません。バレリュー症候群では、首の痛み、手の痛みやしびれ、頭痛に加えて、めまい、耳鳴り、目のかすみ、眼精疲労、不眠、全身倦怠、易疲労感、微熱感、動悸などの自律神経失調症状をきたす可能性があります。
漢方と鍼灸
めまい、耳鳴り、目のかすみ、眼精疲労、不眠、全身倦怠、易疲労感、微熱感、動悸などの自律神経失調症状がひどい、もしくは治りにくい場合、ご相談時にむちうちや事故にあったかなどの質問をします。頚椎の何番が異常かは気功を使えばわかるので、その反応と自律神経の反応が同じであれば別々の漢方を出すことがあります。頚椎の異常を良くしないといつまでたっても自律神経の失調は良くなりません。最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。
こむら返り
“足がつる”と表現される“こむら返り”は、主にふくらはぎにおこる筋肉けいれんの総称で、自分の意志とは無関係に筋肉が持続的な攣縮を起こし、多くは激しい痛みを伴います。ふくらはぎの筋肉に起こることが多いですが、そのほか足の裏・趾・太ももなどでも起こります。睡眠中(明け方に多い)に見られるほか、激しい運動中や筋肉を使い過ぎた後にも見られます。一般に、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質異常やそれらが不足する状態などが原因で生じるといわれていますが、実は多くの場合マグネシウム不足が基本にあると考えられています。一方、原因が特定できない状況で起こることもあります。こむら返りは誰にでも生じますが、中には病気が隠れていることもあるため、病気が疑われる場合は医療機関に相談するようにしましょう。こむら返りは、上記のような異常が主な原因とされていますが、その多くが食事からのマグネシウムの慢性的摂取不足のほか、下痢・嘔吐・発汗・激しい運動に伴うマグネシウム消費や利尿剤による体外への喪失によるマグネシウム不足などが挙げられます。脱水や局所の冷えは末梢循環不全を介して筋肉組織内のマグネシウム不足をさらに悪化させます。したがって脱水や冷えはこむら返りの直接的な原因でなく、悪化させる要因といえます。マグネシウムは収縮した筋肉を弛緩させる(ゆるめること)はたらきをしています。そのため、マグネシウム不足では筋肉を弛緩しにくくなります。また、ふくらはぎなどの筋肉に存在する過収縮を予防するセンサー(腱紡錘)はマグネシウムが不足するとその機能が低下するため、弛緩がさらに難しくなります。これがこむら返りです。こむら返りは、原因が特定できない状況で生じることもあります。しかし、局所の筋肉を使いすぎて過収縮を起こし“こむら返り”に類似した症状が生じるなど、何かしらの原因が関連付けられることもあります。そのほかにも、腎不全(特に透析中)や糖尿病、メタボリックシンドローム、肝硬変、熱中症、甲状腺機能低下などの病気や、妊娠(特に妊娠初期の悪阻おその酷い時期)期間中に関連して生じることもあります。こむら返りでは、自分の意志とは無関係に筋肉が収縮を持続するようになります。筋肉の収縮は、外から見て分かることもあります。また、収縮に伴い多くは激しい筋肉の痛みを自覚します。運動に関連したこむら返りは、運動中や運動後に生じることが多いです。病気に関連して発症する場合は、夜間の就寝中に生じることがしばしばあります。こむら返りでは、まず原因を調べることが大切です。運動によるこむら返りが疑われる場合には、必ずしも検査をするとは限りません。しかし運動と関係なく生じる場合や、こむら返りを繰り返すような場合、症状から何かしらの病気が疑われる場合には、より積極的に原因を調べます。具体的には、血液や尿を用いて電解質、腎機能、肝機能、甲状腺機能などの異常があるかどうかを確認します。調べる電解質には主にマグネシウム、カリウム、カルシウムがありますが、特にマグネシウムが重要です。こむら返りが生じた場合には、収縮した筋肉をゆっくり伸展させるようにします。筋肉の冷えや脱水により症状が悪化することがあるため、水分を取り、局所を暖めて血流をよくする、マッサージをして筋肉を和らげるなどで対処します。薬物療法として末梢性筋弛緩剤や漢方薬では芍薬甘草湯が処方されることが多いですが、偽アルドステロン症(高血圧、低カリウム血症)のリスクがあるので、高血圧患者や高齢者で心疾患などがある場合などでは、常用には注意を要します。こむら返りは運動に関連して生じることが多いため、運動前にはストレッチや準備運動などを行うことも大切です。また、運動中に水分・電解質が失われることでも誘発されるため、適切に休息を取りつつ、水分補給・電解質(特にマグネシウム、カリウム、ナトリウム)補給を心がけることが大切です。マグネシウム不足を予防するために日常の食生活ではマグネシウムの多い食材を意識して取ることも重要です。マグネシウムを食事だけでは十分に取れない場合は、栄養機能食品やサプリメントなどを利用してもよいでしょう。なお、基礎疾患が明らかな場合はそれに対しての治療介入が検討されます。カルシウムの主なはたらきは、カルシウムは骨や歯の主成分で、丈夫な骨や歯をつくるために欠かせない栄養素です。食べ物から摂取したカルシウムは、小腸で吸収されて体内で骨や歯の材料である“ヒドロキシアパタイト”という成分へ合成され、骨や歯を形成します。骨はカルシウムの貯蔵庫としての役割もあり、血液や細胞のカルシウムが不足すると骨からカルシウムが溶け出し必要な部位へと補充されます。カルシウムは血液中で常に一定の濃度を保っています。細胞の内外で濃度差などを利用して神経伝達物質などを運び、様々な情報を伝達しています。筋肉が行う収縮や弛緩はカルシウムが調整しています。例えば、心臓の拍動も一種の筋肉運動であるため、正常に心臓が拍動するためには、カルシウムの働きが重要となります。カルシウムは体内で吸収されにくい栄養素ですが、ビタミンDと一緒に摂取することで効率よくカルシウムを摂取することができます。また、ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨にカルシウムが沈着するのを助ける働きがあります。ビタミンDはアンコウの肝、サケ、イワシ加工品を筆頭にいろいろな種類の魚介類に含まれています。また、キクラゲなどキノコ類にも多く含まれています。カルシウムを効率よく摂取するために、ビタミンDも一緒にとるように意識してみてはいかがでしょうか?カルシウムはビタミンDだけでなく、マグネシウムとも深い関係があります。マグネシウムにはカルシウムと同様に骨や歯の生成を助ける働きがあり、濃度が一定になるように調整されています。また、マグネシウムはカルシウムと拮抗して血圧を調整します。マグネシウムは動脈を弛緩させて血圧を下げ、カルシウムは収縮させて血圧をあげます。このようにカルシウムとマグネシウムは体内で拮抗しながら、様々な生体反応に関わっているためバランスよく摂取することが重要です。食事だけでカルシウムとマグネシウムをバランスよく摂取するのはなかなか難しいですよね。摂取する理想の比率としては、カルシウム:マグネシウム=2:1が望ましいとされています。参考にしてください。
漢方と鍼灸
こむら返りに芍薬甘草湯が良く出ますが、高齢者や食事のバランスが悪い方が常用すると甘草の副作用が出やすくなります。気を付けましょう。そうならないために問診ではこむら返りについてだけでなく、全身をみます(木を見て森を見よという東洋医学の思想)。もちろん血液検査の表もあれば見させてください。脱水、栄養不足、他の疾患が関係しているか原因を探ります。こむら返りを想定して最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択して改善していきます。
ヘパーデン結節(第一関節)・プシャール結節(第2関節)
へバーデン結節では、指の第一関節(正式にはDIP関節といいます)が腫れたり骨が変形して、指が曲がったまま伸びなくなる、手を握る際にこわばったような感じや痛みがある、指の爪の付け根に水ぶくれのようなものができているなどの症状がでます。これは指の第一関節で骨と骨の間の軟骨がすり減って、骨が変形することで起こる症状です。変形が進むと関節がこぶのように盛り上がって目立つようになります。これをへバーデン結節と呼びます。指の第1関節(DIP関節)が変形し曲がってしまう原因不明の疾患です。第1関節の背側の中央の伸筋腱付着部を挟んで2つのコブ(結節)ができるのが特徴です。この疾患の報告者へバーデンの名にちなんでヘバーデン結節と呼ばれています。いろいろな程度の変形があります。すべての人が強い変形になるとは限りません。ここでは、一般的な呼び名としてDIP関節(遠位指節間関節)を第1関節と呼んでいます。示指から小指にかけて第1関節が赤く腫れたり、曲がったりします。痛みを伴うこともあります。母指(親指)にもみられることもあります。第1関節の動きも悪くなります。また、痛みのために強く握ることが困難になります。第1関節の近くに水ぶくれのような透き通ったでっぱりができることがあります。これをミューカスシスト(粘液嚢腫)と呼びます。原因は不明です。一般に40歳代以降の女性に多く発生します。手を良く使う人にはなりやすい傾向があります。遺伝性は証明されてはいませんが、母や祖母がヘバーデン結節になっている人は、体質が似ていることを考慮して、指先に負担をかけないように注意する必要があります。第1関節の所見はX線(レントゲン)所見や手術所見から見ても変形性関節症です。第1関節の変形、突出、疼痛があり、X線写真で関節の隙間が狭くなったり、関節が壊れたり、骨棘(こつきょく)があれば、へバーデン結節と診断できます。保存的療法としては、局所の安静(固定も含む)や投薬、局所のテーピングなどがあります。急性期では少量の関節内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)なども有効です。保存的療法で痛みが改善しないときや変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合は、手術を考慮します。手術法にはコブ結節を切除するものや関節を固定してしまう方法が行われます。第1関節が痛むときは安静にしましょう。痛くても使わなくてはならないときは、テーピングがお勧めです。普段でも指先に過度な負担が生じることを避けましょう。
同じような変化が指の第2関節(正式にはPIP関節といいます)でおこると、ブシャール結節と呼びます。骨の変形が進むと皮膚を刺激して爪側に水ぶくれのようなでっぱりができることがあります。これを粘液嚢腫(ミューカスシスト)と呼びます。原因は不明とされています。指をよく使う職業の人がなりやすいとされていますが、一般には40歳以上の女性に多く、これには女性ホルモンの変化が大きく関わっていると考えられています。更年期になると女性ホルモンの中でもエストロゲンが減少します。エストロゲンは軟骨を滑らかな状態に保つ作用があるため、これが減少すると軟骨がすり減るのが早まる可能性があると考えられます。指の第二関節の腫れ、痛み、こわばりなどの症状を伴い、変形が進行すると、関節を動かすことが難しくなります。稀に、関節に水が溜まってしまうケースもあります。また、雑巾が強く絞れなかったり、ペンや箸をうまく使えないなど、日常生活に支障をきたすような症状が現れることもあります。ブシャール結節の原因は、現在もはっきり分かっていません。ただし、遺伝、加齢、更年期・妊娠・出産時のホルモンバランスの乱れ、腎臓機能の低下、手先の使いすぎなどが原因ではないかと言われています。問診、触診、画像検査などを行います。また、ブシャール結節と似た症状を持つ「関節リウマチ」との鑑別のため、血液検査を行うこともあります。免疫に異常の見られる関節リウマチであれば、血液検査の数値に異常が確認できます。ブシャール結節では、その異変が認められません。
その他、関節リウマチの症状に含まれる、発熱、倦怠感、貧血、関節破壊があるかどうかなどを確認することも、正確な診断のために重要になります。関節破壊の有無は、レントゲン検査で確認します。検査で得られた情報をもとに、関節リウマチなどの似た病気との識別を行いながら、診断します。テーピングなどで患部を固定し、安静を保つことで、痛みは多少抑えられます。その上で、湿布、軟膏、温熱療法、炎症鎮痛剤、その他薬物療法などの治療を行います。日常生活に支障をきたすような強い症状が現れている場合には、手術を検討する必要があります。ブシャール結節の手術では、指を曲げる機能を担う「腱」を部分的に切除します。関節にかかる負荷を軽減し、指の動きを円滑にし、痛みを和らげます。
漢方と鍼灸
関節の炎症、浮腫を改善する漢方、腎虚血虚を補う漢方や食養生で改善します。一番痛い箇所から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。
肋間神経痛
肋間神経痛とは、肋骨の下を走る神経に何らかの原因で痛みが生じることです。肋間神経痛自体が1つの病気なのではなく、あくまで原因となる病気や外傷、解剖学的な異常が引き起こす症状の1つとして捉えられています。また、肋間神経痛を引き起こす原因が不明な場合もあります。肋間神経は、12個ある胸椎の間から左右に対となって出て各肋骨の下を走り、胸壁と腹壁の筋肉や皮膚の運動・知覚を司っている末梢神経です。通常は胸部の左右のうち、どちらか一側に起こるとされています。また、肋骨に沿って水平方向に痛みを感じることも特徴です。症状の程度や現れ方は原因によってさまざまですが、特に病的な異常がない一次性(原発性)肋間神経痛と、何らかの病気に起因する二次性(続発性)肋間神経痛に分けられます。それぞれの主な原因は以下のとおりです。
一次性は病気や外傷、解剖学的な異常がないにもかかわらず発症します。ストレスによるものが多いとされていますが、不適当な姿勢を長時間続けることで肋間神経が骨などによって直接刺激されて発症することもあります。
二次性は何らかの病気や外傷、解剖学的な異常によって生じるものです。さまざまな原因がありますが、それぞれ以下のようなことが原因として挙げられます。病気:胸膜炎、肺がん、肺炎などの胸郭内病変、脊椎や肋骨の腫瘍、帯状疱疹など、外傷:肋骨骨折、肋軟骨炎など、解剖学的異常:椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、側弯症などで多くは、肋間神経を直接刺激することで発症します。一方、帯状疱疹は、ウイルス感染によって生じ、通常は皮疹を伴いますが肋間神経痛だけが生じることもあります。特定の肋間神経に生じる痛みであるため、その肋間神経が支配する筋肉や皮膚の領域のみの痛みが生じます。痛みは非常に強いことが多く、広範囲ではなく、範囲が限られた痛みであることが特徴です。
原発性の場合は、肋間神経そのものの痛みより肋間神経が支配する筋群(主に内・外肋間筋)のれん縮による痛みが主であると考えられます。そのため、不自然な姿勢や同じ姿勢を長時間取っていたり、ストレスにさらされたり、肩や背部の筋群が凝ったりすると起きやすくなります。症状は発作的で、数秒~数十秒続くことが特徴です。
一方、続発性の場合は、上半身を動かしたり、前かがみになったりしたときに肋間神経への圧迫が強くなって非常に強い痛みが生じます。また、原発性と異なり、原因となっている病気や異常が取り除かれるまで続くなど、痛みの継続時間が極めて長いことが特徴です。また、帯状疱疹ではピリピリとした表層部の痛みが生じ、特有の皮疹を伴わないことも多いです。
肋間神経痛の診断でもっとも重要なことは、痛みの原因を見逃さない(原発性肋間神経痛を除外する)ことです。続発性の原因疾患としては、前述のとおり(悪性)腫瘍、胸膜炎、骨折、(急性)帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛などが考えられます。また、原発性の場合、ほとんどのケースで痛みのほかに当該部位にほかの神経症状(知覚過敏や知覚鈍麻など)がみられます。原因が見つからなかった場合は原発性として治療を開始します。一方で、痛みがある部位が変わった、痛みの程度がひどくなった、痛みの頻度が頻繁になったなど、症状が変化した際には、続発性である可能性を再検討する必要があります。
診断方法には後述する画像診断のほか、理学所見(視診、触診、腱反射などによる反応など)もあります。また、肋間神経痛は胸壁や腹壁に痛みが生じるため、画像検査で明らかな異常がない場合には狭心症などの心疾患や消化器病変がないかを調べるためにも心電図検査、心臓超音波検査、内視鏡検査、血液検査などが行われることもあります。X線検査は肋骨や脊椎の骨折、腫瘍などの異常を評価できる検査です。しかし、肋骨骨折はX線検査でははっきり分からないことも多々あります。ほかにも、肺炎や肺がんなどの胸郭内病変を発見することが可能です。CT検査は、肋骨や脊椎、胸郭内の病変を詳しく観察できる検査です。X線では分からない骨折を発見することもできます。MRI検査は、椎間板ヘルニアなどの脊椎病変を観察できる検査です。椎間板の圧迫や脱出などを詳しく評価することが可能です。また、脊椎にある病気の治療方針を決めるうえでも重要な検査となります。肋間神経痛の治療は続発性の場合と原発性の場合で異なります。続発性の場合は、原因となっている病気に対処することが第一となり、それぞれに適した手術や患部の固定、服薬治療などの治療が優先して行われます。特に帯状疱疹は早期から抗ウイルス薬を投与しないと症状が長引くことがあるので注意が必要です。また、帯状疱疹の後遺症である帯状疱疹後神経痛が生じている場合、原因への対処は困難です。原因疾患への対処が困難な場合や対処しても痛みが残る場合、あるいはその両方の場合には、原因疾患の病態に応じて、日本ペインクリニック学会の作成する“神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン”の指定する薬(医療用麻薬を含む)の使用や神経破壊ブロック注射(原因疾患の病態によっては適応とならない場合もある)などを行います。なお、急性帯状疱疹のような炎症性疾患への使用を除き、一般的な抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)は効果がないため、注意が必要です。帯状疱疹やその後遺症である帯状疱疹後神経痛は、前述のとおり治療が困難なことから予防が重要です。特に帯状疱疹の好発年齢である50歳以上の人にはワクチン接種を推奨しています。帯状疱疹のワクチンには不活化ワクチン(不活化(殺菌)されたウイルス・細菌を材料として作られたワクチン)と生ワクチン(生きたま弱らせたウイルス・細菌を材料として作られたワクチン)の2種類があり、昨今の研究では不活化ワクチンの方が生ワクチンよりも持続性・有効性が高いことが分かってきました。具体的には生ワクチンの有効性が60~70%程度、不活化ワクチンが90~95%程度とされています。また、生ワクチンの場合は、特に70歳以上の人が接種した場合の有効性が大幅に落ちるといわれています。持続性に関しても、生ワクチンが3~5年程度持続するのに対して、不活化ワクチンが10年以上と、こちらも不活性ワクチンのほうが高いとされています。また、生ワクチンはステロイドを使用中の人やがんの治療中の人など、一般的に帯状疱疹にかかりやすいとされる免疫に異常のある人は接種できません。ワクチンは2種類とも保険適用外ですが、生ワクチンが7,000~9,000円程度、不活化ワクチンが40,000~50,000円程度(2~6か月間隔で2回接種)と価格や接種回数にも違いがあります。接種時は担当の医師とよく相談し、それぞれのワクチンの特徴を理解したうえで検討するとよいでしょう。急性期の原発性肋間神経痛の場合、特に肋間神経ブロック注射によって症状の改善が期待できます。これは、肋間神経に局所麻酔薬を直接注入して痛みを麻痺させる治療です。ただし、施行できる医療機関が近隣にないなどの理由で対応が間に合わないこともあるため、場合によってはNSAIDsやその他鎮痛薬、湿布薬、漢方薬(芍薬甘草湯)などが併用されます。また、鍼灸も有効な場合があります。痛みに対する予防としては、適度な運動を日常的に行うこと、十分な休息を取ること、呼吸法やヨガなどでストレス耐性を高めることなどがあります。なお、痛みが酷くなる場合には、ストレッチなどの運動は行わないほうがよいとされます。
漢方と鍼灸
原発はストレス、姿勢の悪さ、2次性は帯状疱疹などの疾患。ストレス性の場合、ストレスをみる反応穴から漢方を選択して飲んで頂くと痛みが消失します。帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛も抗ウイルス剤で痛みが残る方や具合が悪くなる方も多く、免疫の漢方と食養生を飲んで頂くと痛みが消失します。また悪性腫瘍の確認は大事ですね。痛みの患部から、最適な漢方、食養生とサプリ、ツボを選択し改善していきます。痛みが残る方はご相談ください。
変形性肩関節症
変形性肩関節症とは、肩関節の軟骨がすり減り、関節が変形した状態をいいます。関節は骨と骨のつなぎ目のことを指し、肩関節は肩甲骨関節窩と上腕骨頭で構成され、これらの骨の表面は軟骨で覆われています。軟骨は骨同士がぶつからないようにクッションの役割を持っているほか、関節をスムーズに動かすうえでも大きな役割を果たしています。しかし、長年の過負荷などによって軟骨がすり減ることがあり、軟骨がすり減ることで炎症が生じ(肩関節炎)、軟骨の摩擦が進むとやがて骨棘形成がおき、肩関節が変形していきます。また、炎症などに伴って痛みや腫れが見られたり、肩の可動域が狭くなったりするようになります。変形性肩関節症が発生する頻度には人種差があり、東洋人は欧米人よりも少ないといわれていましたが、近年では日本でも増加傾向にあります。変形性肩関節症の原因は、明らかな原因がなく起こる“一次性”と、原因が判明している“二次性”に分けられます。一次性は原因が不明のもので、骨格的な問題などの内因的な要因と加齢変化、スポーツ、肉体労働などによる肩関節への過負荷などによる外因的な要因とが考えられています。一次性の“変形性関節症”は肩だけでなく、肘、指、股、膝などのあらゆる関節に起こりえます。その中でも特に膝や股の関節に発症することが多く、これらの関節と比べて肩の発生頻度はそれほど多くありません。その理由の1つとして、膝や股の関節は常に体重による負荷がかかるのに対して、肩関節は体重の影響を受けにくいことが挙げられます。また肩関節は周囲にある筋肉や靱帯、腱が発達していて、関節の中で可動域がもっとも広いことから、一定の部位に力が加わりにくい構造になっています。このような特徴から、肩関節はほかの関節よりも過負荷によって軟骨がすり減ることは少なく、一次性の変形性関節症に発展しにくいと考えられています。二次性は何らかの病気・病態に続発するもので、その誘因として腱板断裂、上腕骨頭壊死、関節リウマチ、上腕骨近位端骨折などが挙げられます。腱板断裂とは、肩にある腱板と呼ばれる4つの筋腱(肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋)が断裂する病態を指し、肩の使いすぎや外傷などによって断裂が起きます。腱板断裂の初期では痛みや可動域制限といった症状がおき、断裂が進行し断裂サイズが大きくなると求心位が保持できなくなり上腕骨頭が上方化します。さらに病状が進行すると関節の変形が進行していきます。上腕骨頭壊死は、何らかの原因によって上腕骨頭が壊死してしまう病気です。その原因にはさまざまなものがありますが、上腕骨頭壊死による変形性肩関節症の原因としては、特にアルコールの大量摂取やステロイド薬の大量服用によるものが多いといわれています。変形性肩関節症を発症すると、肩関節の痛みや腫れ、肩の動かしにくさや可動域制限などが生じます。また痛みは肩を動かしたときだけでなく、安静時や夜間に見られることもあります。変形性肩関節症の診断は、主にX線検査によって行います。X線検査の所見として、関節裂隙(関節の隙間)の狭小化・消失、骨棘(骨の突出)形成、肩甲骨関節窩や上腕骨頭の変形などが見られます。より詳しく調べるために、CT検査やMRI検査などを行うこともあります。変形性肩関節症の治療には、薬や注射、リハビリテーションなどで痛みのコントロールを行う“保存的治療”と、外科的に治療を行う“手術的治療”の2つがあります。まず保存的治療を行い、それでも生活に支障をきたす場合に手術的治療を検討します。保存的治療で用いる薬として、内服薬(非ステロイド性抗炎症剤)、湿布剤、関節内注射(ステロイド剤、ヒアルロン酸ナトリウム)があります。一般的にはまず内服薬で痛みの軽減を図り、かぶれなど皮膚異常がない場合に湿布剤を用います。痛みが強い場合や夜間痛がある場合に、関節内注射を行うことがあります。薬物療法に加えて、運動療法(リハビリテーション)で肩関節の可動域の改善を図ることもあります。手術的治療としては人工関節置換術を行うのが一般的です。人工関節置換術とは、すり減った軟骨や傷んだ骨を外科的に切除して、金属とポリエチレンなどでできた人工関節に置き換える手術のことです。主な術式として、上腕骨頭だけを置換する人工骨頭置換術、肩甲骨関節窩と上腕骨頭を置換する人工肩関節置換術、本来の肩関節の形状と反転させた人工関節に置換するリバース型人工肩関節全置換術があります。どの手術法を用いるかは、患者の年齢、骨や腱板の状態によって異なります。
漢方と鍼灸
まず炎症をとる漢方、軟骨の材料になる食養生、補腎・補血の漢方・食養生を使います。変形し痛みのある個所(反応穴)から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。
肩こり
肩こりと言えどもいろいろな原因があります。もんで楽になってもまた次の日には戻っているということはありませんか?人間は二足歩行をするために、もともと首や腰に負担がかかりやすい体をしています。首から肩にかけての筋肉が姿勢を保つために緊張し、血行が悪くなって、重く感じるのが肩こりです。首と肩の周辺には、さまざまな筋肉があります。これらは重い頭や腕を支えて立っているだけで、緊張し続けています。緊張が続くと筋肉が疲れて疲労物質がたまり硬くなります。それが血管を圧迫して血液の循環を悪くしたり、末梢神経を傷つけたりして、こりや傷みを起こします。また、血行不良になると、筋肉に十分な酸素や栄養が供給されず、筋肉に疲労がたまって、ますます筋肉が硬くなってしまいます。肩こりを引き起こす主な要因としては、筋肉疲労と血行不良、末梢神経の傷などが挙げられます。それらの要因が単独、または、互いに関連し合いながら肩こりを引き起こします。人間の背骨がゆるやかなS字カーブを描いているのは、重い頭や腕を支えながら二本足で歩けるように、姿勢を保つため。背骨の間には「椎間板」があって、衝撃をやわらげるクッションの役割を果たしています。年を取ると、このクッションがだんだんつぶれて硬くなり「頸部脊椎症」といわれる状態になり、これも首や肩の痛み・こりの原因になります。40歳ごろからみられはじめます。50歳前後に起こる肩の痛みは、「五十肩」の場合があります。「肩関節周囲炎」という病名が使われることもあります。腕を体の後ろに回すこと、例えば腰の後ろでエプロンのひもを結ぶ動作がしづらくなるなどが特徴で、腕を上げようとするときに痛みを感じます。原因は明らかではありませんが、肩関節をとりまく腱の組織が老化して、使いすぎによる炎症が起こっていると考えられています。頸肩腕症候群は、同じ作業を繰り返すなど、肩から手の指までの体の特定の部位を動かし続けることで発症するといわれています。症状は動かす部位によって異なり、肩こりのほかにも肘や腕、手の関節、手の指の痛み・だるさが現れる場合もあります。頚椎症とは、加齢などによって頚椎(首を構成する7つの骨)や、頚椎の骨と骨の間にある椎間板が変形し、首や肩などの痛みが現れる病気のことをいいます。頚椎や椎間板の変形は誰にでも起こるもので、変形しただけでは必ずしも症状が現れるわけではありません。変形が引き金となって頚椎の近くの脊髄や神経根が圧迫を受けると、主に首や肩、腕の痛み、手足のしびれ、手が動かしにくくなる、つまずきやすくなるなどの症状がみられるようになります。頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎を構成する7つの骨の間にある椎間板の一部が何らかの理由で正しい位置から外れて飛び出てしまう病気です。飛び出した椎間板が近くの脊髄や神経を圧迫すると、首や肩、腕の痛み、手足のしびれ、手が動かしにくくなる、つまずきやすくなるなどの症状が現れる場合があります。肩こりは関節や筋肉の病気のほかにも、更年期障害や緊張性頭痛、血圧の異常、狭心症・心筋梗塞など、体の病気の一症状として現れる場合もあります。閉経前後の5年間を更年期と呼びますが、この期間に体や心にさまざまな症状が起こることがあります。その中でも日常生活に支障をきたすものが更年期障害です。症状はホットフラッシュ(ほてりやのぼせなど)、情緒不安定や不眠などが代表的ですが、肩こりや頭重感、腰痛、動悸などが現れることもあります。緊張性頭痛は、同じ姿勢が続くなど首や肩の筋肉の緊張が主な原因と考えられている頭痛で、頭の両側が締め付けられるような痛みが大きな特徴です。頭の痛みに加え、肩こりや目の疲れ、めまいなどの症状がみられることがあります。高血圧・低血圧など、血圧の異常でも肩こりが一症状として現れる場合があります。いずれも肩こりや頭痛、体のだるさ、めまい、耳鳴り、動悸などの症状がみられることがありますが、自覚症状がないことも少なくありません。動脈硬化などによって冠動脈(心臓をとりまく動脈)が狭くなり、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなった状態を狭心症、狭心症が進行して冠動脈がさらに狭くなって血管が完全に詰まった状態を心筋梗塞といいます。激しい胸の痛みや苦しさを伴う事が一般的ですが、肩こりや歯が痛むように感じられる関連痛といわれる症状が現れる場合があります。狭心症・心筋梗塞ともに放置しておくと生死にかかわる可能性がありますので、強い胸の痛みや圧迫感などの症状がある時には、すぐに病院を受診することがすすめられます。また猫背などの姿勢をとっていると、重い頭を支える肩や背中の筋肉が緊張し、血流が悪くなり、肩こりが起こるといわれています。姿勢を改善するためには、日頃から意識して正しい姿勢を保つことが大切です。姿勢が悪くなっていると感じるときには、胸を張る、腰を伸ばすなどして意識的に姿勢を正すようにしましょう。長時間のデスクワークや運転などで同じ姿勢が続くと、首や肩などの筋肉が過剰に緊張してしまい肩こりが起こるとされています。同じ姿勢を続けることがあれば、定期的に肩回りの軽いストレッチを行いましょう。筋肉の緊張が解消されると肩こりが軽減されることが多々あります。毛様体筋と呼ばれる目の筋肉は自律神経によってコントロールされており、眼精疲労によって毛様体筋が疲れることで首や肩の凝り、頭痛などの症状が現れることがあるといわれています。眼精疲労は、パソコンやスマートフォンなどの画面を長時間見続けることでも起こりますが、メガネやコンタクトレンズが合っていないことも原因の一つに挙げられています。画面の見過ぎなら時間を短くする、メガネやコンタクトレンズが合っていなければ合うものに変えるなど、原因に応じて対策をとりましょう。また、ビタミンB群が眼精疲労の改善に効果があるといわれています。食事などで積極的に摂取することも考えましょう。日頃から体を動かさないでいると、筋力が低下し体が重力に抵抗できなくなり姿勢が悪くなります。また、運動不足が続くと筋肉が低下し血流の悪化を招きやすくなります。その結果肩の筋肉の緊張や疲労が起こり、肩こりを引き起こしやすくなるといわれています。運動は筋力を増強するだけでなく血流をよくする効果もあります。運動不足を感じたら、定期的にウォーキングや体操などの軽い運動を行いましょう。ウォーキングの際には手を大きくふることで肩の筋肉をほぐすことができます。勉強や仕事、人間関係などでストレスがかかると、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまいます。そうなると体の調整がうまくできず、肩こりをはじめとする身体症状、イライラや情緒不安定などの精神症状が現れることがあります。ストレスを感じたら、まずは何が原因になっているのかを考え、その原因に対してストレス解消の手段があれば積極的に取り組むようにしましょう。また、生活習慣の改善や趣味の実践、軽い運動、怒りや不安感といった感情を周囲の人に聴いてもらうことも、ストレスを発散するために大切なことです。できることから始めていきましょう。
漢方と鍼灸
それぞれの原因に対して向き合わないといつまでも辛い状況は変わりません。標治と本治で取り組むべき症状ですね。標治は肩の痛み、コリをとること。本治は再発しないように、もしくは軽くなることです。ちまたでは肩こりに葛根湯を常用しているようですが、麻黄が入っているので連用はできません。麻黄は発汗剤であり興奮剤ですので毎日飲んでいると副作用もでやすいですよ。肩こりのつらい箇所と各疾患の反応穴から本治と標治の漢方、食養生やサプリ、ツボを選択して治療していきます。肩こりの本当の原因を見つけましょう。
変形性股関節痛・特発性大腿骨頭壊死症
脚の付け根(鼠径部)にある股関節は、脚と骨盤とをつなぎ体重を支える重要な関節です。太ももの骨の丸い先端部分(大腿骨頭)が、骨盤のお椀のようなくぼみ(寛骨臼)にはまった構造をしています。また、大腿骨頭・寛骨臼ともに表面は弾力のある関節軟骨で覆われていて、関節を動かしたり体重をかけたりしても、骨同士が直接ぶつからずにスムーズに動くようになっています。
変形股性関節症は、股関節を構成する骨や関節軟骨に不具合が生じることで、関節軟骨の減少、骨の変形を来す病気です。病状の進行に伴い関節の痛みや動きに制限が生じ、日常生活にも支障が出るようになります。加齢とともに徐々に悪化することもあり、適切なタイミングで治療するかどうかを決定することが重要です。そのため、痛みがなくても定期的に専門医に受診し、経過を観察しながら、適切な時期に適切な治療を受けることが大切です。股関節は丸いボールのような大腿骨の骨頭と、骨盤側で受け皿となるお椀型の寛骨臼が組み合わさって構成されています。発育時に股関節のかみ合わせが悪かったり、加齢によって関節軟骨がすり減ったりすると、股関節のスムーズな動作が障害を受けて変形性股関節症が生じます。発育性股関節形成不全は日本においては変形性股関節症の発症の主な原因となっています。ただし、発育性股関節形成不全を生じたすべての方が、変形性股関節症を発症するわけではありません。加齢に従い軟骨が弱くなり、長年の負担が積み重なってすり減ることも変形性股関節症の一因です。社会全体の長寿・高齢化が進み、結果的に変形性股関節症の患者さんも増えています。また、近年の日本における変形性股関節症の増加と、食生活の欧米化との関連も考えられています。変形性股関節症は前股関節症・初期・進行期・末期の4段階に分類され、変形の程度に応じて症状も異なります。初期症状は足のつけ根やお尻、膝の上部にこわばりや重い感じがあり、歩き始めや長時間歩いたとき、階段の昇降時に痛みを感じるようになります。炎症が強い場合や股関節唇の損傷があると、初期でも強い痛みが出ることがあります。進行期から末期へ進むにつれて痛みが強くなります。日常動作の制限も増えるため、生活に支障を来すようになります。変形性股関節症は、症状の進行具合や既往歴などから疑われます。変形性股関節症の可能性が疑われる場合、レントゲン検査が行われます。ごく初期の段階では軽い変化がみられるのみですが、重症度が高くなるにつれて関節の隙間が狭くなる、軟骨下骨が硬くなるなど、より明確な変化がみられます。さらに進行すると関節軟骨も消失します。このような形態の変化はCT検査やMRI検査を行うことでより明確に確認できます。変形性股関節症の治療は、患者さんの年齢、原因となる病態、また病状の進行度によって適宜選択されます。発症初期であれば保存療法、病状が進行している場合は手術が行われます。発症初期は、痛みを緩和するために副作用の少ない消炎鎮痛剤を使いながら、運動療法を中心とした保存療法を行います。このとき、運動による筋力の増強、筋肉バランスや姿勢の改善、適正な体重の維持など、生活指導が行われることもあります。変形性股関節症の手術には大きく分けて骨切り術と人工股関節置換術があります。骨切り術は、関節近くの骨を切り、関節のかみ合わせをよくすることで軟骨のすり減りを防ぐ手術です。骨切り術のなかでも寛骨臼回転骨切り術という術式が比較的よく選択されます。この手術は、軟骨がすり減って病状が進行することを防ぐ目的で行われます。骨盤側の受け皿のかぶりが浅い場合に、受け皿の一部の骨を切り、外側にスライドさせ、しっかりとかぶせるようにします。骨切り術には、自分自身の関節を残せることに関連したメリットがあります。ただし、骨切り術にはデメリットもあるため、患者さんの病状に応じて人工股関節置換術を選択することもあります。人工股関節置換術を受ける際には、注意すべき合併症の説明や術後避けるべき姿勢を指導されることがあります。また人工股関節は、再手術(再置換)が必要になる場合があります。こうした注意点があることもあり、手術後は担当医の指示のもと、定期的にチェックを受ける必要があります。かつては20年経過するとおよそ6割にゆるみが生じ、そのうちの約半数が再置換を受けているとされていましたが、現在は摩耗に強いインプラントが開発されており、長期の耐用年数、インプラント寿命が期待されています。
特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭への血流がなんらかの理由により障害され、骨の組織が死んでしまう(骨壊死)病気です。骨壊死を起こした部分が広がると、体重などの負荷よって大腿骨頭が潰れてしまい、股関節に痛みが起こるようになります。特発性大腿骨頭壊死症は、自己免疫疾患などの治療のためにステロイドを服用していた方やアルコールを多飲する方に認められることが多く、これに喫煙習慣が重なると発症リスクが高くなります。この病気は働き盛りの30~50歳代の方に多い傾向があります。
関節リウマチは、免疫系の異常によって起こる自己免疫疾患の1つで、手足の関節を囲んでいる滑膜かつまくが炎症を起こし、これが関節の痛みや腫れ、動かしにくさなどを引き起こします。関節リウマチによる関節の炎症が持続すると、次第に関節の骨や軟骨も破壊されて症状が悪化します。30~50歳の女性に発症することの多い病気です。股関節は関節リウマチの影響を受ける関節の1つですが、多くの場合、同時に股関節以外の関節にも痛みや腫れなどの症状が認められます。そのため、股関節の治療に加えて、関節リウマチに対する薬物治療も必要になります。
高齢の方は転倒などが原因で大腿骨を骨折しやすく、治療では骨折部分の骨の位置を修正し、プレートやボルトで固定して安定化させる手術が行われることがあります。しかしながら、高齢の方の骨は骨粗鬆症が進んで骨密度が低くなっていることが多く、術後にボルトがずれたり抜けたりして、それが股関節の痛みの原因になることがあります。
股関節に異常がある場合、初期段階では椅子から立ち上がったときや歩き始めに痛みを感じるものの、歩いていると気にならなくなる程度の症状です。患者さんはさほど気にしていなくても、周りの人から「脚を引きずって歩いているよ」と指摘されることがあるなど、無意識に脚をかばって生活していることもあります。股関節の異常が進行すると、歩くときに常に痛みを感じるようになるほか、股関節を深く曲げる動作、たとえば“しゃがむ”“あぐらをかく”などの動きで痛みが誘発されます。また、足の爪を切る、靴下を履く、正座をするなどの行為も難しくなっていきます。さらに重症度が高くなると、じっとしていても痛みを感じるようになるため、立ち仕事がつらい、階段の上り下りに手すりが欠かせない、就寝時も痛みで目が覚めてしまうなど、日常生活に大きな支障をきたすようになります。股関節の異常を明らかにするために、ほとんどの患者さんでX線(レントゲン)検査を行い、大腿骨頭と寛骨臼のすき間の状態や骨棘・骨囊胞などの骨の変形、寛骨臼形成不全の有無などを評価します。変形性股関節症による股関節の異常の場合には、多くはX線検査のみで診断されます。X線検査で骨の変形があまり認められなかったにもかかわらず強い痛みがある場合には、特発性大腿骨頭壊死症などを疑いMRI検査を実施します。股関節の異常に対しては、主に保存療法と手術療法が用いられます。股関節の症状が軽度の場合は、安静にして鎮痛薬で痛みをコントロールしながら、杖や股関節を安定させるコルセットを用いて股関節への負荷を軽減します。若い方で杖を使うことに抵抗がある場合には、日傘を持ち歩いて必要なときに杖の代わりに使うとよいでしょう。また、股関節に大きな負荷をかけずに筋力を強化することのできる水中ウォーキングは、ダイエットにも効果があり、股関節痛のある患者さんに推奨される運動です。股関節鏡視下手術は、関節の変形などによって、寛骨臼の縁にある関節唇が損傷し、痛みを引き起こしている場合に行う手術です。股関節の周囲に小さな穴をつくり、そこから関節鏡と呼ばれる内視鏡や器具を挿入して関節唇を修復します。骨切り術は寛骨臼形成不全のある患者さんに用いられる手術で、寛骨臼の一部を切って回転・移動させることで、股関節への負荷を軽減する手術です。ただし、手術をするには関節の骨に関節軟骨が十分に残っている必要があるため、対象は早期の変形性股関節症で、比較的若い患者さんに対して実施されます。人工股関節置換術は、変形性股関節症、特発性大腿骨頭壊死症、関節リウマチ、大腿骨骨折後のトラブルなどによって損傷・変形した股関節を人工股関節(インプラント)に置き換える手術です。特に病状が進行して痛みが強く、日常生活への影響が大きな患者さんに対して用いられます。
漢方と鍼灸
軟骨の再生や潤いには血流と材料(タンパク質、ビタミン、ミネラルなど)とホルモンの活性化が必要です。痛む箇所と異常箇所から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。早期から始める方がいいでしょう。
【症例】48歳 股関節痛 漢方と食養生で3か月で消失
【症例】65歳 股関節痛 漢方と食養生と鍼灸治療で4か月で消失
坐骨神経痛
坐骨神経痛とは、坐骨神経に沿ってお尻から脚の後面や外側にかけて起こる痛みの総称を指します。坐骨神経は腰の辺りから足に伸びる神経で、この坐骨神経が何らかの原因で刺激されると痛みやしびれが生じます。坐骨神経痛を引き起こす病気としては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などが例に挙げられますが、腫瘍などが坐骨神経痛の原因となることもあります。坐骨神経痛に対しての治療アプローチはさまざまです。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が原因であれば、まず安静や固定、薬物療法、理学療法などによる保存療法が行われます。症状によっては手術療法が選択されることになります。坐骨神経痛の主な原因としては、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、梨状筋症候群、なかでも腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症は、坐骨神経痛の原因として代表的な病気です。また、頻度は少ないですが、骨盤内の腫瘍などが原因で発症することもあります。お尻や脚の後面または外側に痛みやしびれが生じます。冷感、灼熱感などを感じることもあります。症状は、脚の一部のみに現れることも、脚全体に現れることもあります。腰部脊柱管狭窄症が原因の場合、“間歇性跛行”という症状が生じることがあります。間歇性跛行はしばらく歩くことでお尻や太ももの後面に痛みが生じ、休むと治まり、歩き出すと再び痛むことが特徴です。検査では、坐骨神経痛の原因となっている病気を特定することが重要です。腰椎が原因であることが多いですが、帯状疱疹や子宮筋腫、変形性股関節症といった腰椎以外の病気が痛みの原因となっていることもあるため、疑われる病気に応じた検査が行われることになります。診断の流れとしては、まず問診や診察を行い、その後X線検査やMRIなどの画像検査が行われることが一般的です。原因疾患に応じた治療方法が選択されます。代表的な原因疾患である腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の場合、薬物療法などの保存的治療が基本となりますが、症状によっては手術が検討されることもあります。まず非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が使用されることが一般的です。神経障害性疼痛治療薬、筋緊張弛緩剤、血管拡張薬などが使われることもあります。痛みの緩和や日常生活の質の維持を目的として、運動、ストレッチ体操、歩行訓練などを行います。また装具(コルセット)をつけて痛みを緩和する方法もあります。神経ブロック療法は原因となっている腰椎の神経やその周辺に局所麻酔薬などを使用し、痛みを軽減する方法です。脊髄刺激療法は体に小さな電極を埋め込み、脊髄に微弱な電流を流すことで痛みを和らげる方法です。薬物療法など、ほかの治療法で効果が得られない場合に検討されます。保存的治療で症状が改善しない場合や、下半身の脱力や膀胱・直腸などに機能障害が現れた場合などは手術が検討されます。近年では、脊椎内視鏡を使った手術も行われるようになってきています。坐骨神経痛の予防には、生活習慣の改善も重要です。腰に負担をかけないために普段から姿勢を改善し、ストレッチなどを行いましょう。体重が増加すると腰に負担がかかるため、肥満にも注意が必要です。また、下半身の冷えが坐骨神経痛につながることもあるため、腰や足の保温も心がけるとよいでしょう。
漢方と鍼灸
腰椎の異常箇所は触れなくても気功でわかりますので、そこから最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。腰椎周りや梨状筋のはりは鍼灸治療でとれます。
【症例】70歳 左足の痺れ 漢方と食養生、鍼灸治療で一か月で消失。痛みもなくなって歩けるようになる。
【症例】56歳 左足の痺れ 漢方と食養生、鍼灸治療で3か月で完治。
※症例多数
足の痛み・かかとの痛み
歩き疲れたときなどに足が痛いと感じるのはよくあることかもしれません。しかし、何も心当たりがないのに痛みを感じる場合には、注意が必要なこともあります。そんなに歩いていないのに足に痛みを感じやすい、足の裏が痛くて体重をかけられない、足が慢性的にだるく、痛みを感じることもあるなどこのような場合に考えられる原因には、どのようなものがあるでしょうか。足が痛いときに考えられる病気は、足の痛みは、何らかの病気によって引き起こされていることがあります。大きく分けて骨や関節の病気、または体の病気が原因となっているケースがあります。足の痛みを引き起こす骨や関節の病気には、次のようなものがあります。産まれたばかりの子どもの足には土踏まずのアーチがありませんが、大人になるにつれてアーチが形成され、効率的に体重を支えることができるようになります。扁平足には、子どもの頃からうまくアーチが形成されなかった場合と、大人になってから何らかの原因でアーチが崩れてしまったものがあります。主な症状には内側のくるぶしの下の腫れ、足の痛みなどがあります。変形が進むにつれ、歩きにくくなることもあります。足底腱膜炎は足底腱膜という、足裏のアーチを支えるために重要な役割を果たしている腱が炎症を起こし、かかとの下側からつま先にかけて痛みを感じる病気です。朝起きたときや、長時間休憩した後に最初に体重をかけたときに強い痛みがはしることがあります。種子骨障害 ・ 種子骨炎は、足の親指の付け根にある種子骨が骨折や炎症を起こし、足の裏に痛みが発生している状態です。走る・踏み込む動作が多いスポーツなどの負荷により発生するといわれています。踵骨骨端症(シーバー病)は、かかとの骨にはアキレス腱や足底筋膜など、足のはたらきに大切な腱が付着しています。走る・跳ぶなどの動作でかかとの軟骨が引っ張られて炎症が起こり、痛みが起きる病気です。運動をした後、朝起きたときなどに痛みを感じることが多いといわれています。また、踵の骨に背が伸びる成長軟骨の残っている小学生、特に男児に多いといわれている病気です。捻挫・骨折は関節に無理な力が加わり、骨と骨をつなぐ靱帯が伸びたり切れたりする捻挫、骨が折れたり欠けたりしてしまう骨折はいずれも強い痛みの原因となります。捻挫の場合、内側に足をひねってしまうことが多いですが、靱帯が強く引っ張られることで靱帯の付け根が骨ごと剥がれ、裂離骨折といわれる一種の骨折を起こすことがあり、特に子どもの場合の多くが裂離骨折となります。痛みや腫れが強いときには、ただの捻挫だと思わず、一度受診するようにしましょう。血管や皮膚、体の病気によって足の痛みが起こることもあります。代表的な病気には、以下のようなものがあります。
血管の病気により足が痛むこともあります。たとえば、足に血栓ができるエコノミークラス症候群、動脈硬化によって血管が狭くなる 閉塞性動脈硬化症、足の静脈が浮き出たり盛り上がったりする 下肢静脈瘤 です。足の皮膚の色が悪い、足が片方だけむくむ、特にふくらはぎの血管が盛り上がり瘤のようになっているなどの場合には注意が必要です。 蜂窩織炎は皮膚の深部が細菌感染して炎症を起こす病気です。足は比較的発症することが多く、痛みのほかに皮膚が赤みを持って腫れる場合がほとんどです。また、程度によっては熱が出たりすることもあります。痛風は尿酸の結晶が関節や腎臓にたまり、関節痛や腎機能障害を起こす病気です。特に、足の関節や足の親指の付け根は痛みが起こりやすい場所として知られています。いったん痛み発作が起こると、激痛を伴って赤く腫れますが、数日で徐々に治っていきます。発作時は尿酸値が低下することもあり、そのときの血液検査では診断がつかないこともあります。痛みのあるときだけでなく、長期的な治療が必要な病気ですので、痛みが自然に治っても一度受診しておくことが大切です。足に痛みが生じるまれな病気としては、ファブリー病 などが挙げられます。症状は、手足の先がよく痛くなる、汗をかかない・または汗をかきにくい、熱いお湯に手足をつけるのが苦手、皮膚に赤いぶつぶつがある、家族や親戚の中に、若い頃から、腎臓や心臓の病気がある人や、脳の血管が詰まったことのある人がいるなどがあればファブリー病かもしれません。
漢方と鍼灸
各原因が違うので治し方も様々です。患部から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボの治療いたします。
脊椎分離症
腰椎分離症とは、過度のスポーツや腰部の回旋(ひねる動き)などの負担によって、腰椎の後方部分が疲労骨折(分離)する病気です。主に10代の成長期にみられ、発症すると腰痛や下肢かしのしびれなどが引き起こされます。一般の人では5%程度が分離症を発症しますが、スポーツ選手では30~40%の人が発症します。腰椎分離症は、早期発見により手術を避けて治療することが可能です。初期の段階であればコルセットなどで固定したり、対症療法として鎮痛剤を投与したりします。また、スポーツや負担がかかる運動は2~3か月程度中止し、医師の指導に基づいたストレッチなどを行います。原因は疲労骨折であるため、初期治療をきちんと行えば治ります。しかし、初期治療をおろそかにすると、骨折した分離部が癒合せず、分離症のままとなってしまいます。分離症は10歳代で起こりますが、その後徐々に分離すべり症に進行していく場合があります。十分な治療を続けても生活が改善されない場合には、分離した部分を外科手術で固定します。腰椎分離症は運動に関連して発症することが多く、スポーツをしている子どもに多い病気です。物理的な負担がかかる行動(ジャンプや腰が回旋する運動)を繰り返すことで、椎弓狭部(関節突起間部)に疲労骨折が生じて、腰椎分離症が引き起こされます。分離を起こす部位は、5つの椎体で構成される腰椎のうち第5腰椎であることがほとんどです。腰椎分離症が治療されず長期間経過すると、徐々に脊柱管内部の馬尾神経などを圧迫するようになり、下肢痛やしびれを生じることがあります。また、腰椎分離症が原因ですべりが生じることがあり、分離すべり症と呼ばれています。腰椎分離すべり症を発症すると、さまざまな神経症状が起こります。腰椎分離症の多くは、腰痛がきっかけで発見されます。腰痛そのものは誰もが感じるようなありふれた症状ですが、腰椎分離症は体勢によって症状が変動することが特徴です。腰椎後部の神経組織を保護している椎弓の一部が分離するため、上体を後ろに反らす動作をすると、痛みを感じるケースが多くみられます。また、腰椎分離症に続発して腰椎分離すべり症が起こることがあります。腰椎分離すべり症では馬尾神経や神経根が圧迫され、神経症状のしびれを感じます。腰椎分離症では、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査が行われます。レントゲン写真では、病状が進行していると椎弓の分離が確認できます。分離部分は、症状が進むと犬の首輪のような「スコッチテリアサイン」と呼ばれる像を呈します。MRI検査では、レントゲンではわからない疲労骨折の初期を発見できます。この状態で治療を開始することが勧められます。画像検査を組み合わせることで、より詳細に腰椎分離症の状況を評価することが可能です。腰椎分離症は、初期の段階であれば局所の安静や鎮痛剤などの保存療法(手術を避ける治療)が有効です。そのためには早期に発見することが重要で、スポーツに伴って発症し、上体を後ろに反らすと誘発される腰痛が続く場合には、MRIなどによる精査が必要です。腰痛分離症は発症後早期であれば、多くの場合、保存療法のみで治癒することが期待できます。激しいスポーツに伴って発症することから、まずは原因である運動を一時的にやめることが求められます。加えて、腰部の安静を保つため硬性コルセットを使用します。こうした治療により、分離した腰椎の癒合と痛みの消失が期待されます。そのほか、骨盤周囲の筋肉を伸ばすストレッチと筋肉の強化を行うことが有効です。治療後は症状や画像所見を確認しながら安静解除や運動の開始を検討していきます。分離症が治っていなくても強い痛みが持続することは多くありません。腰痛を繰り返すことがありますが、ほとんどは保存治療で改善し、日常生活に支障が出ることは少ないようです。腰痛予防には、腹筋・背筋の強化などが大切です。保存療法を行っても痛みが治まらない場合や神経症状がある場合には、手術的な治療介入を行います。腰椎分離症から腰椎すべり症まで病状が進行している場合には、脊椎固定術を行います。
漢方と鍼灸
骨折をしていてもたいていは痛みや痺れは改善されます。腰椎5番の箇所から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボの治療を行います。