習慣性流産
人工流産ではなく自然流産を連続3回以上繰り返すことを指します。自然流産を繰り返す場合、何かしらの原因となる病気が隠れていることもあります。そのため、原因に応じた治療介入が行われます。適切な治療を受けることで、正常な妊娠・出産につながることも十分期待できるため、流産を繰り返す際には医療機関を受診し、治療を受けることが推奨されます。習慣流産は、免疫学的な異常や子宮奇形、内分泌異常、染色体異常などを原因として発症します。免疫学的な異常ですと代表的な病気は、抗リン脂質抗体症候群です。抗リン脂質抗体症候群では、胎盤に微小な血栓が詰まり機能不全になることで胎児の血流不全が起こり、流産を繰り返す原因になることがあります。子宮の形が正常とは異なる子宮奇形も、習慣流産の原因のひとつです。子宮奇形があると、子宮内の空間が狭くなってしまい、胎児が発育するスペースが確保されないことがあります。その他に、甲状腺機能低下症、卵巣の機能低下、感染症、染色体レベルでの異常なども習慣流産の原因となることが知られています。習慣流産では、自然流産を連続して3回以上繰り返します。流産では、生理痛のようなお腹の張りや腹痛、出血などの症状が認められます。流産を繰り返すことから、なかなか挙児に至らない可能性があります。習慣流産では、原因によってはその他の症状が出現することもあります。抗リン脂質抗体症候群では血栓が形成されるリスクが高まりますが、脳梗塞の発症に至ることもあります。その他、甲状腺機能低下症であれば疲れやすさや全身のだるさ、便秘などの症状が現れます。また、感染症であれば膣分泌物の変化や腹痛、局所のかゆみなどを伴うことがあります。習慣流産では、内診や基礎体温測定などに加えて、原因検索を目的としたさまざまな検査が行われます。免疫異常の検索を目的とした自己抗体の検出や、甲状腺機能や感染症の有無などを評価するための血液検査が行われます。また、血液検査では、染色体検査やHLA型の検索なども行われます。その他、習慣流産は子宮の形態異常が原因となることもあるため、これを評価するための超音波検査、子宮卵管造影、MRI検査なども行われます。習慣流産では原因に応じた治療介入が行われます。抗リン脂質抗体症候群が原因の場合には、アスピリンやヘパリンなどを用いることで流産の予防を図ります。
また、甲状腺機能の低下が原因の場合には甲状腺ホルモンの補充療法が行われますし、感染症が原因の場合には病原体に応じた治療薬が使用されます。子宮の形態異常が原因と考えられる際には、手術が検討されます。
漢方と鍼灸
各症状、疾患によって最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択します。自己免疫の反応穴、感染症の反応穴、内分泌の反応穴からも参考にします。
煎じ
・当帰芍薬散(当帰・川芎・芍薬・白朮・茯苓・沢瀉)『金匱要略』
妊娠中の腹痛や月経痛に良く使われます。
・当帰散(当帰・芍薬・黄芩・川芎・白朮)『金匱要略』
当帰は月経を調整し、子宮の痙攣を緩めて、鎮痛の効果があります。川芎にも当帰と同じように血行を良くし、月経異常に効果があります。芍薬は平滑筋の緊張を緩め、黄芩には安胎作用があると考えられていました。
・芎帰膠艾湯(川芎・阿膠・甘草・艾葉・当帰・芍薬・地黄)『金匱要略』
・芎帰膠艾湯(艾葉・阿膠・川芎・当帰・甘草)『備急千金要方』
・芎帰補中湯(川芎・五味子・阿膠・黄耆・当帰・芍薬・白朮・人参・杜仲・甘草・艾葉)『奇効良方』
など(薬局製剤以外も含む)
妊娠悪阻
いわゆる“つわり”が重症化し、頻回な嘔吐と著しい食思不振が生じることで脱水や栄養代謝障害を生じる病気のことです。“つわり”は、妊娠による急激なホルモンバランスの変化などが引き金となって、妊娠5~8週目頃に現れることが多い症状です。妊婦の半数以上は“つわり”を経験するとされていますが、妊娠12~16週頃には自然と改善していくことが多いため、治療が必要になることはほとんどありません。一方、重度な“つわり”である妊娠悪阻は妊婦の約0.5%に発症し、適切な治療を受けないと脳や肝臓に障害を引き起こすなど重篤な合併症を生じることも少なくありません。妊娠悪阻は妊婦の半数以上が経験するとされる“つわり”が重症化したものです。どのようなメカニズムで“つわり”が引き起こされるのかは明確には解明されていませんが、妊娠に伴って女性ホルモンの一種であるエストロゲンや、着床することで分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)と呼ばれるホルモンの分泌量が急激に上昇することが原因のひとつと考えられています。また、“つわり”が重症化して妊娠悪阻を引き起こす原因もはっきりと分かっていませんが、初めての妊娠や多胎妊娠、母体の肥満、摂食障害の既往などが発症のリスク要因と考えられています。また、妊娠・分娩への不安や心理的葛藤などの精神的因子の関与に加えて、母親や姉妹などの近い親族が妊娠悪阻になったことがある場合、自身も発症する可能性が高いと報告されていることから、遺伝要因も示唆されているのが現状です。妊娠悪阻は妊娠5~8週頃に頻回な吐き気や嘔吐が生じることで体内から水分や電解質が失われ、体を維持するために必要なエネルギーや栄養素を補うことができなくなる病気です。重症化すると体内のさまざまなバランスが乱れ、命に関わることも珍しくありません。さらに、脱水や長期臥床が深部静脈血栓発症のリスク因子となります。妊娠悪阻は重症度によって三つの段階に分けられますが、それぞれの段階で現れる症状は次のとおりです。第1期は吐き気や嘔吐が1日を通して頻回に生じ、食事や水分を取ることが困難になります。体重は減少を続け、脱水や栄養不足に伴い、めまいやだるさ、頭痛などの症状が現れることも少なくありません。このため、外出どころか日常的な家事などもできなくなるケースがあります。第2期は頻回な嘔吐や、極端な摂食量の不足が続くことで、極度な脱水状態に陥ります。尿量は減少し、皮膚の乾燥や口が渇くなどの症状が現れ始め、血圧の低下や頻脈、発熱などが生じるようになります。第3期はさらに脱水や栄養不足が進行すると、肝臓や脳に重篤なダメージが加わります。特にビタミンB1が不足することによって発症する“ウェルニッケ脳症”は妊娠悪阻の重篤な合併症のひとつで、記憶や運動機能に異常が生じます。そして半数以上の方に過去のことを思い出せない、新しいことを覚えられない、作り話をするといった特徴的な症状が現れる“コルサコフ症候群”と呼ばれる後遺症を残すとされています。また、万が一治療が遅れたり、治療がうまくいかなかったりした場合は、胎児死亡や多臓器不全による母体死亡に至るケースもあります。妊娠悪阻は頻回な嘔吐と極端な摂食量の減少があり、体重が妊娠前より5%以上減少している場合に発症が疑われます。妊娠悪阻の明確な診断基準は定められていませんが、次のような検査を行って診断を下します。妊娠悪阻の可能性を簡易的に調べる検査として広く行われるのが、尿検査による“ケトン体”の検出です。ケトン体とは、飢餓状態に陥ったときに体内に蓄えられた脂肪が、エネルギーとして分解される過程で産生される物質であり、通常は尿中に検出されることはありません。しかし、妊娠悪阻によって飢餓状態に陥ると、尿中に検出されるようになるため、妊娠悪阻発症の有無を調べるために有用な検査となります。検査は採取した尿に専用の試験紙を浸すだけで行うことができるため、妊婦検診などでも広く行われています。尿検査でケトン体が検出されると妊娠悪阻と診断されますが、一般的には体内の電解質の状態や脱水の有無、肝臓や腎臓の機能を調べるために血液検査が行われます。つわりに対しては、心身の安静と休養、少量頻回の食事摂取、水分補給を促し重症化を防ぎます。妊娠悪阻を根本的に治す治療法はなく、失われた水分や電解質を補い、吐き気が強い場合は、適宜制吐剤(吐き気止め)などを使用する対症療法が行われます。口から水分などが摂取できるケースでは、電解質が含まれた経口補水液を摂取するのが望ましいですが、妊娠悪阻では経口摂取が困難なケースがほとんどです。このため、入院したうえで、いったん絶食し、体内に必要な電解質やビタミンB1が含まれる輸液治療が行われます。これらの治療を続けることで、多くは妊娠16週頃には症状が改善していきます。一方で、長期間症状が治まらない場合や体重減少が著しい場合などは、通常の点滴ではなく、首や鎖骨の下にある太い血管の中に管を入れてカロリーや栄養素がより多く入っている輸液(中心静脈栄養)を行うことも少なくありません。また、まれではありますがこれらの治療を行っても症状が改善せず、第3期の症状が現れるような場合には、ウェルニッケ脳症の発症を防ぐために人工中絶手術が選択されることもあります。
漢方と鍼灸
つわりを悪化させないようにすることが大切です。経口摂取が出来なくなった場合では輸液治療になりますので漢方や食養生は飲めません。当院ではつわりを改善しながら気持ちを落ち着かせる漢方を使い、食養生を少しずつ摂取して頂きミネラル不足を改善します。つわりのご相談で良くならなかった方はいません。ご相談ください。
煎じ
・小半夏加茯苓湯(半夏・生姜・茯苓)『金匱要略』
半夏・生姜は悪心・嘔吐を治します。
・半夏厚朴湯(半夏・生姜・茯苓・厚朴・紫蘇葉)『金匱要略』
小半夏加茯苓湯に厚朴と紫蘇葉を加えたものです。
・安中散(甘草・延胡索・良姜・茴香・桂皮・牡蛎・縮砂)『太平恵民和剤局方』
・乾姜人参半夏丸(乾姜・人参・半夏)『金匱要略』
・呉茱萸湯(呉茱萸・人参・大棗・生姜)『傷寒論』
・五苓散(猪苓・沢瀉・白朮・茯苓・桂枝)『傷寒論』
・生姜瀉心湯(生姜・黄連・黄芩・人参・甘草・大棗・半夏・乾姜)『傷寒論』
・参蘇飲(陳皮・枳殻・桔梗・甘草・木香・半夏・紫蘇葉・葛根・前胡・人参・茯苓・生姜・大棗)『太平恵民和剤局方』
・二陳湯(半夏・陳皮・茯苓・甘草・生姜)『太平恵民和剤局方』
・半夏瀉心湯(半夏・黄連・黄芩・人参・乾姜・甘草・大棗)『傷寒論』
・橘皮湯(橘皮・生姜)『金匱要略』
・紫蘇和気飲(大腹皮・人参・川芎・陳皮・芍薬・紫蘇葉・当帰・甘草)『普済本事方』
・紫蘇和気飲(紫蘇葉・当帰・川芎・芍薬・陳皮・大腹皮・香附子・甘草・生姜・葱白・人参)『済世全書』
・小半夏湯(半夏・生姜)『金匱要略』
・伏竜肝煎(黄土・半夏・生姜・茯苓)『原南陽』
・養胃湯(当帰・芍薬・白朮・茯苓・陳皮・藿香・縮砂・神麹・半夏・香附子・甘草・生姜・大棗)『寿世保元』
・理中湯(人参・乾姜・甘草・白朮)『傷寒論』
など(薬局製剤以外も含む)
冷え症
手足の先端、腰など体の一部が冷えやすくなる状態のことを指します。医学的な病名ではなく、身体症状の1つです。私たちの体には体温を調節する仕組みが備わっており、寒さを感じると血管が収縮することで体内の熱を外に逃がしにくくしたり、震えによる筋肉の運動で熱が産生されたりすることで皮膚の温度を保っています。しかし、この調節が上手くいかなくなると、手足の先端などが冷えやすくなるのです。原因は多岐にわたりますが、一般的には男性よりも女性のほうが冷え症になりやすいとされています。冷え症が続いているからといって健康に大きなダメージを与えることはありません。しかし、適切な対処を講じずに放置すると頭痛、肩こり、しびれ、便秘・下痢などの身体的症状、イライラ感や不眠など精神的症状を引き起こすことがあります。また、低血圧や貧血、甲状腺機能低下症などの病気が背景にあるケースも少なくないため注意が必要です。冷え症は上述したように、体温調節の仕組みが上手く働かなくなることによって引き起こされる症状です。その原因は多岐にわたりますが、単純に薄着や過度な冷房などが原因となるほか、以下のようなものも原因として挙げられます。血管の収縮などの体温調節は自律神経によって司られています。そのため、ストレスや過度な疲れ、環境の変化、女性ホルモンの乱れなどによって自律神経の働きが乱れると、体温調節もうまく働かなくなり冷え症を引き起こすことがあります。特に夏の空調などで外気と室温の差が激しい環境になると自律神経の働きが乱れやすくなり、暑い時期に冷え症になるケースも少なくありません。貧血や低血圧などの病気、運動不足や喫煙習慣、締め付けの大きな服装など、血流が低下しがちな原因があると特に手足の先などに体内の熱が届きにくくなるため、冷え症になりやすくなります。筋肉は熱を産生する器官でもあるため、筋肉量が少ないと体内で熱が作られにくくなり冷え症になることがあります。冷え症は甲状腺機能低下症、レイノー病、全身性強皮症などの自己免疫疾患、閉塞性動脈硬化症などの症状の1つとして現れることがあります。対策を講じても冷え症が改善しないときは、背景に何らかの病気が隠れていることもあるので注意が必要です。冷え症はその名のとおり、皮膚の温度が低下する症状のことです。発症する部位や時期などはさまざまであり、よく見られるのは寒い季節や過度な冷房などに晒された際に手足の先端に発症するタイプです。重症な場合には手足の先端がいわゆる“しもやけ”になったり、皮膚の色が白くなりしびれや痛みを引き起こしたりするケースも少なくありません。一方で、下半身の筋力が低下しているケースでは脚や腰を中心に冷えやすくなり、冷たい飲食物を多量に摂取すると胃や腸などの消化器官が冷えることもあります。また、冷え症は病気ではなく“体質”の1つと捉えられることもありますが、冷えが長く続くと頭痛、肩こり、腰痛、関節の痛みやしびれ、便秘や下痢などの身体的症状、イライラ感や不眠などの精神的症状を引き起こすため軽く考えずに適切な対処が必要です。通常、冷え症に対して医学的な検査を必要とすることは多くはないかもしれません。しかし、適切な対処を講じても冷え症が改善しない場合は、何らかの病気が原因の可能性があります。病気が疑われる場合は、貧血や甲状腺機能低下症、自己抗体(自分の体を攻撃するタンパク質)の有無を調べるための血液検査、血管の閉塞や狭窄を調べるための画像検査などが必要に応じて行われます。何らかの病気が原因で冷え症になっている場合は、原因となる病気の治療が優先して行われます。また、冷え症の治療は必要ないとされることがありますが、冷えそのものや伴ってみられる諸症状に対して漢方薬による治療を行うこともあります。冷え症は生活習慣に起因するケースが多いため、次のような対策を講じることが大切です。睡眠リズムなどが乱れた不規則な生活は冷え症の原因となる自律神経の乱れを引き起こします。日ごろから規則正しい生活を心がけ、ストレスを溜め過ぎないよう心がけましょう。締め付けの多い衣類や靴は血行を悪化させるので、できるだけゆったりしたものを着用することが大切です。また、寒い季節や冷房が強いときは体を冷やしすぎないように衣類で調節するようにしましょう。特に脚の筋肉量が低下すると下半身の冷えを引き起こしやすくなるため、適度な運動を行い、筋力量を増やすことも大切です。胃腸を冷やすと全身の冷えにつながります。飲み物はなるべく常温以上のものを飲むようにし、食べ物も冷えたものは避けて温かいものを取るようにしましょう。
漢方と鍼灸
冷えの強い箇所からどの漢方、食養生やサプリ、ツボが最適かわかります。また養生も大切です。お米、味噌汁を基本とし冷たい物・冷やす物を極力控える、または食べたら暖かい物も摂る。低体温も免疫、自律神経が乱れます。寝る前は暖かい物を飲んで寝ると熟睡しやすいですよ。
「冷えは万病の元」です。冷えすぎて自分が冷えているかわからない方がいらっしゃいます。
問診の仕方を工夫しましょう。不妊症の原因にもなりますので周期表をご持参くださればすぐわかります。
煎じ
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(当帰・芍薬・桂枝・細辛・木通・甘草・大棗・呉茱萸・生姜)『傷寒論』
手足の血行を良くし、手足を温める方剤です。川芎・当帰・桂枝は手足の末梢の血行を良くします。呉茱萸・生姜は胃を温めます。
・当帰芍薬散(当帰・川芎・芍薬・白朮・茯苓・沢瀉)『金匱要略』
下半身にむくみがあり、血行の悪い冷え性の方に良いです。
・苓姜朮甘湯(茯苓・白朮・乾姜・甘草)『金匱要略』
白朮・茯苓に利尿作用があり、乾姜がお腹や腰を温める作用があります。
・麻黄附子細辛湯(麻黄・細辛・附子)『傷寒論』
・十補湯(人参・白朮・茯苓・黄耆・桂枝・当帰・川芎・熟地黄・甘草・芍薬・附子・乾姜・大棗)『済世全書』
・升麻附子湯(升麻・葛根・白芷・黄耆・附子・人参・草豆寇・益智・甘草・葱白)『万病回春』
・升陽燥湿湯(黄芩・橘皮・防風・良姜・乾姜・郁李仁・甘草・柴胡・白葵花)『蘭室秘蔵』
・腎著湯(茯苓・白朮・乾姜・甘草・杏仁)『三因極一病証方論』
・白朮散(白朮・川芎・蜀椒・牡蛎)『金匱要略』
など(薬局製剤以外も含む)
腟炎
子宮頸部と外陰をつなぐ腟の粘膜に炎症が起こることをいいます。特に成人女性に多くみられますが、子どもから高齢の人まで、どの年代の人でも起こり得る病気です。腟の表面は女性ホルモン(卵胞ホルモン)によって粘膜で覆われており、腟内にはデーデルライン桿菌と呼ばれる乳酸菌が常在しています。デーデルライン桿菌は腟内を酸性に保ち、腟内の細菌感染を防ぐはたらき(自浄作用)があります。しかし、何らかの理由で自浄作用が追いつかないほど細菌が増殖するなど、腟内の菌のバランスが崩れると炎症を引き起こします。また、腟炎の原因になる菌の中にはまれに子宮にも広がるものがあり、子宮内膜炎などを引き起こす可能性があります。腟炎には複数の種類があります。カンジダと呼ばれる真菌が増殖することによって炎症が生じた状態を指します。カンジダは日頃から体の中にある、いわゆる常在菌の1つです。主に病気や疲れ、妊娠などで体の抵抗力が落ちている場合や、かぜなどで抗菌薬を内服してデーデルライン桿菌が死滅し腟内の自浄作用が落ちた場合、真菌が過剰に増殖して炎症を引き起こすと考えられます。また、カンジダに感染しているパートナーとの性交をきっかけに感染することもあります。大腸菌やブドウ球菌、溶連菌といった細菌によって生じる炎症で細菌性腟炎は何らかの理由で腟内の自浄作用が弱まっているときや、下痢などで陰部を清潔に保つことが難しいときなどに原因菌が腟内で感染を引き起こし、発症すると考えられています。そのほか、タンポンの出し忘れで腟内に細菌が増殖して発症することもあります。トリコモナスと呼ばれる原虫が腟に寄生することによって炎症が起きた状態です。トリコモナス腟炎はパートナーが感染者で性交によって感染する場合と、公衆浴場やトイレなどで感染する場合があります。老人性膣炎は閉経後、女性ホルモンがほとんど分泌されなくなります。それによって腟内の粘膜が萎縮し、腟内の自浄作用がなくなり、炎症が生じます。閉経により女性ホルモン“エストロゲン”の分泌が低下することによって起こります。腟炎の症状は病気によって多少異なりますが、特におりものの量や色、臭いの異常が多くみられます。おりものが多いと陰部が蒸れ、かゆみや痛みを続発することもあります。また、妊娠中に細菌性腟炎が生じると、流産や早産、胎児が感染症を発症する原因となることもあるため、速やかに治療を開始することが大切です。
カンジダ腟炎は腟内のかゆみと、カッテージチーズのような白いおりものが生じます。カンジダが腟内から外陰部まで広がると、外陰部にかゆみが出ることもあります。細菌性腟炎は腟内が赤く腫れ、黄色や茶褐色、黄緑色などのおりものがみられることがあります。おりものに悪臭を伴うこともあります。トリコモナス腟炎は腟内から外陰部にかけて、かゆみや灼熱感が生じ、排尿や性交の際にも痛みが生じる可能性があります。そのほか、悪臭があり黄色っぽいおりものが生じることもあります。老人性腟炎は腟の乾燥・萎縮により、腟内の灼熱感、しみるような痛みや違和感を覚えることがあります。また、性交時に痛みや出血が生じやすくなります。腟炎が疑われる場合、まずは問診・内診を行います。感染による炎症と考えられる場合は腟内にあるおりものを専用の綿棒で採取し、培養検査を行います。おりものの採取に痛みはありません。培養により原因となる真菌・細菌・原虫などを特定できれば、それに合わせた治療を行います。腟炎では原因に応じた薬物療法を検討することが一般的です。腟内の洗浄を行い、腟錠を投与します。症状は数日で落ち着いてくることが多いですが、悪化や再発を防ぐためにも途中で治療を中断せず、医師の指導どおりに治療を継続することが大切です。性行為が原因と考えられる場合は、パートナーに相談し治療を受けてもらうとよいでしょう。カンジダ腟炎同様、腟内の洗浄や腟錠の投与が検討されるほか、抗菌薬の処方も検討されます。トリコモナス腟炎は飲み薬や腟錠を用いて治療を行います。性行為が原因と考えらえる場合は、パートナーにも同時期に治療を受けてもらうことが重要です。
老人性腟炎は女性ホルモンの減少により生じるため、ホルモンを補充する飲み薬や腟錠が処方されることが一般的です。また、細菌による炎症が生じている場合は抗菌薬の腟錠を処方することも検討されます。腟炎にはさまざまな種類がありますが、基本的に外陰部を清潔に保つことが予防につながります。下着や洋服などによる蒸れや擦れを防ぎ、通気性のよい状態を保つほか、排便後などは陰部をよく洗って汚れが残らないようにしましょう。感染症にかかりにくい体を作るために、規則正しい生活を送り抵抗力を高めることも大切です。
また腟炎の中には性交によって感染するものもあります。そのため、性交の際はコンドームを使用して感染を予防するほか、気になる症状があるときは性交を控え、速やかに医療機関を受診しましょう。再発を繰り返す場合には、パートナーにも医療機関の受診を促すとよいでしょう。
漢方と鍼灸
抗生物質、抗真菌が合わない方は、効果を高めたい方はご相談ください。また抵抗力をつけるご相談も受け付けています。老人性の場合、女性ホルモン補充療法を希望しない場合は、漢方と食養生やサプリがございます。
煎じ
・竜胆瀉肝湯(黄連・黄芩・黄柏・山梔子・当帰・川芎・芍薬・地黄・連翹・薄荷・木通・防風・車前子・竜胆・沢瀉・甘草)『一貫堂』
慢性の炎症性疾患に使われます。
・加減六合湯(椿根・芍薬・当帰・川芎・熟地黄・陳皮・茯苓・甘草・半夏・貝母・白朮・黄柏・知母・生姜)『万病回春』
・升陽燥湿湯(黄芩・橘皮・防風・良姜・乾姜・郁李仁・甘草・柴胡・白葵花)『蘭室秘蔵』
・清玉散料(当帰・川芎・地黄・牡丹皮・陳皮・黄連・升麻・甘草・半夏・茯苓・芍薬・蒼朮・香附子・黄芩・柴胡・生姜)『寿世保元』
・治帯下方(牡蛎・山梔子・芍薬・甘草)『名家方選』
・調栄湯(当帰・川芎・地黄・芍薬・人参・甘草・茯苓・白朮・川骨・牛皮消)『華岡青洲』
・八味帯下方(山帰来・川芎・木通・金銀花・茯苓・大黄・当帰・陳皮)『名家方選』
・附桂湯(附子・桂皮・黄柏・知母・升麻・甘草・黄耆・人参)『医学入門』
など(薬局製剤以外も含む)
2月のお休みと、祝日の営業時間
[お休み]
2月4日(日)・5日(月)
2月11日(日)・12日(月)
2月18日(日)・19日(月)
2月25日(日)・26日(月)
【祝日】
2月23日(金)
※営業時間:10時から16時まで
ご予約: 03-3300-0455 までお電話ください。
どうか皆様も、温かいお部屋でリラックスしてお過ごしください。
【筋骨格系】の症状でお悩みの方に
「もしも、親や身近な人、あるいは自分自身が【筋骨格系】の病気になったらどうしよう…」そんな不安を抱いたことはありませんか。
身近な症状として腰痛、ぎっくり腰(急性腰痛)などの増加が問題となっています。年を重ねることで、骨粗鬆症、坐骨神経症などの方が増えています。成人・高齢化社会においても、筋骨格系の健康は非常に重要です。
当院の【筋骨格系】の病気へのこだわりは漢方薬の選薬、鍼灸の施術と食養生を大切にしていることです。どこに行っても良くならなかった方の最後の砦になりたい、そんな気持ちでアドバイスさせていただきます。
腰痛、ぎっくり腰(急性腰痛)、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症・広範脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症・黄色靱帯骨化症、四十肩・五十肩・六十肩(肩関節周囲炎)、変形性膝関節症、むち打ち(外傷性頚部症候群)、打撲・骨折と予後神経痛、腱鞘炎・ドケルバン病・ばね指、骨粗鬆症、骨髄炎・化膿性骨髄炎、骨端症・ケーラー病・シーバー病、手の痺れ・足の痺れ、足の痛み・かかとの痛み、筋肉痛・筋肉疲労・線維筋痛症、変形性股関節痛・特発性大腿骨頭壊死症、脊椎すべり症、脊椎分離症、坐骨神経症、肩こり、変形性肩関節症、肋間神経痛、手根管症候群、こむら返り、頚椎症性神経根症・頚椎症性脊髄症、バレリュー症候群、ヘパーデン結節・プシャール結節
自分自身や家族・同僚、友人など周りの人について「筋骨格系」と思われる症状に気づいたら一人で悩まず、不二薬局にご相談ください。
■漢方の不二薬局、はりきゅう治療院 藤巻一心堂へのアクセスはこちら
■遠方の方は、オンライン(電話)でご相談いただけます。
筋肉痛・筋肉疲労・線維筋痛症
筋肉痛とは、運動後数時間から数日後に生じる筋肉の痛みのことです。運動直後ではなく、一定の時間が経過してから症状が生じるため、「遅発性筋肉痛」とも呼ばれています。一方、運動中から運動直後に生じる筋肉の痛みは「急性筋肉痛」と呼びますが、一般的には筋肉痛と言えば遅発性筋肉痛のことを指します。遅発性筋肉痛が生じるメカニズムにはさまざまな説がありますが、不慣れな運動や不適切なトレーニングなどによって筋肉が過度に収縮を繰り返すことで、筋肉やその周辺の結合組織にダメージが加わって炎症が生じるためと考えられています。筋肉痛は年齢を問わず誰にでも起こりうる症状ですが、通常は1週間以内に自然とよくなることがほとんどです。しかし、それ以上に痛みが続く場合には線維筋痛症やリウマチ性多発筋痛症など筋肉に炎症を引き起こす病気の可能性もありますので注意が必要です。筋肉痛がどのようなメカニズムで生じるのか、明確には解明されていません。さまざまな説がありますが、運動中や運動直後に急激に発症する「急性筋肉痛」と運動後数時間から数日後に発症する「遅発筋肉症」はそれぞれ以下のようなことが原因と考えられています。急性筋肉痛は重量挙げや短距離走などのように筋肉に負荷がかかりやすい激しい運動によって筋肉内に乳酸や水素イオンなどが蓄積し、筋肉の一部に血流不足が起こることが原因と考えられています。遅発性筋肉痛は不慣れな運動や自身の筋力に合っていない運動を行うことで、筋肉が過度な収縮を繰り返してダメージを受け、炎症を起こすことが原因と考えられています。運動を行うための骨格筋は数千にも及ぶ筋線維が集合して形成されており、その筋線維の束は筋膜と呼ばれる薄い膜で覆われています。しかし、痛みを感じる神経は筋膜に分布するものの筋線維自体には分布していません。このため、筋肉痛は筋線維の炎症によって痛みの原因となるプロスタグランジンなどの物質が放出され、筋膜や周辺の結合組織に分布する神経が痛みを感知しているとされています。筋肉痛は一部の筋肉に鈍い痛みが生じます。収縮方向とは逆方向に引き伸ばされながら力を生じる「伸張性収縮」を行う筋肉に起きやすいのが特徴です。たとえば、階段の上り下りでは、上がるときには大腿の前面にある筋肉は収縮しながら力を発揮しますが、下りるときには引き伸ばされながら力を発揮します。つまり、この部分の筋肉は、階段を下がる動作を繰り返すと筋肉痛が生じやすくなるのです。痛みは通常1週間以内には治まりますが、患部の熱感や腫れを伴うこともあり、発症後数日間は歩行などの日常的な動作に支障が生じることも少なくありません。また、遅発性筋肉痛では運動後から発症までにタイムラグがありますが、このタイムラグには個人差があります。一般的には年齢が上がるごとに筋肉痛の発症が遅れるといわれていますが、あくまで俗説であり、年齢によって筋肉痛の発症やピークに差はないとの報告も多数あります。筋肉痛は発症のきっかけや症状などから容易に診断することが可能であるため、特に検査が必要となることはほとんどありません。しかし、痛みが非常に強く、局所的に発赤や腫れ、熱感などが生じている場合には肉離れなどほかの外傷の可能性があります。また、症状が1週間以上続いている場合には、線維筋痛症など筋肉に炎症を生じる病気の可能性も否定できません。このような場合には、CTやMRIなどの画像検査などで筋肉に何らかの病変がないかを調べ、血液検査で炎症反応や自己抗体などをチェックし、筋生検を行って筋肉の病気を鑑別する検査が行われることもあります。過度の運動によって生じる筋肉痛の場合には、痛みのある筋肉を必要以上に使わないよう安静を保ち、痛みや熱感があるときには十分に冷やすことで自然に症状が改善します。しかし、血行障害が原因と考えられている急性筋肉痛では冷却することで血管が収縮し、かえって症状が悪化することがあるので、患部をホットタオルなどで温めるとよいでしょう。これらの対処を行っても痛みが強い場合には、鎮痛薬の飲み薬や湿布などが使用されます。また、ダメージを受けた筋肉修復効果のあるビタミンB群、ビタミンCなどや良質なたんぱく質を取れるバランスのよい食事が推奨されています。そのほかに筋肉に痛みが現れる病気としてウイルス感染によるもの、薬剤によって引き起こされる横紋筋融解症、筋性疾患などがあります。これらの病気は運動によって生じる筋肉痛とは異なり、専門的な治療を必要とします。そのため、“運動をした覚えがないのに筋肉に痛みを感じる”“なかなか痛みが改善しない”といった場合には一度医療機関を受診するようにしましょう。筋疲労とは、筋肉の使いすぎによって筋肉が疲労し、十分な力を継続して発揮することができなくなる現象を指します。
筋疲労は高強度の運動や持続的な運動後などに見られますが、通常は一時的なもので、十分な休養と栄養によって回復します。しかし、疲労の回復に不可欠な休養と栄養が不十分な場合には、慢性的な疲労状態になることがあります。この状態をオーバートレーニング症候群といい、疲労の積み重ねによってトレーニングの効果や競技成績の低下を招くだけでなく、重症化すると休養期間が長くなるために競技への復帰が難しくなる場合もあります。以前は乳酸が蓄積すると筋疲労が起こると考えられていましたが、この考えは間違いであることが近年の研究で明らかとなりました。筋疲労の原因はいまだ完全に解明されていませんが、最近では乳酸とともに作られる水素イオンの作用によって筋肉のpHが酸性に傾くこと、筋肉を収縮するためのエネルギー源となる筋グリコーゲン(糖の一種)が枯渇することが原因と考えられています。また、筋細胞中にある筋小胞体からカルシウムが放出されることで筋肉が収縮しますが、高強度の運動時にはリン酸が多く作られ、リン酸がカルシウムと結合してカルシウムの放出が阻害されることによって筋疲労が起こるという説もあります。
筋疲労の回復を早めるためには、筋肉の血液の流れをよくすることが大切です。血液の流れをよくする方法として、ストレッチやマッサージ、入浴、交代浴(温水と冷水に交互につける)などがあります。ウォーキングや水中運動といった軽い有酸素運動によって、筋肉の収縮を促すことも筋疲労の回復に効果的とされています。また、リハビリテーションに利用される低周波治療器は、外部から筋肉に電気刺激を加えることで筋肉を動かしたり、血行を促進したりすることで、こりや痛みを緩和するという報告もあります。激しい運動を行うと熱が発生して筋肉の温度が上昇しますが、筋肉の温度が上昇したままだとエネルギーを消費してしまうため、運動直後にアイシングを行い、筋肉の温度を下げることで筋疲労の回復につながる場合もあります。筋肉だけでなく、体全体の疲れを取るには十分な休養と栄養が必要です。栄養においてはバランスのよい食事が重要ですが、ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12など)とビタミンCを多く摂取すると疲労回復が早まるといわれています。また、運動直後に炭水化物や糖類を補給すると筋グリコーゲンの貯蔵量を速やかに回復させることができます。
線維筋痛症
関節や筋肉、腱など全身の広い範囲に、3か月以上も激しい痛みが続く病気のことです。痛みに関連して、不眠やストレス、抑うつ状態を引き起こすこともあります。原因はいまだ分かっていないことから、一般的に病院で行われる検査では異常が見られず正しい診断をすることが難しい病気です。そのため、多くの患者は診断がつくまでに複数の病院を受診し続けるといわれ、潜在(診断がつかない)患者を含めると、日本ではおよそ200万人の患者がいると考えられています。このうち80〜90%は女性で、特に30〜60歳の人によくみられることが特徴です。線維筋痛症の治療では、線維筋痛症の主な症状である痛みを軽くし、日常生活に支障が出ない程度までコントロールするために行われます。患者の症状に合わせて主に薬物療法や非薬物療法が検討されます。確実な原因はこれまでのところ特定されていなく、今後のさらなる研究が必要とされています(2021年10月時点)。ただし、今までの研究から遺伝的な要因や心理・身体的なストレスのほか、手術やけがなどが発症に関与する可能性があることが指摘されています。また、脳における痛みの情報処理の過程に何かしらの障害が存在する可能性もあるといわれています。痛みは、問題が生じている部位からの信号を脳が受け取り、それに脳が呼応する形で“痛み”として危険信号を発信することで発生します。線維筋痛症では、この情報伝達の間で何らかのトラブルが生じていると考えられています。線維筋痛症の主な症状は、慢性的に持続または断続する全身性の痛みです。関節や筋肉、腱など広範囲で生じることもあれば、一部のみに生じることもあります。痛みの程度には個人差があるほか、日によって波があります。特に睡眠不足や精神的なストレス、過度の運動、天候によって左右される傾向があるとされています。また、本来であれば痛みを誘発しないような軽い刺激(髪が触れた程度)であっても、激烈な痛みが生じることがあります。このような痛みによって仕事や家事などが手につかなくなったり、寝ても目が覚めてしまったりするなど、時に日常生活や社会生活が困難になることもあります。また、痛みの症状以外にも、関節リウマチに類似した朝方のこわばりを感じることもあります。慢性的な痛みからストレスが蓄積して抑うつ状態や不眠、慢性的な疲労などを引き起こすこともあります。そのほかに報告されている症状としては、口や目の渇き、手指の腫れ、寝汗、腹痛、下痢、便秘、動悸、呼吸苦、嚥下障害、頭痛、ふるえ、めまい、浮遊感、耳鳴り、難聴、筋力低下、まぶしさなどがあります。線維筋痛症は持病を元に発症することもあります。そのため、上記に挙げた痛みに伴う症状の中には、以下の病気に伴った症状を表現しているものもあります。関節リウマチ、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強直性脊椎炎などがそうです。線維筋痛症では、血液検査や尿検査、画像検査など一般的に病院で行われる検査からは異常を見つけることはできないとされています。したがって、診断のためには問診と身体診察がとても重要です。具体的には、痛みの期間や部位、痛みの程度などを基に評価します。このほか線維筋痛症は別の病気が原因となって起こっていることもあるため、各種原因疾患に対応した検査が行われることもあります。線維筋痛症に対する治療は、患者の症状に合わせて主に薬物療法や非薬物療法が検討されます。薬物療法ではさまざまな治療薬の処方が検討され、治療薬単独で処方されることもあれば、複数の治療薬が処方されることもあります。ただし、治療薬を服用しても痛みが完全に消失しない傾向にあり、あくまで痛みを緩和する目的で用いられることが一般的です。痛みの症状に対して検討される主な治療薬は、抗けいれん薬の“プレガバリン”や“ガバペンチン”、抗うつ薬(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)の “デュロキセチン” “ミルナシプラン”などがあります。ただしガバペンチンやミルナシプランは、日本においては保険適用ではありません。さらに、臨床では慢性疼痛とうつうの適応を取得している抗うつ薬も使用されています。非薬物療法では、鍼治療や運動療法、リハビリテーション、疼痛に対する認知行動療法などが検討されます。医師と相談しながら、自分に合ったものを取り入れることが大切です。
運動療法としては、ヨガや太極拳などが検討されるほか、リハビリテーションでは理学療法士が体に触れて動かす徒手治療や柔軟訓練、バランス訓練などが検討されます。
漢方と鍼灸
筋肉痛・筋肉疲労はあなたに合った漢方、タンパク質、ビタミン、ミネラル、抗酸化力の強いサプリなどの食養生で回復は早くなります。線維筋痛症は、風邪をひいてから発症する方もいてウイルスも否定できません。反応穴でチェックします。また仕事が忙しく極度の疲労からも発症しています。また脳の異常波長も調べていきます。病名がない、治療法が確立していないものほど東洋医学的アプローチは有効だと思います。証にしたがって最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択していきます。もし治療にいきずまっていたらご相談ください。
頚椎症性神経根症・頚椎症性脊髄症
頚椎症性神経根症
頚椎の椎間板の突出や骨棘(骨の出っ張り)が形成されることによって、脊髄から上肢に分岐する神経根が障害を受ける病気です。主な原因は加齢ですが、腕や手の痛み・しびれ・筋力低下が生じ、首を後ろへ反らすと症状が強くなるのが特徴です。頸椎症神経根症は、神経根のいずれかが障害されることで発症します。そのため、症状が現れる部位はどの神経根が障害されたかによって異なります。頚椎症は中高年以上の男性に多く発症し、非常に頻度の高い病気です。首の骨は、7つの頚椎が縦に連なって形成されています。頚椎の内部にある脊柱管という隙間には、脊髄という非常に太い神経が走行しています。脊髄は、頭部から腰にまでつながる中枢神経のひとつです。脊髄からは各頚椎の隙間を通って左右に神経が分岐しており、それぞれ左右の腕や手、指などに分布します。このような脊髄の分岐部を神経根と呼びますが、頚椎症性神経根症はこの神経根が圧迫されることによって発症します。神経根が圧迫される主な原因は、椎間板ヘルニア(椎間板の中身が飛び出す)や加齢による骨棘(椎間板変性の影響で骨が棘状に出っ張る)です。椎間板は、頚椎と頚椎の間の衝撃を和らげるクッションのような役割を持っており、その一部が膨隆すると、神経根を圧迫することがあるのです。頚椎症性神経根症は、神経根が圧迫を受けることで、しびれやいたみなどの感覚障害が生じます。筋力低下をきたすこともあります。どの部位に症状が現れるかは、圧迫を受ける神経根の部位によって決まります。障害されやすい神経根は、第5-6頚椎間から分岐する第6頚神経、第6-7頚椎間から分岐する第7頚神経です。第4-5頚椎間から分岐する第5頚神経では、三角筋・上腕二頭筋に筋力低下、肩関節周囲に感覚障害、肩甲上部・上腕外側には疼痛が生じやすいです。感覚障害がほとんどなく筋力低下のみをきたす例が珍しくありません。第5-6頚椎間から分岐する第6頚神経では、上腕二頭筋・腕橈骨筋に筋力低下、母指に感覚障害、肩甲上部・上腕外側に疼痛が生じやすいです。第6-7頚椎間から分岐する第7頚神経では、上腕三頭筋に筋力低下、中指には感覚障害、肩甲間部・上肢後側には疼痛が生じやすいです。これらの症状は、首を後ろに反らせることで、神経根への圧迫が強くなり増強するのが特徴です。また、神経根の障害部位と症状の出現部位が一致しないこともしばしばあります。症状が進行すると、これらの症状だけでなく、障害を受けた神経が分布する筋肉のみが萎縮し、運動障害を引き起こして日常生活に支障が出るケースもあります。頚椎症性神経根症は、腕や手、指に生じる諸症状や首を後ろに反らせることで症状が増強する、などといった診察によってわかる所見と画像検査によって診断されます。画像検査は、エックス線検査やMRI検査が行われます。エックス線検査では、頚椎間の狭小化や骨棘形成の有無などを評価することができます。簡単に行うことができるため、初診時には第一に行われる画像検査です。一方、MRI検査では、エックス線検査では描出することができない椎間板の変性や神経根圧迫の程度などを観察することが可能です。頚椎症性神経根症は、基本的には頚部の安静(頚椎カラーで頚部を固定することもあります)と鎮痛剤の内服などによる治療でほとんどは数週間~数カ月で症状の改善がみられます。しかし、筋力低下や筋委縮が著しい場合や治療してもなかなか良くならない痛み・しびれがあるような場合には、膨隆した椎間板や骨棘を切除して神経根への圧迫を解除するための手術が行われることもあります。
頚椎症性脊髄症
頚椎(首の骨)が変形し、脊髄が走行する“脊柱管”と呼ばれる隙間が狭くなることで脊髄が圧迫されてさまざまな神経症状を引き起こす病気のことです。主な原因は加齢による頚椎の変化と考えられていますが、日本人は欧米人に比べてもともと脊柱管が狭いため、頚椎症性脊髄症を発症しやすいとされています。この病気を発症すると、脊髄が圧迫されてダメージを受けるため、首や背中、手の痛みやしびれのほか、手がうまく使えない、うまく歩くことができないなど運動機能にも障害が生じるようになります。また、頻尿や失禁など膀胱や直腸の機能が低下することもあり、日常生活に大きな支障を及ぼすケースも少なくありません。治療は軽症な場合では、痛み止めの使用や首を固定する装具(カラーなど)の着用などが行われますが、運動神経麻痺などが現れた場合には脊柱管を拡げる手術が必要になります。頚椎症性脊髄症の主な原因は、加齢によって頚椎、椎間板(頚椎と頚椎の隙間にあるクッション状の組織)、靱帯などの脊柱管を形成する構造の形が変化することです。
具体的には、本来なら弾力性がある椎間板が潰れることで頚椎の外縁が鋭い棘のようになる“骨棘“の形成や、椎間板自体の突出、頚椎を支える靱帯の肥厚などの変化が挙げられます。また、頚椎の後方にある黄色靭帯という靭帯が頸椎進展時(首を後ろに反らしたとき)に、脊柱管内にめくれこむように突出することにより圧迫が生じる場合もあります。これらの変化により、脊柱管が狭くなることで脊髄が圧迫されて手足、膀胱、直腸などにさまざまな症状が引き起こされるのです。多くのケースでは、50歳以降に上述したような加齢に伴う大きな変化が生じるため頚椎症性脊髄症も50歳以降に発症しやすい病気とされています。一方で、もともと脊柱管が狭い方は徐々に頚椎などの変化が始まる30~40歳代で発症するケースもあります。頚椎症性脊髄症は、脊髄が圧迫されてダメージを受けることでさまざまな神経症状が現れます。脊髄へのダメージが軽度な場合は、軽い手足のしびれや感覚の異常などの症状のみが現れますが、ダメージが大きくなると手足の筋力低下、運動麻痺、頻尿や失禁など膀胱と直腸機能低下といった症状が現れるようになります。特に、頚椎症性脊髄症では、箸を使う、ボタンをかける、字を書くといった手指の細かい動作ができない、スムーズな歩行ができないなど特徴的な運動麻痺が生じます。自身でこの病気をチェックできる簡便な方法として10秒テストがあります。このテストは10秒以内に両手でできるだけ早くグーとパーを繰り返す方法で、20回以下であれば、頚椎症性脊髄症の可能性があります。また、特徴的な歩行障害として痙性歩行といわれる症状があります。これは両脚が突っ張って、つま先を引きずるような歩き方で、進行すると躓いて転倒しやすくなります。歩行時や立っているときに足首を背屈すると足がけいれんする“クローヌス”と呼ばれる異常反射が出現することもあります。いずれにしても転倒して頭部をぶつけたりすると、頚椎症性脊髄症が急速に悪化しますので、歩行がおかしいと感じたときは要注意です。頚椎性脊髄症の診断を下すには、手足の神経に何らかの異常が生じていないか調べることが大切です。身体所見から頚椎性脊髄症の発症が疑われるときは、頚椎の変形や脊柱管の広さ、脊髄への圧迫の有無などを評価するため、X線、MRIなどを用いた画像検査が行われます。特にMRIは脊髄への圧迫を描出することができるため、脊椎症性脊髄症の確定診断に必須の検査です。また、MRI検査では脊髄圧迫状態に加えて、脊髄圧迫部位が白っぽくなる輝度変化といわれる所見が重要で、これが見られると、より重症で回復に時間がかかるとされています。頚椎症性脊髄症を発症したとしても、手足の軽いしびれ、感覚の異常などのみが現れる軽症なケースでは、痛み止めや神経のダメージを修復する効果のあるビタミンB12製剤などによる薬物療法、首を固定するコルセットの装着などの保存的な治療が行われます。しかし、日常生活に支障をきたすような痛みやしびれ、運動障害などの症状が現れた場合は脊柱管を拡げるための手術が必要とあります。最近の考え方としては、頚椎症性脊髄症に対する保存的治療は効果が少なく、また症状が顕在化すると急速に症状が進行することが多いため、MRI検査で圧迫が顕著な場合や輝度変化が認められる場合は症状が軽微であっても手術すべきとする意見もあります。頚椎症性脊髄症は加齢による頚椎、椎間板、靱帯などの変化によって生じる病気であるため、発症を確実に予防する方法は残念ながらありません。特に、日本人は脊柱管がもともと狭い傾向にあるため、欧米人よりも頚椎症性脊髄症を発症しやすいとされています。一方で、脊柱管は首を後ろに反らすと狭くなります。手のしびれや痛みなど気になる症状が現れ始めた場合は、できるだけ首を後ろに反らす動作をしないよう注意しましょう。また、転倒などをした際に首に大きな外力がかかると頚椎症性脊髄症の症状が一気に悪化することがありますので注意が必要です。
漢方と鍼灸
頚椎の何番かまた何番と何番の間かは気功で見つけられます。その周りの筋肉が凝っていたり圧痛があれば鍼灸治療もします。また臓腑病の場合、遠隔と言って患部から離れた手足などに針を打つこともあります。また炎症がなければ温熱療法で患部を温め緩めていきます。神経を圧迫している箇所を見つけ最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。西洋医学では難しい場合でも改善する症例は多いのであきらめないでご相談ください。
手の痺れ・足の痺れ
手の痺れ
この頃、手のしびれが強くなってきたような気がする、朝起きると、いつも手がしびれている、手がしびれてスマホを落としたことがあるなどの症状が出たらどうしますか?
特に注意の必要な手のしびれの原因には、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)は脳の血管が破れる事で起こる脳出血、脳の血管が詰まる事で起こる脳梗塞などが原因で起こる手のしびれには注意が必要です。手のしびれの他にも話しにくい、口の周りがしびれる、手足のまひ、頭痛などの症状を伴うことが多く、もしこのような症状が見られる場合にはすぐに受診が必要です。手のしびれが長く続いている場合、頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症があり、頚椎と呼ばれる首の骨の間でクッションの役割をしている椎間板の変形などにより、痛みや手の動かしづらさなどの症状が出る病気です。従来は中高年に多い病気でしたが、最近はPCやスマホを頻繁に使用する若い人でも多くなっています。手根管症候群は指先の感覚や手の運動などにかかわる正中神経に障害が起き、手のしびれ、痛みなどが起こる病気です。妊娠・出産期や更年期の女性に多く見られる傾向があります。そのほか、骨折やスポーツのしすぎなどが引き金になることもあります。夜間から明け方にかけて強い痛みを感じ、手を振ったり、曲げ伸ばしをすることで多少痛みが和らぐなどの症状が特徴的といわれています。多発性硬化症は、複数の神経症状が起こる難病で、手のしびれ、ふらつき、排尿障害、視力や見え方の障害などが比較的多く見られます。症状に個人差が大きいのもこの病気の特徴のひとつです。糖尿病性神経障害は糖尿病になると末梢神経が知らず知らずのうちに傷つき、本来持っている働きが十分できなくなります。そのため、痛みや温度に鈍感になったり、手のしびれが生じる事があります。後縦靭帯骨化症で頚椎の脊髄が圧迫されると、手足のしびれ感(ビリビリ、ジンジンしたり感覚が鈍くなる)や手指の細かい運動がぎこちなくなり、しづらくなります(箸がうまく使えない、ボタンの掛け外しがうまくできない)。ほかにも、足がつっぱってつまづきやすい、階段を上り下りがこわくて困難などの歩行障害も出現してきます。黄色靭帯骨化症でも同様の症状が出現しますが、骨化してくる部位が胸椎に多いので、その場合は足の症状だけで手の症状は出現してきません。後縦靭帯骨化症は頚椎に発症することがもっとも多いとされ、首や肩甲骨の周囲、指先などに痛みやしびれが引き起こされます。症状が進行すると指の動きが悪くなることで細かい作業が困難になったり、痛みやしびれなどの症状が上半身から下半身へ広がって、足に感覚障害や運動障害などが生じたりします。さらに重症化すると歩行困難や排尿・排便の障害が現れることもあります。また、1人で日常の生活をすることが難しくなる場合もあります。胸椎に発症した場合、体幹や下半身に症状が現れやすく、初期症状では足の脱力やしびれを感じます。頚椎よりも発生頻度は低いとされていますが、重症化すると頚椎に発症した場合と同様、立ったり歩いたりすることが困難になったり、排尿や排便の障害が現れたりします。腰椎は頚椎、胸椎ほど発症頻度は高くありません。足のしびれや脱力が生じることが多く、歩行障害にまで至ることは少ないとされています。背骨の骨と骨の間は靭帯で補強されています。バレリュー症候群は、むちうち(頚椎捻挫)を受傷すると、首の痛み以外にも、頭痛、めまい、耳鳴り、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの自律神経失調症状が出ることがあります。フランス人医師のBarréとLiéouが、首の外傷後に自律神経の働きがおかしくなって、これらの自律神経失調症状をきたすと報告しました。それ以来、むちうちに自律神経失調症状が合併した病態は、Barré-Liéou syndrome(バレリュー症候群)と呼ばれています。むちうちでは、頚部への外傷の影響で交感神経性の椎骨神経叢が刺激されることがあります。交感神経が刺激されると、内耳動脈が収縮して前庭迷路の血流低下を来して、耳鳴りやめまいを発症すると言われています。バレリュー症候群は自律神経失調症状をきたしますが、その原因のひとつとして、ストレス、寝不足、疲労などが挙げられます。ストレスと自律神経失調症状は密接に繋がっていると思って差し支えありません。バレリュー症候群では、首の痛み、手の痛みやしびれ、頭痛に加えて、めまい、耳鳴り、目のかすみ、眼精疲労、不眠、全身倦怠、易疲労感、微熱感、動悸などの自律神経失調症状をきたす可能性があります。
足の痺れ
正座をしていたわけでもないのに、足がジンジンしびれる、腰痛がつらくて、足のしびれも気になる、いつも足の裏に何かが張り付いているようで、しびれている。
このような症状があるとき、考えられる原因には、腰椎椎間板ヘルニアで背骨の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が、腰への負担などによって変性し、神経の通っている脊柱管内へ脱出することで神経を圧迫している状態です。腰痛が主な症状ですが、足やお尻の周辺にしびれや痛みを伴うこともあります。背骨の中を走る神経や血管が様々な原因によって圧迫され発症する病気です。足がしびれる、ある程度の距離を歩くと痛みが出るが、椅子にしばらく座っていると治るというような症状が特徴的です。最初は片方の足だけに症状が出て、次第に両足に広がっていくこともあります。脊柱管狭窄症・頚椎症・頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症は、首の骨が年齢とともに変形して、神経などが圧迫されることで起きる病気です。神経が圧迫されている場所によって症状が異なりますが、両手がしびれて細かい動作がしにくくなったり、足がしびれて次第に歩くのに不自由を感じるといった症状が特徴的です。足根管症候群は、足の裏に行く神経が、内くるぶしの部分で圧迫されて起こります。かかとを除く足の裏から足の指にかけてしびれて痛くなり、足の甲や足首より上にはしびれがないことが特徴です。足の裏に何かがついているような感じを伴うこともあります。脳血管障害は一般的に脳卒中と呼ばれている病気です。大きく分けて、脳の血管が破れて出血する脳出血、脳の血管が詰まって起こる脳梗塞があります。いずれの場合も、手足のしびれ、意識がおかしい、呂律が回らないなどの症状がみられることがほとんどです。
発症後すぐに適切な処置をすることが大事な病気のため、おかしいと感じたらただちに受診した方がよいでしょう。糖尿病性神経障害は糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、神経が傷つきさまざまな症状が出ることが知られています。特に足先や手先など細かい部分で起こりやすく、足先のしびれ、冷え、足の裏に紙が張り付いているような感覚がよくある症状です。もし、糖尿病の人でこのような症状が見られた場合、主治医に相談するようにしましょう。閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化などによって血管が狭くなり、おもに足の血管に障害が起きる病気です。足のしびれや痛みのほか、休息をとりながらでないと歩けないなどの症状が現れます。
漢方と鍼灸
各疾患についてはホームページの検索を使ってお調べください。痺れ部位から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。コロナ後遺症でも痺れが残っている方もいます。あきらめないでご相談ください。
手根管症候群
手根管症候群とは、指先の感覚や手の運動において重要な役割をする正中神経が障害される結果、しびれや痛みなどの症状をきたす病気です。手首には“手根管”と呼ばれるトンネル状の形態を示す部分があり、このトンネル内には正中神経や腱などが通っています。なにかしらの原因で正中神経が圧迫されると、それによって症状が誘発されます。手根管症候群では、手首の安静が治療方法の一環であるため生活スタイルの変更が重要になりますが、ときには手術による治療も選択される病気です。手根管症候群は、正中神経が圧迫されることで手のひらの感覚や運動が障害されます。手のひらの付け根には、手首の骨と靱帯に囲まれた手根管というトンネルがあり、この中を複数の腱や正中神経などが通っています。この正中神経は親指から薬指の親指側にかけての感覚や、親指の動きなどをつかさどる神経です。
正中神経が圧迫される原因には、手首の曲げ伸ばしを繰り返し、手首に負担のかかるような動作をすることで、手根管の中を通る腱を覆う膜などが炎症を起こし腫れることがあります。また、手首の運動とは関係なく手根管が狭くなり、手根管症候群を発症することがあります。たとえば、透析(人工的に血液の浄化を行うこと)を長期間受けている人は、体内にアミロイドと呼ばれる物質が蓄積します。このアミロイドが手根管に沈着すると正中神経が圧迫され、手根管症候群を発症することがあります。関節リウマチなどの炎症性疾患では、炎症で腫れた滑膜により正中神経が圧迫されます。さらに、手根管が狭くなくても正中神経そのものが障害を受けることで手根管症候群を発症することがあります。この原因として代表的なものは糖尿病です。そのほか、妊娠や甲状腺疾患なども原因であると考えられます。手根管症候群では、正中神経がつかさどっている小指以外の指先にジンジンするようなしびれを感じ、特に中指の先によくしびれが現れます。就寝中、手根管の内側で腱の膜にむくみが生じて明け方に痛みが発生することが特徴です。正中神経は筋肉を動かす命令も出しているため、手根管症候群が進行すると、物を掴んだりつまんだりする親指とほかの指を向かい合わせにする動作(対立運動)が難しくなります。対立運動は動作としては小さな運動ですが、ボタンをかける、お札を掴むなど日常動作でなくてはならない動作です。そのため、対立運動が障害を受けることは日常生活における大きな障害となります。手根管症候群が疑われる場合、ティネル様サインとファーレンテストという検査が行われます。手首の手のひら側を叩くとしびれ、痛みが指先に響きます。これをティネル様サイン陽性といいます。またファーレンテストでは、体の前で両手の甲を合わせて1分間その状態を保ちます。その間にしびれを感じたり、そのしびれ感が強くなったりする場合に手根管症候群が疑われます。そのほか、手根管症候群の診断に際して神経伝導検査が行われることもあります。神経伝導検査では、手根管症候群で障害を受ける正中神経の分布領域に一致して、神経の伝導速度が遅くなっていることを確認します。また、手根管部位に対する画像検査として、手根部位のMRIやエコーが撮影されることもあります。画像検査を行うことで手根管症候群と同様の症状をきたすそのほかの病気(たとえば、ガングリオン)を見極めるメリットもあり、治療方法の決定のために重要な検査です。手根管症候群の治療は、保存的な治療と手術に分けることができます。手根管症候群では、手首に対する運動負荷が原因であることが多いため、治療方法は装具による手首の固定が基本です。自転車のハンドルを握るような手首を返す(手の甲の側に反る)姿勢を長時間続けると神経が圧迫されるため、手根管症候群を悪化させるような動作を避けることも大切です。軽症のうちはこのような姿勢を避けるだけでも炎症が治まる可能性があります。しかし、1〜2か月のうちに改善がみられない場合は次のステップに進む必要があります。次のステップは注射による薬物治療です。これは手根管の中にステロイド薬を直接注射する治療です。多くの人は1~数回のステロイド注射と手首の安静で症状が治まります。再発を繰り返す場合、あるいは症状が続き進行している場合には手術も検討します。手根管症候群の手術は、内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術や小さく切開して行う直視下手根管開放術があります。
漢方と鍼灸
まずは膜の炎症を取る漢方、神経を圧迫している箇所を緩める漢方、血流を良くする漢方を使います。痺れの箇所から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。