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双極性障害・躁症状

双極性障害

 双極性障害は、躁そう状態または軽躁状態とうつ状態とを反復する精神疾患です。“躁うつ病”と呼称される場合もありますが、うつ病とは別の病気です激しい躁状態を伴う場合を“双極I型障害”生活に著しい支障がない程度の躁状態を伴う場合を“双極II型障害”といいます。躁状態あるいは軽い躁状態のときは自身が病気であることに気付けない場合もあり、うつ状態だけが注目されがちであるため、双極性障害でありながらうつ病と診断されてしまう人も少なくありません。躁状態による問題行動や、うつ状態による抑うつ気分・何をしても楽しいと思えない状態により社会生活に支障が生じることもあるほか、自殺率が高いことも知られています。主に20歳代で発症することが多く、有病率は1%程度で頻度に性差はないといわれています。双極性障害では、活動的になる躁状態や軽い躁状態と、気分が落ち込み何をしても楽しいと思えなくなるうつ状態が繰り返されます。躁状態にもうつ状態にも当てはまらない時期もあります。人間には誰しも感情の浮き沈みがありますが、双極性障害における気分の波というのは一日中、毎日、何日も続き、周囲の人から見ても明らかにいつもと違うような場合のことをいいます。

 双極I型障害でみられる躁状態では、気分が高揚する、怒りっぽくなる、開放的になる、活動性が増加するなどの症状が1日の大半でみられます。一方、双極II型障害でみられる軽い躁状態は、躁状態と同様の症状が現れるものの、社会生活には支障をきたさない程度の場合をいいます。うつ状態では一日中、毎日ゆううつな気分が続く状態が2週間以上みられ、何をしても楽しいと思えなくなり、思考がうまくはたらかなくなったりします。事実とは異なるマイナスな考えが浮かぶようになる人もいます。また多くの場合、食欲が低下したり、眠れなくなったり、疲れやすいなどの体の症状も現れます。また良くなっても双極性障害は再発率が高い病気です双極性障害の原因は明らかになっていません。しかし、双極性障害の発症にはゲノム(遺伝子)が影響するといわれています。原因となる遺伝子は特定されていませんが、脳の神経細胞同士をつなぐシナプス、神経細胞からの神経伝達物質の放出、神経細胞の興奮性の調節に関わるイオンチャネルなどに関連する遺伝子とのつながりが指摘されています。

躁病(躁症状)

 自覚することなく、高まった気分や活力に基づいて行動します。エネルギーの高まりが周りから見ていても明らかで、仕事や家庭でも大きな支障が認められるような状態です。躁状態での一番の問題は、このような状態にもかかわらず自分が病気であることに気づきません。このことを病識がないといいますが、病識のなさがさらに問題を大きくしてしまい、以下のようなことをしてしまいます。不要な物を大量に買ったり、衝動的に高額な買い物をする、危険な投資や事業計画をしてしまう、社長に直訴したり、上司に怒鳴り散らしたりする、昼夜問わず友人や家族に連絡をする、見ず知らずの人と性行為におよんでしまうなど。

 躁症状は、周りからみても明らかに異様に感じます。
躁症状に認められる基本症状は、
・気分高揚・爽快気分:気分がスッキリし、ハイテンションになる。
・易怒性・易刺激性:些細な事に敏感になり、怒りっぽくなる。
・活動性の亢進:1日中活動しても疲れにくい。
躁症状に認められる周辺症状は、
・自尊心の肥大:何でもできるような気持ちになる。
・誇大妄想:自分は特別だという根拠のない思い込み。
・観念奔逸:次々とアイデアが出てきて、話がまとまらない。
・注意散漫:外からの刺激に気を取られてしまう。
・焦燥感:落ち着きのなさや焦りがみられる。
・多弁:人が話すのをさえぎって話す。
・行為心迫:何か行動をしなければいられなくなる。
・社交性の増加:友人や見知らぬ他人と交流をとろうとする。
・浪費:不要なものに大金を使ってしまう。
・性欲の亢進:普段にはみられない性的な乱れがある。
・睡眠欲求の減少:睡眠をとらなくても疲れを感じない。
などを参考にしてください。

漢方と鍼灸

 アクセルとブレーキがうまくコントロールできない状態です。脳神経の伝達を改善する漢方鍼灸が必要ですね。自律神経をみるツボから経絡に落とし込んで漢方鍼灸のツボを選択します。食養生も大事ですのでお伝えいたします。再発しやすいので焦らずにじっくり腰をすえて取り組みましょう。

・桂枝竜骨牡蛎湯(桂枝・芍薬・生姜・甘草・大棗・竜骨・牡蛎)『金匱要略』
桂枝湯に竜骨と牡蛎が加わった方剤です。竜骨・牡蛎には鎮静作用・抗不安作用があります。
・柴胡加竜骨牡蠣湯(桂枝・茯苓・牡蛎・竜骨・柴胡・黄芩・人参・半夏・生姜・大棗・大黄)『傷寒論』
柴胡はイライラや緊張を緩和し、茯苓・竜骨・牡蛎には鎮静作用があります。
・桃核承気湯(桃仁・大黄・甘草・芒硝・桂枝)『傷寒論』
調胃承気湯に桃仁と桂枝を加えた方剤です。熱が下焦に入り、お血と結んで譫言などの状態に使われます。
・加減逍遥散(茯苓・白朮・当帰・芍薬・柴胡・甘草・生姜・麦門冬・遠志・桃仁・蘇木・紅花)『世医得効方』
・三合復明湯(陳皮・半夏・天南星・茯苓・茯神・遠志・酸棗仁・黄連・黄芩・山梔子・大黄・枳実・甘草)『古今医鑑』
・清心温胆湯(陳皮・半夏・茯苓・甘草・枳実・竹茹・麦門冬・白朮・川芎・石菖蒲・遠志・人参・黄連・香附子・当帰・芍薬)『古今医鑑』
など(薬局製剤以外も含む)

うつ病

 うつ病とは、日常生活に強い影響が出るほどの気分の落ち込みが続いたり、何事にも意欲や喜びを持ったりすることができなくなる病気です。社会生活を送るうえで、悲しいことや不快なことへの遭遇を完全に避けることはできません。そのため、悲しく気分が落ち込む・やる気が起こらないといった状態になることは誰にでもあることです。一方、うつ病の場合は悲しみの誘因となる出来事がはっきりしなかったり、誘因があったとしても、通常その出来事に対する心的な反応と予測される状態よりはるかに強い症状が引き起こされたりします。また、仕事や日常生活に支障をきたすほど強い症状が現れるのもうつ病の特徴です。うつ病の原因は遺伝、ストレスのかかる出来事、薬の副作用、ホルモン分泌異常などさまざまなものが挙げられ、日本人の発症率は100人中3~7人とされています。治療の主体は薬物療法ですが、治療に難渋するケースも少なくありません。

 うつ病の明確な発症メカニズムは現時点では解明されていませんが、うつ病患者は情動行動を制御する神経伝達物質のなかのセロトニンやドパミンの機能低下が関与している可能性が示唆されています。セロトニンは心を落ち着かせ、ドパミンは活動性を高めて楽しみを感じさせるとされています。また、脳の海馬や前頭葉などの領域で学習機能に重要な“神経栄養因子”が減少していることも示唆されています。ストレスを受けるとストレスに対処するためにグルココルチコイド(コルチゾール)が分泌されますが、このホルモンが長期に過剰放出されると神経細胞が傷害されることが知られており、うつ病発症を誘起すると考えられています。一方、抗うつ薬によってセロトニンやドパミン機能を高めると神経栄養因子の機能が増強し、うつ病が回復すると考えられています。また近年では、体の軽度の慢性炎症が脳内の炎症を引き起こすことで発症するメカニズムも想定されています。うつ病では遺伝的要因も関与するとされますが、うつ病リスクを高める強い効果のある遺伝子多型はまだ同定されていません。

 うつ病の特徴的な症状は、強い悲しみや気分の落ち込みなど、いわゆる“抑うつ気分”や意欲や喜びの低下が現れることです。しかし、症状の現れ方は人によって大きく異なり、動作が緩慢になって反応が遅くなるケースもあれば、些細なことで怒りっぽくなるといった行動の変化が目立つケースも少なくありません。また、進行するとさまざまな感情を感じにくくなり、生きている実感がわかないといった症状が現れることもあります。さらに、何事も悪く考えてしまい自己否定的になったり、過度に罪責的になったりすることが多くみられます。“死にたい”と考えるようになり、実際に自殺企図や自殺を遂げるという結果になることもあります。また、うつ病はこれらの精神的な症状のみではなく、不眠や食欲低下、頭痛、消化器症状といった身体的な不調を引き起こすことが多いのも特徴の1つです。さらに、うつ病は甲状腺機能低下症や更年期障害など体内のホルモンバランスに乱れを引き起こす病気が要因となって発症することが知られています。また、ステロイド薬(上記のグルココルチコイドなど)や一種の血圧降下薬、インターフェロンなどの副作用としてうつ病が生じることもあります。適度な運動と十分な睡眠を心がける、バランスのよい食事を取る、インターネットやゲームに過度の時間を費やさないなどのライフスタイルでの心がけが予防に有効です。

漢方と鍼灸

 うつ病は漢方で良くなる方が多い疾患です。朝日とともに起床し昼寝はしない、軽い運動を汗が出るまでする。入念なストレッチを毎日おこなう。食事も発散させる食材を選びます。食養生漢方をお渡し時にお伝えします。自律神経の状態をみるツボから経絡に落とし込んで漢方やツボを選択し体の不調をとっていきます。香りも効き目を左右しますので煎じ薬をおすすめいたしております。補助剤として食養生食品も併用していただくとバランスが整います。

・半夏厚朴湯(半夏・厚朴・紫蘇葉・茯苓・生姜)『金匱要略』
咽喉部に炙った肉片がくっついているように感じる方に使います。厚朴は緊張を緩め、半夏は鎮静作用があります。紫蘇葉は気分を晴れやかにします。
・香蘇散(紫蘇葉・香附子・陳皮・甘草)『和剤局方』
感情の抑うつ、精神的な緊張を緩めます。紫蘇葉と香附子は気鬱を散じ、気を快くする作用があります。
・温胆湯(半夏・竹茹・枳実・陳皮・甘草・茯苓・生姜・大棗)『三因極異一病証方論』
・延年半夏湯(半夏・生姜・桔梗・呉茱萸・前胡・別甲・枳実・人参・檳榔子)『外台秘要』
・帰脾湯(白朮・茯苓・黄耆・竜眼肉・酸棗仁・人参・木香・甘草・生姜・大棗・当帰・遠志)『厳氏済生方』
・滋陰至宝湯(当帰・白朮・芍薬・茯苓・陳皮・知母・貝母・香附子・地骨皮・麦門冬・薄荷葉・柴胡・甘草・生姜)『万病回春』
・逍遥散(甘草・芍薬・当帰・茯苓・白朮・柴胡・生姜・薄荷葉)『太平恵民和剤局方』
・茯苓補心湯(茯苓・人参・白朮・当帰・地黄・酸棗仁・麦門冬・芍薬・陳皮・黄連・甘草・辰砂・大棗・鳥梅・浮麦)『万病回春』
・龍骨湯(竜骨・茯苓・桂枝・遠志・麦門冬・牡蛎・甘草・生姜)『外台秘要』
・苓桂五味甘草湯(茯苓・桂枝・甘草・五味子)『金匱要略』
など(薬局製剤以外も含む)

一過性脳虚血性発作

 一過性脳虚血発作とは、一時的に脳への血流が低下することでしびれやめまい、運動障害、言語障害など“脳梗塞”と同じ症状を引き起こす病気のことです。症状は通常1時間以内に治まって後遺症や脳梗塞に特有なCT・MRIなどの画像所見を残さないのが特徴ですが、大きな脳梗塞を発症する前兆と考えられており、注意が必要な病気とされています。一過性脳虚血発作を引き起こす原因は大きく分けると、(1)太い血管が動脈硬化(粥状硬化じゅくじょうこうか)によって狭くなった場合・(2)脳を栄養する1mmよりも細い血管(穿通枝)が狭くなる場合・(3)心房細動や弁膜症などにより心臓内に血栓ができて脳の血管に詰まる場合の3つに分類されます。そのため、一過性脳虚血発作が疑われる場合はその原因を特定し、それぞれに合った適切な治療を行うことで脳梗塞の発症を予防することが大切です。

 頸動脈をはじめとした太い血管や穿通枝は、動脈硬化によって狭くなります。そこに血栓(血の塊)ができて詰まったり狭くなったりした場合、またはその血栓の一部が血管の壁から剥がれて下流の脳の細い血管に詰まった場合に発症します。一時的に神経症状が現れますが、血栓が溶けると脳への血流が元に戻るため症状は消失します。心房細動や弁膜症などの心臓の病気によって心臓内で血栓が形成され、脳の血管に流れていくことで発症します。このような心臓の病気が原因で生じる脳梗塞は重症化するケースが多いですが、流れた血栓が小さくすぐに溶ける場合は一過性脳虚血発作を引き起こすことが知られています。脳の太い血管が狭くなったり、塞がったりすることによる血流の低下が根底にあります。一時的に血圧が下がることなどによって脳を栄養する血管の境界領域の血流が悪くなることで発症します。血圧が元に戻ると症状が改善するのが特徴です。これらの症状は5~10分ほど継続して消失するのが一般的で、1時間以内に消失することがほとんどです。しかし、一過性脳虚血発作を発症すると48時間以内に脳梗塞を発症することが多く,発症後90日以内に脳梗塞を発症するリスクは15~20%にも上るとの報告もあるため、発症原因を速やかに精査して治療を開始することが大切です。

漢方と鍼灸

 生活習慣病を見直すことから始めましょう。すでに症状や兆候が出ている方は病院で検査をしてもらいましょう。漢方でできることは血栓を緩やかに溶かしたり、血流を改善したり生活習慣病を良くしたりできます。また出血が怖い方は、血管を丈夫にしたり止血の働きを持っている漢方を上手に使いましょう。

脳卒中・脳卒中後遺症

 脳卒中とは脳血管に障害が起こる病気(脳血管障害)の総称で、代表的なものには脳血管が詰まる脳梗塞と、脳血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。脳卒中の主な原因は高血圧で、ほかに喫煙や飲酒などの生活習慣が発症に関わっていると考えられています。
症状は病気の種類によって異なり、脳梗塞や脳出血では意識障害や半身麻痺、言語障害、感覚障害。視野障害などが、くも膜下出血では激しい頭痛や意識障害などが突然現れますが麻痺はあまりみられません。また、脳卒中は一命をとりとめたとしても後遺症が残ることが多く、日本で介護が必要になる人のうち約2割が該当するとされています。

 脳卒中は大きく脳梗塞と脳出血に分けられます。病気の種類により発症するメカニズムは異なりますが、どちらも高血圧が最大の原因です。脳梗塞とは脳の血管が詰まり、その先に血液が送られなくなることで脳の細胞が壊死してしまう病気で、高血圧が続き動脈硬化が進行することで引き起こされます。脳出血は特に脳の深い部分にある細い血管が破れ、脳の中に出血してしまう病気で、高血圧の程度が強い場合に血管が破れることで発症します。高血圧のほかにも、脳梗塞の発症リスクを高める原因としては不整脈(心房細動)、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などが、脳出血やくも膜下出血の発症リスクを高める原因としては喫煙、飲酒などがあります。症状は突然現れることが多いですが、前兆症状として頭痛、めまい、舌がもつれる、手足が動かない・しびれるなどの症状が一時的に現れることもあります。

漢方と鍼灸

 脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血が起きたらためらわず一刻も早く病院での治療を行ってください。予防で止血漢方を持っていたい、飲んでいたい方はご相談ください。術後のリハビリや後遺症でご相談に来る方が多いです。

脳動脈瘤

 脳動脈瘤とは、動脈に発生する、瘤状あるいは紡錘状(両端がすぼまったつぼみのような形)に膨れたコブのことです。大きな血管の枝分かれの部分にできることが多いですが、枝分かれとは関係ない部分にできることもあります。脳動脈瘤が破裂すると、脳を包んでいるくも膜と呼ばれる膜の内側に出血をきたし、「くも膜下出血」と呼ばれる病気になります。脳動脈瘤は、先天的要因と後天的要因が重なって発生すると考えられていますが本当の原因は不明です。先天的なものでは、もともと動脈の壁が脆弱ぜいじゃくなこと、後天的なものでは、高血圧・糖尿病・動脈硬化・喫煙などで血管が慢性的にダメージを受けていることが挙げられます。感染性心内膜炎と呼ばれる心臓の病気では、まれな形の脳動脈瘤を形成することがあります。破裂していない動脈瘤は未破裂動脈瘤と呼ばれ、なにも症状が現れないことも少なくありません。しかし、大きくなっていくものや動脈瘤の位置や大きさによっては、まわりの神経や脳を圧迫してしまい瞳孔の異常などの症状が現れることもあります。また、特に大きな動脈瘤の場合には、瘤の内部に血の塊が生じることによって、脳梗塞の原因になることもあります。脳動脈瘤の治療は、慎重な経過観察、クリッピング手術(開頭して行う外科手術)、血管内治療(血管内にカテーテルを通して行う手術)を、瘤の大きさや形、家族歴の有無、生活習慣など複数の因子を考慮したうえで決定されます。

漢方と鍼灸

 まず破裂させないことが大事になってきます。漢方も強いお血剤はまず使いません。脳にかかる圧力を抜くことも大事です。水圧、熱の圧力など高まらないように漢方を使い、鍼灸でも患部から経絡に落とし込んで究極のつぼを探して治療いたします。7ミリから少しずつ大きくなっていき20ミリまで最終的になった方がいますが、漢方食養生鍼灸で消失した例がございます。

顔面神経麻痺

 顔面神経麻痺とは、顔面の表情筋(表情を作る筋肉)を支配する顔面神経が麻痺し、顔面の動きが悪くなる病気のことです。通常は片側だけが麻痺し、両側が麻痺することはまれです。人間の複雑な表情は約20種類ある表情筋によって作られ、各筋肉が個別に動くように指令を送っているのが顔面神経です。顔面神経は脳から出て側頭骨内という耳の後ろの骨の中を通り、耳の下から出てきて枝分かれしながら各表情筋に分布しています。この顔面神経経路のどこかが障害されると表情筋の動きが悪くなり、まぶたが閉じない、食べ物が口からこぼれ落ちるなどの症状が現れます。顔面神経の一部は涙腺や味覚、中耳の筋肉(アブミ骨筋)などを支配しているため、顔面神経が麻痺した場合には目が渇く、味がしない、音が響くといった症状が現れることもあります。そのほか、ラムゼイ・ハント症候群では耳の痛みや口内炎、耳介の帯状疱疹、耳鳴り、難聴、めまいなどの症状を伴うことがあります。

 顔面神経麻痺は、障害される部位に応じて大きく中枢性と末梢性に分けられます。脳の一部である脳幹を基準として、それよりも上位の障害によるものが中枢性、下位の障害によるものが末梢性で、それぞれで原因が異なります。中枢性の顔面神経麻痺は、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、生まれつきの病気であるメビウス症候群などによって起こります。ただし、頻度としては1%以下で、ほとんどが末梢性によるものとされています。末梢性の顔面神経麻痺の原因は多岐にわたり、①ウイルスによるもの(ベル麻痺、ラムゼイ・ハント症候群)、②外傷性(交通事故などによる頭部・顔面の損傷、手術による損傷)、③腫瘍性(小脳橋角部腫瘍、耳下腺腫瘍など)、④耳炎性(中耳炎など)、⑤全身疾患(糖尿病、白血病など)、⑥自己免疫疾患(ギラン・バレー症候群など)が考えられます。これらの中で特に多いのがベル麻痺とラムゼイ・ハント症候群です。ベル麻痺は末梢性顔面神経麻痺の約6割を占め、性別に関係なく40歳代に多いといわれています。多くは単純ヘルペスウイルスが原因と考えられています。一方、ラムゼイ・ハント症候群では水ぼうそうを引き起こす水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で、体の免疫が低下しているときに再度増殖し(再活性化)、顔面神経に炎症を起こすことが原因と考えられています。

漢方と鍼灸

 ウイルスや免疫の低下が原因の多くを占めるので、免疫力を高める漢方と各症状の部位から漢方を選択します。鍼灸も免疫を高める究極のツボを治療していきます。

脳動脈硬化症

 動脈硬化は、どこで起こるかによってさまざまな疾患を起こします。心臓に酸素や栄養素を送る冠動脈の硬化が起こると狭心症、心筋梗塞、心不全を起こしますし、腎臓に起こると萎縮腎を起こします。そして、脳動脈に硬化が起こった状態は、脳動脈硬化症と呼ばれます。
脳動脈硬化症では、頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状が現れることがあります。記憶力低下や不眠などを起こすこともあります。脳動脈硬化症を放置していると、脳梗塞を起こします。そのため、頭痛で受診して脳動脈硬化症を発見して適切な治療を受けることで、その後の脳梗塞の予防につなげられる可能性があります。また、脳梗塞を起こす前には、一過性脳虚血発作を起こすこともあります。一過性脳虚血発作では、手足に力が入らない、体の片側麻痺、呂律が回らない、めまいやふらつき、視覚障害といった脳梗塞と同様の症状が起きて、24時間以内に症状がなくなります。ほとんどは1時間以内で症状がなくなりますが、脳梗塞の前触れとして現れることが多いため、こうした症状があったらできるだけ早く受診する必要があります。

漢方と鍼灸

 脂質異常症(HDLが低い LDLが高い 中性脂肪が高い 総コレステロールが高い)があれば血管は狭窄や閉塞し動脈硬化を進行させます。抗酸化力・DHA/EPAなど食養生をしっかりする、ストレスを発散する方法を見つける、高血圧、糖尿病などの生活習慣病があればきちんと管理するなど予防が大事です。脳動脈硬化症と診断されれば、上記の食養生をしながら血管を柔らかくする漢方がおすすめです。血液と血管を大掃除する漢方をおすすめします。鍼灸も経絡に落とし込んで究極のツボで治療していきます。

くも膜下出血

 くも膜下出血とは、脳を覆う3層の膜の隙間である“くも膜下腔”に出血が生じる病気です。脳は外側から硬膜・くも膜・軟膜と呼ばれる三つの膜で重なるように包まれており、くも膜下腔はくも膜と軟膜の隙間を指します。発症原因は多々ありますが、多くはくも膜下腔を走行する動脈の分岐部に“動脈瘤”が形成され、それが破裂することによって発症します。くも膜下出血の原因の8~9割は脳動脈瘤の破裂とされています。脳動脈瘤とは、くも膜下腔を走行する動脈にできる風船のように膨らんだ“こぶ(瘤)”のことです。動脈瘤の壁は薄くなっており、血圧が一時的に上昇したときなどに破裂するリスクが高くなります。そして、動脈瘤が破裂すると圧力の高い動脈の血液がくも膜下腔内に流れ込むことでくも膜下出血を発症するのです。

 40歳以降から発症者が増え始めるといわれています。また、動脈瘤以外にも頭部外傷や先天的な血管の形態異常などが原因で引き起こされることも少なくありません。発症すると、意識のある場合は突然バットで殴られたような激烈な頭痛や吐き気・嘔吐を生じることが特徴です。また、出血量が多い場合は脳が圧迫されることで意識を失うことも多く、突然死の原因となり得ます。また、脳内に出血を伴う場合には手足の麻痺や言葉が出ないといった神経症状を伴います。さらに、手術などの治療によって救命できた場合でも後遺症が残るリスクが高く、非常に恐ろしい病気のひとつとされています。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、発症すると3割近くがそのまま命を落とすとされています。また、命を落とさない場合でも、くも膜下腔内の出血が脳を圧迫する状態が続くと脳にダメージが加わって重篤な後遺症を残すことも少なくありません。無事に治療を終えたとしても、続発する脳血管れん縮(くも膜下腔の出血がそこを通る脳動脈を収縮させ、脳の血流が乏しくなる現象)、水頭症などのリスクもあるため、発症する前とほぼ変わらない状態で社会復帰できるのは4人に1人とされています。
 くも膜下出血の主な症状は次のとおりです。
・今まで経験したことのない突然の激しい頭痛
・極度の疲労感や気分不良
・睡眠の問題
・感覚や運動障害
・光に対する過敏症(羞明)
・かすみ目、または複視
・脳梗塞のような症状(ろれつが回らない、体の片側の麻痺など)
・意識消失、または痙攣

 くも膜下出血の原因は、特にお酒の飲み過ぎは危険と言われています。また、他の病気でも危険因子と言われている高血圧や喫煙習慣は、くも膜下出血でも危険因子となっていますので、改善していくことが大切です。逆に、コレステロール値や心臓病、糖尿病などは、くも膜下出血を起こす直接的な危険因子であるかどうか、まだ明らかになっていません。また、肥満については、やせ型の人のほうが発症しやすいという報告があり、肥満でないから大丈夫といった過信はよくありません。たばこを吸っていてやせている人、高血圧でやせている人は、くも膜下出血を発症しやすいという報告もあります。

<くも膜下出血後の後遺症>
 くも膜下出血は治療後の回復も、時間がかかるものであり、次のような後遺症が発生するのが一般的です。右か左の手足が動かしづらくなる、痺れや脱力感、物が飲み込みづらい、半分の空間がうまく認識できない、言葉がうまく話せない、理解がうまくできないなどの失語症、注意・集中ができない、物事をうまく実行できない、最近の出来事を直ぐ忘れてしまう
などが挙げられます。その他にみられる後遺症は、歩行不安定、尿便失禁、てんかんを繰り返す発作、記憶などの認知機能障害、うつ病などの気分の変化です。記憶の問題に関しては、発症前の記憶は通常影響を受けませんが、新しい情報や事実を思い出すのが難しくなります。気分や思考にみられる後遺症は、気分が落ち込み、希望がなく、人生を楽しむことができない、何か恐ろしいことが起こるのではないかという絶え間ない不安と恐怖感、人は悪夢やフラッシュバックを通じて以前の外傷的出来事を追体験することが多く、孤立感、過敏性、罪悪感を経験することがある。このような後遺症は、長期化するケースも稀ではなく、治療後のリハビリなどが重要になります。特に、認知機能障害はくも膜下出血の一般的な後遺症であり、ほとんどの人がある程度影響を受けます。

漢方と鍼灸

 まず脳動脈瘤が見つかった場合、それ以上大きくしないようにまた小さくする漢方鍼灸治療をおこないます。後遺症の治療は、各症状によって治療をおこなうのを標治、本治は、出血後による神経の損傷で腎気丸、四物湯をベースに加味合方していくことが多いです。

脳梗塞

 「脳梗塞」とは、何らかの原因で脳の動脈が閉塞し、血液がいかなくなって脳が壊死してしまう病気です。片方の手足の麻痺やしびれ、呂律が回らない、言葉が出てこない、視野が欠ける、めまい、意識障害など様々な症状が突然出現し、程度は様々ですが多くの方が後遺症を残します。わが国には高齢者などの介護にかかる負担を社会全体で支援する介護保険制度というものがあります。この制度で要介護認定を受けている方の原因疾患で最も多いのは、脳梗塞、脳出血やくも膜下出血などの「脳卒中」の後遺症で、実に20%以上を占めます。2位には認知症が続きます。一方、日本国内の死因の順位は、脳卒中は悪性新生物(がん)、心疾患、肺炎に続き国内死因の第4位です。脳の病気は、他臓器の疾患よりも日常生活に支障をきたしやすく、介護の必要性が非常に高いことを反映しています。

 発症を防ぐためには、その原因を知ることが重要です。まず高血圧・糖尿病・脂質異常・高尿酸血症・メタボリックシンドロームなどの生活習慣病や、慢性腎障害があげられます。これらは動脈硬化を少しずつ進行させ、やがて動脈が詰まったり細くなったりして脳梗塞を引き起こします。生活習慣病は自覚症状がほとんどなく、検査をしないと見つかりません。定期的に健康診断を受け、異常を指摘されたら放置せず、積極的に治療を開始することをおすすめします。喫煙や多量の飲酒も動脈硬化を促進させます。また、運動や入浴・サウナなどでの脱水が脳梗塞の原因になることがありますので、汗をたくさんかくときにはこまめな水分摂取も重要です。特に夏場は要注意です。

 心房細動という不整脈も、脳梗塞の原因となります。心臓内の血流のよどみによって血栓がつくられ、それが脳などに流れて様々な臓器で動脈塞栓を引き起こします。ただ、この不整脈も自覚症状に乏しく、塞栓症を起こして初めて気づかれる方も多いのが現状です。心房細動がみつかった場合は、塞栓症を起こしたことがなくても、年齢や合併症によって抗凝固療法の開始が推奨されています。心房細動からの塞栓予防には、少し前までワルファリンという薬しかありませんでした。今でも内服している方はたくさんいらっしゃいますが、納豆を食べられない、個々に内服量が違う、原則として月1回の採血が必要、出血性合併症が多い、他の薬と相互作用が多いなどの問題があります。2010年以降、DOAC(direct oral anticoagulant)とよばれる新しい抗凝固薬が次々登場し、導入が非常に簡便になりました。ワルファリンとの大きな違いのひとつは、脳出血が少ないという点です。また動脈硬化やそのリスクとなる疾患・生活習慣があるという場合に、予防的な抗血栓療法(アスピリンなど)は慎重であるべきと考えます。一度でも脳梗塞や心筋梗塞を発症した方の再発予防としては必須ですし、血管に強い狭窄があるなど特殊な事情によっては必要かもしれません。しかし、日本人は脳出血が多い人種であり、予防のつもりがかえって脳出血を助長し事態を悪化させかねず、現時点では積極的には勧められません。その他に動脈の壁が裂けてしまう解離や、心臓に空いた穴から塞栓が飛んでくる奇異性塞栓、血管の炎症を惹起したり血栓を形成する自己免疫疾患、血管の先天的/後天的異常、遺伝性脳梗塞やピルやコカインなどの薬剤によるものなど、様々なものが隠れていることがあります。これらは自分で予防することは難しく、もし発症してしまったらよく検査することが大切です。

漢方と鍼灸

 まず予防が大事と言えるでしょう。動脈硬化をなるべくおこさない、血流のよどみをおこさせない、基礎疾患を改善したくさんの薬に頼らない。適度な運動や質の高い睡眠、自分の体にあった食生活や食材、ストレスを発散する方法をみつけるなど、まずは自分の体に関心を持ち、気遣いましょう。わからない場合はご相談ください。ある程度の年齢の方に出す血流漢方も注意が必要で、止血効果もあり補の作用が強いものを使う方が安全です。血栓や血管が狭くなっているなどご心配な方は、あなたに合った食養生をおすすめいたします。脳梗塞を起こしてしまい、後遺症がなかなか良くならない場合も漢方はいいですよ。漢方や鍼灸も改善を早めます。

結膜結石

 まぶたの裏の粘膜(=眼瞼結膜)にできる、白色ないし黄色の小さな点状の固まりのことをいいます。結膜上皮下にある結石は、ほとんど症状がなく、特に障害がでない場合が多いです。結膜上皮を破って、表面に突き出ている結石は、異物感がでます。結石の露出が激しいと、角膜とこすれ傷ができ、ごろごろ、痛み、充血、かすみ、といった症状が出る場合があります。白目の粘膜(=眼球結膜)に発生することはありません。慢性結膜炎、結膜瘢痕、ドライアイ、老化など様々な原因が挙げられていますが、多くは原因不明です。体質により結石ができやすい方もいます。結膜の炎症、老化などで、細胞分泌物が貯留し、結石が形成されると考えられています。結石とよばれていますが、石灰沈着はなく細胞蛋白の変性による硝子様物質です。カルシウムや脂質、老廃物からできています。

漢方と鍼灸

 代謝が落ちて老廃物を尿や便で排泄できないと血液循環で皮膚の薄い部分から出てくることがあります。石関連はお茶をおすすめしています。体質改善は詳しく問診をとってから漢方をお出しします。鍼灸漢方も石の写真もしくは実際に患部を見せて頂いて経絡に落とし込んで治療します。