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頚椎症性神経根症・頚椎症性脊髄症

頚椎症性神経根症

 頚椎の椎間板の突出や骨棘(骨の出っ張り)が形成されることによって、脊髄から上肢に分岐する神経根が障害を受ける病気です。主な原因は加齢ですが、腕や手の痛み・しびれ・筋力低下が生じ、首を後ろへ反らすと症状が強くなるのが特徴です。頸椎症神経根症は、神経根のいずれかが障害されることで発症します。そのため、症状が現れる部位はどの神経根が障害されたかによって異なります。頚椎症は中高年以上の男性に多く発症し、非常に頻度の高い病気です。首の骨は、7つの頚椎が縦に連なって形成されています。頚椎の内部にある脊柱管という隙間には、脊髄という非常に太い神経が走行しています。脊髄は、頭部から腰にまでつながる中枢神経のひとつです。脊髄からは各頚椎の隙間を通って左右に神経が分岐しており、それぞれ左右の腕や手、指などに分布します。このような脊髄の分岐部を神経根と呼びますが、頚椎症性神経根症はこの神経根が圧迫されることによって発症します。神経根が圧迫される主な原因は、椎間板ヘルニア(椎間板の中身が飛び出す)や加齢による骨棘(椎間板変性の影響で骨が棘状に出っ張る)です。椎間板は、頚椎と頚椎の間の衝撃を和らげるクッションのような役割を持っており、その一部が膨隆すると、神経根を圧迫することがあるのです。頚椎症性神経根症は、神経根が圧迫を受けることで、しびれやいたみなどの感覚障害が生じます。筋力低下をきたすこともあります。どの部位に症状が現れるかは、圧迫を受ける神経根の部位によって決まります。障害されやすい神経根は、第5-6頚椎間から分岐する第6頚神経、第6-7頚椎間から分岐する第7頚神経です。第4-5頚椎間から分岐する第5頚神経では、三角筋・上腕二頭筋に筋力低下、肩関節周囲に感覚障害、肩甲上部・上腕外側には疼痛が生じやすいです。感覚障害がほとんどなく筋力低下のみをきたす例が珍しくありません。第5-6頚椎間から分岐する第6頚神経では、上腕二頭筋・腕橈骨筋に筋力低下、母指に感覚障害、肩甲上部・上腕外側に疼痛が生じやすいです。第6-7頚椎間から分岐する第7頚神経では、上腕三頭筋に筋力低下、中指には感覚障害、肩甲間部・上肢後側には疼痛が生じやすいです。これらの症状は、首を後ろに反らせることで、神経根への圧迫が強くなり増強するのが特徴です。また、神経根の障害部位と症状の出現部位が一致しないこともしばしばあります。症状が進行すると、これらの症状だけでなく、障害を受けた神経が分布する筋肉のみが萎縮し、運動障害を引き起こして日常生活に支障が出るケースもあります。頚椎症性神経根症は、腕や手、指に生じる諸症状や首を後ろに反らせることで症状が増強する、などといった診察によってわかる所見と画像検査によって診断されます。画像検査は、エックス線検査やMRI検査が行われます。エックス線検査では、頚椎間の狭小化や骨棘形成の有無などを評価することができます。簡単に行うことができるため、初診時には第一に行われる画像検査です。一方、MRI検査では、エックス線検査では描出することができない椎間板の変性や神経根圧迫の程度などを観察することが可能です。頚椎症性神経根症は、基本的には頚部の安静(頚椎カラーで頚部を固定することもあります)と鎮痛剤の内服などによる治療でほとんどは数週間~数カ月で症状の改善がみられます。しかし、筋力低下や筋委縮が著しい場合や治療してもなかなか良くならない痛み・しびれがあるような場合には、膨隆した椎間板や骨棘を切除して神経根への圧迫を解除するための手術が行われることもあります。

頚椎症性脊髄症

 頚椎(首の骨)が変形し、脊髄が走行する“脊柱管”と呼ばれる隙間が狭くなることで脊髄が圧迫されてさまざまな神経症状を引き起こす病気のことです。主な原因は加齢による頚椎の変化と考えられていますが、日本人は欧米人に比べてもともと脊柱管が狭いため、頚椎症性脊髄症を発症しやすいとされています。この病気を発症すると、脊髄が圧迫されてダメージを受けるため、首や背中、手の痛みやしびれのほか、手がうまく使えない、うまく歩くことができないなど運動機能にも障害が生じるようになります。また、頻尿や失禁など膀胱や直腸の機能が低下することもあり、日常生活に大きな支障を及ぼすケースも少なくありません。治療は軽症な場合では、痛み止めの使用や首を固定する装具(カラーなど)の着用などが行われますが、運動神経麻痺などが現れた場合には脊柱管を拡げる手術が必要になります。頚椎症性脊髄症の主な原因は、加齢によって頚椎、椎間板(頚椎と頚椎の隙間にあるクッション状の組織)、靱帯などの脊柱管を形成する構造の形が変化することです。
 具体的には、本来なら弾力性がある椎間板が潰れることで頚椎の外縁が鋭い棘のようになる“骨棘“の形成や、椎間板自体の突出、頚椎を支える靱帯の肥厚などの変化が挙げられます。また、頚椎の後方にある黄色靭帯という靭帯が頸椎進展時(首を後ろに反らしたとき)に、脊柱管内にめくれこむように突出することにより圧迫が生じる場合もあります。これらの変化により、脊柱管が狭くなることで脊髄が圧迫されて手足、膀胱、直腸などにさまざまな症状が引き起こされるのです。多くのケースでは、50歳以降に上述したような加齢に伴う大きな変化が生じるため頚椎症性脊髄症も50歳以降に発症しやすい病気とされています。一方で、もともと脊柱管が狭い方は徐々に頚椎などの変化が始まる30~40歳代で発症するケースもあります。頚椎症性脊髄症は、脊髄が圧迫されてダメージを受けることでさまざまな神経症状が現れます。脊髄へのダメージが軽度な場合は、軽い手足のしびれや感覚の異常などの症状のみが現れますが、ダメージが大きくなると手足の筋力低下、運動麻痺、頻尿や失禁など膀胱と直腸機能低下といった症状が現れるようになります。特に、頚椎症性脊髄症では、箸を使う、ボタンをかける、字を書くといった手指の細かい動作ができない、スムーズな歩行ができないなど特徴的な運動麻痺が生じます。自身でこの病気をチェックできる簡便な方法として10秒テストがあります。このテストは10秒以内に両手でできるだけ早くグーとパーを繰り返す方法で、20回以下であれば、頚椎症性脊髄症の可能性があります。また、特徴的な歩行障害として痙性歩行といわれる症状があります。これは両脚が突っ張って、つま先を引きずるような歩き方で、進行すると躓いて転倒しやすくなります。歩行時や立っているときに足首を背屈すると足がけいれんする“クローヌス”と呼ばれる異常反射が出現することもあります。いずれにしても転倒して頭部をぶつけたりすると、頚椎症性脊髄症が急速に悪化しますので、歩行がおかしいと感じたときは要注意です。頚椎性脊髄症の診断を下すには、手足の神経に何らかの異常が生じていないか調べることが大切です。身体所見から頚椎性脊髄症の発症が疑われるときは、頚椎の変形や脊柱管の広さ、脊髄への圧迫の有無などを評価するため、X線、MRIなどを用いた画像検査が行われます。特にMRIは脊髄への圧迫を描出することができるため、脊椎症性脊髄症の確定診断に必須の検査です。また、MRI検査では脊髄圧迫状態に加えて、脊髄圧迫部位が白っぽくなる輝度変化といわれる所見が重要で、これが見られると、より重症で回復に時間がかかるとされています。頚椎症性脊髄症を発症したとしても、手足の軽いしびれ、感覚の異常などのみが現れる軽症なケースでは、痛み止めや神経のダメージを修復する効果のあるビタミンB12製剤などによる薬物療法、首を固定するコルセットの装着などの保存的な治療が行われます。しかし、日常生活に支障をきたすような痛みやしびれ、運動障害などの症状が現れた場合は脊柱管を拡げるための手術が必要とあります。最近の考え方としては、頚椎症性脊髄症に対する保存的治療は効果が少なく、また症状が顕在化すると急速に症状が進行することが多いため、MRI検査で圧迫が顕著な場合や輝度変化が認められる場合は症状が軽微であっても手術すべきとする意見もあります。頚椎症性脊髄症は加齢による頚椎、椎間板、靱帯などの変化によって生じる病気であるため、発症を確実に予防する方法は残念ながらありません。特に、日本人は脊柱管がもともと狭い傾向にあるため、欧米人よりも頚椎症性脊髄症を発症しやすいとされています。一方で、脊柱管は首を後ろに反らすと狭くなります。手のしびれや痛みなど気になる症状が現れ始めた場合は、できるだけ首を後ろに反らす動作をしないよう注意しましょう。また、転倒などをした際に首に大きな外力がかかると頚椎症性脊髄症の症状が一気に悪化することがありますので注意が必要です。

漢方と鍼灸

 頚椎の何番かまた何番と何番の間かは気功で見つけられます。その周りの筋肉が凝っていたり圧痛があれば鍼灸治療もします。また臓腑病の場合、遠隔と言って患部から離れた手足などに針を打つこともあります。また炎症がなければ温熱療法で患部を温め緩めていきます。神経を圧迫している箇所を見つけ最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。西洋医学では難しい場合でも改善する症例は多いのであきらめないでご相談ください。

手の痺れ・足の痺れ

手の痺れ

 この頃、手のしびれが強くなってきたような気がする、朝起きると、いつも手がしびれている、手がしびれてスマホを落としたことがあるなどの症状が出たらどうしますか?
 特に注意の必要な手のしびれの原因には、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)は脳の血管が破れる事で起こる脳出血、脳の血管が詰まる事で起こる脳梗塞などが原因で起こる手のしびれには注意が必要です。手のしびれの他にも話しにくい、口の周りがしびれる、手足のまひ、頭痛などの症状を伴うことが多く、もしこのような症状が見られる場合にはすぐに受診が必要です。手のしびれが長く続いている場合、頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症があり、頚椎と呼ばれる首の骨の間でクッションの役割をしている椎間板の変形などにより、痛みや手の動かしづらさなどの症状が出る病気です。従来は中高年に多い病気でしたが、最近はPCやスマホを頻繁に使用する若い人でも多くなっています。手根管症候群は指先の感覚や手の運動などにかかわる正中神経に障害が起き、手のしびれ、痛みなどが起こる病気です。妊娠・出産期や更年期の女性に多く見られる傾向があります。そのほか、骨折やスポーツのしすぎなどが引き金になることもあります。夜間から明け方にかけて強い痛みを感じ、手を振ったり、曲げ伸ばしをすることで多少痛みが和らぐなどの症状が特徴的といわれています。多発性硬化症は、複数の神経症状が起こる難病で、手のしびれ、ふらつき、排尿障害、視力や見え方の障害などが比較的多く見られます。症状に個人差が大きいのもこの病気の特徴のひとつです。糖尿病性神経障害は糖尿病になると末梢神経が知らず知らずのうちに傷つき、本来持っている働きが十分できなくなります。そのため、痛みや温度に鈍感になったり、手のしびれが生じる事があります。後縦靭帯骨化症で頚椎の脊髄が圧迫されると、手足のしびれ感(ビリビリ、ジンジンしたり感覚が鈍くなる)や手指の細かい運動がぎこちなくなり、しづらくなります(箸がうまく使えない、ボタンの掛け外しがうまくできない)。ほかにも、足がつっぱってつまづきやすい、階段を上り下りがこわくて困難などの歩行障害も出現してきます。黄色靭帯骨化症でも同様の症状が出現しますが、骨化してくる部位が胸椎に多いので、その場合は足の症状だけで手の症状は出現してきません。後縦靭帯骨化症は頚椎に発症することがもっとも多いとされ、首や肩甲骨の周囲、指先などに痛みやしびれが引き起こされます。症状が進行すると指の動きが悪くなることで細かい作業が困難になったり、痛みやしびれなどの症状が上半身から下半身へ広がって、足に感覚障害や運動障害などが生じたりします。さらに重症化すると歩行困難や排尿・排便の障害が現れることもあります。また、1人で日常の生活をすることが難しくなる場合もあります。胸椎に発症した場合、体幹や下半身に症状が現れやすく、初期症状では足の脱力やしびれを感じます。頚椎よりも発生頻度は低いとされていますが、重症化すると頚椎に発症した場合と同様、立ったり歩いたりすることが困難になったり、排尿や排便の障害が現れたりします。腰椎は頚椎、胸椎ほど発症頻度は高くありません。足のしびれや脱力が生じることが多く、歩行障害にまで至ることは少ないとされています。背骨の骨と骨の間は靭帯で補強されています。バレリュー症候群は、むちうち(頚椎捻挫)を受傷すると、首の痛み以外にも、頭痛、めまい、耳鳴り、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの自律神経失調症状が出ることがあります。フランス人医師のBarréとLiéouが、首の外傷後に自律神経の働きがおかしくなって、これらの自律神経失調症状をきたすと報告しました。それ以来、むちうちに自律神経失調症状が合併した病態は、Barré-Liéou syndrome(バレリュー症候群)と呼ばれています。むちうちでは、頚部への外傷の影響で交感神経性の椎骨神経叢が刺激されることがあります。交感神経が刺激されると、内耳動脈が収縮して前庭迷路の血流低下を来して、耳鳴りやめまいを発症すると言われています。バレリュー症候群は自律神経失調症状をきたしますが、その原因のひとつとして、ストレス、寝不足、疲労などが挙げられます。ストレスと自律神経失調症状は密接に繋がっていると思って差し支えありません。バレリュー症候群では、首の痛み、手の痛みやしびれ、頭痛に加えて、めまい、耳鳴り、目のかすみ、眼精疲労、不眠、全身倦怠、易疲労感、微熱感、動悸などの自律神経失調症状をきたす可能性があります。

足の痺れ

 正座をしていたわけでもないのに、足がジンジンしびれる、腰痛がつらくて、足のしびれも気になる、いつも足の裏に何かが張り付いているようで、しびれている。
 このような症状があるとき、考えられる原因には、腰椎椎間板ヘルニアで背骨の骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板が、腰への負担などによって変性し、神経の通っている脊柱管内へ脱出することで神経を圧迫している状態です。腰痛が主な症状ですが、足やお尻の周辺にしびれや痛みを伴うこともあります。背骨の中を走る神経や血管が様々な原因によって圧迫され発症する病気です。足がしびれる、ある程度の距離を歩くと痛みが出るが、椅子にしばらく座っていると治るというような症状が特徴的です。最初は片方の足だけに症状が出て、次第に両足に広がっていくこともあります。脊柱管狭窄症・頚椎症・頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症は、首の骨が年齢とともに変形して、神経などが圧迫されることで起きる病気です。神経が圧迫されている場所によって症状が異なりますが、両手がしびれて細かい動作がしにくくなったり、足がしびれて次第に歩くのに不自由を感じるといった症状が特徴的です。足根管症候群は、足の裏に行く神経が、内くるぶしの部分で圧迫されて起こります。かかとを除く足の裏から足の指にかけてしびれて痛くなり、足の甲や足首より上にはしびれがないことが特徴です。足の裏に何かがついているような感じを伴うこともあります。脳血管障害は一般的に脳卒中と呼ばれている病気です。大きく分けて、脳の血管が破れて出血する脳出血、脳の血管が詰まって起こる脳梗塞があります。いずれの場合も、手足のしびれ、意識がおかしい、呂律が回らないなどの症状がみられることがほとんどです。
 発症後すぐに適切な処置をすることが大事な病気のため、おかしいと感じたらただちに受診した方がよいでしょう。糖尿病性神経障害は糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、神経が傷つきさまざまな症状が出ることが知られています。特に足先や手先など細かい部分で起こりやすく、足先のしびれ、冷え、足の裏に紙が張り付いているような感覚がよくある症状です。もし、糖尿病の人でこのような症状が見られた場合、主治医に相談するようにしましょう。閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化などによって血管が狭くなり、おもに足の血管に障害が起きる病気です。足のしびれや痛みのほか、休息をとりながらでないと歩けないなどの症状が現れます。

漢方と鍼灸

 各疾患についてはホームページの検索を使ってお調べください。痺れ部位から最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。コロナ後遺症でも痺れが残っている方もいます。あきらめないでご相談ください。

手根管症候群

 手根管症候群とは、指先の感覚や手の運動において重要な役割をする正中神経が障害される結果、しびれや痛みなどの症状をきたす病気です。手首には“手根管”と呼ばれるトンネル状の形態を示す部分があり、このトンネル内には正中神経や腱などが通っています。なにかしらの原因で正中神経が圧迫されると、それによって症状が誘発されます。手根管症候群では、手首の安静が治療方法の一環であるため生活スタイルの変更が重要になりますが、ときには手術による治療も選択される病気です。手根管症候群は、正中神経が圧迫されることで手のひらの感覚や運動が障害されます。手のひらの付け根には、手首の骨と靱帯に囲まれた手根管というトンネルがあり、この中を複数の腱や正中神経などが通っています。この正中神経は親指から薬指の親指側にかけての感覚や、親指の動きなどをつかさどる神経です。
 正中神経が圧迫される原因には、手首の曲げ伸ばしを繰り返し、手首に負担のかかるような動作をすることで、手根管の中を通る腱を覆う膜などが炎症を起こし腫れることがあります。また、手首の運動とは関係なく手根管が狭くなり、手根管症候群を発症することがあります。たとえば、透析(人工的に血液の浄化を行うこと)を長期間受けている人は、体内にアミロイドと呼ばれる物質が蓄積します。このアミロイドが手根管に沈着すると正中神経が圧迫され、手根管症候群を発症することがあります。関節リウマチなどの炎症性疾患では、炎症で腫れた滑膜により正中神経が圧迫されます。さらに、手根管が狭くなくても正中神経そのものが障害を受けることで手根管症候群を発症することがあります。この原因として代表的なものは糖尿病です。そのほか、妊娠や甲状腺疾患なども原因であると考えられます。手根管症候群では、正中神経がつかさどっている小指以外の指先にジンジンするようなしびれを感じ、特に中指の先によくしびれが現れます。就寝中、手根管の内側で腱の膜にむくみが生じて明け方に痛みが発生することが特徴です。正中神経は筋肉を動かす命令も出しているため、手根管症候群が進行すると、物を掴んだりつまんだりする親指とほかの指を向かい合わせにする動作(対立運動)が難しくなります。対立運動は動作としては小さな運動ですが、ボタンをかける、お札を掴むなど日常動作でなくてはならない動作です。そのため、対立運動が障害を受けることは日常生活における大きな障害となります。手根管症候群が疑われる場合、ティネル様サインとファーレンテストという検査が行われます。手首の手のひら側を叩くとしびれ、痛みが指先に響きます。これをティネル様サイン陽性といいます。またファーレンテストでは、体の前で両手の甲を合わせて1分間その状態を保ちます。その間にしびれを感じたり、そのしびれ感が強くなったりする場合に手根管症候群が疑われます。そのほか、手根管症候群の診断に際して神経伝導検査が行われることもあります。神経伝導検査では、手根管症候群で障害を受ける正中神経の分布領域に一致して、神経の伝導速度が遅くなっていることを確認します。また、手根管部位に対する画像検査として、手根部位のMRIやエコーが撮影されることもあります。画像検査を行うことで手根管症候群と同様の症状をきたすそのほかの病気(たとえば、ガングリオン)を見極めるメリットもあり、治療方法の決定のために重要な検査です。手根管症候群の治療は、保存的な治療と手術に分けることができます。手根管症候群では、手首に対する運動負荷が原因であることが多いため、治療方法は装具による手首の固定が基本です。自転車のハンドルを握るような手首を返す(手の甲の側に反る)姿勢を長時間続けると神経が圧迫されるため、手根管症候群を悪化させるような動作を避けることも大切です。軽症のうちはこのような姿勢を避けるだけでも炎症が治まる可能性があります。しかし、1〜2か月のうちに改善がみられない場合は次のステップに進む必要があります。次のステップは注射による薬物治療です。これは手根管の中にステロイド薬を直接注射する治療です。多くの人は1~数回のステロイド注射と手首の安静で症状が治まります。再発を繰り返す場合、あるいは症状が続き進行している場合には手術も検討します。手根管症候群の手術は、内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術や小さく切開して行う直視下手根管開放術があります。

漢方と鍼灸

 まずは膜の炎症を取る漢方、神経を圧迫している箇所を緩める漢方、血流を良くする漢方を使います。痺れの箇所から最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。

バレリュー症候群

 むちうち(頚椎捻挫)を受傷すると、首の痛み以外にも、頭痛、めまい、耳鳴り、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの自律神経失調症状が出ることがあります。フランス人医師のBarréとLiéouが、首の外傷後に自律神経の働きがおかしくなって、これらの自律神経失調症状をきたすと報告しました。それ以来、むちうちに自律神経失調症状が合併した病態は、Barré-Liéou syndrome(バレリュー症候群)と呼ばれています。むちうちでは、頚部への外傷の影響で交感神経性の椎骨神経叢が刺激されることがあります。交感神経が刺激されると、内耳動脈が収縮して前庭迷路の血流低下を来して、耳鳴りやめまいを発症すると言われています。バレリュー症候群は自律神経失調症状をきたしますが、その原因のひとつとして、ストレス、寝不足、疲労などが挙げられます。ストレスと自律神経失調症状は密接に繋がっていると思って差し支えありません。バレリュー症候群では、首の痛み、手の痛みやしびれ、頭痛に加えて、めまい、耳鳴り、目のかすみ、眼精疲労、不眠、全身倦怠、易疲労感、微熱感、動悸などの自律神経失調症状をきたす可能性があります。

漢方と鍼灸

 めまい、耳鳴り、目のかすみ、眼精疲労、不眠、全身倦怠、易疲労感、微熱感、動悸などの自律神経失調症状がひどい、もしくは治りにくい場合、ご相談時にむちうちや事故にあったかなどの質問をします。頚椎の何番が異常かは気功を使えばわかるので、その反応と自律神経の反応が同じであれば別々の漢方を出すことがあります。頚椎の異常を良くしないといつまでたっても自律神経の失調は良くなりません。最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。

こむら返り

 “足がつる”と表現される“こむら返り”は、主にふくらはぎにおこる筋肉けいれんの総称で、自分の意志とは無関係に筋肉が持続的な攣縮を起こし、多くは激しい痛みを伴います。ふくらはぎの筋肉に起こることが多いですが、そのほか足の裏・趾・太ももなどでも起こります。睡眠中(明け方に多い)に見られるほか、激しい運動中や筋肉を使い過ぎた後にも見られます。一般に、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質異常やそれらが不足する状態などが原因で生じるといわれていますが、実は多くの場合マグネシウム不足が基本にあると考えられています。一方、原因が特定できない状況で起こることもあります。こむら返りは誰にでも生じますが、中には病気が隠れていることもあるため、病気が疑われる場合は医療機関に相談するようにしましょう。こむら返りは、上記のような異常が主な原因とされていますが、その多くが食事からのマグネシウムの慢性的摂取不足のほか、下痢・嘔吐・発汗・激しい運動に伴うマグネシウム消費や利尿剤による体外への喪失によるマグネシウム不足などが挙げられます。脱水や局所の冷えは末梢循環不全を介して筋肉組織内のマグネシウム不足をさらに悪化させます。したがって脱水や冷えはこむら返りの直接的な原因でなく、悪化させる要因といえます。マグネシウムは収縮した筋肉を弛緩させる(ゆるめること)はたらきをしています。そのため、マグネシウム不足では筋肉を弛緩しにくくなります。また、ふくらはぎなどの筋肉に存在する過収縮を予防するセンサー(腱紡錘)はマグネシウムが不足するとその機能が低下するため、弛緩がさらに難しくなります。これがこむら返りです。こむら返りは、原因が特定できない状況で生じることもあります。しかし、局所の筋肉を使いすぎて過収縮を起こし“こむら返り”に類似した症状が生じるなど、何かしらの原因が関連付けられることもあります。そのほかにも、腎不全(特に透析中)や糖尿病、メタボリックシンドローム、肝硬変、熱中症、甲状腺機能低下などの病気や、妊娠(特に妊娠初期の悪阻おその酷い時期)期間中に関連して生じることもあります。こむら返りでは、自分の意志とは無関係に筋肉が収縮を持続するようになります。筋肉の収縮は、外から見て分かることもあります。また、収縮に伴い多くは激しい筋肉の痛みを自覚します。運動に関連したこむら返りは、運動中や運動後に生じることが多いです。病気に関連して発症する場合は、夜間の就寝中に生じることがしばしばあります。こむら返りでは、まず原因を調べることが大切です。運動によるこむら返りが疑われる場合には、必ずしも検査をするとは限りません。しかし運動と関係なく生じる場合や、こむら返りを繰り返すような場合、症状から何かしらの病気が疑われる場合には、より積極的に原因を調べます。具体的には、血液や尿を用いて電解質、腎機能、肝機能、甲状腺機能などの異常があるかどうかを確認します。調べる電解質には主にマグネシウム、カリウム、カルシウムがありますが、特にマグネシウムが重要です。こむら返りが生じた場合には、収縮した筋肉をゆっくり伸展させるようにします。筋肉の冷えや脱水により症状が悪化することがあるため、水分を取り局所を暖めて血流をよくする、マッサージをして筋肉を和らげるなどで対処します。薬物療法として末梢性筋弛緩剤や漢方薬では芍薬甘草湯が処方されることが多いですが、偽アルドステロン症(高血圧、低カリウム血症)のリスクがあるので、高血圧患者や高齢者で心疾患などがある場合などでは、常用には注意を要します。こむら返りは運動に関連して生じることが多いため、運動前にはストレッチや準備運動などを行うことも大切です。また、運動中に水分・電解質が失われることでも誘発されるため、適切に休息を取りつつ、水分補給・電解質(特にマグネシウム、カリウム、ナトリウム)補給を心がけることが大切です。マグネシウム不足を予防するために日常の食生活ではマグネシウムの多い食材を意識して取ることも重要です。マグネシウムを食事だけでは十分に取れない場合は、栄養機能食品やサプリメントなどを利用してもよいでしょう。なお、基礎疾患が明らかな場合はそれに対しての治療介入が検討されます。カルシウムの主なはたらきは、カルシウムは骨や歯の主成分で、丈夫な骨や歯をつくるために欠かせない栄養素です。食べ物から摂取したカルシウムは、小腸で吸収されて体内で骨や歯の材料である“ヒドロキシアパタイト”という成分へ合成され、骨や歯を形成します。骨はカルシウムの貯蔵庫としての役割もあり、血液や細胞のカルシウムが不足すると骨からカルシウムが溶け出し必要な部位へと補充されます。カルシウムは血液中で常に一定の濃度を保っています。細胞の内外で濃度差などを利用して神経伝達物質などを運び、様々な情報を伝達しています。筋肉が行う収縮や弛緩はカルシウムが調整しています。例えば、心臓の拍動も一種の筋肉運動であるため、正常に心臓が拍動するためには、カルシウムの働きが重要となります。カルシウムは体内で吸収されにくい栄養素ですが、ビタミンDと一緒に摂取することで効率よくカルシウムを摂取することができます。また、ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨にカルシウムが沈着するのを助ける働きがあります。ビタミンDはアンコウの肝、サケ、イワシ加工品を筆頭にいろいろな種類の魚介類に含まれています。また、キクラゲなどキノコ類にも多く含まれています。カルシウムを効率よく摂取するために、ビタミンDも一緒にとるように意識してみてはいかがでしょうか?カルシウムはビタミンDだけでなく、マグネシウムとも深い関係があります。マグネシウムにはカルシウムと同様に骨や歯の生成を助ける働きがあり、濃度が一定になるように調整されています。また、マグネシウムはカルシウムと拮抗して血圧を調整します。マグネシウムは動脈を弛緩させて血圧を下げ、カルシウムは収縮させて血圧をあげます。このようにカルシウムとマグネシウムは体内で拮抗しながら、様々な生体反応に関わっているためバランスよく摂取することが重要です。食事だけでカルシウムとマグネシウムをバランスよく摂取するのはなかなか難しいですよね。摂取する理想の比率としては、カルシウム:マグネシウム=2:1が望ましいとされています。参考にしてください。

漢方と鍼灸

 こむら返りに芍薬甘草湯が良く出ますが、高齢者や食事のバランスが悪い方が常用すると甘草の副作用が出やすくなります。気を付けましょう。そうならないために問診ではこむら返りについてだけでなく、全身をみます(木を見て森を見よという東洋医学の思想)。もちろん血液検査の表もあれば見させてください。脱水、栄養不足、他の疾患が関係しているか原因を探ります。こむら返りを想定して最適な漢方食養生サプリツボを選択して改善していきます。

ヘパーデン結節(第一関節)・プシャール結節(第2関節)

 へバーデン結節では、指の第一関節(正式にはDIP関節といいます)が腫れたり骨が変形して、指が曲がったまま伸びなくなる、手を握る際にこわばったような感じや痛みがある、指の爪の付け根に水ぶくれのようなものができているなどの症状がでます。これは指の第一関節で骨と骨の間の軟骨がすり減って、骨が変形することで起こる症状です。変形が進むと関節がこぶのように盛り上がって目立つようになります。これをへバーデン結節と呼びます。指の第1関節(DIP関節)が変形し曲がってしまう原因不明の疾患です第1関節の背側の中央の伸筋腱付着部を挟んで2つのコブ(結節)ができるのが特徴です。この疾患の報告者へバーデンの名にちなんでヘバーデン結節と呼ばれています。いろいろな程度の変形があります。すべての人が強い変形になるとは限りません。ここでは、一般的な呼び名としてDIP関節(遠位指節間関節)を第1関節と呼んでいます。示指から小指にかけて第1関節が赤く腫れたり、曲がったりします。痛みを伴うこともあります。母指(親指)にもみられることもあります。第1関節の動きも悪くなります。また、痛みのために強く握ることが困難になります。第1関節の近くに水ぶくれのような透き通ったでっぱりができることがあります。これをミューカスシスト(粘液嚢腫)と呼びます。原因は不明です。一般に40歳代以降の女性に多く発生します。手を良く使う人にはなりやすい傾向があります。遺伝性は証明されてはいませんが、母や祖母がヘバーデン結節になっている人は、体質が似ていることを考慮して、指先に負担をかけないように注意する必要があります。第1関節の所見はX線(レントゲン)所見や手術所見から見ても変形性関節症です。第1関節の変形、突出、疼痛があり、X線写真で関節の隙間が狭くなったり、関節が壊れたり、骨棘(こつきょく)があれば、へバーデン結節と診断できます。保存的療法としては、局所の安静(固定も含む)や投薬、局所のテーピングなどがあります。急性期では少量の関節内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)なども有効です。保存的療法で痛みが改善しないときや変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合は、手術を考慮します。手術法にはコブ結節を切除するものや関節を固定してしまう方法が行われます。第1関節が痛むときは安静にしましょう。痛くても使わなくてはならないときは、テーピングがお勧めです。普段でも指先に過度な負担が生じることを避けましょう。

 同じような変化が指の第2関節(正式にはPIP関節といいます)でおこると、ブシャール結節と呼びます。骨の変形が進むと皮膚を刺激して爪側に水ぶくれのようなでっぱりができることがあります。これを粘液嚢腫(ミューカスシスト)と呼びます。原因は不明とされています。指をよく使う職業の人がなりやすいとされていますが、一般には40歳以上の女性に多く、これには女性ホルモンの変化が大きく関わっていると考えられています。更年期になると女性ホルモンの中でもエストロゲンが減少します。エストロゲンは軟骨を滑らかな状態に保つ作用があるため、これが減少すると軟骨がすり減るのが早まる可能性があると考えられます。指の第二関節の腫れ、痛み、こわばりなどの症状を伴い、変形が進行すると、関節を動かすことが難しくなります。稀に、関節に水が溜まってしまうケースもあります。また、雑巾が強く絞れなかったり、ペンや箸をうまく使えないなど、日常生活に支障をきたすような症状が現れることもあります。ブシャール結節の原因は、現在もはっきり分かっていません。ただし、遺伝、加齢、更年期・妊娠・出産時のホルモンバランスの乱れ腎臓機能の低下、手先の使いすぎなどが原因ではないかと言われています。問診、触診、画像検査などを行います。また、ブシャール結節と似た症状を持つ「関節リウマチ」との鑑別のため、血液検査を行うこともあります。免疫に異常の見られる関節リウマチであれば、血液検査の数値に異常が確認できます。ブシャール結節では、その異変が認められません。
 その他、関節リウマチの症状に含まれる、発熱、倦怠感、貧血、関節破壊があるかどうかなどを確認することも、正確な診断のために重要になります。関節破壊の有無は、レントゲン検査で確認します。検査で得られた情報をもとに、関節リウマチなどの似た病気との識別を行いながら、診断します。テーピングなどで患部を固定し、安静を保つことで、痛みは多少抑えられます。その上で、湿布、軟膏、温熱療法、炎症鎮痛剤、その他薬物療法などの治療を行います。日常生活に支障をきたすような強い症状が現れている場合には、手術を検討する必要があります。ブシャール結節の手術では、指を曲げる機能を担う「腱」を部分的に切除します。関節にかかる負荷を軽減し、指の動きを円滑にし、痛みを和らげます。

漢方と鍼灸

 関節の炎症、浮腫を改善する漢方、腎虚血虚を補う漢方食養生で改善します。一番痛い箇所から最適な漢方食養生サプリツボを選択し治療していきます。

肋間神経痛

 肋間神経痛とは、肋骨の下を走る神経に何らかの原因で痛みが生じることです。肋間神経痛自体が1つの病気なのではなく、あくまで原因となる病気や外傷、解剖学的な異常が引き起こす症状の1つとして捉えられています。また、肋間神経痛を引き起こす原因が不明な場合もあります。肋間神経は、12個ある胸椎の間から左右に対となって出て各肋骨の下を走り、胸壁と腹壁の筋肉や皮膚の運動・知覚を司っている末梢神経です。通常は胸部の左右のうち、どちらか一側に起こるとされています。また、肋骨に沿って水平方向に痛みを感じることも特徴です。症状の程度や現れ方は原因によってさまざまですが、特に病的な異常がない一次性(原発性)肋間神経痛と、何らかの病気に起因する二次性(続発性)肋間神経痛に分けられます。それぞれの主な原因は以下のとおりです。

 一次性は病気や外傷、解剖学的な異常がないにもかかわらず発症します。ストレスによるものが多いとされていますが、不適当な姿勢を長時間続けることで肋間神経が骨などによって直接刺激されて発症することもあります。

 二次性は何らかの病気や外傷、解剖学的な異常によって生じるものです。さまざまな原因がありますが、それぞれ以下のようなことが原因として挙げられます。病気:胸膜炎、肺がん、肺炎などの胸郭内病変、脊椎や肋骨の腫瘍帯状疱疹など、外傷:肋骨骨折、肋軟骨炎など、解剖学的異常:椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、側弯症などで多くは、肋間神経を直接刺激することで発症します。一方、帯状疱疹は、ウイルス感染によって生じ、通常は皮疹を伴いますが肋間神経痛だけが生じることもあります。特定の肋間神経に生じる痛みであるため、その肋間神経が支配する筋肉や皮膚の領域のみの痛みが生じます。痛みは非常に強いことが多く、広範囲ではなく、範囲が限られた痛みであることが特徴です。

 原発性の場合は、肋間神経そのものの痛みより肋間神経が支配する筋群(主に内・外肋間筋)のれん縮による痛みが主であると考えられます。そのため、不自然な姿勢や同じ姿勢を長時間取っていたり、ストレスにさらされたり、肩や背部の筋群が凝ったりすると起きやすくなります。症状は発作的で、数秒~数十秒続くことが特徴です。
 一方、続発性の場合は、上半身を動かしたり、前かがみになったりしたときに肋間神経への圧迫が強くなって非常に強い痛みが生じます。また、原発性と異なり、原因となっている病気や異常が取り除かれるまで続くなど、痛みの継続時間が極めて長いことが特徴です。また、帯状疱疹ではピリピリとした表層部の痛みが生じ、特有の皮疹を伴わないことも多いです。
 肋間神経痛の診断でもっとも重要なことは、痛みの原因を見逃さない(原発性肋間神経痛を除外する)ことです。続発性の原因疾患としては、前述のとおり(悪性)腫瘍、胸膜炎、骨折、(急性)帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛などが考えられます。また、原発性の場合、ほとんどのケースで痛みのほかに当該部位にほかの神経症状(知覚過敏や知覚鈍麻など)がみられます。原因が見つからなかった場合は原発性として治療を開始します。一方で、痛みがある部位が変わった、痛みの程度がひどくなった、痛みの頻度が頻繁になったなど、症状が変化した際には、続発性である可能性を再検討する必要があります。

 診断方法には後述する画像診断のほか、理学所見(視診、触診、腱反射などによる反応など)もあります。また、肋間神経痛は胸壁や腹壁に痛みが生じるため、画像検査で明らかな異常がない場合には狭心症などの心疾患や消化器病変がないかを調べるためにも心電図検査、心臓超音波検査、内視鏡検査、血液検査などが行われることもあります。X線検査は肋骨や脊椎の骨折、腫瘍などの異常を評価できる検査です。しかし、肋骨骨折はX線検査でははっきり分からないことも多々あります。ほかにも、肺炎や肺がんなどの胸郭内病変を発見することが可能です。CT検査は、肋骨や脊椎、胸郭内の病変を詳しく観察できる検査です。X線では分からない骨折を発見することもできます。MRI検査は、椎間板ヘルニアなどの脊椎病変を観察できる検査です。椎間板の圧迫や脱出などを詳しく評価することが可能です。また、脊椎にある病気の治療方針を決めるうえでも重要な検査となります。肋間神経痛の治療は続発性の場合と原発性の場合で異なります。続発性の場合は、原因となっている病気に対処することが第一となり、それぞれに適した手術や患部の固定、服薬治療などの治療が優先して行われます。特に帯状疱疹は早期から抗ウイルス薬を投与しないと症状が長引くことがあるので注意が必要です。また、帯状疱疹の後遺症である帯状疱疹後神経痛が生じている場合、原因への対処は困難です。原因疾患への対処が困難な場合や対処しても痛みが残る場合、あるいはその両方の場合には、原因疾患の病態に応じて、日本ペインクリニック学会の作成する“神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン”の指定する薬(医療用麻薬を含む)の使用や神経破壊ブロック注射(原因疾患の病態によっては適応とならない場合もある)などを行います。なお、急性帯状疱疹のような炎症性疾患への使用を除き、一般的な抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)は効果がないため、注意が必要です。帯状疱疹やその後遺症である帯状疱疹後神経痛は、前述のとおり治療が困難なことから予防が重要です。特に帯状疱疹の好発年齢である50歳以上の人にはワクチン接種を推奨しています。帯状疱疹のワクチンには不活化ワクチン(不活化(殺菌)されたウイルス・細菌を材料として作られたワクチン)と生ワクチン(生きたま弱らせたウイルス・細菌を材料として作られたワクチン)の2種類があり、昨今の研究では不活化ワクチンの方が生ワクチンよりも持続性・有効性が高いことが分かってきました。具体的には生ワクチンの有効性が60~70%程度、不活化ワクチンが90~95%程度とされています。また、生ワクチンの場合は、特に70歳以上の人が接種した場合の有効性が大幅に落ちるといわれています。持続性に関しても、生ワクチンが3~5年程度持続するのに対して、不活化ワクチンが10年以上と、こちらも不活性ワクチンのほうが高いとされています。また、生ワクチンはステロイドを使用中の人やがんの治療中の人など、一般的に帯状疱疹にかかりやすいとされる免疫に異常のある人は接種できません。ワクチンは2種類とも保険適用外ですが、生ワクチンが7,000~9,000円程度、不活化ワクチンが40,000~50,000円程度(2~6か月間隔で2回接種)と価格や接種回数にも違いがあります接種時は担当の医師とよく相談し、それぞれのワクチンの特徴を理解したうえで検討するとよいでしょう。急性期の原発性肋間神経痛の場合、特に肋間神経ブロック注射によって症状の改善が期待できます。これは、肋間神経に局所麻酔薬を直接注入して痛みを麻痺させる治療です。ただし、施行できる医療機関が近隣にないなどの理由で対応が間に合わないこともあるため、場合によってはNSAIDsやその他鎮痛薬、湿布薬、漢方薬(芍薬甘草湯)などが併用されます。また、鍼灸も有効な場合があります。痛みに対する予防としては、適度な運動を日常的に行うこと、十分な休息を取ること、呼吸法やヨガなどでストレス耐性を高めることなどがあります。なお、痛みが酷くなる場合には、ストレッチなどの運動は行わないほうがよいとされます。

漢方と鍼灸

 原発はストレス、姿勢の悪さ、2次性は帯状疱疹などの疾患。ストレス性の場合、ストレスをみる反応穴から漢方を選択して飲んで頂くと痛みが消失します。帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛も抗ウイルス剤で痛みが残る方や具合が悪くなる方も多く、免疫の漢方食養生を飲んで頂くと痛みが消失します。また悪性腫瘍の確認は大事ですね。痛みの患部から、最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。痛みが残る方はご相談ください。

変形性肩関節症

 変形性肩関節症とは、肩関節の軟骨がすり減り、関節が変形した状態をいいます。関節は骨と骨のつなぎ目のことを指し、肩関節は肩甲骨関節窩と上腕骨頭で構成され、これらの骨の表面は軟骨で覆われています。軟骨は骨同士がぶつからないようにクッションの役割を持っているほか、関節をスムーズに動かすうえでも大きな役割を果たしています。しかし、長年の過負荷などによって軟骨がすり減ることがあり、軟骨がすり減ることで炎症が生じ(肩関節炎)、軟骨の摩擦が進むとやがて骨棘形成がおき、肩関節が変形していきます。また、炎症などに伴って痛みや腫れが見られたり、肩の可動域が狭くなったりするようになります。変形性肩関節症が発生する頻度には人種差があり、東洋人は欧米人よりも少ないといわれていましたが、近年では日本でも増加傾向にあります。変形性肩関節症の原因は、明らかな原因がなく起こる“一次性”と、原因が判明している“二次性”に分けられます。一次性は原因が不明のもので、骨格的な問題などの内因的な要因と加齢変化、スポーツ、肉体労働などによる肩関節への過負荷などによる外因的な要因とが考えられています。一次性の“変形性関節症”は肩だけでなく、肘、指、股、膝などのあらゆる関節に起こりえます。その中でも特に膝や股の関節に発症することが多く、これらの関節と比べて肩の発生頻度はそれほど多くありません。その理由の1つとして、膝や股の関節は常に体重による負荷がかかるのに対して、肩関節は体重の影響を受けにくいことが挙げられます。また肩関節は周囲にある筋肉や靱帯、腱が発達していて、関節の中で可動域がもっとも広いことから、一定の部位に力が加わりにくい構造になっています。このような特徴から、肩関節はほかの関節よりも過負荷によって軟骨がすり減ることは少なく、一次性の変形性関節症に発展しにくいと考えられています。二次性は何らかの病気・病態に続発するもので、その誘因として腱板断裂、上腕骨頭壊死、関節リウマチ、上腕骨近位端骨折などが挙げられます。腱板断裂とは、肩にある腱板と呼ばれる4つの筋腱(肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋)が断裂する病態を指し、肩の使いすぎや外傷などによって断裂が起きます。腱板断裂の初期では痛みや可動域制限といった症状がおき、断裂が進行し断裂サイズが大きくなると求心位が保持できなくなり上腕骨頭が上方化します。さらに病状が進行すると関節の変形が進行していきます。上腕骨頭壊死は、何らかの原因によって上腕骨頭が壊死してしまう病気です。その原因にはさまざまなものがありますが、上腕骨頭壊死による変形性肩関節症の原因としては、特にアルコールの大量摂取やステロイド薬の大量服用によるものが多いといわれています。変形性肩関節症を発症すると、肩関節の痛みや腫れ、肩の動かしにくさや可動域制限などが生じます。また痛みは肩を動かしたときだけでなく、安静時や夜間に見られることもあります。変形性肩関節症の診断は、主にX線検査によって行います。X線検査の所見として、関節裂隙(関節の隙間)の狭小化・消失、骨棘(骨の突出)形成、肩甲骨関節窩や上腕骨頭の変形などが見られます。より詳しく調べるために、CT検査やMRI検査などを行うこともあります。変形性肩関節症の治療には、薬や注射、リハビリテーションなどで痛みのコントロールを行う“保存的治療”と、外科的に治療を行う“手術的治療”の2つがあります。まず保存的治療を行い、それでも生活に支障をきたす場合に手術的治療を検討します。保存的治療で用いる薬として、内服薬(非ステロイド性抗炎症剤)、湿布剤、関節内注射(ステロイド剤、ヒアルロン酸ナトリウム)があります。一般的にはまず内服薬で痛みの軽減を図り、かぶれなど皮膚異常がない場合に湿布剤を用います。痛みが強い場合や夜間痛がある場合に、関節内注射を行うことがあります。薬物療法に加えて、運動療法(リハビリテーション)で肩関節の可動域の改善を図ることもあります。手術的治療としては人工関節置換術を行うのが一般的です。人工関節置換術とは、すり減った軟骨や傷んだ骨を外科的に切除して、金属とポリエチレンなどでできた人工関節に置き換える手術のことです。主な術式として、上腕骨頭だけを置換する人工骨頭置換術、肩甲骨関節窩と上腕骨頭を置換する人工肩関節置換術、本来の肩関節の形状と反転させた人工関節に置換するリバース型人工肩関節全置換術があります。どの手術法を用いるかは、患者の年齢、骨や腱板の状態によって異なります。

漢方と鍼灸

 まず炎症をとる漢方、軟骨の材料になる食養生、補腎・補血の漢方食養生を使います。変形し痛みのある個所(反応穴)から最適な漢方食養生サプリツボを選択し改善していきます。

肩こり

 肩こりと言えどもいろいろな原因があります。もんで楽になってもまた次の日には戻っているということはありませんか?人間は二足歩行をするために、もともと首や腰に負担がかかりやすい体をしています。首から肩にかけての筋肉が姿勢を保つために緊張し、血行が悪くなって、重く感じるのが肩こりです。首と肩の周辺には、さまざまな筋肉があります。これらは重い頭や腕を支えて立っているだけで、緊張し続けています。緊張が続くと筋肉が疲れて疲労物質がたまり硬くなります。それが血管を圧迫して血液の循環を悪くしたり、末梢神経を傷つけたりして、こりや傷みを起こします。また、血行不良になると、筋肉に十分な酸素や栄養が供給されず、筋肉に疲労がたまって、ますます筋肉が硬くなってしまいます。肩こりを引き起こす主な要因としては、筋肉疲労と血行不良、末梢神経の傷などが挙げられます。それらの要因が単独、または、互いに関連し合いながら肩こりを引き起こします。人間の背骨がゆるやかなS字カーブを描いているのは、重い頭や腕を支えながら二本足で歩けるように、姿勢を保つため。背骨の間には「椎間板」があって、衝撃をやわらげるクッションの役割を果たしています。年を取ると、このクッションがだんだんつぶれて硬くなり「頸部脊椎症」といわれる状態になり、これも首や肩の痛み・こりの原因になります。40歳ごろからみられはじめます。50歳前後に起こる肩の痛みは、「五十肩」の場合があります。「肩関節周囲炎」という病名が使われることもあります。腕を体の後ろに回すこと、例えば腰の後ろでエプロンのひもを結ぶ動作がしづらくなるなどが特徴で、腕を上げようとするときに痛みを感じます。原因は明らかではありませんが、肩関節をとりまく腱の組織が老化して、使いすぎによる炎症が起こっていると考えられています。頸肩腕症候群は、同じ作業を繰り返すなど、肩から手の指までの体の特定の部位を動かし続けることで発症するといわれています。症状は動かす部位によって異なり、肩こりのほかにも肘や腕、手の関節、手の指の痛み・だるさが現れる場合もあります。頚椎症とは、加齢などによって頚椎(首を構成する7つの骨)や、頚椎の骨と骨の間にある椎間板が変形し、首や肩などの痛みが現れる病気のことをいいます。頚椎や椎間板の変形は誰にでも起こるもので、変形しただけでは必ずしも症状が現れるわけではありません。変形が引き金となって頚椎の近くの脊髄や神経根が圧迫を受けると、主に首や肩、腕の痛み、手足のしびれ、手が動かしにくくなる、つまずきやすくなるなどの症状がみられるようになります。頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎を構成する7つの骨の間にある椎間板の一部が何らかの理由で正しい位置から外れて飛び出てしまう病気です。飛び出した椎間板が近くの脊髄や神経を圧迫すると、首や肩、腕の痛み、手足のしびれ、手が動かしにくくなる、つまずきやすくなるなどの症状が現れる場合があります。肩こりは関節や筋肉の病気のほかにも、更年期障害や緊張性頭痛、血圧の異常、狭心症・心筋梗塞など、体の病気の一症状として現れる場合もあります。閉経前後の5年間を更年期と呼びますが、この期間に体や心にさまざまな症状が起こることがあります。その中でも日常生活に支障をきたすものが更年期障害です。症状はホットフラッシュ(ほてりやのぼせなど)、情緒不安定や不眠などが代表的ですが、肩こりや頭重感、腰痛、動悸などが現れることもあります。緊張性頭痛は、同じ姿勢が続くなど首や肩の筋肉の緊張が主な原因と考えられている頭痛で、頭の両側が締め付けられるような痛みが大きな特徴です。頭の痛みに加え、肩こりや目の疲れ、めまいなどの症状がみられることがあります。高血圧・低血圧など、血圧の異常でも肩こりが一症状として現れる場合があります。いずれも肩こりや頭痛、体のだるさ、めまい、耳鳴り、動悸などの症状がみられることがありますが、自覚症状がないことも少なくありません。動脈硬化などによって冠動脈(心臓をとりまく動脈)が狭くなり、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなった状態を狭心症、狭心症が進行して冠動脈がさらに狭くなって血管が完全に詰まった状態を心筋梗塞といいます。激しい胸の痛みや苦しさを伴う事が一般的ですが、肩こりや歯が痛むように感じられる関連痛といわれる症状が現れる場合があります。狭心症・心筋梗塞ともに放置しておくと生死にかかわる可能性がありますので、強い胸の痛みや圧迫感などの症状がある時には、すぐに病院を受診することがすすめられます。また猫背などの姿勢をとっていると、重い頭を支える肩や背中の筋肉が緊張し、血流が悪くなり、肩こりが起こるといわれています。姿勢を改善するためには、日頃から意識して正しい姿勢を保つことが大切です。姿勢が悪くなっていると感じるときには、胸を張る、腰を伸ばすなどして意識的に姿勢を正すようにしましょう。長時間のデスクワークや運転などで同じ姿勢が続くと、首や肩などの筋肉が過剰に緊張してしまい肩こりが起こるとされています。同じ姿勢を続けることがあれば、定期的に肩回りの軽いストレッチを行いましょう。筋肉の緊張が解消されると肩こりが軽減されることが多々あります。毛様体筋と呼ばれる目の筋肉は自律神経によってコントロールされており、眼精疲労によって毛様体筋が疲れることで首や肩の凝り、頭痛などの症状が現れることがあるといわれています。眼精疲労は、パソコンやスマートフォンなどの画面を長時間見続けることでも起こりますが、メガネやコンタクトレンズが合っていないことも原因の一つに挙げられています。画面の見過ぎなら時間を短くする、メガネやコンタクトレンズが合っていなければ合うものに変えるなど、原因に応じて対策をとりましょう。また、ビタミンB群が眼精疲労の改善に効果があるといわれています。食事などで積極的に摂取することも考えましょう。日頃から体を動かさないでいると、筋力が低下し体が重力に抵抗できなくなり姿勢が悪くなります。また、運動不足が続くと筋肉が低下し血流の悪化を招きやすくなります。その結果肩の筋肉の緊張や疲労が起こり、肩こりを引き起こしやすくなるといわれています。運動は筋力を増強するだけでなく血流をよくする効果もあります。運動不足を感じたら、定期的にウォーキングや体操などの軽い運動を行いましょう。ウォーキングの際には手を大きくふることで肩の筋肉をほぐすことができます。勉強や仕事、人間関係などでストレスがかかると、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまいます。そうなると体の調整がうまくできず、肩こりをはじめとする身体症状、イライラや情緒不安定などの精神症状が現れることがあります。ストレスを感じたら、まずは何が原因になっているのかを考え、その原因に対してストレス解消の手段があれば積極的に取り組むようにしましょう。また、生活習慣の改善や趣味の実践、軽い運動、怒りや不安感といった感情を周囲の人に聴いてもらうことも、ストレスを発散するために大切なことです。できることから始めていきましょう。

漢方と鍼灸

 それぞれの原因に対して向き合わないといつまでも辛い状況は変わりません。標治と本治で取り組むべき症状ですね。標治は肩の痛み、コリをとること。本治は再発しないように、もしくは軽くなることです。ちまたでは肩こりに葛根湯を常用しているようですが、麻黄が入っているので連用はできません。麻黄は発汗剤であり興奮剤ですので毎日飲んでいると副作用もでやすいですよ。肩こりのつらい箇所と各疾患の反応穴から本治と標治の漢方食養生やサプリツボを選択して治療していきます。肩こりの本当の原因を見つけましょう。

変形性股関節痛・特発性大腿骨頭壊死症

 脚の付け根(鼠径部)にある股関節は、脚と骨盤とをつなぎ体重を支える重要な関節です。太ももの骨の丸い先端部分(大腿骨頭)が、骨盤のお椀のようなくぼみ(寛骨臼)にはまった構造をしています。また、大腿骨頭・寛骨臼ともに表面は弾力のある関節軟骨で覆われていて、関節を動かしたり体重をかけたりしても、骨同士が直接ぶつからずにスムーズに動くようになっています。
 変形股性関節症は、股関節を構成する骨や関節軟骨に不具合が生じることで、関節軟骨の減少、骨の変形を来す病気です。病状の進行に伴い関節の痛みや動きに制限が生じ、日常生活にも支障が出るようになります。加齢とともに徐々に悪化することもあり、適切なタイミングで治療するかどうかを決定することが重要です。そのため、痛みがなくても定期的に専門医に受診し、経過を観察しながら、適切な時期に適切な治療を受けることが大切です。股関節は丸いボールのような大腿骨の骨頭と、骨盤側で受け皿となるお椀型の寛骨臼が組み合わさって構成されています。発育時に股関節のかみ合わせが悪かったり、加齢によって関節軟骨がすり減ったりすると、股関節のスムーズな動作が障害を受けて変形性股関節症が生じます。発育性股関節形成不全は日本においては変形性股関節症の発症の主な原因となっています。ただし、発育性股関節形成不全を生じたすべての方が、変形性股関節症を発症するわけではありません。加齢に従い軟骨が弱くなり、長年の負担が積み重なってすり減ることも変形性股関節症の一因です。社会全体の長寿・高齢化が進み、結果的に変形性股関節症の患者さんも増えています。また、近年の日本における変形性股関節症の増加と、食生活の欧米化との関連も考えられています。変形性股関節症は前股関節症・初期・進行期・末期の4段階に分類され、変形の程度に応じて症状も異なります。初期症状は足のつけ根やお尻、膝の上部にこわばりや重い感じがあり、歩き始めや長時間歩いたとき、階段の昇降時に痛みを感じるようになります。炎症が強い場合や股関節唇の損傷があると、初期でも強い痛みが出ることがあります。進行期から末期へ進むにつれて痛みが強くなります。日常動作の制限も増えるため、生活に支障を来すようになります。変形性股関節症は、症状の進行具合や既往歴などから疑われます。変形性股関節症の可能性が疑われる場合、レントゲン検査が行われます。ごく初期の段階では軽い変化がみられるのみですが、重症度が高くなるにつれて関節の隙間が狭くなる、軟骨下骨が硬くなるなど、より明確な変化がみられます。さらに進行すると関節軟骨も消失します。このような形態の変化はCT検査やMRI検査を行うことでより明確に確認できます。変形性股関節症の治療は、患者さんの年齢、原因となる病態、また病状の進行度によって適宜選択されます。発症初期であれば保存療法、病状が進行している場合は手術が行われます。発症初期は、痛みを緩和するために副作用の少ない消炎鎮痛剤を使いながら、運動療法を中心とした保存療法を行います。このとき、運動による筋力の増強、筋肉バランスや姿勢の改善、適正な体重の維持など、生活指導が行われることもあります。変形性股関節症の手術には大きく分けて骨切り術と人工股関節置換術があります。骨切り術は、関節近くの骨を切り、関節のかみ合わせをよくすることで軟骨のすり減りを防ぐ手術です。骨切り術のなかでも寛骨臼回転骨切り術という術式が比較的よく選択されます。この手術は、軟骨がすり減って病状が進行することを防ぐ目的で行われます。骨盤側の受け皿のかぶりが浅い場合に、受け皿の一部の骨を切り、外側にスライドさせ、しっかりとかぶせるようにします。骨切り術には、自分自身の関節を残せることに関連したメリットがあります。ただし、骨切り術にはデメリットもあるため、患者さんの病状に応じて人工股関節置換術を選択することもあります。人工股関節置換術を受ける際には、注意すべき合併症の説明や術後避けるべき姿勢を指導されることがあります。また人工股関節は、再手術(再置換)が必要になる場合があります。こうした注意点があることもあり、手術後は担当医の指示のもと、定期的にチェックを受ける必要があります。かつては20年経過するとおよそ6割にゆるみが生じ、そのうちの約半数が再置換を受けているとされていましたが、現在は摩耗に強いインプラントが開発されており、長期の耐用年数、インプラント寿命が期待されています。

 特発性大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭への血流がなんらかの理由により障害され、骨の組織が死んでしまう(骨壊死)病気です。骨壊死を起こした部分が広がると、体重などの負荷よって大腿骨頭が潰れてしまい、股関節に痛みが起こるようになります。特発性大腿骨頭壊死症は、自己免疫疾患などの治療のためにステロイドを服用していた方やアルコールを多飲する方に認められることが多く、これに喫煙習慣が重なると発症リスクが高くなります。この病気は働き盛りの30~50歳代の方に多い傾向があります。
 関節リウマチは、免疫系の異常によって起こる自己免疫疾患の1つで、手足の関節を囲んでいる滑膜かつまくが炎症を起こし、これが関節の痛みや腫れ、動かしにくさなどを引き起こします。関節リウマチによる関節の炎症が持続すると、次第に関節の骨や軟骨も破壊されて症状が悪化します。30~50歳の女性に発症することの多い病気です。股関節は関節リウマチの影響を受ける関節の1つですが、多くの場合、同時に股関節以外の関節にも痛みや腫れなどの症状が認められます。そのため、股関節の治療に加えて、関節リウマチに対する薬物治療も必要になります。

 高齢の方は転倒などが原因で大腿骨を骨折しやすく、治療では骨折部分の骨の位置を修正し、プレートやボルトで固定して安定化させる手術が行われることがあります。しかしながら、高齢の方の骨は骨粗鬆症が進んで骨密度が低くなっていることが多く、術後にボルトがずれたり抜けたりして、それが股関節の痛みの原因になることがあります。
 股関節に異常がある場合、初期段階では椅子から立ち上がったときや歩き始めに痛みを感じるものの、歩いていると気にならなくなる程度の症状です。患者さんはさほど気にしていなくても、周りの人から「脚を引きずって歩いているよ」と指摘されることがあるなど、無意識に脚をかばって生活していることもあります。股関節の異常が進行すると、歩くときに常に痛みを感じるようになるほか、股関節を深く曲げる動作、たとえば“しゃがむ”“あぐらをかく”などの動きで痛みが誘発されます。また、足の爪を切る、靴下を履く、正座をするなどの行為も難しくなっていきます。さらに重症度が高くなると、じっとしていても痛みを感じるようになるため、立ち仕事がつらい、階段の上り下りに手すりが欠かせない、就寝時も痛みで目が覚めてしまうなど、日常生活に大きな支障をきたすようになります。股関節の異常を明らかにするために、ほとんどの患者さんでX線(レントゲン)検査を行い、大腿骨頭と寛骨臼のすき間の状態や骨棘・骨囊胞などの骨の変形、寛骨臼形成不全の有無などを評価します。変形性股関節症による股関節の異常の場合には、多くはX線検査のみで診断されます。X線検査で骨の変形があまり認められなかったにもかかわらず強い痛みがある場合には、特発性大腿骨頭壊死症などを疑いMRI検査を実施します。股関節の異常に対しては、主に保存療法と手術療法が用いられます。股関節の症状が軽度の場合は、安静にして鎮痛薬で痛みをコントロールしながら、杖や股関節を安定させるコルセットを用いて股関節への負荷を軽減します。若い方で杖を使うことに抵抗がある場合には、日傘を持ち歩いて必要なときに杖の代わりに使うとよいでしょう。また、股関節に大きな負荷をかけずに筋力を強化することのできる水中ウォーキングは、ダイエットにも効果があり、股関節痛のある患者さんに推奨される運動です。股関節鏡視下手術は、関節の変形などによって、寛骨臼の縁にある関節唇が損傷し、痛みを引き起こしている場合に行う手術です。股関節の周囲に小さな穴をつくり、そこから関節鏡と呼ばれる内視鏡や器具を挿入して関節唇を修復します。骨切り術は寛骨臼形成不全のある患者さんに用いられる手術で、寛骨臼の一部を切って回転・移動させることで、股関節への負荷を軽減する手術です。ただし、手術をするには関節の骨に関節軟骨が十分に残っている必要があるため、対象は早期の変形性股関節症で、比較的若い患者さんに対して実施されます。人工股関節置換術は、変形性股関節症、特発性大腿骨頭壊死症、関節リウマチ、大腿骨骨折後のトラブルなどによって損傷・変形した股関節を人工股関節(インプラント)に置き換える手術です。特に病状が進行して痛みが強く、日常生活への影響が大きな患者さんに対して用いられます。

漢方と鍼灸

 軟骨の再生や潤いには血流と材料(タンパク質、ビタミン、ミネラルなど)とホルモンの活性化が必要です。痛む箇所と異常箇所から最適な漢方食養生やサプリツボを選択し改善していきます。早期から始める方がいいでしょう。

【症例】48歳 股関節痛 漢方食養生で3か月で消失
【症例】65歳 股関節痛 漢方食養生鍼灸治療で4か月で消失