腱鞘炎・ドケルバン病・ばね指
腱鞘炎とは、骨と筋肉をつないでいる“腱”と腱を包む“腱鞘”と呼ばれる組織に摩擦が生じることによって炎症が生じる病気のことです。腱や腱鞘は全身のさまざまな部位に存在していますが、症状は主に動きの多い手首や指に発症します。代表的なものでは、スマホの使い過ぎなどによって手首の母指(親指)側にある腱鞘に発症する“ドケルバン病”、指の腱鞘に発症する“ばね指”などが挙げられます。腱鞘炎を発症すると、指や手首に痛みが生じるだけでなく、腱鞘が腫れて狭窄する(狭くなる)ため、腱のスムーズな動きが妨げられて手首や指の動きが悪くなることも少なくありません。また、周辺の神経を刺激することでしびれが走ることもあります。腱鞘炎は、手首や指を酷使することで腱と腱鞘に過剰な摩擦がはたらくことで炎症が引き起こされます。そのため、腱鞘炎は主にキーボード操作やピアノ演奏など指と手首を長時間動かす作業を日常的に行っている人、何かを強く握って行うスポーツをしている人、育児中の人などが発症しやすいとされており、近年では長時間のスマホ操作も腱鞘炎のリスクを高めるとして注意喚起がなされています。腱鞘炎は特に手首や指を酷使していない場合にもよく見られることから、加齢に伴い腱鞘が硬くなることや女性ホルモンのバランスの変化なども発症に関与しているのではないかと考えられています。腱鞘炎を発症すると、炎症が生じた腱鞘の周囲に痛み、腫れ、発赤などが現れます。また、腱鞘が腫れることで腱がスムーズに動かなくなり、腱がつながる指の動きが悪くなるのも特徴です。代表的な腱鞘炎の1つであるドケルバン病では、腱鞘にガングリオンというしこりが生じて、母指が動かしにくくなります。一方、ばね指は指の腱鞘に炎症が生じるためその指を動かしにくくなり、動かそうと試みると突然ばねのように指が伸びる“ばね現象”という特徴的な症状が現れます。また、炎症が悪化すると周囲を走行する神経に刺激を与えて痛みの原因になることもあります。腱鞘炎は、医師による問診や視診、触診などによって診断を下すことができるため特別な検査は必要ないことがほとんどです。しかし、重度の腱鞘炎は関節の障害や骨折など別の病気との区別が必要になる場合もあり、診断を下す際にはレントゲン、CTやMRIなどの画像検査を行うことがあります。特にMRIは腱や腱鞘の状態を詳しく描出することができるため、狭窄の程度などを調べるのに有用なことがあります。ドケルバン病では母指をできるだけ動かさないよう注意しますが、ばね指の場合には初期には指を反らすようにストレッチを行います。基本的には痛みに対する鎮痛剤や湿布、超音波などが使用されますが、症状が強い場合には腱鞘の内部に炎症を抑えるステロイド薬を直接注射する治療が行われます。多くはこれらの治療で次第に症状が改善しますが、重症の場合やこれらの治療で改善しない場合は、炎症を起こして狭窄した腱鞘を切り開いて腱との摩擦を防ぐ手術を行う必要があります。また、腫瘍が原因の場合は、根本的な治療として腫瘍を切除して腱鞘への圧迫を解除する手術が行われます。上でも述べたとおり、腱鞘炎は指や手首を酷使することによって引き起こされます。そのため、腱鞘炎を予防するには、長時間手首や指を酷使する作業を避ける、手首や指のだるさを感じたら作業をやめるなどの対策が必要です。
漢方と鍼灸
患部の炎症をとる漢方、腱の摩擦をスムーズにする漢方を選択します。患部から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択して改善していきます。根本療法は、筋や腱の潤いを付けていくことで再発を防いでいきます。ご相談ください。
枸杞の実
クコの実にはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ニコチン酸(ビタミン3)や、カロテノイドの一種ゼアキサンチン、アミノ酸の一種ベタイン、さらにポリフェノールなど、非常に豊富な栄養が含まれています。高めですが医薬品なので安心安全です。目や肝臓、糖尿、不妊などに食養生としてよく使います。
価格
500グラム 3,000円(税込)
自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群・自閉症・広汎性発達障害)
アスペルガー症候群は、自閉症にみられる特徴(社会性発達の質的障害、興味や活動の偏りなど)を共通の類似点として持っています。自閉症では知的障害や言語発達に遅れを伴うことがありますが、アスペルガー症候群ではそれらはありません。知的レベルが正常であり、言葉の発達に遅れはないことなどから、一見すると「ちょっと変わった人」程度に認識されることもあります。しかし、アスペルガー症候群の方が社会生活を送る際に困難さを伴う点においては自閉症と相違はなく、治療や支援を行うことはとても大切です。アスペルガー症候群と自閉症には重複する部分も多く、近年は「自閉スペクトラム症」として1つの疾患概念に含めて考えられるようになってきています。アメリカ精神医学会による最新診断マニュアル(DSM-5)では、アスペルガー症候群と自閉症の診断名は削除され、自閉スペクトラム症に統一されました。
人と関わることが苦手、ひとりで好きなことをして過ごすほうが性に合っているといった性質は、自閉スペクトラム症ではない方にも多くみられます。その性質が極端で、本人の社会生活に影響が出ている、もしくは周囲の人が困っている場合、障がいの範囲に入ります。正常から重症の範囲まで、境界が曖昧で連続性があるということから、スペクトラムと呼ばれています。自閉スペクトラム症は、発達障害のひとつです。発達障害の中でももっとも頻度が高く、発症率は約100人に1人いるといわれています。また、女性よりも男性のほうが約4倍多いです。自閉スペクトラム症の本質的な症状、つまり中心症状は、2~3歳頃から明らかになります。そして、中心症状自体は一生続くものだと考えられています。自閉スペクトラム症の中心症状は、通常、人と関わるときには、表情、視線、ジェスチャー、声色、言葉などを使って交流します。自閉スペクトラム症の方は、表情や視線などをうまく使ったり、情報として受け取ったりすることが困難です。そのため、うまくコミュニケーションをとることができず、本人の社会生活や集団生活に深刻な影響が及んでいます。自閉スペクトラム症の方は、同じような行動パターンを繰り返す傾向があります。身の回りで何か変化が起こったとき、柔軟に対応できず混乱してしまうことがあります。また、関心を持つ事柄が偏りやすく、自分が関心を持っていることは繰り返し実行しても、ほかの人や物には関心を持ちにくいという方が多いです。社会的コミュニケーションの障害や、反復的で常同的という中心症状があることにより、自閉スペクトラム症の方は、さまざまな状況に対してうまく適応することが困難です。そのために、不眠、不安、抑うつといった、さまざまな症状が出てくることがあります。たとえば、就職して会社勤めをするようになると、それまでとは異なる環境に身を置くことになります。新しい環境にうまく適応できず、うつ状態になり、精神科にかかってうつ病と診断される方もいらっしゃいます。その場合、治療を受け、休職して自宅で自分らしく過ごしていると、多くの方はうつ状態が回復してきます。しかし、職場に戻ると、適応の問題で再びさまざまな症状が出てきます。併発しやすい精神疾患─うつ病、不安症、解離性障害などです。自閉スペクトラム症の方の約半数が、知的障害をもっています。てんかんを合併することも多いです。また、うつ病、不安症、解離性障害や転換性障害などを発症しやすいといわれています。解離性障害や転換性障害とは、心理的な原因により、意識や記憶、運動機能や知覚の一部分を切り離すという症状を示し、困難な状況で起こることが多いです。自閉スペクトラム症の方は、困難なことが起こったとき、周囲の人に相談したり助けを求めたりすることが苦手な傾向があります。自分の状況について言葉でまとめることが難しいため、うまく喋れなくて固まってしまったり、自分の感情に鈍感で、つらいと言えず体に症状が出てきてしまったりすることがあります。またADHDは発達障害のひとつで、不注意や多動を特徴とする障がいです。自閉症とは別の障がいですが、自閉症に併発することがあります。また、ADHDの症状が強い方は、自閉症の症状もみられるという、相関があることが分かってきています。なかには、自閉症の症状はなく、周囲の人への配慮などが問題なくできるという方もいらっしゃいます。学生時代はとくに問題が起こらなかったという方でも、働き始めてから自閉スペクトラム症の症状に気づくことがあります。また、仕事を始めてしばらくは問題がなくても、役職がつくと生活に影響が出てくる方もいます。たとえば、勤め始めて間もない頃は、与えられた仕事をしっかりとこなせばよい職種の場合、仕事に支障が出ないことがあります。しかし、昇進して役職がつくと、部下に仕事を任せたり割り振ったりという、対人交渉が必要な場面が増えてきます。そこで、生活に影響が出てきて、自閉スペクトラム症に気づくことがあります。自閉スペクトラム症の診断において重要なのは、子どもの頃から他者と関わることが苦手なのか、ほかの病気の影響で苦手になったのかということです。たとえば、統合失調症という精神疾患も、自閉スペクトラム症と同じく、社会生活が困難になることがある病気です。しかし、幼い頃からではなく成長してから症状がみられるようになったという方の場合、発達障害ではなく、統合失調症を含め、ほかの精神疾患による可能性を考えます。成人の方で、自閉スペクトラム症と似たような症状があって困っているという場合、まずは子どもの頃の経過を確認することが重要です。これまで、「自分は周りと何かが違う」「周りができることでも自分はできない」などと感じていた方が、テレビやインターネットで自閉スペクトラム症のことを知り、自分もその特徴に当てはまると思って病院にかかる、ということが増えているように思います。病院で診断がつくと、自分の特徴を客観的に認識することができ、困ったときはどのように対処すればよいのか分かるようになって、楽になった、うまくいきやすくなったという方は多くいらっしゃいます。子どもの頃に診断がついた方の場合、医療機関や施設で相談したうえで、本人に向いている職業についたり、障害者手帳を取得して障害者就労をしたりと、自分の居場所ができている方もたくさんいらっしゃいます。自閉スペクトラム症はなるべく早く診断を受けて対策を取ることが重要です。自閉スペクトラム症の治療では、不安や抑うつなどの併発症状が出たとき、それに対しての治療を行うことが一般的です。そのほか、心理教育といって、本人や周囲の近しい方にどのような特徴があるのか理解してもらうことも欠かせません。診断がついたあとで重要になるのは、就労支援などの社会資源の活用です。医療機関以外にも、自閉スペクトラム症の方が活用すべき施設として、発達障害者支援センター、就労支援センター、就労移行事業所などが挙げられます。
基本的には、年齢を重ねるとともに問題が減っていく方が多いです。自分の特徴を客観的に把握できると、本人に適した仕事に就きやすくなります。たとえば、きちんと作業が分担されていて、自分のペースで取り組んだり、同じ作業を繰り返したりするような仕事は得意です。反対に、チームワークや共同作業を求められる仕事は苦手というように、向き不向きがはっきりしています。自分に向いていないことは諦めて、得意なことに取り組むことも大切です。周囲もそれを理解して、本人の得意なことはなるべく頼み、苦手なことは頼まないという流れができてくると、本人もうまく対応していけるようになり、周囲の方の負担もかえって減っていきます。自閉スペクトラム症の方の中には、精神的に安定していて、専門職や研究職などで自分の得意なことを仕事にできている場合、中心症状が強くても問題なく過ごせている方もいます。身近に自閉スペクトラム症の方がいる場合、その方の特徴を理解しておくことは重要です。たとえば、自閉スペクトラム症の方は、相手に失礼にあたることでも悪気なく口に出してしまうことがあります。もし、身近な方から失礼なことを言われたら、腹が立ったり、見下されていると感じたりするかと思います。しかし、自閉スペクトラム症の方は悪気なく口にしていることが多く、相手を怒らせても気づかないということもあります。自閉スペクトラム症の方は裏表がないと理解しておくだけでも、よりよいコミュニケーションにつながると思います。自閉スペクトラム症の方は、仕事のなかで何か苦手なことを求められると、うまく適応できなくなる可能性があります。小学生の頃までは、ひとりで好きなことをして遊んでいてもよく、時間ごとにやるべきことが決まっているため、マイペースに過ごすことができたと思います。しかし、高校生や大学生になると、集まって自由に話し合ったり、自由に選択したりする機会が増え、社会生活が難しくなってくる方は多いです。一方、自分のペースで物事を進めていられるときは、あまり問題になりにくいことが特徴です。職場などでは、本人が苦手なことを求めないように、周りの方が配慮することも大切です。
自閉スペクトラム症の症状のまとめ
重症度は様々ですが、言葉の遅れ、反響言語(オウム返し)、会話が成り立たない、格式張った字義通りの言語など、言語やコミュニケーションの障害が認められることが多くなっています。乳児期早期から、視線を合わせることや身振りをまねすることなど、他者と関心を共有することができず、社会性の低下もみられます。学童期以降も友だちができにくかったり、友だちがいても関わりがしばしば一方的だったりと、感情を共有することが苦手で、対人的相互関係を築くのが難しくなります。また、一つの興味・事柄に関心が限定され、こだわりが強く、感覚過敏あるいは鈍麻など感覚の問題も認められることも特徴的です。
自閉スペクトラム症の併存症
様々な併存症が知られていますが、約70%以上の人が1つの精神疾患を、40%以上の人が2つ以上の精神疾患をもっているといわれています。特に知的能力障害(知的障害)が多く、その他、ADHD(注意欠如・多動症)、発達性協調運動症(DCD)、不安症、抑うつ障害、学習障害(限局性学習症、LD)がしばしば併存します。
また医学的併存疾患としては、てんかん、睡眠障害、便秘を合併しやすいことが知られています。てんかんの併存は、知的障害が重い人ほど多く認められます。
自閉スペクトラム症の原因
自閉スペクトラム症の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と考えられています。胎内環境や周産期のトラブルなども、関係している可能性があります。親の育て方が原因ではありません。
漢方と鍼灸
脳の機能障害ですが、証を診て判断します。また脳の波長(気の流れ)を捕えて漢方を選択していきます。また脳と腸は相関関係があるので胃腸が弱ければ、丈夫にしていきましょう。とくに悪い腸内環境は整えましょう。脳波から漢方、食養生やサプリ、ツボを的確に選択して整えていきます。
・抑肝散加陳皮半夏(柴胡・茯苓・白朮・甘草・当帰・川芎・釣藤鈎・陳皮・半夏)『本朝経験方』
この薬方の主薬は釣藤散で、中枢性の鎮静、鎮痙作用と催眠作用があります。
・柴胡加竜骨牡蠣湯(桂枝・茯苓・牡蛎・竜骨・柴胡・黄芩・人参・半夏・生姜・大棗・大黄)『傷寒論』
柴胡はイライラや緊張を緩和し、茯苓・竜骨・牡蛎には鎮静作用があります。
・甘麦大棗湯(甘草・大棗・小麦)『金匱要略』
・桂枝加竜骨牡蛎湯(桂枝・芍薬・生姜・甘草・大棗・竜骨・牡蛎)『金匱要略』
・菖蒲丸(石菖蒲・丹参・人参・赤石脂・天門冬・麦門冬)『閻氏小児論』
・抑肝散(柴胡・甘草・川芎・当帰・白朮・茯苓・釣藤)『保嬰撮要』
など(薬局製剤以外も含む)
ブドウ膜炎
ぶどう膜は眼球内の組織のうち、虹彩、毛様体、脈絡膜の3つをまとめた名称で、ぶどう膜とその周囲の組織に炎症が起こる病気をぶどう膜炎といいます。全体としては女性の患者のほうがやや多く、40歳代~60歳代に多く発症しますが、これらは原因となる病気によっても異なります。ぶどう膜炎の3大原因としてサルコイドーシス、原田病(フォークト・小柳・原田病)、ベーチェット病が挙げられます。サルコイドーシスでは20〜30歳代と50〜60歳代の女性に多く、原田病では女性にやや多く、ベーチェット病では20~40歳代の男性において目の症状が現れることが多いといわれています。発症すると目の充血や痛み、目がかすむ、光がまぶしい、ものが見えにくいなどの症状が現れます。また、ぶどう膜炎にはさまざまな病気が合併しやすく、これに伴って重篤な視力障害につながる場合もあるため、早期診断・早期治療が大切です。治療は薬物療法が中心となります。主に副腎皮質ステロイド点眼薬や散瞳薬が使用されますが、感染性の場合は抗ウイルス薬や抗菌薬など原因微生物に効果のある薬も使用されます。合併症がある場合などは目の手術が必要になることもあります。ぶどう膜炎の原因として特に多いのが、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病の3つで、いずれも自己免疫疾患に分類されます。自己免疫疾患は本来自分の体を守るはずの免疫系が正常に機能しなくなり、自分の体を攻撃してしまう病気を指しますが、詳細な原因はまだはっきりと分かっていません。そのほかの原因として、以下のようなものが挙げられます。細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの感染、膠原病(全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど)、糖尿病、炎症性腸疾患、悪性腫瘍などです。ただし、ぶどう膜炎と診断を受けた患者のうち、3人に1人程度は検査をしても原因を特定できないことがあるといわれています。ぶどう膜炎が生じると、眼球内の透明な部分に炎症細胞が出てくることで以下のような症状が現れます。
・霧視:霧きりがかかったように目がかすんで見えること
・飛蚊症:目の前に小さな虫や糸くずのようなものが飛んで見えること
・羞明感:光のまぶしさを強く感じること
また、炎症が強い場合には目が充血します。充血はアレルギーや細菌・ウイルス感染などによって引き起こされる結膜炎でよくみられる症状ですが、ぶどう膜炎での充血は結膜炎とは異なり、目やにを伴いません。そのほか、目の痛みや頭痛、視力低下などの症状を伴うこともあります。このような症状は両目に出る場合もあれば片目だけの場合もあります。また、症状が徐々に悪化する場合や、軽快と悪化を繰り返す場合もあるなど、症状の現れ方や経過はさまざまです。ぶどう膜炎は目の病気ですが、全身の免疫異常と関係することもあります。そのため、一般的な眼科検査や蛍光眼底造影検査(FAG)、光干渉断層撮影(OCT)などの目の検査に加え、詳細な問診と身体診察、全身検査も行われます。全身検査では、血液検査、胸部X線検査、ツベルクリン反応検査などを行い、原因となる全身性の病気がないかを調べます。また、目の検査では目の組織を採取したり、診断と治療を兼ねて手術が行われたりする場合もあります。ぶどう膜炎の治療は薬物療法が基本となります。主に炎症を抑えるための“副腎皮質ステロイド点眼薬”と、炎症による虹彩後癒着(虹彩と水晶体がくっつくこと)を防ぐための“散瞳薬”が用いられます。ステロイド薬の投与法には、点眼のほかに注射、内服、点滴があり、炎症の程度や場所に応じて使い分けられます。上記の治療でよくならない場合や炎症が強い場合など、免疫抑制薬や生物学的製剤といった治療薬を投与することもあります。ウイルスや細菌などの病原微生物が原因の場合には、その病原微生物に対して効果的な薬(抗ウイルス薬・抗菌薬・抗真菌薬・抗寄生虫薬など)が用いられます。ぶどう膜炎は、白内障や緑内障、網膜剥離、硝子体混濁など、さまざまな合併症が生じる病気です。このような合併症が生じると、薬物療法に加えて手術が必要になる場合もあります。
漢方と鍼灸
ただの目の炎症ではないということです。ブドウ膜の反応穴、自己免疫の反応穴、風毒塊、上咽頭などから最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し改善していきます。
【難病、代謝・内分泌】の症状でお悩みの方に
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【難病、代謝・内分泌】の病気と漢方(東洋医学)
悪性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎、再生不良性貧血、突発性血小板減少性紫斑病、網膜色素変性症、糖尿病、痛風・高尿酸血症、脂質異常症、甲状腺機能亢進症・低下症・甲状腺炎
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ベーチェット病
ベーチェット病とは、全身のさまざまな部位に炎症が繰り返し生じることが特徴的な病気です。免疫のはたらきが過剰になって自身の体の組織を攻撃してしまう膠原病の一種と考えられていますが、現時点で明確な発症メカニズムは解明されていません(2020年10月時点)。ベーチェット病の症状の現れ方には大きな個人差がありますが、主な4つの症状は口腔内のアフタ性潰瘍・外陰部の潰瘍・皮疹などの皮膚症状・ぶどう膜炎(目の炎症)とされています。このような症状がよくなったり悪くなったりしながら繰り返し現れるのがベーチェット病の特徴ですが、重症の場合には内臓や神経、血管などにも炎症をもたらし、ときには命に関わることも多々あります。また、治療は炎症を免疫のはたらきを抑えるステロイドの投与が行われますが、それぞれの症状を緩和する治療も同時に行わなければならないため、治療に難渋することも少なくありません。また、重症の場合は免疫抑制剤を使用しなければならないケースも多く、さまざまな副作用に注意する必要があります。現在のところ、ベーチェット病の明確な発症メカニズムは解明されていません(2020年10月時点)。一方、遺伝などで“この病気を発症しやすい体質”が根底にあり、そこに免疫をつかさどる血液細胞の一種である白血球が過剰にはたらく感染症などが生じることが発症の引き金になるとの説もあります。近年では、どのような遺伝子の異常が関与しているのか多くの研究が進められているのが現状です。ベーチェット病は体のさまざまな部位に繰り返し“炎症発作”が引き起こされる病気です。症状の現れ方は人によって異なりますが、発症するとほぼ100%で口の中になかなか治らない口内炎や外陰部の粘膜に潰瘍が多数できるようになります。また、皮膚には1~数cmほどの赤いしこりやにきびのような発疹が見られることも多く、目の網膜などを含む“ぶどう膜”と呼ばれる部分に炎症を引き起こすぶどう膜炎を発症することが多いとされています。これらの症状はよくなったり悪くなったりを繰り返し、次第に症状が悪化していくことも少なくありません。特にぶどう膜炎は悪化すると失明を引き起こすことがあるため注意が必要です。そのほか、重症な場合にはこれらの症状だけでなく、関節や副睾丸などに炎症を起こしたり消化管・血管・神経といった重要な器官にも炎症が及んだりすることがあり、消化管に穴が開く、形成された動脈瘤が破裂するといった命に関わる症状が引き起こされることもめずらしくありません。ベーチェット病は膠原病の一種ですが、ほかの膠原病のようにその病気の特徴的な“自己抗体(自分の組織を攻撃するたんぱく質)”は存在しません。そのため、口内炎・外陰部潰瘍・皮膚症状・ぶどう膜炎といった4つの代表的な症状が見られるかなどを参考にして診断されます。一方、この病気が疑われるときは体の炎症の程度を調べるために血液検査が行われ、それぞれの症状に適した検査が行われます。具体的には、皮疹に対する病理検査(皮疹の組織を採取して顕微鏡で詳しく観察する検査)、吐血や下血に対する内視鏡検査、視力低下に対する細隙灯検査、神経症状に対する髄液検査・頭部MRI検査などが挙げられます。ベーチェット病の治療は、症状の現れ方にかかわらず薬物療法が主体となります。基本的に“炎症発作”が生じたときは、炎症と免疫のはたらきを抑えるステロイド剤が使用されますが、消化管・血管・神経などに炎症が及ぶような重症のケースでは免疫抑制剤が使用されるケースも多々あります。ベーチェット病では炎症を抑える根本的な治療以外にも、それぞれ現れる症状を改善するための対症療法も行われます。具体的には関節炎の痛みに対する鎮痛薬の投与、血管炎に伴う血栓症に対する抗凝固剤投与などの薬物療法も必要となり、消化管に穴が開くといった場合には手術が必要となります。ベーチェット病は発症メカニズムが解明されていないため、明らかに効果のある予防法はないのが現状です。しかし、疲れやストレスなどが原因で症状が悪化・再燃しやすくなることが知られているため、ベーチェット病と診断された場合は十分な休養・睡眠を確保し、生活リズムを整えて食生活などにも注意することが大切です。また、近年の研究では喫煙習慣も症状を悪化させることが分かっているので、喫煙習慣がある方は禁煙を目指す必要もあります。
漢方と鍼灸
標治は、各炎症を鎮める漢方を使います。免疫が過剰に亢進するのを元の状態に持っていくのを本治といいます。自己免疫の反応穴、口腔内のアフタ性潰瘍・外陰部の潰瘍・皮疹などの皮膚症状・ぶどう膜炎(目の炎症)の箇所、上咽頭、小腸の反応穴から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し標本治療をしていきます。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群とは、免疫のバランスが崩れることによって涙や唾液を産生する涙腺・唾液腺などの臓器を攻撃し、眼乾燥(ドライアイ)や口腔乾燥(ドライマウス)を主にきたす病気のことです。自己免疫性疾患(免疫の異常によって自分自身を攻撃してしまう病気)の一種であり、涙腺や唾液腺だけでなく全身の関節、肺、皮膚、消化管、腎臓などさまざまな部位にダメージが及ぶこともあります。シェーグレン症候群を発症すると目や口の乾燥が目立つようになりますが、多くの人は症状とうまく付き合いながら治療の必要なく生活していると考えられています。一方、一部の人には目や口の乾燥以外にもさまざまな症状が現れ、腎臓、肺、皮膚などにも病変が現れたり、まれに悪性リンパ腫の合併が見られたりすることもあります。また、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどほかの自己免疫疾患に合併する二次性シェーグレン症候群もあります。なお、この病気は中年以降の女性が発症しやすいという特徴がありますが、明確な発症メカニズムは解明されていないのが現状です。シェーグレン症候群は、免疫のバランスが崩れることにより、涙腺や唾液腺をはじめとする自分自身の臓器にダメージが起こる病気です。どのような原因で免疫の力が過剰にはたらいて涙腺や唾液腺を攻撃するのかはっきりとは分かっていません。まれですが、シェーグレン症候群の約2%は同一家系内で発症するとのデータもあり、遺伝との関連も指摘されています。そのほか、何らかのウイルス感染、女性ホルモンの変動、たばこなどの環境要因もあり、ひとつの要因だけでなくいくつかの要因が重なり合って発症するものと考えられています。シェーグレン症候群を発症すると、もっとも多く見られる症状が目や口の乾燥です。これは涙腺や唾液腺がリンパ球という血液細胞に攻撃を受けることで機能が低下し、涙や唾液の分泌が減少するためです。その結果、目の痛みや充血、口臭、虫歯、歯周病などさまざまな症状を引き起こします。一方、シェーグレン症候群は一部に目や口の乾燥以外の症状が現れることが分かっています。これは、シェーグレン症候群を発症すると、リンパ球や自己抗体(自分の臓器を攻撃するたんぱく質)および過剰に増えた免疫グロブリン(抗体のたんぱく質)が、全身のさまざまな臓器にダメージを与えるからです。これらの症状は多岐に渡り、関節炎・甲状腺炎・間質性肺炎・慢性気管支炎・自己免疫性肝炎・胃炎・間質性腎炎/尿細管性アシドーシス(尿に酸を排泄できなくなり、血液が酸性になること)・皮疹などが挙げられます。また症状の重症度は人によって大きく異なり、大多数は軽度な目や口の乾燥のみしか見られませんが、全身にさまざまな症状が引き起こされるケースもあります。また、日本では比較的まれですが悪性リンパ腫を合併することがあり、重症度がさまざまなのもシェーグレン症候群の特徴のひとつです。シェーグレン症候群が疑われるときは次のような検査が行われます。口や目の乾燥の程度を調べる検査です。ガムテストは口の中でガムを10分間かんで、サクソンテストは綿を2分間かんでその間に分泌された唾液の量を計測する検査です。シルマーテストではまぶたに検査用の紙を挟んで涙の分泌量を調べます。これらの検査によって、口や目の乾燥の程度を評価することが可能です。シェーグレン症候群では、“抗核抗体” “リウマトイド因子”“抗SS-A抗体”や“抗SS-B抗体”と呼ばれる自己抗体が血液中に産生されるようになります。そのため、血液中にこれらの自己抗体が存在するか調べる目的で血液検査を行うのが一般的です。また、そのほかにも全身の炎症の程度なども評価します。X線写真に描出されやすいよう加工された“造影剤”を唾液腺内に注入し、唾液腺の状態を観察するための検査です。シェーグレン症候群による唾液腺の異常を発見することができますが、痛みなどを伴うため近年はほとんど行われません。MRCTを用いたMRシアログラフィーによって唾液腺造影と同じような異常を観察することができます。唾液腺超音波検査、唾液腺MRCT、唾液腺シンチグラフィーは超音波やMRCTによって耳下腺や顎下腺の内部構造の異常を調べることができます。唾液腺シンチグラフィーで唾液腺の機能を調べることができます。涙腺・唾液腺生検は、涙腺や唾液腺の組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。局所麻酔による痛みを伴いますが、シェーグレン症候群では組織にリンパ球が攻撃した特徴的な跡が見られるため確定診断を下すうえでも重要な検査となります。シェーグレン症候群を根本的に治す方法は、現時点では解明されていません。そのため治療は、目の乾きに対しては目薬(人工涙液などが使われ、さまざまな種類があります)や、乾燥所見が強い場合は涙点プラブや涙点焼灼術などの処置により涙が鼻に降りていかないような処置を行うことがあります。口の渇きに対しては、食後や就寝前の歯磨き、口腔衛生の指導、人工唾液の定期的な噴霧、唾液分泌を刺激する内服薬(セビメリン、ピロカルピン)などそれぞれの症状を改善するための対症療法が行われます。全身にさまざまな症状が現れた場合は、それぞれの症状に合った治療が進められていきます。
一方で、対症療法は一時的に症状を緩和することはできても病気の進行を遅らせることはできません。近年では免疫抑制剤の一種がシェーグレン症候群の進行を遅らせるのに有用との報告もなされており、治療の実用化に向けて研究が進んでいるところです。
漢方と鍼灸
口や喉の乾燥を改善する治療は対症療法で、免疫の暴走を止め中庸の状態にすることが根本療法です。自己免疫の反応穴、上咽頭、各炎症部位、涙腺、唾液腺から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。
全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus:SLE) とは、自分の免疫システムが誤って自分の正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫性疾患の1つで、全身のさまざまな臓器に炎症や組織障害が生じる病気です。全身性エリテマトーデスでは、この病気で特徴的に認められる検査異常に加えて全身に多様な症状が現れます。指定難病の1つであり、日本全国の患者数は約6~10万人と推定されています。男女比は1:9で、妊娠可能な女性に起こりやすく、女性ホルモンが発症に関与すると考えられています。2020年現在は、治療法の進歩により生命・機能予後がよくなっています。2020年現在、全身性エリテマトーデスの原因はいまだ明らかではありませんが、遺伝素因に環境要因が加わり、複合的な要因で発症する自己免疫疾患と考えられています。自己免疫とは本来、細菌やウイルスから身を守る免疫系が自分自身に対して起こる反応であり、その結果病気に至ると考えられています。細菌やウイルスを攻撃する抗体はBリンパ球によりつくられますが、全身性エリテマトーデスでは、そのBリンパ球の異常な活性化を伴う自己抗体(自分の成分に対する抗体)産生をはじめとする種々の免疫異常が観察されます。患者さんの同胞(兄弟・姉妹)内発症率は一般の人よりも高い傾向にあることから、遺伝的要因も発症に関与していると考えられています。まったく同じ遺伝子を持つ一卵性双生児が2人とも病気を発症する確率は約25~60%と高い数字が報告されています。近年、網羅的に全ての遺伝子を調べる全ゲノム解析がさまざまな病気で行われていますが、全身性エリテマトーデスでは自己免疫異常に関与する約50個の疾患関連遺伝子が同定されています。また、全身性エリテマトーデスの血縁者における全身性エリテマトーデス以外の自己免疫疾患の発症、病気に至らないまでも血液検査での自己抗体陽性率の高さも、こうした遺伝素因と関連すると考えられます。しかし、一卵性双生児の発症一致率が100%でないことから分かるように全身性エリテマトーデスは決して遺伝病ではありません。現時点では遺伝素因に性ホルモン、紫外線、ウイルス感染などの環境要因が関わって発病すると考えるのが妥当といわれています。
全身性エリテマトーデスでは、全身のさまざまな臓器に多様な症状が現れますが、その症状の出現パターンや重症度は患者さんによって異なります。また、治療によって改善しても経過中に病気が悪化すること(再燃)を繰り返します。悪化したときには発熱、全身の倦怠感など全身症状とともに多彩な症状が現れます。以下は、診断につながる特徴的な症状です。皮膚症状のタイプはさまざまですが、蝶形紅斑は全身性エリテマトーデスに特徴的です。蝶形紅斑とは、顔に蝶のような形の発疹が出現する皮膚症状で、鼻筋を蝶の体に見立てると、ちょうど蝶が左右に羽を広げたような形のように盛り上がった紅斑を認めることからこのように名付けられています。このほか、円板状に盛り上がった紅斑、光線過敏症(強い紫外線を浴びた直後に露光部に皮膚症状が出てしまう)や脱毛が半数以上の患者さんに認められ、痛みを伴わない口内炎が生じることもあります。関節痛、関節炎は特に病初期に頻度の高い症状で、左右対称に多関節に生じます。原則として関節リウマチのように変形をきたすことはありません。約半数の全身性エリテマトーデスの患者さんには、ループス腎炎と呼ばれる腎臓の病気が現れます。初期にはたんぱく尿など尿検査の異常だけで特に自覚症状はありませんが、進行に伴って顔や足のむくみが出現するようになります。腎臓に炎症が続くと徐々に腎機能が低下し、適切な治療がなされない場合には腎機能が破綻し、透析療法や腎移植が必要になることもあります。患者さんによっては、胸膜や心膜に炎症が生じる胸膜炎や心膜炎が発症したり、けいれん、精神症状、脳血管障害などの中枢神経が障害されたりすることもあります。特に中枢神経病変は腎病変とともに重症病態とされています。全身性エリテマトーデスの診断には、先の症状に加えて血液検査が必須です。全身性エリテマトーデスの患者さんには、白血球や血小板の減少、貧血が認められます。また、ほぼ全ての患者さんで抗核抗体が陽性となります。疑われる場合には、さらに抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗カルジオリピン抗体などの病気に特徴的な自己抗体を確認します。さらに、診断、重症度の評価のためには尿検査、画像検査、場合によっては病理検査や腰椎穿刺検査で、心臓・腎臓の障害、関節炎、胸膜炎、心膜炎、消化器病変、中枢神経病変など各臓器の障害の程度を調べることも重要で、多くの場合は入院が必要となります。全身性エリテマトーデスの治療は、薬物治療が中心となります。もっとも一般的な治療薬は副腎皮質ステロイドです。副腎皮質ステロイドは長期使用による副作用が懸念されるため、重症度に応じた用量の調節が重要です。特に重症な場合には、副腎皮質ステロイドを点滴で大量投入するパルス療法が行われます。また、副腎皮質ステロイドの効果を高めること、または副腎皮質ステロイドの減量を目的に免疫調整薬、免疫抑制薬、分子標的薬を併せて用いることがあります。特にループス腎炎や中枢神経障害などの重症例に対しては初めから免疫抑制薬を併用し、これを軸として早期に寛解(病状が良好な状態)を目指します。寛解が達成されたら、再燃を防いで寛解を長期にわたって維持すること、副腎皮質ステロイドを最小量または中止することが重要です。
漢方と鍼灸
自己免疫の反応穴、副腎、腎臓、各炎症を起こしている関節、上咽頭の反応穴から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。
※ループス腎炎(https://fuji-kampo.com/archives/2415)も合わせてご覧ください。
過呼吸症候群(過換気症候群)
過換気症候群とは、何らかのきっかけで急に呼吸過多となり、息苦しさや動悸、めまい、頭痛、手足のしびれ、吐き気、失神など、さまざまな症状が現れる病態を指します。“過呼吸症候群”とも呼ばれます。主な原因として精神的不安や極度の緊張などが挙げられ、性格的に几帳面な方や心配性な方に多いといわれています。また若者、特に10~20歳代の女性に多くみられます。まれに意識を失ったり、けいれんを起こしたりすることがありますが、過換気症候群によって命を落とすことはありません。一般的に予後は良好で、30分~1時間程度で症状が治まります。過換気症候群の原因には、心理的要因(不安・緊張・恐怖など)、身体的要因(発熱など)、激しい運動、疲労、睡眠不足などが挙げられます。私たちは、空気を吸い込むことで酸素を体内に取り込み、息を吐くことによって体内でできた二酸化炭素を体外に出しています。この一連のガス交換を“呼吸”といいます。過換気症候群では、上記のような要因が引き金となって過呼吸状態(息を何度も強く吸ったり吐いたりする状態)になります。すると二酸化炭素が過剰に排出されて血液中の二酸化炭素濃度が低下し、呼吸をつかさどる脳の呼吸中枢によって呼吸が抑制されます。その結果、息が吸えない、窒息しそうな息苦しさが生じるようになるのです。また、過呼吸状態が続くと血液中の二酸化炭素濃度が大きく低下し、体がアルカリ性に傾くことでさまざまな症状が現れるようになります。なお、過呼吸症候群は特に病気がなくても起こりますが、心臓や呼吸器の病気、パニック障害などの症状として起こることもあります。上記のような要因をきっかけとして、突然息が吸いにくくなって息苦しくなります。こうなると不安や恐怖から浅くて速い呼吸となり、体内がアルカリ性に傾くことで、動悸、胸痛、めまい、頭痛、ふらつき、手足のしびれ、吐き気などの症状が現れます。こういった症状によってパニック状態に陥ることもあり、死の恐怖を感じることもあります。また、まれに意識を失ったり、けいれんを起こしたりすることもありますが命の危険はありません。症状が出てくると不安や恐怖を感じて、浅く速い呼吸を続け、その結果症状がさらに悪化するという悪循環に陥ります。しかし、ゆっくりとしたリズムで呼吸することで症状が治まってくるため、発作時には患者本人も周囲も落ち着いて対応することが大切です。発作時に典型的な症状がある場合に過換気症候群を疑います。また、発作時に動脈血液の酸素と二酸化炭素の濃度を測ることで診断がつきます。しかし、過換気症候群は心臓や呼吸器の病気、パニック障害などの症状として起こることもあります。そのため、このような病気を除外する目的で、胸部X線検査や心電図などの検査が行われる場合もあります。過換気症候群は心臓や呼吸器の病気、パニック障害などによって起こることもあります。このような病気が背景にある場合には、その病気に対する治療が必要となります。特に病気がない場合には、発作を起こすきっかけを作らないよう、日頃から体調を整えておくことが大切です。不安が強い患者に対して抗不安薬などの投薬が行われる場合や、カウンセリング、リラクゼーションが効果的な場合もあります。発作時には不安や恐怖から悪循環に陥りがちですが、一般的には30分~1時間で症状が治まり、命に関わることはありません。そのため、発作が起こったときには周りの人は患者本人を落ち着かせ、ゆっくりと呼吸するように声をかけましょう。なお、発作時の対応として、以前は口に袋を当てて吐いた息を再度吸わせるペーパーバック法が有効だといわれていました。しかし、この方法では酸素が不足したり、二酸化炭素が増えすぎたりして窒息死の危険があるため、最近では推奨されていません。
漢方と鍼灸
精神不安や極度の緊張が続き、それを受ける側の疲労や不規則な生活、睡眠不足、栄養不足など抵抗力が弱っている時と重なって引き起こされるようですね。10~20代女性という敏感な時期ですからなおさらですね。自律神経の反応穴、生理の反応穴から最適な漢方、食養生やサプリ、ツボを選択し治療していきます。パニック障害で使われる漢方も選択肢の1つです。
【症例】突然動悸がして息がしにくくなり死にそうになる症状でご相談。漢方を6か月服用 発作は起きなくなったが怖いのでしばらくは服用していた。
・半夏厚朴湯(半夏・厚朴・紫蘇葉・茯苓・生姜)『金匱要略』
咽喉部に炙った肉片がくっついているように感じる方に使います。厚朴は緊張を緩め、半夏は鎮静作用があります。紫蘇葉は気分を晴れやかにします。
・苓桂朮甘湯(茯苓・桂枝・甘草・白朮)『傷寒論』
茯苓・白朮・桂枝で水分を血中に吸収して排出し、桂枝で脳の血行を良くし、茯苓・桂枝・甘草で心悸亢進を鎮静します。
・桂枝甘草竜骨牡蛎湯(桂枝・甘草・竜骨・牡蛎)『傷寒論』
・茯苓補心湯(茯苓・人参・白朮・当帰・地黄・酸棗仁・麦門冬・芍薬・陳皮・黄連・甘草・辰砂・大棗・鳥梅・浮麦)『万病回春』
・奔豚湯(甘草・川芎・当帰・半夏・黄芩・葛根・芍薬・生姜・李根皮)『金匱要略』
など(薬局製剤以外も含む)
脂質異常症
脂質異常症とは、血液中の脂肪分(コレステロールや中性脂肪)が多すぎる、あるいは少なすぎる状態をいいます。従来は高脂血症と呼ばれていた病態も脂質異常症の一部に含まれます(高脂血症という用語は病態を正しく表していないとして、2007年に日本動脈硬化学会が診断名を「脂質異常症」に改訂しました)。血液中の中性脂肪TGやLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が基準値よりも高すぎても、逆にHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)の値が低すぎても、動脈硬化を引き起こすリスク因子になります。このため、脂質異常症は、心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化によって発症する可能性のある血管系の病気の引きがねになると考えられています。脂質異常症の多くは生活習慣によって起こります。多くは運動不足や偏った食事、肥満などが原因で成人以降に発症します。生まれながらの体質的な要因が関係することもあり、他の病気と関係なく発症するものを原発性脂質異常症といいます。遺伝子の異常が原因で血液中にコレステロールや中性脂肪が異常に増えてしまう病気に家族性高コレステロール血症などがあります。他の病気や服用している薬の影響で、血液中の脂質のバランスが悪くなることによって脂質異常症を発症することがあります。他の病気や服用している薬など、なんらかの原因があるものを二次性(続発性)脂質異常症といいます。脂質異常症と関係がある病気には、糖尿病やその他の内分泌疾患(クッシング症候群・先端巨大症など)のほか、甲状腺機能低下症・肝胆道系疾患・腎臓病(ネフローゼ症候群)などが知られています。また、原因となる薬剤として、ステロイドホルモン、β遮断薬、経口避妊薬などが知られています。脂質異常症は基本的に症状が現れないことが多いです。原発性高脂血症や高コレステロール血症では皮膚に特徴的な黄色腫を生じることがあります。また、眼球に角膜輪と呼ばれる白い輪がみられたり、高カイロミクロン血症による肝腫大がみられたりすることもあります。脂質異常症をそのまま放置していると、動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気を起こしやすくなります。また、中性脂肪TGの値が高いと、冠動脈疾患・脳梗塞・脂肪肝・急性膵炎などのリスクが高まります。
脂質異常症の診断では、空腹時の血液中に含まれる脂質の値が重要になります。そのため、血液検査を行い、LDLとHDLの2つのコレステロールの値と、中性脂肪の値を測定します。
LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症**
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
TGトリグリセライド 150mg/dL以上(空腹時採血*) 高トリグリセライド血症
175mg/dL以上(随時採血*)
中性脂肪(トリグリセライド:TG)は、グリセロールに脂肪酸がエステル結合したものです。TGの値は食事の時間や内容、アルコール摂取の影響を受けるため、原則として10~12時間以上絶食し、空腹時に採血を行います。女性ホルモンとして知られているエストロゲンには、LDLコレステロールの分解と排泄を助ける、HDLコレステロールの合成を促すという作用があります。このため、閉経によってエストロゲンが低下するとコレステロール値が高くなることがあります。しかし、「閉経後の女性の高LDLコレステロールが動脈硬化のリスクとなるのは糖尿病や喫煙習慣などの要因が重なったときであり、もしこれらの要因がなく、LDLコレステロールが高いだけなら、ただちに動脈硬化そのものや動脈硬化による心血管のリスクであるとはいえない」という見解もあります。女性は男性に比べて動脈硬化性疾患の発症リスクが低く、必ずしも薬物治療が必要な場合が多いわけではありません。食事や運動療法の効果が期待でき、しかも治療に取り組む意欲が比較的高いので、生活習慣の改善を最大限に図っていくことが大切です。ただし、高リスク病態が存在する場合はこの限りではありません。脂質異常症の他にも糖尿病や高血圧などの危険因子(リスクファクター)をもっていると、それだけ動脈硬化になる危険性が高まることが知られています。また、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患になった経験がある人は、再発も心配されます。そのため、脂質異常症の他には何も異常がない方に比べると、さらにコレステロール値を下げなくてはなりません。健康診断のときに計測されるのは、食事から取り込まれた中性脂肪(外因性トリグリセリド)ではなく、余分なエネルギーとしていったん肝臓に取り込まれた脂肪が再び血液中に分泌された中性脂肪(内因性トリグリセリド)の値になります。したがって、健康診断の前日は20時以降の食事や飲酒を制限し、当日の朝食を抜いて受診する(検査前10~14時間は絶食にする)必要があります。要再検査になるケースは、うっかり検査当日に朝食を食べてしまい、外因性の中性脂肪により検査値が高くなった場合が多いようです。
脂質異常症の治療は、生活習慣が原因である場合には生活習慣の改善が基本となります。それだけでは十分な改善がみられない場合は薬物治療が考慮されます。生活習慣の改善には、禁煙、食生活の内容を見直し、食べ過ぎをやめること、お酒の飲み過ぎを控えること、さらにウオーキングや水泳、ラジオ体操などの有酸素運動を取り入れることが有効です。薬物治療には大きく2種類の薬があります。1つは、コレステロールの値を下げる薬で、代表例はスタチン系薬とよばれるものです。もう1つは中性脂肪の値を下げる薬で、代表例はフィブラート系薬やエイコサペンタエン酸とよばれるものです。コレステロール値が高くなる要因となる糖尿病や腎臓の病気がある場合には、原因となる病気の治療も併せて行われます。
脂質異常症を予防するためには食生活などの生活習慣に配慮することが大切です。肉や卵などの動物性脂肪、お菓子やアルコールなどの摂りすぎを控えるようにしましょう。一方、野菜などの食物繊維や青魚、大豆製品は血清脂質値を下げ、動脈硬化の予防にもつながるため、積極的に摂取するようにしましょう。また、食生活以外の点では適度な運動が効果的です。体を動かすことにより体重管理に効果が期待できるほか、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の増加にも役立ちます。
高LDLコレステロール血症では、コレステロールと飽和脂肪酸を多く含む肉の脂身・内臓・皮、乳製品、卵黄、トランス脂肪酸を含む菓子類、加工食品を控える。食物繊維と植物ステロールを含む未精製穀類、大豆製品、海藻、野菜類を多めに摂る。
高トリグリセリド(TG)血症では、糖質を多く含む菓子類、飲料、穀類の摂取を減らし、アルコールを控える。n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む魚類を多めに摂る。
先に食物繊維を食べてから炭水化物や脂肪食を摂った方がいいのは、ほとんど消化吸収されないためエネルギー源にはなりませんし、むしろコレステロールの吸収を抑える働きがあるからです。糖質にはパン類・麺類・ご飯・イモなどに含まれるデンプンをはじめ、お菓子などに含まれているショ糖(砂糖)、果実に多く含まれているブドウ糖や果糖などがあり、いずれも肝臓で脂肪酸に作り変えられ、中性脂肪の原料となります。糖質のなかで特に注意が必要なものは、デンプンなどに比べて体内での分解吸収が早く、中性脂肪に合成されやすい砂糖・果糖・ブドウ糖です。砂糖は1日50g以上摂取すると、中性脂肪の数値が上昇することがわかっています。清涼飲料(スポーツドリンクも含む)や炭酸飲料、ジュース類は500mlのペットボトル1本に砂糖が20~50gも入っていますので、これらを飲む機会が増える夏場は気をつけましょう。またカロリーの多い食品と、コレステロールの多い食品は必ずしも同じではありませんので注意が必要です。お酒に含まれている糖分によっても中性脂肪は増えますが、アルコールは肝臓で水と二酸化炭素に分解され、その分解過程で中性脂肪の合成を促す酵素が発生し、そのため中性脂肪が増えます。逆に中性脂肪を下げるために積極的に食べたいのが、アジ・イワシ・サバ・サンマ・マグロなどの青魚です。これら青魚の脂には、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。ただしプリン体も多く含まれているので尿酸値が高い人は注意が必要です。このEPAとDHAには、肝臓での中性脂肪の合成を抑えて、血中の中性脂肪を減らす作用があります。そのうえ、血液を固める働きのある血小板が凝集するのを防ぐため、心筋梗塞や脳梗塞の引き金となる血栓ができるのを予防してくれます。
漢方と鍼灸
脂質異常の反応穴、肝臓の反応穴から最適な漢方、食養生たサプリ、ツボをお選びして治療していきます。
【症例】LDL232 HDL33 TG139
漢方と食養生で6か月
LDL156 HDL47 TG102
【症例】LDL189 HDL43 TG237
漢方と食養生で5か月
LDL138 HDL59 TG180
※症例多数