本文へ

 

admin@fuji-kampo

歯肉炎

 歯肉炎とは、歯ぐき(歯肉)に炎症が生じる病気のことです。歯と歯ぐきの間には隙間(歯肉溝)があり、その隙間に汚れがたまることが主な原因とされています。歯肉炎を発症すると歯ぐきが赤く腫れた状態になり、炎症が強くなると歯磨きなどの些細な刺激で歯ぐきから出血しやすくなったり、膿が出たりするようになります。このような状態に進行した場合は、歯槽骨(歯を支えている骨)にまで炎症が及ぶことで骨が溶け、最終的には歯が抜け落ちる“歯周炎”の可能性があるため注意が必要です。歯肉炎は丁寧なブラッシングなどで口の中を清潔に保つことにより症状は改善しますが、初期段階では痛みなどの症状が少ないため発症に気付かないことも少なくありません。自覚がないまま歯周炎に進行してしまうことも多いとされているため、日頃から適切な口腔衛生をキープすることが大切です。歯肉炎の主な原因は、上述したように歯磨きの不足などによって歯肉溝に歯垢や歯石などの汚れがたまることです。しかし、歯肉炎は口の中の不衛生さのほかにも、薬の副作用や病気が要因となって引き起こされることがあります。具体的には、抗てんかん薬、免疫抑制剤、カルシウム拮抗薬、経口避妊薬(ピル)などが挙げられます。これらの薬は、歯ぐきの組織を増殖させる副作用が生じることがあり、その結果、歯肉溝にたまった汚れが取れにくくなることで歯肉炎を引き起こしたり、悪化させたりすることが知られています。また、歯肉炎は白血病や糖尿病など免疫力の低下を引き起こす病気、妊娠などによるホルモンの変化、ビタミン不足、歯が完全に生え切らない状態である“半埋伏歯”や“不完全埋伏歯”によって引き起こされることもあります。一方で、歯肉炎はヘルペスウイルスやカンジダ感染が原因で発症することがあります。この場合、汚れによる歯肉炎とは治療法が異なるため注意が必要です。
 歯肉炎の初期段階では痛みなどの自覚症状はほとんどなく、本来ならピンク色の歯ぐきが腫れて赤くなります。炎症が進行すると歯磨きや食事などの些細な刺激で歯ぐきから出血が生じるようになるのが特徴です。また、歯肉炎は進行すると歯を支える歯槽骨にまで炎症が及び、歯槽骨を溶かすことで最終的には歯が抜け落ちる歯周炎を引き起こします。この状態にまで進行すると歯ぐきからの出血が目立つようになり、重症な場合には膿が出ることも少なくありません。口臭も悪化するとされています。

漢方と鍼灸

 患部の波長をとり臓腑経絡に落とし込んで漢方ツボを選択します。またウイルスや細菌、真菌が原因かどうか調べるツボを使い、生薬を選出します。免疫の漢方をつかって骨が溶けるのを防いだこともあります。歯肉炎によって歯がぐらつき抜くようにすすめられ、相談に来られた方も漢方をのんで抜かずに済んだ事例は多数あります。

喉が渇く

 口が渇く・喉が渇く、といった現象は、日常生活においてよくあることですが、それを自覚する時、体内では何かしらの要因によって水分が欠乏している状態がほとんどです。こまめな水分の摂取により状態が改善すれば問題ないですが、いくら飲んでも喉が渇く、尿量が異常なほど多い、などの場合は病気の疑いもあります。日頃から自身の体の声に耳を傾け、サインを見逃さずに何事も早期に発見することが大切です。
病気によるものは、更年期障害:更年期による多汗、頻尿も口渇の原因とされていますが、エストロゲンの減少により自律神経のバランスが崩れ、唾液の調整が乱れることで口や喉が渇きます。また更年期による精神的な症状も喉の渇きと関連があると考えられています。月経前症候群(PMS):月経開始の3~10日前ぐらいに、喉の渇きを含めた身体的・精神的症状が出やすくなります。生理:生理中はホルモンの働きが活発化され、子宮の強化や乳腺を発達させるため、水分を貯めようとして体内の水分が使われます。妊娠:妊娠中はホルモンの影響で喉の渇きを感じることが多くなります。また体内の血液量が普段より40%も増え、赤ちゃんが育つために多くの水分が必要になります。糖尿病の発症により高血糖になると、インスリンの不足により体内で吸収できなかった糖が尿に交じって排出されるようになります。すると多尿となり結果的に体内の水分が減少し喉が渇く、といった症状が出てきます。シェーグレン症候群の代表的な症状は、口の渇きと目の渇きです。自己免疫疾患のひとつで、異常な免疫システムが自身の唾液腺や涙腺を攻撃してしまい、その機能が低下してしまう病気です。中年以降の女性に多く、目や口の渇きや倦怠感などといった症状は日常でもありがちな状態なので、病気に気づかない人が非常に多いと言われています。尿崩症は一日の排尿量が3リットル以上となり、多尿に伴って口や喉の渇き、飲水の増加がみられる病気です。抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌低下や腎臓の異常により引き起こされます。排尿量より飲水が追い付かないと脱水となることもあります。甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され新陳代謝が必要以上に活発になる病気で、様々な症状を引き起こしますが、口の渇きもそのうちの一つです。副甲状腺機能亢進症は副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、骨からのカルシウム放出などにより血中のカルシウム値が高くなりすぎることがあります(高カルシウム血症)。その結果、尿中にカルシウムが排出され、多尿となることから脱水や喉の渇きを引き起こす原因となります。

 体の状態で「喉が渇く」ということは、脱水・唾液量の減少・汗をかくなどにより体内の水分が減少していると知らせるサインの一つです。体内の水分が減少する原因は、日々の生活の様々な場面で遭遇します。脱水・発熱は汗をかくことで体内の水分が大量に失われるため。
緊張状態になる場合、注目を浴びる・恥ずかしい思いをするなどの一時的な緊張やストレスにより唾液の分泌が減るため。空気が乾燥すると口腔内の水分も消失するため。大声を出す・長時間歌うなどで声を出し続けることにより、口内の唾液量が減少するため。加齢に伴う体内の水分量減少に比例して、口内の唾液分泌量も減少するため。主に抗アレルギー薬、高血圧の薬、抗うつ薬などに含まれる「抗コリン薬」と呼ばれる成分によって唾液の分泌が抑えられてしまうため。塩分を過剰に摂ると血液中のナトリウム濃度が上昇し、その血液を薄めるために細胞内の水分が使われるため。アルコールの過剰摂取は、アルコールには利尿作用があるため、尿量が増えて体内の水分が少なくなるため。口呼吸は風邪や花粉症などで鼻が詰まったり、マスク生活に慣れつい口を開けてしまったりすることが習慣化して口呼吸になり、口腔内が乾燥状態になるため。では養生法をみていきましょう。
①水分補給
まずは水分補給をしましょう。人間が一日に必要な水分量は2.5ℓ程ですが、このうち飲水での摂取は1.2ℓ程度と言われています。一度にたくさん摂るのではなく、少量をこまめに摂るようにします。脱水の場合は、経口補水液の摂取も有効です。
②適度な糖分を摂らないように注意する
糖分は腸管内での水分の吸収率を高める働きが期待できますが、糖分の多いジュースを飲みすぎると体は高血糖状態となり、多尿→脱水→喉の渇きから更にジュースを飲むといった悪循環になるので糖分の入っている飲料の過度な飲みすぎは禁物です。スポーツ飲料も同様で、偏った飲み方には注意しましょう。
③できるだけ温かいものを飲むようにする
熱すぎる飲み物は、水分が蒸発して喉が乾きやすくなることもありますし、逆に冷たすぎるものは体を冷やしてしまいます。腸での水分吸収を高めるには、熱すぎず適度に温かいものを飲む、または常温での摂取が良いとされています。
④乾燥しないように加湿等を行うようにする
特に冬は空気の乾燥が強まる為、口の渇きや喉の渇きを感じることがあります。加湿器の使用や室内に濡れたタオルを干すなど対策して部屋の中を加湿しましょう。
⑤日頃から塩分の摂りすぎに注意する
食生活において、塩分の濃い食事や外食・スナック菓子を日頃から控えるように心がけましょう。また、塩分の排出を促すカリウムの多い食品(例:バナナ・里芋・海藻類など)を一緒に摂るなどの工夫も有効です。
⑥アルコールの過剰摂取に注意する
アルコールだけを飲んでも水分補給にはなりません。アルコールの利尿作用により体内の水分が抜けやすくなりますので、特に夏場は水分もきちんと摂るように気を付けましょう。
⑦一日に摂取する水分の平均量は体重1キロにつき約35ml、およそ1,500~2,500mlとされています。喉の渇きで病院に行くべき症状とは、この摂取量を大幅に超える水分を摂取しても喉が渇くと感じる場合や、唾液の分泌量が減ってきて口が渇くと自覚している場合は、病気が原因の可能性があります。また、病気が原因となっている場合は腎臓系統の疾患の可能性が高いため、内科(腎臓内科や糖尿病内科など)を受診しましょう。

漢方と鍼灸

 東洋医学でのどの渇きを口渇、激しい口渇を煩喝と言います。のどの渇きは体に内熱、血熱があるとき口渇になります。舌診でも舌苔や舌質が渇いている、赤味が強い、黄色い苔など内熱の状態があれば口渇があります。胃炎は胃の中が炎症をおこしているので口渇になります。また水分の偏在と言って体の一部には水がたっぷりあるのに他の部分にはいきわたっていない状態もあり、治療としては余っている水を足りない方へ移動させる漢方を使います。原因となる更年期、女性ホルモン、糖尿病、甲状腺、自己免疫疾患、腎臓のツボから経絡に落とし込んで臓腑経絡、補寫などを調べます。病名に惑わされずに証に従って漢方ツボ食養生をお伝えいたします。

味覚障害

 味覚障害とは「味をまったく感じない」「味を感じにくい」「異常な味がする」といった味覚の異常がある状態のことです。味覚障害には全ての味覚を感じにくくなるものや、特定の味覚のみが障害されるもの、変な味を感じるものなどがあります。2019年に報告された日本口腔・咽頭科学会の調査によれば、現在日本では1年間に推計27万人*が味覚異常を自覚して医療機関を受診するといわれており、患者数は年々増加傾向にあることが指摘されています。幅広い年代の人に起こり得ることが分かっていますが、特に高齢の患者が多く、その理由として長期にわたって病気にかかっていることや心身の活力の低下を示す“フレイル”など、加齢に伴うさまざまなトラブルが関与している可能性が高いと考えられます。また、味覚障害で医療機関を受診する方の多くが女性であることも特徴です。これは日常生活において女性のほうが調理をする機会が多く、味付けの際に異変に気付いたり調理した食事を食べる家族から異変を指摘されたりするなど、気付くきっかけが多いためと考えられています。味覚と近い意味で使用される言葉に“風味”が挙げられます。味覚とは、苦味・酸味・甘味・塩味・うま味といった5大基本味のことですが、近年では第6基本味として“脂肪味”の存在が立証されつつあります。脂肪味とは、その食べ物に含まれる油脂の存在を認識できる味のことを指します。脂肪味の存在が明らかになることによって、摂食や消化吸収などについてさらに研究が進み、大きな影響を与えることが期待されています。そのほか風味とは、イチゴ味やバナナ味、コーヒー味といった、嗅覚が関与するものを指します。味覚と嗅覚を完全に区別することは困難ですが、さまざまな検査を行うことで味覚と嗅覚のどちらに異常が生じているのかを確認することが大切です。味覚障害は、舌に存在して味の伝達に関わる“味蕾”に異常が生じるほか、味覚を脳に伝える神経や味覚を判断する脳そのものに何らかの異常(ストレスやうつ病などの機能異常)が生じることで起こります。ほとんどの味覚障害は味蕾の異常によるもので、味蕾に存在する味細胞の代謝遅延や酵素活性の低下、唾液の分泌が低下することで味覚の異常を引き起こしていると考えられています。また、近年はストレスの蓄積などによって生じる心因性の味覚障害も多く確認されています。味覚障害は、さまざまな原因で引き起こされることがあり、たとえば以下の要因が挙げられます。亜鉛、ビタミン、鉄などの栄養素の不足、加齢、かぜ、新型コロナウイルス感染症 、病気(消化器疾患、肝疾患、腎疾患、口腔疾患、精神疾患、貧血疾患、内分泌疾患、自己免疫疾患、脳疾患、認知症など)、手術や放射線照射などの医療による合併症や薬剤の副作用、
ストレス、外傷などです。唾液量減少味覚障害は、これらの特定の原因によって引き起こされることもあるほか、複数の要因が影響し合うことで発症することもあると考えられています。味覚が減退し、味を感じにくくなったりまったく感じなくなったりします。全ての味覚が減退することが多いですが、“甘味だけ感じない”など、特定の味覚のみが障害されることもあります。異常な味を感じる症状で、口の中に何もないのに味を感じる“自発性異常味覚”と呼ばれるものなどがあります。

漢方と鍼灸

 まず味蕾の波長を気功で取ります。ストレスがあれば自律神経のツボもみておきます。また風邪の後やコロナ後遺症があるならば上咽頭と風毒塊の反応もみておきます。生活習慣病など既往歴があればそちらの波長もみておきます。それぞれの波長を経絡に落とし込んで漢方や究極のツボをみつけていきます。食生活の話も聞いて栄養の偏りがある場合、食養生食品をおすすめいたします。

臭覚障害

 におい成分は鼻から吸い込まれ嗅細胞に到達します。嗅細胞は嗅粘膜にあり、嗅神経につながります。そして、電気信号になり大脳前頭葉へと伝達され、「におい」として認識されます。嗅覚障害はこの「においの伝達経路」のどこかに障害が生じると発症します。三大発症原因は「慢性副鼻腔炎」「感冒」「頭部外傷」です。また、障害部位により「呼吸性」「嗅粘膜性」「嗅神経性」「中枢性」に分類されます。におい成分が鼻腔内で物理的に遮られてしまい、嗅粘膜に到達しない状態です。ポリープを伴う慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲症などが原因となります。鼻炎や副鼻腔炎などにより嗅細胞の存在する粘膜が障害されることでも生じます。感冒の原因となったウイルス感染(最近はコロナ)や、テガフールやチアマゾールなどの薬剤によって嗅神経が障害されることもあります。頭部外傷、脳腫瘍、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病などの影響で中枢神経が障害されることでも生じます。本来とは違う匂いに感じることもあります。食事が美味しくないと感じ、よくよく考えてみると嗅覚が減少していたといった場合もあります。調理師、ソムリエ等、嗅覚が職業に直結している方などは仕事のパフォーマンスにも影響が生じます。

漢方と鍼灸

 臭粘膜部分の異常な波長を気功でとって経絡に落とし込みます(糸錬功)。ストレスがあるなら自律神経のツボからも波長をとります。それが大腸の瀉なら、その漢方ツボを選択しきれいに波長を消せるものを探します。きれいに波長を消せるものは、漢方ツボだけではありません。食養生食品だったり、アロマだったり、食材にもあるかもしれません。

上咽頭炎

 

のど(咽頭)は上・中・下咽頭の3つ分けられます。そして、上咽頭は鼻咽腔とも言われ、鼻の一番奥で、鼻と咽頭との境界部分を指します。上咽頭はリンパ組織であり、その粘膜表面にはリンパ球が多数存在し、「免疫応答の場所」として活躍します。小児期には咽頭扁桃として「感染防御の場所」として働きますが、成人になると色んな物に反応する「易反応の場所」になります。呼吸で取り入れた空気は必ず上咽頭を通過します。色々な原因で炎症を起こし、多彩な全身症状が出ます。診断、治療が困難で、慢性化する厄介です。原因として細菌やウィルスの感染、アレルギー性鼻炎、極度の疲労、ストレス、気温や湿度の急激な変化(体にとってはストレス)などです。上咽頭は脳神経である舌咽神経、迷走神経、そして自律神経とも繋がっているため、次のように多彩な症状がでます。
頭、顔、鼻、目、耳、歯、のどなどの痛み、鼻閉、鼻汁、後鼻漏、耳閉感、難聴、耳鳴り、咳、痰、声がれ、違和感、全身倦怠感、めまい、疲労、睡眠障害、胃腸障害と多岐にわたります。原因が感染やアレルギーによる急性炎症の場合、抗生物質やステロイド剤で効果があります。しかし、原因が疲労、ストレスや空調変化による場合や慢性炎症の場合は、鼻洗浄(鼻うがい)1%の食塩水で上咽頭を洗い流す、Bスポット治療(1%塩化亜鉛擦過治療):13歳以上で行います。それでも改善がない場合、アデノイド切除術、上咽頭粘膜焼灼術があります。上咽頭の炎症が慢性化すると、全身の離れた場所に炎症を引き起こします二次疾患(自己免疫疾患)を起こすことがあります。これを扁桃病巣感染症と言い、次のような病気があります。IgA腎症、溶連菌感染後腎炎、突発性腎出血、胸肋鎖骨過形成症、慢性関節リュウマチ、掌蹠膿疱症、尋常性乾癬、アレルギー性紫斑病、ベーチェット病、持続する微熱、コロナ後遺症などです。

漢方と鍼灸

 気功を使うと上咽頭に炎症があるかがわかります(診断ではありません)。その炎症がどの漢方で取れるかをみてお出ししています。当薬局で機械を使った鼻洗浄やBスポット療法はできませんが、オイル洗浄によって多数の著効例があります。自分がコロナに罹って朝全身が鉛のように重く起きられなかった時、試してみたら劇的に改善しました。それでご相談の方には養生としてオイル洗浄をおすすめしています。誰でも痛みもなく自宅や外出先でも簡単にできるので安心です。

口臭

 不快な口臭のほとんどは、剥がれおちた粘膜のカスや唾液、食物のカスなどに含まれるタンパク質が、口の中にいる細菌により分解・発酵される過程で出るガスです。口臭の素となるガスには主に次のような種類があります。メチルメルカプタン :たまねぎが腐ったようなニオイ 硫化水素 :卵が腐ったようなニオイ ジメチルサルファイド :キャベツが腐ったようなニオイ 特にメチルメルカプタンは口臭の強弱と強い相関があるとされ、口臭を評価する指標となっています。誰でも、ある程度の生理的な口臭はあるものです。口の中から出るニオイは特に唾液の分泌に影響されます。唾液には口の中を洗浄・自浄する作用があり、「噛む」「話す」など口を動かして、唾液腺を刺激することによって分泌が増えます。唾液が減って口の中が乾燥すると自浄作用が低下し、タンパク質を分解する細菌が増えるので、口臭も濃縮されてニオイがきつくなります。睡眠中は、唾液腺が刺激されず唾液の分泌や流れる量が減ってしまうのに加え、口呼吸や水分不足などで口の中が乾燥しやすいため、朝起きたときの口臭は一日の中でもっとも強くなりがちです。長時間食事をしていないときも、唾液の流れる量が減り、口臭が強くなります。唾液の分泌は自律神経(交感神経と副交感神経)が調節しています。分泌が促進されるのは、リラックスして副交感神経が優位になっているときです。緊張したりストレスがあるときには交感神経が優位になり副交感神経の働きが低下するので、唾液の分泌が減り、口臭が強くなります。妊娠時、月経時、思春期、更年期など、特に女性ホルモンが変調するときも口臭が強くなることがわかっています。そのメカニズムはまだ詳しくはわかっていませんが、精神的に不安定になりやすく、その影響で唾液が減る、ホルモンの変化で唾液が濃くなるなどが原因と考えられています。強い口臭を起こす原因としてもっとも多いといわれているのが舌苔です。舌苔とは舌に付着した白っぽい汚れで、口臭を引き起こす細菌やタンパク質を多量に含んでいます。多少の舌苔は健康な人にもありますが、口の中が乾いているとき、体調がよくないとき、胃腸の病気や脱水を伴う病気があるときなどに厚くなると口臭の原因となります。胃腸の調子がよくないときに舌苔が増えるのは、舌の感覚を鈍らせて食欲を減らし、食べる量を減らして胃腸を守るためだといわれています。舌苔の次に多い原因が歯周病です。歯周病によって口の中にたまっている歯垢(プラーク)も、舌苔と同じく多量の細菌とタンパク質の集まりです。炎症が起こっており、多量のタンパク質が細菌に分解されて強い口臭が発生します。血液中に流れる成分のニオイが肺を通して吐く息に出てくることもあります。ニンニクやニラなどを食べた後やお酒を飲んだ後の口臭は、消化吸収された後、血液中に移行したニオイの素となる成分が、肺を通して口や鼻から出てくるものです。空腹や疲労があると、肝臓がからだにエネルギーを供給しようとしてケトン体という物質を作り血液中に放出します。ケトン体が増えすぎると甘酸っぱいニオイのするガス(アセトン)となって肺から出てくるので口臭が強くなります。扁桃腺炎、慢性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)など、感染による炎症が鼻やのどにあると、口の中に膿みが流れ込んでしばしば口臭を発生させます。逆流性食道炎などでは、すっぱい胃液が食道に逆流することによって口が臭うことがあります。その他にも全身の病気による代謝産物が血液中に増えて息が臭うことがあります。肝機能低下(アミン臭)、腎機能低下(アンモニア臭)、糖尿病(アセトン臭)、悪性腫瘍(腐敗臭)などが知られています。また口の中のトラブルもなく、実際に臭ってはいないのに、本人が口臭を気にして社会生活の障害となっているような場合を心理的口臭症といいます。背景に強いストレスや不安などに起因するこころの病が隠れていることがあります。

漢方と鍼灸

 たかが口臭と思っていても様々な原因が隠れているので体調など体の声に耳を傾けるのも大事ですね。漢方も有効です。

いびき・睡眠時無呼吸症候群(SAS)

 睡眠中に喉が狭くなり、そこが呼吸によって振動していびきが起こります。無呼吸をともなうと睡眠時無呼吸症候群となり、慢性的な睡眠不足によって事故リスクが高くなり、健康への悪影響も大きい危険な状態です。副鼻腔炎(蓄膿症)など鼻が詰まる疾患があるといびきをかきやすくなります。また肥満や過度のアルコール摂取、顎の位置などもいびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクになっています。いびきとは睡眠中に上気道が狭窄することによってのどから発生する音です。閉塞がひどくなるといびきだけではなく就寝中に呼吸が止まり、睡眠時無呼吸症といわれる病気となることがあります。英語では”SleepApneaSyndrome”という疾患名で、”SAS”と表記されることもあります。睡眠中に呼吸が10秒以上止まる気流停止の状態を『無呼吸』と呼び、それが1晩に30回以上ある、あるいは1時間あたり5回以上ある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。無呼吸が起こってもほとんどの場合は自覚症状がないため、知らずに症状を起こしているケースがとても多くなっています。睡眠時無呼吸症候群は、脳や全身が酸素不足を起こして深刻な病気のリスクを上昇させ、睡眠の質や量が大幅に低下して日中に抵抗できない強い眠気が襲ってくるため大きな事故の原因になることがあります。また、集中力が低下するなど、仕事や学習をはじめ、日常生活に悪影響をおよぼしやすく、スポーツのパフォーマンスも下がってしまいます。眠っている時に呼吸が止まっていること自体を自覚できることはほとんどありません。特に、いびきは身近な方の指摘ではじめてわかることが多くなっています。また、重症になると高血圧や不整脈、心筋梗塞など循環器疾患に悪影響を及ぼします。

 睡眠時無呼吸症候群の症状としては、大きないびきをかく、睡眠中に時々呼吸をしていないこと、息苦しくて目覚めることがある、夜中、トイレに起きるようになった、なかなか起きられない、十分な時間の睡眠をとっても熟睡感がない、寝起きに頭痛や肩こりがある、すっきりせず、だるい、喉が渇いている、喉がガラガラする、いきなり強烈な眠気に襲われて短い間意識が途切れる、集中力がなくなった、だるい、倦怠感がある、疲れやすいなどが挙げられます。睡眠時無呼吸症候群の原因は、睡眠中に気道が狭くなってしまう閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と、呼吸中枢に問題がある中枢性睡眠時無呼吸(CSA)に分けられます。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は気道が狭くなって呼吸が止まり、息苦しくなって呼吸を再開する状態です。呼吸が止まっている間に呼吸しようとする動きを見せます。肥満している、骨格、特に顎が小さいと物理的に気道が狭くなってしまい、呼吸が止まりやすくなります。中枢性睡眠時無呼吸(CSA)は、呼吸のコントロールは脳の延髄が指令を出しています。気道も開いていて身体の異常はありませんが延髄からの指令がなくなって呼吸が止まり、呼吸しようとする動きを見せることもありません。延髄からの指令が再び出ると呼吸を再開します。

漢方と鍼灸

 いびきの原因を探り、それらを改善をしていきます。睡眠時無呼吸症候群も閉塞性なのか中枢性なのかで漢方も変わってきます。養生もダイエット、舌の運動してもらったり、アルコールの量を減らしたり、粘膜の炎症を減らすために辛い物、脂っぽい食事、砂糖の多いお菓子類などを控えてもらいます。ストレスや睡眠の質を改善する漢方で中枢性の無呼吸も良くしていきます。

嚥下困難

 飲み込んだ飲食物は、喉から食道を通って胃に届きます。飲み込みにくい症状はこの通り道のどこかが狭窄している、あるいは飲み込むための筋肉が弱くなっていて起こります。また、炎症による腫れがあって飲み込みにくくなることもあります。咽頭がんや食道がんなどの悪性腫瘍の可能性もあります。むせる症状は、喉から気管と食道に分かれる喉頭で食道に入るべきものが気管に入ってしまって起こります。飲食物が気管に入ってしまうことは誤嚥と呼ばれ、肺炎リスクが高い状態です。特に高齢者は誤嚥を起こしやすい傾向にあります。
誤嚥が長期間にわたり生じると、慢性肺疾患が発生することがあります。長期間にわたって嚥下困難がある人では、しばしば栄養不足や体重減少がみられます。嚥下困難は、脳や神経系の病気、全身の筋肉の病気、食道の病気(物理的閉塞または運動障害)が考えられます。嚥下困難を引き起こす脳や神経系の病気には、 脳卒中、 パーキンソン病、 多発性硬化症、 筋萎縮性側索硬化症(ALS)などがあります。これらの病気になると、典型的には嚥下困難に加えて他の症状も現れます。嚥下困難を引き起こす全身の筋肉の病気には、 重症筋無力症、 皮膚筋炎、 筋ジストロフィーなどがあります。物理的閉塞は、 食道がん、食道の内側を横切る組織の 輪や ウェブ、慢性的な酸逆流や腐食性液体の摂取による食道の瘢痕化(はんこんか)によって起こります。ときには甲状腺腫大、胸部の太い動脈の膨らみ(大動脈瘤)、胸部中央の腫瘍などで、周辺の臓器や構造によって食道が圧迫されることもあります。食道運動障害には、 アカラシア(食道のリズミカルな収縮が著しく減少し、下部食道の筋肉が正常に弛緩しなくなり、食べものが胃に移動しなくなる)や 食道けいれんなどがあります。 全身性強皮症(強皮症)により運動障害が起こることもあります。液体も固形物も同程度に飲み込みにくい場合は、食道運動障害の可能性が高くなります。最初に固形物の飲み込みが徐々に困難になり、その後に液体の飲み込みが困難になる場合は、腫瘍などで、物理的閉塞が悪化していっている可能性があります。意図せずに食べものが鼻や口から出る場合は、食道の問題ではなく、神経や筋肉の問題が疑われます。

漢方と鍼灸

 原因疾患の漢方的アプローチ(本治)と舌の体操、嚥下ゼリーの使用、噛む訓練など(標治)になると思います。東洋医学の物差しでは舌は心でありまた神であります。脳と関係が深いと解釈され、舌は筋肉でできているので肝とも関係があります。経絡に落とし込んで漢方究極のツボを見つけ治療していきます。舌診の時、舌が斜めにしか出せない方がいらっしゃいます。脳の異常です。

喉の違和感・異物感

 異物感、詰まった感じなどの違和感がある場合、咽頭炎・扁桃炎・喉頭炎などの炎症が原因の可能性があります。また逆流性食道炎など消化器の異常によって違和感が起こることもあります。まれですが、喉頭がんや咽頭がんの初期症状として喉の違和感が起こっている可能性もあります。また、器質的な疾患がない咽喉頭異常感症でこうした症状を起こすこともあります。

漢方と鍼灸

 喉の炎症なのか、ストレスなのか、癌、逆流性食道炎なのかを判別しないといけません。
上記の疾患の反応が出ている各ツボをみて、癌の波長がある場合はすぐ病院に行って検査をしてもらいます。ツボをみるのは、診断をしているわけではありません。ツボの反応は東洋医学の物差しで感じるものなのです。例えばストレスの場合、自律神経を感じるツボで反応があれば、半夏厚朴湯、逍遙散、その他漢方で良くなります。鍼灸も同じやり方です。

上気道炎・扁桃炎・扁桃周囲膿瘍・咽頭炎・耳下腺炎・顎下腺炎・口内炎

 上気道炎とは、鼻から喉にかけての咽喉に起こる急性の炎症です。咽頭粘膜やリンパ組織の急性咽頭炎、喉頭粘膜の急性喉頭炎など患部の場所によって名称が異なり、それぞれ治療法や治るまでの期間に若干の違いがあります。主な原因はかぜのウイルスですが、進行して細菌感染を合併することもよくあります。はじめから細菌感染によって発症することもあります。それぞれ治療法が少しずつ異なります。急性咽頭炎で細菌感染が疑われる場合は抗生剤、ウイルス感染のみと考えられる場合は喉の炎症を抑える薬を処方し、ネブライザー治療も有効です。適切な治療を受けて安静を保つことでほとんどの場合、2週間以内に治ります。急性喉頭炎も急性咽頭炎と同じ治療を行います。ただし、治るまで比較的長い期間が必要になります。ほとんどは1~3週間かかり、1ヶ月以上を要するケースもあります。

 扁桃炎は、口蓋扁桃に細菌やウイルスが感染して急性の炎症が起こっている状態です。高熱と強い喉の痛みが現れます。1年に複数回の扁桃炎を繰り返す場合は、慢性扁桃炎と呼ばれます。扁桃炎の症状は、高熱、寒気、頭痛、関節痛、全身の倦怠感があり、喉の痛みが強いのが特徴です。喉を観察すると、奥の左右が赤く腫れているのがわかります。ウイルスが原因で起きている場合、高熱であれば解熱剤を用い、安静を保つことで回復を待ちます。ほとんどの場合、1週間程度で治ります。うがいをこまめに行うことも重要です。細菌が原因の場合には抗生剤を用います。その上で症状に合わせて解熱剤、消炎鎮痛剤などを処方します。慢性扁桃炎の場合、保存的な治療で十分な効果を得られない場合や、頻繁に炎症を繰り返す場合には扁桃切除の手術も検討します。

 扁桃周囲膿瘍は、口蓋扁桃に起こった急性扁桃炎の炎症が周囲に広がり、進行して膿のかたまりができている状態です。若い男性の発症が多い傾向があります。喉の腫れや痛み、発熱に続いて、顎を開けにくい、話しにくい、飲み込みにくい、喉の片側が激しく痛む、口臭などの症状が現れます。治療では抗菌剤を用います。抗菌剤の効果が現れにくい場合には、膿瘍という膿のかたまりの部分に穿刺や切開を行って排膿する処置を行うこともあります。排膿させると痛みは治まります。

 咽頭は鼻腔や口腔の奥にあって喉頭や食道につながる部分で、そこに炎症を起こした状態が咽頭炎です。咽頭の炎症は細菌やウイルスの感染だけでなく、刺激性ガスや粉塵の吸入、喫煙、大声を出し続けるなどによって起こることもあります。喉の症状が多いことが特徴で、喉の痛み、むずがゆさ、声枯れ、咳、痰などを起こします。重症化すると呼吸困難を起こす可能性があり、注意が必要な病気です。

 耳下腺炎・顎下腺炎とは、耳の前から下にかけての耳下腺、耳の下にある顎のさらに下の顎下腺の炎症です。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などウイルスや細菌の感染が主な原因ですが、それ以外の原因で起こることも珍しくありません。唾液腺炎を合併すると唾液の機能低下が起こります。唾液は、抗菌、粘膜保護、消化など多くの作用を持っているため、唾液の機能低下によって口内の状態が一気に悪化する可能性があります。耳の前から顎下の部分にかけて、炎症が起こっている場所の痛みが起こり、唾液が減るため口内が乾燥しやすくなって飲み込みにくさにつながります。また、発熱や寒気も生じます。問診と患部の観察、血液検査や超音波検査などを行って診断します。ウイルスが原因の場合には安静を保ち、症状に合わせて解熱剤などを処方します。患部を冷やす、こまめにうがいをするのも重要です。細菌性の場合には抗生剤も用います。

 口内炎は、口内やその周辺の粘膜に起こる炎症で、ビタミンの不足、疲労、ストレス、誤って噛んでしまうなどの外傷、全身疾患など、口内炎ができる原因はさまざまです。炎症部分に熱いものや冷たいものがしみる、食べ物が触れると強く痛むといった症状があり、悪化すると食事できなくなることもあります。頬や唇の内側、歯ぐき、舌など口内炎ができた場所、多発や繰り返しできていないか、治りにくさなども診断には不可欠な要素です。全身性の疾患が疑われる場合には血液検査などを行います。診断をもとにステロイド薬や抗菌薬、ビタミン剤の投与など原因や状態に合わせた治療を行っていきます。原因疾患が見つかった場合には、その治療も行います。

漢方と鍼灸

 漢方の抗生物質や抗炎症、免疫力を活性化するものを使います。ステロイド、抗菌剤など使っても良くならない場合、ご相談ください。口内炎の場合、標治(潰瘍部位の治療)と本治(潰瘍を起こす原因)が必要となります。