全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus:SLE) とは、自分の免疫システムが誤って自分の正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫性疾患の1つで、全身のさまざまな臓器に炎症や組織障害が生じる病気です。全身性エリテマトーデスでは、この病気で特徴的に認められる検査異常に加えて全身に多様な症状が現れます。指定難病の1つであり、日本全国の患者数は約6~10万人と推定されています。男女比は1:9で、妊娠可能な女性に起こりやすく、女性ホルモンが発症に関与すると考えられています。2020年現在は、治療法の進歩により生命・機能予後がよくなっています。2020年現在、全身性エリテマトーデスの原因はいまだ明らかではありませんが、遺伝素因に環境要因が加わり、複合的な要因で発症する自己免疫疾患と考えられています。自己免疫とは本来、細菌やウイルスから身を守る免疫系が自分自身に対して起こる反応であり、その結果病気に至ると考えられています。細菌やウイルスを攻撃する抗体はBリンパ球によりつくられますが、全身性エリテマトーデスでは、そのBリンパ球の異常な活性化を伴う自己抗体(自分の成分に対する抗体)産生をはじめとする種々の免疫異常が観察されます。患者さんの同胞(兄弟・姉妹)内発症率は一般の人よりも高い傾向にあることから、遺伝的要因も発症に関与していると考えられています。まったく同じ遺伝子を持つ一卵性双生児が2人とも病気を発症する確率は約25~60%と高い数字が報告されています。近年、網羅的に全ての遺伝子を調べる全ゲノム解析がさまざまな病気で行われていますが、全身性エリテマトーデスでは自己免疫異常に関与する約50個の疾患関連遺伝子が同定されています。また、全身性エリテマトーデスの血縁者における全身性エリテマトーデス以外の自己免疫疾患の発症、病気に至らないまでも血液検査での自己抗体陽性率の高さも、こうした遺伝素因と関連すると考えられます。しかし、一卵性双生児の発症一致率が100%でないことから分かるように全身性エリテマトーデスは決して遺伝病ではありません。現時点では遺伝素因に性ホルモン、紫外線、ウイルス感染などの環境要因が関わって発病すると考えるのが妥当といわれています。
全身性エリテマトーデスでは、全身のさまざまな臓器に多様な症状が現れますが、その症状の出現パターンや重症度は患者さんによって異なります。また、治療によって改善しても経過中に病気が悪化すること(再燃)を繰り返します。悪化したときには発熱、全身の倦怠感など全身症状とともに多彩な症状が現れます。以下は、診断につながる特徴的な症状です。皮膚症状のタイプはさまざまですが、蝶形紅斑は全身性エリテマトーデスに特徴的です。蝶形紅斑とは、顔に蝶のような形の発疹が出現する皮膚症状で、鼻筋を蝶の体に見立てると、ちょうど蝶が左右に羽を広げたような形のように盛り上がった紅斑を認めることからこのように名付けられています。このほか、円板状に盛り上がった紅斑、光線過敏症(強い紫外線を浴びた直後に露光部に皮膚症状が出てしまう)や脱毛が半数以上の患者さんに認められ、痛みを伴わない口内炎が生じることもあります。関節痛、関節炎は特に病初期に頻度の高い症状で、左右対称に多関節に生じます。原則として関節リウマチのように変形をきたすことはありません。約半数の全身性エリテマトーデスの患者さんには、ループス腎炎と呼ばれる腎臓の病気が現れます。初期にはたんぱく尿など尿検査の異常だけで特に自覚症状はありませんが、進行に伴って顔や足のむくみが出現するようになります。腎臓に炎症が続くと徐々に腎機能が低下し、適切な治療がなされない場合には腎機能が破綻し、透析療法や腎移植が必要になることもあります。患者さんによっては、胸膜や心膜に炎症が生じる胸膜炎や心膜炎が発症したり、けいれん、精神症状、脳血管障害などの中枢神経が障害されたりすることもあります。特に中枢神経病変は腎病変とともに重症病態とされています。全身性エリテマトーデスの診断には、先の症状に加えて血液検査が必須です。全身性エリテマトーデスの患者さんには、白血球や血小板の減少、貧血が認められます。また、ほぼ全ての患者さんで抗核抗体が陽性となります。疑われる場合には、さらに抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗カルジオリピン抗体などの病気に特徴的な自己抗体を確認します。さらに、診断、重症度の評価のためには尿検査、画像検査、場合によっては病理検査や腰椎穿刺検査で、心臓・腎臓の障害、関節炎、胸膜炎、心膜炎、消化器病変、中枢神経病変など各臓器の障害の程度を調べることも重要で、多くの場合は入院が必要となります。全身性エリテマトーデスの治療は、薬物治療が中心となります。もっとも一般的な治療薬は副腎皮質ステロイドです。副腎皮質ステロイドは長期使用による副作用が懸念されるため、重症度に応じた用量の調節が重要です。特に重症な場合には、副腎皮質ステロイドを点滴で大量投入するパルス療法が行われます。また、副腎皮質ステロイドの効果を高めること、または副腎皮質ステロイドの減量を目的に免疫調整薬、免疫抑制薬、分子標的薬を併せて用いることがあります。特にループス腎炎や中枢神経障害などの重症例に対しては初めから免疫抑制薬を併用し、これを軸として早期に寛解(病状が良好な状態)を目指します。寛解が達成されたら、再燃を防いで寛解を長期にわたって維持すること、副腎皮質ステロイドを最小量または中止することが重要です。
漢方と鍼灸
自己免疫の反応穴、副腎、腎臓、各炎症を起こしている関節、上咽頭の反応穴から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。
※ループス腎炎(https://fuji-kampo.com/archives/2415)も合わせてご覧ください。
過呼吸症候群(過換気症候群)
過換気症候群とは、何らかのきっかけで急に呼吸過多となり、息苦しさや動悸、めまい、頭痛、手足のしびれ、吐き気、失神など、さまざまな症状が現れる病態を指します。“過呼吸症候群”とも呼ばれます。主な原因として精神的不安や極度の緊張などが挙げられ、性格的に几帳面な方や心配性な方に多いといわれています。また若者、特に10~20歳代の女性に多くみられます。まれに意識を失ったり、けいれんを起こしたりすることがありますが、過換気症候群によって命を落とすことはありません。一般的に予後は良好で、30分~1時間程度で症状が治まります。過換気症候群の原因には、心理的要因(不安・緊張・恐怖など)、身体的要因(発熱など)、激しい運動、疲労、睡眠不足などが挙げられます。私たちは、空気を吸い込むことで酸素を体内に取り込み、息を吐くことによって体内でできた二酸化炭素を体外に出しています。この一連のガス交換を“呼吸”といいます。過換気症候群では、上記のような要因が引き金となって過呼吸状態(息を何度も強く吸ったり吐いたりする状態)になります。すると二酸化炭素が過剰に排出されて血液中の二酸化炭素濃度が低下し、呼吸をつかさどる脳の呼吸中枢によって呼吸が抑制されます。その結果、息が吸えない、窒息しそうな息苦しさが生じるようになるのです。また、過呼吸状態が続くと血液中の二酸化炭素濃度が大きく低下し、体がアルカリ性に傾くことでさまざまな症状が現れるようになります。なお、過呼吸症候群は特に病気がなくても起こりますが、心臓や呼吸器の病気、パニック障害などの症状として起こることもあります。上記のような要因をきっかけとして、突然息が吸いにくくなって息苦しくなります。こうなると不安や恐怖から浅くて速い呼吸となり、体内がアルカリ性に傾くことで、動悸、胸痛、めまい、頭痛、ふらつき、手足のしびれ、吐き気などの症状が現れます。こういった症状によってパニック状態に陥ることもあり、死の恐怖を感じることもあります。また、まれに意識を失ったり、けいれんを起こしたりすることもありますが命の危険はありません。症状が出てくると不安や恐怖を感じて、浅く速い呼吸を続け、その結果症状がさらに悪化するという悪循環に陥ります。しかし、ゆっくりとしたリズムで呼吸することで症状が治まってくるため、発作時には患者本人も周囲も落ち着いて対応することが大切です。発作時に典型的な症状がある場合に過換気症候群を疑います。また、発作時に動脈血液の酸素と二酸化炭素の濃度を測ることで診断がつきます。しかし、過換気症候群は心臓や呼吸器の病気、パニック障害などの症状として起こることもあります。そのため、このような病気を除外する目的で、胸部X線検査や心電図などの検査が行われる場合もあります。過換気症候群は心臓や呼吸器の病気、パニック障害などによって起こることもあります。このような病気が背景にある場合には、その病気に対する治療が必要となります。特に病気がない場合には、発作を起こすきっかけを作らないよう、日頃から体調を整えておくことが大切です。不安が強い患者に対して抗不安薬などの投薬が行われる場合や、カウンセリング、リラクゼーションが効果的な場合もあります。発作時には不安や恐怖から悪循環に陥りがちですが、一般的には30分~1時間で症状が治まり、命に関わることはありません。そのため、発作が起こったときには周りの人は患者本人を落ち着かせ、ゆっくりと呼吸するように声をかけましょう。なお、発作時の対応として、以前は口に袋を当てて吐いた息を再度吸わせるペーパーバック法が有効だといわれていました。しかし、この方法では酸素が不足したり、二酸化炭素が増えすぎたりして窒息死の危険があるため、最近では推奨されていません。
漢方と鍼灸
精神不安や極度の緊張が続き、それを受ける側の疲労や不規則な生活、睡眠不足、栄養不足など抵抗力が弱っている時と重なって引き起こされるようですね。10~20代女性という敏感な時期ですからなおさらですね。自律神経の反応穴、生理の反応穴から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。パニック障害で使われる漢方も選択肢の1つです。
【症例】突然動悸がして息がしにくくなり死にそうになる症状でご相談。漢方を6か月服用 発作は起きなくなったが怖いのでしばらくは服用していた。
・半夏厚朴湯(半夏・厚朴・紫蘇葉・茯苓・生姜)『金匱要略』
咽喉部に炙った肉片がくっついているように感じる方に使います。厚朴は緊張を緩め、半夏は鎮静作用があります。紫蘇葉は気分を晴れやかにします。
・苓桂朮甘湯(茯苓・桂枝・甘草・白朮)『傷寒論』
茯苓・白朮・桂枝で水分を血中に吸収して排出し、桂枝で脳の血行を良くし、茯苓・桂枝・甘草で心悸亢進を鎮静します。
・桂枝甘草竜骨牡蛎湯(桂枝・甘草・竜骨・牡蛎)『傷寒論』
・茯苓補心湯(茯苓・人参・白朮・当帰・地黄・酸棗仁・麦門冬・芍薬・陳皮・黄連・甘草・辰砂・大棗・鳥梅・浮麦)『万病回春』
・奔豚湯(甘草・川芎・当帰・半夏・黄芩・葛根・芍薬・生姜・李根皮)『金匱要略』
など(薬局製剤以外も含む)
脂質異常症
脂質異常症とは、血液中の脂肪分(コレステロールや中性脂肪)が多すぎる、あるいは少なすぎる状態をいいます。従来は高脂血症と呼ばれていた病態も脂質異常症の一部に含まれます(高脂血症という用語は病態を正しく表していないとして、2007年に日本動脈硬化学会が診断名を「脂質異常症」に改訂しました)。血液中の中性脂肪TGやLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が基準値よりも高すぎても、逆にHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)の値が低すぎても、動脈硬化を引き起こすリスク因子になります。このため、脂質異常症は、心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化によって発症する可能性のある血管系の病気の引きがねになると考えられています。脂質異常症の多くは生活習慣によって起こります。多くは運動不足や偏った食事、肥満などが原因で成人以降に発症します。生まれながらの体質的な要因が関係することもあり、他の病気と関係なく発症するものを原発性脂質異常症といいます。遺伝子の異常が原因で血液中にコレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまう病気に家族性高コレステロール血症などがあります。他の病気や服用している薬の影響で、血液中の脂質のバランスが悪くなることによって脂質異常症を発症することがあります。他の病気や服用している薬など、なんらかの原因があるものを二次性(続発性)脂質異常症といいます。脂質異常症と関係がある病気には、糖尿病やその他の内分泌疾患(クッシング症候群・先端巨大症など)のほか、甲状腺機能低下症・肝胆道系疾患・腎臓病(ネフローゼ症候群)などが知られています。また、原因となる薬剤として、ステロイドホルモン、β遮断薬、経口避妊薬などが知られています。脂質異常症は基本的に症状が現れないことが多いです。原発性高脂血症や高コレステロール血症では皮膚に特徴的な黄色腫を生じることがあります。また、眼球に角膜輪と呼ばれる白い輪がみられたり、高カイロミクロン血症による肝腫大がみられたりすることもあります。脂質異常症をそのまま放置していると、動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気を起こしやすくなります。また、中性脂肪TGの値が高いと、冠動脈疾患・脳梗塞・脂肪肝・急性膵炎などのリスクが高まります。
脂質異常症の診断では、空腹時の血液中に含まれる脂質の値が重要になります。そのため、血液検査を行い、LDLとHDLの2つのコレステロールの値と、中性脂肪の値を測定します。
LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症**
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
TGトリグリセライド 150mg/dL以上(空腹時採血*) 高トリグリセライド血症
175mg/dL以上(随時採血*)
中性脂肪(トリグリセライド:TG)は、グリセロールに脂肪酸がエステル結合したものです。TGの値は食事の時間や内容、アルコール摂取の影響を受けるため、原則として10~12時間以上絶食し、空腹時に採血を行います。女性ホルモンとして知られているエストロゲンには、LDLコレステロールの分解と排泄を助ける、HDLコレステロールの合成を促すという作用があります。このため、閉経によってエストロゲンが低下するとコレステロール値が高くなることがあります。しかし、「閉経後の女性の高LDLコレステロールが動脈硬化のリスクとなるのは糖尿病や喫煙習慣などの要因が重なったときであり、もしこれらの要因がなく、LDLコレステロールが高いだけなら、ただちに動脈硬化そのものや動脈硬化による心血管のリスクであるとはいえない」という見解もあります。女性は男性に比べて動脈硬化性疾患の発症リスクが低く、必ずしも薬物治療が必要な場合が多いわけではありません。食事や運動療法の効果が期待でき、しかも治療に取り組む意欲が比較的高いので、生活習慣の改善を最大限に図っていくことが大切です。ただし、高リスク病態が存在する場合はこの限りではありません。脂質異常症の他にも糖尿病や高血圧などの危険因子(リスクファクター)をもっていると、それだけ動脈硬化になる危険性が高まることが知られています。また、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患になった経験がある人は、再発も心配されます。そのため、脂質異常症の他には何も異常がない方に比べると、さらにコレステロール値を下げなくてはなりません。健康診断のときに計測されるのは、食事から取り込まれた中性脂肪(外因性トリグリセリド)ではなく、余分なエネルギーとしていったん肝臓に取り込まれた脂肪が再び血液中に分泌された中性脂肪(内因性トリグリセリド)の値になります。したがって、健康診断の前日は20時以降の食事や飲酒を制限し、当日の朝食を抜いて受診する(検査前10~14時間は絶食にする)必要があります。要再検査になるケースは、うっかり検査当日に朝食を食べてしまい、外因性の中性脂肪により検査値が高くなった場合が多いようです。
脂質異常症の治療は、生活習慣が原因である場合には生活習慣の改善が基本となります。それだけでは十分な改善がみられない場合は薬物治療が考慮されます。生活習慣の改善には、禁煙、食生活の内容を見直し、食べ過ぎをやめること、お酒の飲み過ぎを控えること、さらにウオーキングや水泳、ラジオ体操などの有酸素運動を取り入れることが有効です。薬物治療には大きく2種類の薬があります。1つは、コレステロールの値を下げる薬で、代表例はスタチン系薬とよばれるものです。もう1つは中性脂肪の値を下げる薬で、代表例はフィブラート系薬やエイコサペンタエン酸とよばれるものです。コレステロール値が高くなる要因となる糖尿病や腎臓の病気がある場合には、原因となる病気の治療も併せて行われます。
脂質異常症を予防するためには食生活などの生活習慣に配慮することが大切です。肉や卵などの動物性脂肪、お菓子やアルコールなどの摂りすぎを控えるようにしましょう。一方、野菜などの食物繊維や青魚、大豆製品は血清脂質値を下げ、動脈硬化の予防にもつながるため、積極的に摂取するようにしましょう。また、食生活以外の点では適度な運動が効果的です。体を動かすことにより体重管理に効果が期待できるほか、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の増加にも役立ちます。
高LDLコレステロール血症では、コレステロールと飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身・内臓・皮、乳製品、卵黄、トランス脂肪酸を含む菓子類、加工食品を控える。食物繊維と植物ステロールを含む未精製穀類、大豆製品、海藻、野菜類を多めに摂る。
高トリグリセリド(TG)血症では、糖質を多く含む菓子類、飲料、穀類の摂取を減らし、アルコールを控える。n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚類を多めに摂る。
先に食物繊維を食べてから炭水化物や脂肪食を摂った方がいいのは、ほとんど消化吸収されないためエネルギー源にはなりませんし、むしろコレステロールの吸収を抑える働きがあるからです。糖質にはパン類・麺類・ご飯・イモなどに含まれるデンプンをはじめ、お菓子などに含まれているショ糖(砂糖)、果実に多く含まれているブドウ糖や果糖などがあり、いずれも肝臓で脂肪酸に作り変えられ、中性脂肪の原料となります。糖質のなかで特に注意が必要なものは、デンプンなどに比べて体内での分解吸収が早く、中性脂肪に合成されやすい砂糖・果糖・ブドウ糖です。砂糖は1日50g以上摂取すると、中性脂肪の数値が上昇することがわかっています。清涼飲料(スポーツドリンクも含む)や炭酸飲料、ジュース類は500mlのペットボトル1本に砂糖が20~50gも入っていますので、これらを飲む機会が増える夏場は気をつけましょう。またカロリーの多い食品と、コレステロールの多い食品は必ずしも同じではありませんので注意が必要です。お酒に含まれている糖分によっても中性脂肪は増えますが、アルコールは肝臓で水と二酸化炭素に分解され、その分解過程で中性脂肪の合成を促す酵素が発生し、そのため中性脂肪が増えます。逆に中性脂肪を下げるために積極的に食べたいのが、アジ・イワシ・サバ・サンマ・マグロなどの青魚です。これら青魚の脂には、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。ただしプリン体も多く含まれているので尿酸値が高い人は注意が必要です。このEPAとDHAには、肝臓での中性脂肪の合成を抑えて、血中の中性脂肪を減らす作用があります。そのうえ、血液を固める働きのある血小板が凝集するのを防ぐため、心筋梗塞や脳梗塞の引き金となる血栓ができるのを予防してくれます。
漢方と鍼灸
脂質異常の反応穴、肝臓の反応穴から最適な漢方、食養生たサプリ、ツボをお選びして治療していきます。
【症例】LDL232 HDL33 TG139
漢方と食養生で6か月
LDL156 HDL47 TG102
【症例】LDL189 HDL43 TG237
漢方と食養生で5か月
LDL138 HDL59 TG180
※症例多数
糖尿病
糖尿病とは、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気のことです。
糖尿病診断基準(2023)
●“糖尿病型”の判定基準:以下のいずれか 1 つを認めた場合
① 血糖値 空腹時血糖値≧126mg/dl
② 血糖値 75g 経口負荷試験(OGTT)2 時間値≧200mg/dl
③ 随時血糖値 ≧200mg/dl 以上
④ HbA1c≧6.5%
●糖尿病の診断
1. 上記の血糖値(➀②③のいずれか)と④HbA1c が同一採血で“糖尿病型”を示せば、初回検査だけで「糖尿病」と診断。血糖値と HbA1c の同時測定を推奨。
2. 血糖値の➀②③いずれかが“糖尿病型”を示し、かつ以下のいずれかを満たす場合には、初回検査だけで「糖尿病」と診断。血糖値が“糖尿病型”に加えて、糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)または確実な糖尿病網膜症。
3. ➀~④のいずれかが“糖尿病型”と認められた場合、別の日(なるべく 1 ヶ月以内)の再検査で再び血糖値➀から③の“糖尿病型”が確認されれば「糖尿病」と診断。HbA1c のみ反復検査では糖尿病と診断できない。
4. “糖尿病型”のいずれかを認めるが「糖尿病」と確定できない場合は、「糖尿病疑い」として 3-6 か月以内に「血糖値と HbA1c と同時に測定」して再判定する。
私たちは食事をすると血糖値が上がります。そして、血糖値の上昇が感知されると膵臓から“インスリン”と呼ばれるホルモンが分泌され、肝臓や筋肉ではブドウ糖を“グリコーゲン”と呼ばれるエネルギー源に換え、脂肪組織では“脂肪”として、蓄える仕組みが作動します。この仕組みが備わっているため、私たちの血糖値は飲食しても一定に保たれているのです。一方、糖尿病ではインスリンの分泌量が減少したり、インスリンのはたらきが弱くなったりするため、血糖値が高い状態が続くようになります。この状態が長期間に及ぶと全身の血管に障害が起こるようになり、重症化すると失明・腎不全・足の切断などQOL(生活の質)を大きく低減させるような合併症や心筋梗塞や脳梗塞などの病気を引き起こすことがあります。日本では1,000万人ほどが糖尿病に罹患していると推定されており、注意すべき病気のひとつです。しかし、昨今の糖尿病の負の面を強調した情報が社会における糖尿病に対する偏見を助長してしまった面は否めません。誤った情報により糖尿病に対する負のイメージが定着してしまったことから、周囲に病気のことを話せない、幼稚園や保育園の入園を断られる、生活に必要なサービスが受けられないといった事例も報告されています。このような、社会の糖尿病に対するスティグマ(負の烙印)に多くの患者がストレスを感じています。この現状を受けて日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、糖尿病をもつ人が病気を隠したりせずに安心して生活を送れる社会の実現を目指す活動(アドボカシー活動)を始めました。アドボカシー活動では、一般の人に向けて糖尿病に関する正しい知識を広めるために、新聞へ意見広告を掲載するなど偏見や差別をなくすための活動を行っています。糖尿病は、治療の継続により良好な血糖コントロールができていれば普通の人と変わらない健康な生活を送ることができます。糖尿病の治療には周囲の病気や治療への正しい理解やサポートが得られる環境づくりも大切です。糖尿病の原因は、血糖値を降下させる作用のある“インスリン”と呼ばれるホルモンの分泌量が低下したり、はたらきが悪くなったりすることです。インスリンの分泌量やはたらきに異常が生じる原因としてもっとも多いのは、高脂肪・高カロリー・食物繊維不足などの食生活や、運動不足、ストレス、睡眠不足、喫煙習慣などの生活習慣の乱れが挙げられます。このような生活習慣の乱れによる糖尿病を“2型糖尿病”と呼び、全ての糖尿病患者の9割以上を占めるとされています。一方、糖尿病の中には免疫のはたらきの異常により、インスリンを産生する膵臓の細胞が破壊されることで発症するタイプのものもあります。このようなタイプの糖尿病は“1型糖尿病”と呼ばれ、生活習慣の乱れなどは発症に関与しないものの、明確な発症メカニズムは解明されていません。そのほか、妊娠をきっかけに発症する糖尿病、膵炎・膵がんなど膵臓の病気で発症する糖尿病などもあります。糖尿病の根本的な病態は“慢性的に高血糖が続く”ことです。そのため、中には糖尿病を発症すると、喉の渇き、尿量の増加、倦怠感、体重減少などが現れるケースもありますが、多くは自覚症状がないとされています。一方、血糖値が高い状態が続くと、血液中に多量に存在するブドウ糖が血管を傷つけることが分かっています。その結果、目や腎臓、神経などにも十分な血液が流れにくくなることで網膜症、腎不全、末梢神経障害などいわゆる“三大合併症”を引き起こすことも多々あります。そして最終的には、失明、人工透析、足の切断など、日常生活に極めて大きな支障をきたす状態に陥る可能性も生じます。また、心筋梗塞や脳卒中などの病気の発症リスクも高くなります。そのほかにも糖尿病を発症すると免疫力が低下していくため、風邪をはじめとした感染症にかかりやすくなり、高齢者では肺炎や尿路感染症などが重症化して命に関わる状態に陥るケースも少なくありません。血液検査では血糖値や過去1~2か月の血糖値の状態を反映するHbA1c値を調べるほか、インスリンの分泌能力などを評価することも可能です。また、1型糖尿病が疑われる場合は、GAD抗体などの“抗体”と呼ばれるたんぱく質の有無を調べる検査も行われます。経口ブドウ糖負荷試験では、早朝の空腹時に一定量の糖分が含まれた飲料を摂取し、摂取前後の血糖値の変化を調べる検査です。糖尿病を発症すると空腹時の血糖値が高くなったり、摂取後の血糖値の下がりが悪くなったりするといった特徴的な結果が見られるため、糖尿病の確定診断に用いられる検査のひとつとなっています。糖尿病が疑われるときや糖尿病と診断された場合は、網膜の状態を調べる眼底検査、腎機能検査、腱反射、動脈硬化の程度を調べる検査などが必要に応じて行われます。糖尿病と診断された場合は次のような治療が行われます。
生活習慣の乱れが発症に大きく関与している2型糖尿病では、第一に原因となる食生活や運動習慣の乱れを正す生活指導が行われます。発見された時点で早急な治療を要する重症な場合を除き、1~2か月ほど生活改善を行ったうえで薬物療法など次のステップの治療に進むか否かを判断するのが一般的です。生活改善などを行っても血糖値が十分に下がらない場合は、血糖値を下げる薬による薬物療法が行われます。血糖値を下げる薬にはいくつかの種類の飲み薬や注射薬(GLP-1受容体作動薬)があり、自身に合うタイプや量を決めていきます。薬物療法の効果が十分にない2型糖尿病、インスリンの分泌量が大幅に低下している1型糖尿病、胎児への影響により血糖値を下げる薬を使用できない妊娠糖尿病では、人工的にインスリンを補う“インスリン治療”が行われます。インスリンの投与は“自己注射”によって行われ、治療のほかにも厳密な食事管理なども必要です。上でも述べたとおり糖尿病にはいくつかのタイプがあり、免疫の異常による1型糖尿病を予防する方法は現時点ではないとされています。一方、生活習慣が関わる2型糖尿病や妊娠糖尿病は問題となる生活を改善することで発症や悪化をある程度予防することが可能です。規則正しい食生活、運動を心がけ、ストレスや喫煙習慣など生活上の習慣に注意するようにしましょう。
漢方と鍼灸
美味しい物が好きな方が多いですね。遺伝性もありますがなかなか食養生がうまくいきません。口渇が激しい、頻尿、体重減少、免疫低下による感染症になりやすい、神経障害に痛みや神経痛、血流障害による循環器疾患、眼科疾患など多岐に及ぶので気を付けていきたいですね。食事は朝多目、夕は軽めが基本。アルカリ性食品、根菜類、種子類、海産物をバランスよく食べましょう。膵臓、糖尿病の反応穴、症状が出ている箇所から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。
【症例】HbA1c8.3 漢方と食養生を6か月、5.9まで改善 手の痺れも消失
【症例】HbA1c7.8 漢方と食養生を3か月、6.2まで改善 後頭部の痛み消失
【症例】HbA1c8.0 漢方と食養生を3か月、6.0まで改善 血圧も下がる
【症例】HbA1c7.5 漢方と食養生を5か月、5.9まで改善 眼圧も下がる
※症例多数
煎じ
・牛車腎気丸(附子・茯苓・沢瀉・山茱萸・山薬・車前子・牡丹皮・桂皮・牛膝・熟地黄)『厳氏済生方』
・五苓散(猪苓・沢瀉・白朮・茯苓・桂枝)『傷寒論』
・柴胡桂枝乾姜湯(柴胡・桂枝・括蔞根・黄芩・牡蛎・乾姜・甘草)『傷寒論』
・滋陰降火湯(甘草・当帰・芍薬・地黄・天門冬・麦門冬・白朮・陳皮・黄柏・知母・生姜・大棗・竹茹)『万病回春』
・小承気湯(大黄・厚朴・枳実)『傷寒論』
・四苓湯(茯苓・沢瀉・猪苓・白朮)『温疫論』
・清心蓮子飲(蓮肉・茯苓・黄耆・人参・麦門冬・地骨皮・黄芩・甘草・車前子)『太平恵民和剤局方』
・大柴胡湯(柴胡・黄芩・半夏・生姜・芍薬・枳実・大棗・大黄)『傷寒論』
・竹葉石膏湯(竹葉・石膏・半夏・麦門冬・人参・甘草・粳米)『傷寒論』
・八味地黄丸(地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂枝・附子)『金匱要略』
・白虎加人参湯(知母・粳米・石膏・甘草・人参)『傷寒論』
・白虎湯(石膏・知母・甘草・粳米)『傷寒論』
・六味丸(地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・牡丹皮・茯苓)『小児薬証直訣』
・右帰飲(熟地黄・山薬・山茱萸・枸杞子・甘草・杜仲・桂皮・炮附子)『景岳全書』
・右帰丸(熟地黄・山薬・山茱萸・枸杞子・阿膠・莬絲子・杜仲・当帰・桂皮・炮附子)『景岳全書』
・黄連地黄湯(黄連・地黄・括蔞根・五味子・当帰・人参・葛根・茯苓・麦門冬・甘草・生姜・大棗・竹葉)『万病回春』
・加味八正散(沢瀉・木通・車前子・萹蓄・瞿麦子・黄芩・山梔子・厚朴・滑石・大黄・燈心草)『出典不明』
・括蔞瞿麦丸料(括蔞根・茯苓・山薬・附子・瞿麦子)『金匱要略』
・括蔞牡蛎散(括蔞根、牡蛎)『金匱要略』
・左帰飲(熟地黄・山薬・枸杞子・炙甘草・茯苓・山茱萸)『景岳全書』
・左帰丸(熟地黄・山薬・枸杞子・山茱萸・牛膝・莬絲子・阿膠)『景岳全書』
・滋陰降火湯(当帰・川芎・芍薬・黄柏・知母・熟地黄・括蔞根・甘草・玄参・桔梗・竹茹)『寿世保元』
・七味白朮散(人参・茯苓・白朮・藿香・木香・甘草・葛根)『小児薬証直訣』
・生津甘露飲(升麻・防風・甘草・防已・地黄・当帰・柴胡・姜活・炙甘草・黄耆・知母・黄芩・竜胆・石膏・黄柏・紅花・桃仁・杏仁)『李東垣』
・銭氏白朮散(茯苓・人参・白朮・藿香・木香・甘草・葛根)『太平恵民和剤局方』
・知柏六味丸料(山薬・牡丹皮・茯苓・山茱萸・沢瀉・黄柏・地黄・知母)『景岳全書』
・天王補心丹(熟地黄・人参・茯苓・遠志・石菖蒲・玄参・柏子仁・桔梗・天門冬・丹参・酸棗仁・甘草・麦門冬・百部・杜仲・茯苓・当帰・五味子)『世医得効方』
・天王補心丹(人参・五味子・当帰・天門冬・麦門冬・柏子仁・酸棗仁・玄参・丹参・茯苓・桔梗・遠志・地黄)『万病回春』
・当帰補血湯(黄耆・当帰)『蘭室秘蔵』
・麦門冬飲子(麦門冬・括蔞根・知母・甘草・熟地黄・人参・葛根・茯苓・竹葉・五味子)『宣明論』
など(薬局製剤以外も含む)
網膜色素変性症
網膜色素変性とは、目の中の網膜に異常が起こる遺伝性の病気です。厚生労働省により難病に指定されており、国内での発症頻度は4,000〜8,000人に1人程度と報告されています。網膜は目の内側に位置し、目に入る光を電気信号に変えて脳に伝える役割があります。目に入った光は角膜や水晶体、硝子体を通って網膜に到達し、視細胞によって電気信号に変換され、視神経を通じて脳へと伝わります。この一連の流れにより、私たちは初めて光を感じることができます。視細胞は、大きく2つに分けられ、視野の広さや暗いところでの見え方に関わる杆体細胞と、色覚や視力に関わる錐体細胞があります。網膜色素変性では、発症早期には杆体細胞が障害され暗いところで物が見えにくくなったり、見える範囲が狭くなったりします。病状が進行すると、錐体細胞が障害され視力の低下や色覚異常が現れます。網膜色素変性には遺伝性が疑われるケースがあります。一方で、家系内に患者がいない孤発型も多く見受けられます。いずれにしても、ほとんどのケースは遺伝子に何らかの異常があることで発症すると考えられています。網膜色素変性の一般的な症状として、暗いところで物が見えにくい“夜盲”、視野が狭くなる“視野狭窄”、視力低下が挙げられます。発症初期には、杆体細胞の障害に伴い夜盲の症状が生じるケースが多くみられます。続いて視野狭窄によって見える範囲が狭くなるなどの症状が現れ、さらに病状が進行して錐体細胞が障害されると、視力の低下や色覚異常の症状がみられます。しかし、進行の程度には個人差があるため、発症初期から視力が低下するケースや、数年から数十年かけて進行するケース、生涯において生活に必要な視機能が保たれるケースもあります。遺伝性の疾患は、基本的にひとつの病気に対してひとつの遺伝子異常が原因となります。一方、網膜色素変性は多数の種類の遺伝子が原因となって同じ「網膜色素変性」という病気を生み出すため、進行程度もまちまちであり、原因の特定も困難であれば経過の予測も容易ではありません。また遺伝性疾患の場合、遺伝子治療は必ず検討される方法ですが、網膜色素変性の場合は原因遺伝子がたくさんあるため、遺伝子治療のアプローチがしづらいという難点があります。網膜は光を電気に変える働きを持ちます。光が網膜に当たってから電気信号になるまでに、たくさんの蛋白質が絡んできます。関与する蛋白質が多いほど、勿論そこに関わる遺伝子も多くなります。どの遺伝子が異常を起こしても網膜色素変性を発症するため、たくさんの遺伝子が原因になりうるのだと考えられています。人によって網膜色素変性の進行速度は全く異なり、進行が速い場合は、物心ついたときから見えづらい方もいます。一方、徐々に進行し、60代くらいになってから顕著に見え方が悪くなり、年齢を考えて白内障を疑い、検査してみたら網膜色素変性であったというケースもあります。これだけ進行速度の差が出る理由はよくわかっていません。同じ遺伝子の異常でも進行速度が異なる場合がありますが、同じ遺伝子なのに何が影響しているのかも現在、原因は不明です。とはいえ、基本的に網膜色素変性は緩やかに進行する疾患であり、突然目が見えなくなるようなことはありません。根治治療を急ぐよりは、進行スピードを少しでも緩めるような治療が望まれます。網膜色素変性の初期症状は夜盲や羞明、視野狭窄です。杆体細胞が障害されるため、夜盲が初発症状であることが多いといわれています。その後、病状が進行すると視力低下や色覚異常が生じます。羞明とは夜盲(やもう:暗いところで目が見えづらい)の真逆の状態であり、「眩しくないと感じるレベルが狭まる」のが特徴です。網膜色素変性の患者さんは夜盲となる暗さの程度が通常の方よりも低い(通常の方が暗いと感じないレベルでも暗く、見えづらい)のですが、これに羞明の症状を伴うと、暗いところでは見えず、明るいところでも眩しくて見えないということになります。網膜色素変性の患者さんは白内障や緑内障を合併しやすいことが知られています。しかし、白内障の合併が多い理由はよくわかっていません。白内障を合併した場合、白内障手術を受けていただくことがあります。ただし、網膜色素変性の合併症としての白内障手術は、網膜色素変性に伴う白内障手術をしっかりとやっている施設で受けることをおすすめしています。そういった施設は網膜色素変性の合併症対策も経験豊富だからです。
診断では、眼底検査や視野検査、網膜電図検査、蛍光眼底検査、眼底自発蛍光検査などが行われます。眼底検査は網膜や視神経の状態を調べる検査です。瞳孔を散大させる点眼薬を投与した後、眼底カメラなどの機器を使って眼底の状態を撮影します。視野検査は、物が見える範囲を調べるための検査です。片目ずつ正面の固視点を見た状態で、見える範囲に光指標があるかどうかを確認します。網膜電図検査は、網膜色素変性では、発症初期から電気信号が微弱になるため、網膜が正常にはたらいているかどうかを検査します。角膜に電極を乗せ、目に光を当てたときに網膜からの電気信号を確認します。蛍光眼底検査では、網膜の萎縮の程度などを評価する検査です。造影剤を腕から点滴で投与しながら眼底カメラで撮影します。眼底自発蛍光検査は、専用の撮影装置を使い、造影剤を投与せずに網膜の状態を調べる検査です。白内障の合併により視力の低下が悪化している場合は、手術で濁った水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入しますが、網膜色素変性に対する根本的な治療方法は確立されていません。しかし、治療法の開発に向けて遺伝子治療や人工網膜、網膜移植などの研究が世界中で進められており、今後の実用化が期待されています。中でも遺伝子治療は、原因遺伝子の機能を補う新しい治療法です。薬剤を目に直接注射することで、暗いところで見えにくいなどの症状の改善が期待できます。このほか、現在はそれぞれの患者の症状に応じて現在残されている視機能を生かし、社会生活を送りやすくするための“ロービジョンケア”が中心に行われます。ロービジョンケアの主な取り組みとしては、遮光眼鏡で眩しさを和らげたり、ルーペを使って文字を読みやすくしたりといったことなどが挙げられます。
漢方と鍼灸
水晶体、網膜の異常細胞に働きかける漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し少しでも進行を遅らせる方向でやっていきます。
煎じ
・滋腎明目湯(当帰・川芎・芍薬・地黄・熟地黄・桔梗・人参・山梔子・黄連・白芷・蔓荊子・菊花・甘草・細茶・燈心草)『万病回春』
・益気聡明湯(黄耆・甘草・人参・升麻・葛根・蔓荊子・芍薬・黄柏)『東垣試効方』
・還晴丸料(川芎・・蒺蔾子・白朮・木賊・姜活・莬絲子・熟地黄・甘草)『証治準縄』
・決明散(決明子・菊花・防風・車前子・川芎・細辛・山梔子・蔓荊子・玄参・茯苓・山薬・地黄)『証治準縄』
・固本還晴丸(天門冬・麦門冬・地黄・熟地黄・茯苓・枸杞子・人参・山薬・牛膝・石斛・草決明・杏仁・莬絲子・菊花・枳殻・羚羊角・犀角・青葙子・防風・五味子・炙甘草・蒺蔾子・川芎・黄連)『証治準縄』
・神効黄耆湯(蔓荊子・陳皮・人参・炙甘草・芍薬・黄耆)『蘭室秘蔵』
など(薬局製剤以外も含む)
再生不良性貧血
再生不良性貧血とは、造血幹細胞と呼ばれる血液細胞の減少により、白血球、赤血球、血小板といった血液成分が減少する病気です。白血球の減少による感染症、赤血球の減少による貧血症状、血小板の減少によるあざや出血など、さまざまな症状がみられます。再生不良性貧血には先天性と後天性があり、ほとんどが後天性です。また、その中でも原因不明の“特発性再生不良性貧血”が90%を占めるといわれています。先天性の再生不良性貧血はファンコニ貧血と呼ばれることもあります。国の指定難病の1つで、年間100万人あたり約8人が再生不良性貧血と診断されています。男女比は同じくらいで、どちらも10~20歳代と70~80歳代で頻度が高くなります。再生不良性貧血は、造血幹細胞が障害され、減少することによって起こります。造血幹細胞とは赤血球、好中球、血小板といった血液細胞の元となる細胞のことで、通常は骨髄中にあり、これらの血液細胞を補給し続けています。造血幹細胞が障害される原因はいくつかあり、生まれつきの染色体の異常によって起こる場合があります(ファンコニ貧血)。後天性の場合は薬剤・薬物、放射線などが原因になることがありますが(二次性再生不良性貧血)、多くは原因不明です(特発性再生不良性貧血)。特発性再生不良性貧血の多くは、免疫細胞が自分自身の細胞を攻撃する自己免疫的な異常によって起こるのではないかと考えられています。再生不良性貧血では赤血球、好中球、血小板が減少することによって、さまざまな症状が現れます。赤血球減少による症状では赤血球による酸素運搬が障害されるため、全身のさまざまな臓器で酸素が欠乏します。脳の酸素欠乏によるめまい、頭痛、筋肉の酸素欠乏による倦怠感、疲れ、心臓の酸素不足による胸の痛みが現れることがあります。また酸素不足を解消するために、息切れや動悸などがみられることもあります。好中球とは、白血球のうち細菌を殺す役割を持つ細胞です。好中球が減ることで細菌感染症にかかりやすくなり、感染による発熱がみられたり、肺炎や敗血症といった重い細菌感染症にかかりやすくなったりします。血小板は出血を止めるはたらきがあり、血小板が少なくなることで出血傾向がみられるようになります。出血しやすくなると、皮膚の点状出血、紫斑(青あざ)、鼻出血、歯肉出血がみられるようになり、さらに症状が進むと眼底・脳出血、血尿、下血などがみられることもあります。血液検査によって赤血球、好中球、血小板が減少する汎血球減少と呼ばれる症状がみられた場合に、再生不良性貧血が疑われます。確定診断として行われる検査には骨髄検査があります。また、再生不良性貧血と同様に汎血球減少がみられる病気との鑑別のために、骨髄の染色体検査や脊椎MRI検査などが行われることもあります。再生不良性貧血の治療は、重症度に応じて免疫抑制療法、造血幹細胞移植、タンパク同化ステロイド療法、トロンボポエチン受容体作動薬、支持療法といった治療が行われます。軽症で汎血球減少が進行していなければ治療をせずに様子を見ることもあります。造血幹細胞を攻撃しているリンパ球のはたらきを抑えて血液細胞をつくる機能を回復させる治療法です。抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンとシクロスポリンと呼ばれる治療薬があります。造血幹細胞移植とは、健康な人の造血幹細胞を点滴投与して、患者の造血力を再生する治療です。一方で、移植は体への負担が大きいため、重症の場合やほかの治療法による効果がない場合に行われます。通常、HLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる白血球の型が合うドナーが家族内や骨髄バンクにいることが条件となります。タンパク同化ステロイド療法は、赤血球を増やすはたらきや造血幹細胞の増殖を促す効果があるともいわれています。トロンボポエチン受容体作動薬は、造血幹細胞に作用し、造血力を回復させる治療です。支持療法とは、病気の症状を改善する治療のことです。貧血や血小板減少に対する輸血や、白血球を増やすホルモン(G-CSF)の使用、感染症に対する抗菌薬治療などがあります。
漢方と鍼灸
免疫の狂いから造血幹細胞が減少することから骨髄の反応穴、脾の反応穴、各症状部位から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。補血の漢方を中心に組み立てます。
※症例は個人情報を特定できないよう年齢・性別と主訴も書いてあります。
【症例1】長いことステロイドを服用するも良くならない方から、頭にできたゆで卵半分くらいの大きいできものの相談。4か月ほどで、できものは消失。その後再生不良性貧血の数値がどんどん良くなりステロイドも中止することになりましたと報告を頂く。
【症例2】再生不良性貧血で輸血をしている方から輸血をしないでもいいようになりたいとご相談。 漢方服用1か月で輸血をしないでも良くなり数値も上昇している。
打撲・骨折と予後神経痛
皮膚やその下の軟部組織(筋、脂肪、血管など)が損傷をうけるため、筋肉組織のあいだに出血や炎症がおこります。「打ち身」と呼称されることもあります。打撲したときの内出血がひどい場合、患部周辺の血管や神経が圧迫されて、しびれを感じることがあります。神経が損傷すると痺れが残る場合があります。強い痛み、しびれ、腫れなどの症状がどんどん悪化していく場合は、打撲ではなく、骨折している恐れがあります。骨折を見逃すと、治療が遅れ、治癒に時間がかかってしまうことがありますので注意しましょう。痛みが続いているのに放置していると、骨挫傷(強い衝撃により、骨内側に傷が生じている状態)を見逃してしまうことがあります。それにより、痛みが長期間続く場合があります。打撲によって筋肉が損傷を受けて、内出血や腫れが重症化すると、血管が圧迫されて血行障害が起こります。すると、筋肉が壊死する、神経障害が生じるなどの症状があらわれる「コンパートメント症候群」を併発する場合があります。首や背中を強打した場合、打撲による衝撃で首や背中にある神経を損傷することがあります。その状態を治療しないまま放置すると、手足の麻痺、しびれ、呼吸障害等の症状が残ってしまう恐れがあります。
打撲したところには、皮膚の変色が現れます。これは内出血がおきているためです。最初は青紫色であることが多いですが、時間が経つにつれて茶色、黄色、緑色などに変化していきます。打撲は体のどこにでも起こる可能性があり、受傷したときの対処法も部位によって違います。特に頭や目といったところに衝撃をうけると、より重症な症状になる可能性もあるため注意が必要です。打撲は以下のような状況で起こりやすいといえます。転倒したとき、ものにぶつかったとき、スポーツをおこなうとき、けんかやふざけ合いのとき、暴力をうけたときなどが挙げられます。スポーツを行うときには、転んだり、地面に体を打ち付けたり、ほかの選手とぶつかったり、ボールなど競技で使用する用具が体にぶつかることがあります。また、子どものふざけ合いや、けんかなどのときには顔面に衝撃をうけやすいといえます。こうした場面でなんらかの衝撃をうけると、打撲が起こることがあります。
目の打撲、目の痛み、目がかすむ、見えにくい、視力の低下、目からの出血、液体の流出などが挙げられます。目に打撲を負った場合には、眼球自体に損傷を受けている可能性が高まります。危険な状態になりやすいため、専門医のもとで診察をうけることが望ましいです。直接ではないものの、目の周りに衝撃を受けた場合も注意が必要です。目の周りには眼窩とよばれる骨の部分があります。この部分が衝撃を受けると、その奥の眼神経管という薄い骨が骨折するケースがあります。眼神経管が骨折すると、その破片で目の神経が傷つき、視力に影響をおよぼすこともあります。またあたまの打撲(頭部打撲)、あたまの痛み(頭痛)意識障害、記憶がはっきりしない(健忘・記憶障害)、めまいやふらつき、麻痺・しびれ、脳震盪(頭への衝撃で脳内に小さな出血やむくみなどをおこした状態)、頭蓋内出血、頭の打撲では、致命的な事態につながってしまうケースもあるため注意が必要です。1分以上、意識が戻らないときには重度の衝撃を受けたと捉えられます。いったん意識が戻っても、十分に回復していないことがあります。明らかな意識障害があるときには専門医の診察を受けましょう。また、頭部に衝撃を受けたときには脳震盪をおこすことがあります。一度だけの場合には症状を残さずに回復することが一般的ですが、何度もくりかえす認知障害などがあらわれると、回復しにくくなります。症状だけから脳の損傷の度合いを推測することはむずかしいので、症状が強く、長引き、いつもと違うと感じる場合には病院への受診が望ましいです。目の打撲は、腫れや、軽い痛みといった症状であれば、冷却パックなどで冷やします。ただし、目を圧迫しすぎないように注意が必要です。また充血や出血がある、ものがふたつに見える、飛蚊症(ものを見ているときに黒い虫のようなものや、薄い雲のようなものが見える症状)があらわれる、視力の低下がみられるなどがあります。特に眼球破裂(眼球から血液や液体の滲出がみられるとき)には、目を圧迫しないようにしながらすぐに眼科専門医のもとを受診してください。頭を打っても、症状がすぐに回復するときはそのまま経過をみることもあります。一方で、以下のような症状があるときには重症だと考えられます。意識障害が治らない、悪化するとき、手足に麻痺がみられるとき、ことばを流暢に話せないとき、けいれんがあるとき、何度も繰り返す吐き気や嘔吐があるとき、瞳の大きさが左右で違う(瞳孔不同)、呼吸障害などの症状があるとき、症状の確認をおこなうときには、決してすぐには立たせずに寝かせた状態でチェックします。受傷直後は症状がみられなくても、しばらくして悪化することもあるので、様子をみているあいだにこのような症状みられたら、すぐに救急搬送する必要があります。
漢方と鍼灸
上記のような危険な症状がないことを確認したら、腫れと痛み、しびれ、内出血の状態を早く改善できます。患部から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善へと促します。
残った神経痛にも対応できます。
むち打ち(外傷性頚部症候群)
外傷性頸部症候群とは、交通事故や転倒などをきっかけとして生じる症候群を指します。肩こりや首の痛みなどが生じ、いわゆる「むち打ち」として認識されます。発症した場合には、2~4週間安静にし、その後は通常通りに生活します。痛みに対して鎮痛薬が用いられることもあります。必要に応じて運動療法や心理療法なども行われます。交通事故や転倒などの際に、首に踏ん張ろうとする力がかかり、突発的に大きな力が加わることがあります。このような場合に、首周囲に存在する組織に傷が加わることで、外傷性頸部症候群が発症すると考えられています。また、外傷によって脳での痛みの感じ方や、姿勢や眼球の調節状況などが変化することも、発症に関与していると考えられています。外傷直後から症状が生じることもありますが、数時間から数日の間をおいてから症状が明らかになることもあります。具体的には、首の痛みや肩の痛み、頭痛など、首を中心としてその周囲に痛みが生じます。痛みのために首の運動が制限されることもあります。痛み以外にもめまいや手のしびれ、吐き気、手足の脱力などが出現することもあります。その他にも、耳の聴こえの低下や耳鳴り、気分の変調や不安、抑うつ気分、疲労感、集中力の低下、睡眠障害などを生じることもあります。基本的には自然治癒が期待できますが、慢性化することもあります。また、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:PTSD)の発症につながることもあります。外傷性頸部症候群では、問診にて、首や肩の痛みなどの症状や、交通事故に遭遇した、首を強打した、といった発症時の状況を確認します。また、首に対するレントゲン検査やCT検査、MRI検査といった画像検査を行います。こうした画像検査により、骨折や脱臼、ヘルニアなどが生じていないかどうかを確認することで、診断を確定します。首の固定などを行い、2~4週間安静にします。痛みに対しては鎮痛薬の使用も検討します。運動療法や心理療法などを行うこともあります。外傷性頸部症候群は、基本的には自然治癒が期待できる疾患です。安静にする期間が長すぎると、逆に症状が遷延することも懸念されるため、一定期間が過ぎた後は、通常通りの生活に戻ることが大切であると考えられています。
漢方と鍼灸
後遺症が残らないようにしておくことが大事です。まず痛みを早くとることが大切です。頚椎の異常箇所と症状から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善して行きます。
悪性関節リウマチ
関節リウマチは自分自身の体に免疫反応が起こることにより、関節の内面を覆っている滑膜に炎症が起こる自己免疫疾患です。滑膜に炎症が起こると、滑膜が増殖して周囲の軟骨や骨を溶かし関節に長期間にわたって炎症が起こるため、結果として関節が破壊され関節の変形、脱臼、癒合など体の機能に障害が現れることがあります。日本では人口の0.5〜1%がかかる比較的頻度の高い全身性免疫疾患で、男女比は1:3〜4であり女性の患者が多い病気です。関節リウマチでは、本来細菌やウイルスなどから自分を守るはずの免疫機能が、何らかの異常により自分の体の一部である関節に対してはたらき、痛みや炎症を引き起こすと考えられています。発症にいたる詳しい原因は明らかになっていませんが、遺伝的要因と環境的要因が組み合わさって発症するものと考えられています。近年の研究では、関節リウマチの発症に遺伝的要因が10〜15%関与していると考えられています。遺伝的要因としては、リウマチになりやすい遺伝子が100種類程度あると考えられており、その代表例として白血球の遺伝子であるHLA-DRB1などが挙げられます。一方、環境的要因として確実視されているのは喫煙です。また、可能性のある要因として、歯周病、腸内細菌の乱れ、慢性の呼吸器感染症など免疫系が活性化される要因が挙げられています。関節リウマチの主な症状は、関節のこわばりや関節の痛み・腫れです。関節のこわばりとは、関節が思ったように動かないことを指し、更年期の人やほかの病気の人でもみられることがありますが、関節リウマチでは通常1時間以上と長時間続くことが特徴です。痛みは全身のどの関節の部位にも生じる可能性があります。特に手首や手指の関節に起こることが多く、ほとんどの場合、1つの関節にとどまりません。関節の炎症が長期間続くと関節の軟骨・骨が少しずつ破壊され、関節の変形や脱臼、関節が硬くこわばる強直、関節の曲げ伸ばしが難しくなる拘縮を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたします。また、炎症が強ければ発熱、全身倦怠感、体重減少、食欲不振といった全身症状を伴うこともあるほか、間質性肺炎や血管炎などを合併するケースもあります。特に間質性肺炎はレントゲンで7〜10%、CT検査で20〜30%みられる頻度の高い合併症です。関節リウマチの血液検査では、自己抗体の様子と炎症反応の様子を調べます。自己抗体ではリウマトイド因子や抗CCP抗体の検査が行われます。保険診療の場合、先にリウマトイド因子を調べ、これが陰性の場合でも関節リウマチが疑わしい場合に抗CCP抗体の検査を行うことが一般的です。一方、炎症反応では赤血球沈降速度(赤沈CRP〈C反応性たんぱく〉)の検査が行われます。しかし、血液検査が陽性でも必ず関節リウマチというわけではありません。特にリウマトイド因子は健康な方でも陽性になることが多いため、注意が必要です。また、リウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性の関節リウマチもあります。症状や経過から総合的に診断する必要があります。画像検査は単純レントゲンを中心に行われ、追加で関節超音波検査やMRI検査が行われることがあります。単純レントゲン検査では手足を撮影し、骨の表面がかけた状態である骨びらんの有無や軟骨が障害された場合に起きる骨と骨との隙間が小さくなる状態がないかどうかを確かめます。関節超音波が行える医療機関では、関節の腫れや炎症を確認するために関節超音波検査が行われることもあります。また、より詳しく調べる必要がある場合に、MRI検査によって滑膜の腫れや骨びらんを確認します。関節リウマチの治療の原則は基礎療法・薬物療法・リハビリテーション・手術療法です。治療の選択は、病気の重症度・合併症・日常生活の不自由さなどを総合的に判断して行います。関節リウマチの関節の破壊は、発症して2年以内に急速に進行することが分かっています。一度破壊された軟骨・骨・関節は元に戻すことができないので、早期診断・早期治療が重要になります。基礎療法は関節リウマチという病気を理解し、適度な運動と安静、食生活など規則正しい生活を送ることです。そのほか、喫煙や歯周病が関節リウマチの活動性に関与していると考えられているため、禁煙などの指導が行われることもあります。薬物療法は治療の中心的存在であり、リウマチによる関節の炎症や破壊を抑え、寛解を目指す目的で行われます。治療薬としてはまず抗リウマチ薬が検討され、薬の効果が不十分な場合に生物学的製剤やJAK(ジャック)阻害薬の使用が検討されます。第一選択薬は抗リウマチ薬のメトトレキサートですが、間質性肺炎を合併している人などには使用できないため、その場合には別の抗リウマチ薬が処方されたり、抗リウマチ薬を使用せずに生物学的製剤やJAK阻害薬が処方されたりすることもあります。生物学的製剤とは生物が産生するたんぱく質などの物質を改良して作られた比較的新しい薬のことです。現在、関節リウマチの治療薬として使用できる生物学的製剤は8剤あります。また、JAK阻害薬とは炎症に関わるヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素のはたらきを阻害することで関節リウマチの炎症を抑える治療薬です。現在、関節リウマチの治療薬として使用できるものは5種類あります。また、関節の痛みを和らげる目的で非ステロイド性抗炎症薬による補助療法が行われることもあります。関節の機能(関節の動く範囲と筋力)を保つためのリハビリテーションも有用です。関節の変形や保護、日常動作の助けのために頸椎カラーや足底版などの装具を使用することもあります。また、薬物療法やリハビリテーションによる治療を行っても、変形等による関節の障害が残ってしまう場合、手術療法が選択されることもあります。具体的には、人工関節置換術、滑膜切除術、関節固定術、腱断裂・手指・足趾の手術、頸椎の固定術などが行われます。
漢方と鍼灸
本治は慢性炎症を止めるために免疫の亢進を緩めていきます。標治は各症状に対して行います。まず痛みを緩和することです。ステロイドや痛み止めの長期連用は胃にも体にも負担がかかります。関節ばかりに目が向けられますが免疫の異常を引き起こした原因にも注意を図るべきです。冷え症、お血、睡眠など発症する直前の身体の状況について考えて改善することも大切ですね。自己免疫の反応穴、関節の反応、脊髄の異常箇所、副腎、上咽頭などから最適な漢方、食養生やサプリ、ツを選択し改善していきます。
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは、体重や加齢などの影響から膝の軟骨がすり減り、膝に強い痛みを生じるようになる病気です。女性に発生することが多く、加齢、肥満、外傷なども変形性膝関節症の発症に関与していると考えられています。
【変形性膝関節症の分類と症状】
・初期:歩き始めや椅子から立ち上がるとき、または階段の上り下りで痛みを感じる。
・中期:膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、歩行時に常に痛みを感じる。膝に水がたまる、腫れるなどの症状が現れる場合がある。
・進行期:膝を動かす度に強い痛みが生じる。立ち上がることができなくなる、正座ができなくなる。
膝は体重負担が大きくかかる部位であり、変形性膝関節症の発症を防ぐためには体重を増やしすぎないようにコントロールすることが重要です。体重60kgの方でも、歩行時は瞬間的に体重の3倍の180kgもの圧力が膝にかかるといわれています。さらに、膝周囲の筋力をしっかりと保持することも、膝への負担を軽減させるためには有効だと考えられています。また、病状が進行すると歩行が困難になることもあり、そのような場合には手術が検討されます。膝関節とは、太ももにあたる大腿骨と脛にあたる脛骨の継ぎ目にある関節で、歩くときに重要な役割を果たします。膝の前方には膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨しつがいこつがあり、これら3つの骨から成り立っています。これらの骨同士が互いに直接接触すると、大きな摩擦が生じ骨の摩耗につながってしまいます。膝関節内の骨の表面を覆う軟骨は、この摩擦を防ぎ、スムーズな関節の動きを実現しています。さらに、大腿骨と脛骨の関節面の間には半月板があり、主にクッションの役割を果たします。この半月板は、アワビの刺身のような硬さで、コラーゲン繊維からできています。膝を曲げ伸ばしすると半月板が動き、そのおかげでスムーズに膝を曲げることできます。加齢や肥満、若いころの膝への外傷などが原因となります。日本人はO脚の人が多く、膝の内側に負担がかかります。日本人のO脚は、世界のなかでもかなり独特であるといわれています。脚のすねにあたる脛骨は、ヨーロッパやアメリカなど海外の方は真っすぐであることがほとんどなのですが、日本人は膝から下で曲がっていることが多く、そこには日本人の生活習慣や食生活が関係していると私は考えています。まず、日本人は、畳や床の生活によりふとんの上げ下ろしや、あぐらをかいたり正座をしたりなど膝を大きく曲げることが多く、膝に負担がかかった結果、この病気になりやすいという背景があります。また、これはまだ推測の域を出ませんが、水にも注目しています。日本は島国ということもあり、水道水は主に軟水です。軟水は、カルシウムやマグネシウムの量が少ないといわれています。日頃から軟水を飲んで生活しているために、日本人の骨は軟らかく曲がりやすく、O脚になりやすいのではと思います。半月板も徐々に質が変化して、少しのストレスで切れてしまうこともあります。半月板が切れるとその位置がずれてクッションの役目を果たさなくなり、軟骨が減ってゆく原因ともなります。変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることにより慢性炎症や変形が生じ、膝に痛みが現れる病気です。膝の痛みは、加齢や体重によって徐々に進行します。膝関節には体重がかかるので、過度な体重増加は軟骨損傷を進行させる大きな危険因子といえます。膝の軟骨や半月板そのものには感覚神経はないのですが、関節包や滑膜など、主に神経が集中しているところから痛みが発生します。症状としては、膝を動かしたときに生じる膝の痛みがあります。特に、歩行時の最初の数歩や椅子から立ち上がるときに痛むことが多いです。変形性膝関節症の方には、ラテラルスラストという現象が起こることがあります。これは、体重がかかったときに瞬間的に膝がガクッと外側に動く現象をいいます。膝を包んでいる関節包には神経が集まっているので、ラテラルスラストにより関節包が繰り返し引っ張られた結果、さらに痛みが出るという状態になります。病気が進行すると痛みは強くなる傾向にあります。痛みが生じることで自然と関節の可動域も狭くなり、結果、日常生活に大きな影響を及ぼすようになります。変形性膝関節症では炎症反応が生じ、膝に水がたまる(関節水腫)こともあります。通常、人は立ち上がると膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨の形がみえますが、関節水腫になると、たまった水のせいで膝のお皿が見えなくなります。また、関節水腫は膝の曲げ伸ばしにも影響します。変形性膝関節症では、病気に関連した膝の痛みなどの症状や、膝のO脚所見、滑膜の炎症反応である関節水腫がみられるかなどを確認します。まずはレントゲン写真で判断します。その後、必要に応じてMRIといった画像検査を行うこともあります。最新の画像検査を行うことによって、軟骨や半月板、靱帯などの損傷具合や骨の変形具合などをより詳細に評価できるようになります。変形性膝関節症で発症した軟骨や半月板の損傷は、2020年現在の医療技術をもってしても完全には元に戻せません。そのため、治療は大きく以下3つのアプローチになります。痛みに対しての対症療法(痛み止めの内服、ヒアルロン酸の関節内注入など)、残された膝関節の機能を最大限活用させるための手術、人工関節に置き換える手術があります。対症療法としては、筋力保持のためのトレーニングやリハビリテーション、適切な装具を利用するといったアプローチも重要です。また外科的な治療法には、主に3つの手術があります。膝に与える影響が小さいものから順番に並べると、以下のようになります。
関節鏡とは、膝の周囲に小さな傷をつけて内視鏡を膝に入れ、膝の内部をきれいにする手術です。これは、膝の内部の掃除と半月板の修復を目的としています。
膝周囲骨切り術は、膝の上または下で骨の形を矯正することで膝の一部に偏ったストレスを改善しようとするものです。変形性膝関節症はO脚があることで症状が増悪しやすいので、骨を矯正することで膝周囲の骨の荷重を調整します。
人工関節に置き換える手術は、合併症や置換後の日常生活やスポーツ活動などへの制限も生じることがあるため、病気がかなり進行している人に対して実施されます。膝関節はなくなってしまう手術であるため、実施には十分な検討が必要でしょう。
漢方と鍼灸
関節包や滑膜の炎症や関節に溜まった水腫を取ることがまず大事ですね。軟骨の再生は難しいと言われていますが、相性のいいものは完全に戻らないですが痛みも取れ、歩けるようになる可能性があります。また靱帯の弾力強化にエラスチンペプチドがあります。日々膝周りの筋力をつけることも大事です。女性は閉経してから女性ホルモン減少により骨粗しょう症や骨の変形が顕著になってきます。そのケアも大切です。悪くなった膝関節から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。
【症例】56歳 階段を降りるとき痛みがでるご相談。漢方をお出しして1か月、痛みが減ってきて3か月後痛くなくなったそうです。
【症例】70歳 長時間歩くと膝が痛くてつらいというご相談。漢方を飲み始めて1週間。痛みが大分軽減。継続中。
【症例】83歳 膝に水が溜まって抜くけれどまた溜まってしまう。漢方を3種類飲んでもらう。水は溜まらなくなり痛みも軽減し喜ばれる。
※症例多数