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ハンチントン病

 ハンチントン病とは、第4染色体に局在するハンチンチン遺伝子(HTT)の変異によって、不随意運動などの運動症状、精神症状、行動異常、認知障害が現れる遺伝性の神経変性疾患です。このような症状は、運動機能や認知機能などをつかさどる脳の大脳基底核や大脳皮質が萎縮することで生じ、突然発症した後ゆっくりと進行していきます。

 主に成人になってから発症し、30歳代に多い傾向がありますが、小児期に発症することもあれば高齢期になって発症することもあります。20歳以下に発症するものは若年型ハンチントン病と呼ばれ、その割合は全体の10%程度とされています。日本におけるハンチントン病の頻度は100万人あたり7人程度と非常にまれな病気です。現在のところ根治的な治療法はなく、国の難病に指定されています。

 ハンチントン病では、脳の大脳基底核や大脳皮質が萎縮することによって、不随意運動をはじめとする運動症状、性格変化や行動変化などの精神症状が現れ、徐々に認知障害も出てくるようになります。
運動症状は舞踏運動と呼ばれる不随意運動です。これは自分の意思とは無関係に体が動いてしまう不随意運動の一種で、手先が不規則に動く、首を動かす、しかめ面をする、頻繁にまばたきをする、舌打ちをするなどの症状が現れます。お箸を使う、字を書くなどの細かい動作がしにくくなることも多く、また同じ動作を続けるのが難しくなるために物を落とす、転ぶなどの症状もみられます。発症初期には、一見落ち着きがないように周囲から見られることが多いです。病気が進行するとあらゆる動作がしにくくなって、歩く、食べる、話すなどの動作も困難になっていき、日常生活に介助が必要な状態となります。
精神症状としては、怒りっぽくなる、不機嫌になる、感情が不安定になるなどの性格変化、何かにこだわって同じことを繰り返すといった行動変化がみられることがあります。
意欲の低下、幻覚、妄想、うつ状態、不眠などの症状が現れることもあり、衝動的に自殺を図ろうとする場合もあります。
認知障害においては、アルツハイマー病などの病気と異なり、ハンチントン病では物忘れや記憶障害が軽い場合がほとんどで、記憶障害よりも注意力や遂行能力の低下が表立ちます。

漢方と鍼灸

 難病指定ですが、病名にとらわれないで証をとらえていくことが東洋医学では大切です。鍼灸も脳の異常箇所の波長から経絡に落とし込んでツボを見つけ治療していきます。

手掌多汗症

 幼少児期あるいは思春期頃に発症し、精神的緊張によって手のひらに多量の発汗を認める病気です。多汗症は全身の発汗量が増える“全身性多汗症”と、体の一部に限って発汗量が増える“局所性多汗症”に分類され、手掌多汗症は局所性多汗症に含まれます。症状が現れる部位として、手のひらのほかに足裏、頭部・顔面、腋わきなどがあります。手のひらと併せて足裏に多汗症が生じることも多く、手のひらと足裏に限って発汗するものを掌蹠多汗症と呼びます。

 手掌多汗症の主な原因は、精神的緊張によるものといわれています。どのようにして起こるかについてはまだはっきりと分かっていませんが、発汗を司る交感神経がほかの人よりも過敏に反応しやすいのではないかと考えられています。また、近年は家族内での発症が報告され、一部の患者には何らかの遺伝子が関係している可能性が指摘されています

 例えば大勢の前で話す時、手に汗を握るという言葉があるように緊張によって交感神経が興奮し手に汗をかきます。精神的な緊張が強い時や物を持つ時などに、一時的に両方の手のひらに多量の汗を認めます。症状が重い場合には時にしたたるほどの発汗がみられ、手のひらが常に湿って指先が冷たくなり、紫色になることがあります。発汗量は日中に多く、寝ているときには発汗しないのが特徴です。季節による発汗量の変動もみられ、寒い時期には発汗量が減少し、暑い時期には発汗量が増加する傾向にあります。また手のひらに多量の汗をかくことで書類に汗染みができる、握手の際に相手に不快感を与えるのではないかと感じる、したたる汗で電気機器が破損するなど日常生活に大きな支障をきたします。これによってQOL(生活の質)が低下するばかりか不安症(不安障害)や対人恐怖症になる人もいます。

漢方と鍼灸

 精神的緊張があると気は上昇したり逆流したりします。緊張をほぐす漢方、気の上昇を抑える漢方など体質によって漢方も違いますので問診が必要です。鍼灸も自律神経の緊張具合を見るツボから経絡に落とし込んで治療していきます。緊張して答案用紙がぐしょぐしょになって破れてしまう相談をうけ良くなった例があります。

・四逆散(柴胡・芍薬・枳実・甘草)『傷寒論』
柴胡は、イライラ、緊張などの精神的ストレスを緩和します。芍薬・甘草は鎮痙作用があります。
・荊芥連翹湯(黄連・黄芩・黄柏・山梔子・当帰・川芎・地黄・芍薬・連翹・荊芥・薄荷・防風・柴胡・白芷・桔梗・枳殻・甘草)『一貫堂』
内分泌のバランス調節をする柴胡四物湯に抗炎症剤の黄連解毒湯が加わり、排膿薬が加わった薬方になります。
・桂枝竜骨牡蛎湯(桂枝・芍薬・生姜・甘草・大棗・竜骨・牡蛎)『金匱要略』
桂枝湯に竜骨と牡蛎が加わった方剤です。竜骨・牡蛎には鎮静作用・抗不安作用があります。
・防己黄耆湯(防已・黄耆・白朮・生姜・甘草・大棗)『金匱要略』
防已・白朮の利尿作用と黄耆で肌表の水をさばいて、自汗・盗汗を治します。
など(薬局製剤以外も含む)

麦粒腫(ものもらい)

 ものもらいとは、まぶたにある脂腺(脂の分泌腺)や汗腺(汗の分泌腺)に細菌感染が生じる病気のことです。“ものもらい”の語源は、“ものをもらうと治る”という江戸時代の民間療法からとされています。医学的には麦粒腫とも呼ばれ、その名のとおりまぶたに麦のような大きさのしこりが形成されます。しこりは痛みや発赤、腫れを伴い、重症な場合にはまぶた全体が赤く腫れることもあります。目の違和感や物の見え方の異常といった症状が現れることもありますが、数日でしこりが自然に破れて内部にたまった膿うみが排出されると回復していきます。一方で、重症化した場合はしこりを切って膿を排出させる治療が必要になることもあります。

 特に、まぶたの深いところで発症する内麦粒腫は外麦粒腫に比べて症状が強く現れ、まぶた全体が赤く腫れ上がることも少なくありません。また、発熱や悪寒といった全身症状を伴うこともあるとされています。さらに、ものもらいを発症すると目のゴロゴロとした違和感や目の充血、流涙、まぶしさを感じるといった症状が現れることも多く、重症な場合には目を開けることができなくなることも多々あります。ものもらいは、まぶたの縁に存在するツァイス腺(まつ毛の毛根にある脂腺)、モル腺(汗腺)、マイボーム腺(涙の蒸発を防ぐ脂腺)に細菌感染が生じることによって発症する病気です。一般的に、まぶたの浅い部分にあるツァイス腺やモル腺に発生したものを“外麦粒腫”、まぶたの深い部位にあるマイボーム腺に発生したものを“内麦粒腫”と呼びます。

 根本的な原因は細菌感染によるものですが、多くは黄色ブドウ球菌など皮膚に潜んでいるありふれた細菌によって引き起こされます。それらの細菌が付着した手で目をこすったり、それらの細菌で汚れたコンタクトレンズを使用したりすることで、汗腺やまつ毛の毛根、マイボーム腺などに細菌が入り込んで発症するのです。さらに、ものもらいは風邪をひいたり疲れがたまったりしているなど免疫力が低下しがちなときに発症しやすいのも特徴の1つです。

漢方と鍼灸

 抗菌作用の漢方、炎症をとる漢方、膿を排出する漢方、免疫力を高める漢方などを用います。患部の波長をとり経絡に落とし込んで治療していきます。

煎じ

十味敗毒湯(柴胡・撲樕・桔梗・川芎・防風・茯苓・独括・甘草・荊芥・生姜)『本朝経験』
化膿性腫物ができるときに使われます。
荊防敗毒散(荊芥・防風・独活・姜活・柴胡・前胡・川芎・桔梗・枳殻・茯苓・甘草・生姜・薄荷・連翹・金銀花)『万病回春』
化膿性腫物ができるときに使われます。
葛根湯(葛根・麻黄・桂枝・芍薬・大棗・生姜・甘草)『傷寒論』
・加味荊黄湯(荊芥・大黄・牛蒡子・甘草)『医学入門』
など(薬局製剤以外も含む)

中心性網膜炎・中心性漿液性脈絡網膜症

 中心性網膜症とは、網膜の一部に水が溜まってしまい、ものが歪んで見える、見えにくい、などの症状が出現する病気です。また、中心性網膜症は「中心性漿液性脈絡網膜症」とも呼ばれます。中心性漿液性脈絡網膜症とは、網膜剥離を起こす病気の一種類を指します。中心性漿液性脈絡網膜症では、視力を司る網膜の中でも良好な視力を形成するのに重要な生命線的な意味合いを持つ「黄斑」と呼ばれる部位に網膜病変が生じます。網膜の中でも「中心窩」と呼ばれる部分は最も視力に鋭敏な部分です。この中心窩を囲う形で「黄斑」と呼ばれる部分が存在しますが、この部分も視力の形成になくてはならない生命線としての働きを示しています。黄斑部を含めて、網膜は外側から脈絡膜と呼ばれる膜で覆われています。網膜は脈絡膜と連絡を取り合い、栄養分や不要物などの交換を密に行っています。しかし、中心性漿液性脈絡網膜症では、網膜と脈絡膜の適切な関係性が破綻してしまっています。その結果、黄斑部を中心にむくみが生じ部分的に網膜剥離を来してしまうことになります。

 中心性網膜症の原因は、完全に解明されているわけではありません。しかし、30~50歳代の働き盛りの男性にみることが多い疾患であり、発症に過労やストレスが関与していることが疑われています。その他、妊娠や、ステロイドなども発症の誘因になると言われています。中心性網膜症を発症すると、網膜のなかでも特に黄斑と呼ばれる部位がむくんでしまいます。黄斑部は網膜の中心に存在する場所であり、視力形成に重要な役割を担っています。そのため、特に中心部の視野に異常を来します。

 中心網膜症では、多くの場合片側の目に症状が出現します。具体的には、視界の中心が暗く見えたり(中心暗点)、ものが歪んで見えたり(変視症)します。また、ものが実際よりも小さく見える「小視症」と呼ばれる症状を呈することもあります。色が実際と異なって見える色覚異常なども生じます。病状が改善すると、こうした症状も改善することが期待できます。しかし、病状が長引いたり再発を繰り返したりすることで徐々に視力低下につながることもあります。

漢方と鍼灸

 ストレスがあれば、緩和する漢方、黄斑浮腫があれば浮腫みをとる漢方、充血や出血をしていればそれらをとる漢方、抗酸化力の食養生も大事です。黄斑部の浮腫の波長をとり経絡に落とし込んで究極のツボを治療していきます。

煎じ

苓桂朮甘湯(茯苓・桂枝・甘草・白朮)『傷寒論』
浮腫みなどに使われます。
五苓散(猪苓・沢瀉・白朮・茯苓・桂枝)『傷寒論』
黄連解毒湯(黄連・黄芩・黄柏・山梔子)『外台秘要』
充血・炎症を抑制して出血を止めます。
温清飲(当帰・川芎・芍薬・地黄・黄連・黄芩・山梔子・黄柏)『万病回春』
病状が長引いているときに使われます。
小柴胡湯(柴胡・黄芩・人参・半夏・甘草・生姜・大棗)『傷寒論』
体質改善の目的で使わることが多いです。
・草龍胆散(竜胆・木賊・菊花・決明子・甘草・香附子・川芎・麦門冬)『証治準縄』
・冲和養胃湯(柴胡・人参・炙甘草・白朮・升麻・葛根・黄耆・姜活・芍薬・防風・茯苓・五味子・乾姜)『証治準縄』
など(薬局製剤以外も含む)

水頭症

 水頭症とは、脳や脊髄の表面を流れる“脳脊髄液”の循環や吸収に異常が生じ、脳脊髄液を産生する場である“脳室”が拡大する病気のことです。脳は頭蓋骨に覆われていますが、外部からの衝撃がダイレクトに加わるのを避けるため、脳脊髄液と呼ばれる液体に浮かんだ状態で存在しています。脳脊髄液は、脳の中にある脳室と呼ばれる空間で産生され、脳や脊髄の表面に排出されると、循環しながら流れて毛細血管に吸収されていくと考えられています。通常、成人では約150ml、小児では約100mlの脳脊髄液が循環していますが、脳室では1日に約500mlもの脳脊髄液が産生され、常に入れ替わりが生じているのです。

 水頭症は、脳室内での脳脊髄液の流れが悪くなることによる“非交通性水頭症”、脳室を出た後に脳脊髄液の循環や吸収に異常が生じることによる“交通性水頭症”に大きく分けられ、それぞれ原因や現れる症状、治療方法が異なります。
非交通性水頭症は、中脳水道狭窄症など生まれつきの病気によって発症しやすいタイプの水頭症です。乳児期は頭蓋骨を構成する骨同士が完全にくっついていないため、水頭症を発症すると脳の拡大に伴って頭囲も拡大するのが特徴です。一方、乳児期以降で頭蓋骨の骨が完全にくっついた後に発症すると頭囲の拡大は生じなくなるものの、脳室の拡大に伴って脳圧(脳の中の圧力)が上昇し、頭痛や嘔吐、意識障害などの症状が現れるようになります。

 交通性水頭症は成人に多く見られるタイプの水頭症です。非交通性水頭症と同じく脳室の拡大は生じますが、脳室内の脳脊髄液の循環経路自体は正常であるため脳圧は非交通性水頭症よりも上昇せず、正常値であることも少なくありません。そのため、頭痛や嘔吐などの症状が現れることはほとんどないとされています。

 また、脳圧が正常値の水頭症を“正常圧水頭症”と呼びますが、このタイプでは歩行障害、認知機能障害、尿失禁の3つの特徴的な症状が現れます。高齢者に多く見られる水頭症ですが、加齢によって現れる身体的変化と症状が似ているため、発見されずにいるケースも多いと考えられています。

 さまざまな原因によって発症する病気ですが、前述した通り“非交通性水頭症”と“交通性水頭症”の2つのタイプに分けられ、それぞれ次のようなことが原因となります。
交通性水頭症は、上で述べた脳脊髄液の循環経路のなかで脳や脊髄の表面を覆うくも膜下腔が狭くなっていたり、脳脊髄液の吸収がうまくできなくなったりすることによって引き起こされる水頭症です。主な原因としては、頭蓋内出血や髄膜炎、脳腫瘍、生まれつきの脳の形態異常などが挙げられます。
脳脊髄液は脳の中の“脳室”と呼ばれる部位にある脈絡叢で産生されます。脳室はその名の通り脳の中にある空間で、ヒトには4つの脳室があります。脳脊髄液は左右の大脳半球内に対になって存在する“側脳室”、“第3脳室”、“第4脳室”に流れたのち、脳や脊髄の表面にある空間“くも膜下腔”に流れ込んで循環していきます。

 非交通性水頭症は、この経路のうち、脳室内で脳脊髄液の流れが悪くなることによって引き起こされる水頭症です。代表的なものでは、第3脳室と第4脳室の通り道である中脳水道が生まれつき狭い中脳水道狭窄、脳室内部の腫瘍や出血などが原因として挙げられます。

漢方と鍼灸

 水頭症を起こす原因を明らかにし器質的なものは難しいですが、その他の原因で起きている場合、アプローチの仕方は様々です。基本的には水の流れを良くする漢方、出血を止める漢方、炎症を抑える漢方、免疫を高める漢方などを体質と合わせて組み合わせていきます。鍼灸では流れが悪い箇所の波長を取り経絡に落とし込んでツボを見つけ、治療していきます。

多発性硬化症

 多発性硬化症は免疫細胞が中枢神経(脳・脊髄)や視神経に炎症を起こして、神経組織を障害する自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、本来、外敵から自分を守るための免疫系に異常が起き、自分の体の一部を外敵と見なして攻撃してしまうことによっておこる病気です。多発性硬化症では神経細胞の突起(軸索)を被う髄鞘(ずいしょう)が主な標的となり、その結果、髄鞘が壊され(脱随)、神経からの命令が伝わりにくくなります。またこの病気は脱髄の空間的、時間的多発性を特徴とします。空間的多発性とは、複数の神経障害部位があるということ、時間的多発性とは、何度も症状の寛解と再発を繰り返すことです。

 有病率は推計で人口10万人あたり7.7人、発症好発年齢は20~30歳前後、3:1の割合で女性に多い病気です。発症リスクとしてストレス、高緯度地域での生活、日照時間の低下、EBウイルス感染、喫煙などが指摘されていますが、自己免疫状態をきたす、その詳しい原因はわかっていません。炎症を起こした後、古くなった脳や脊髄の病巣は硬くなるため、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)という名前がつけられました。

 主な症状は、感覚障害では、触った感触や温度の感覚が鈍くなる、逆に過敏になる。痛みやしびれ感など、異常な感覚が生じる。運動障害では、手足に力が入りにくい。体の片側が動きにくい。ふらついて歩きにくい。目の障害は、霧がかかったようになり見えにくい。視力が急に低下する。視野が狭くなる。ものが二重に見える。排尿障害では、尿の回数が頻回になる。間に合わず失禁する。尿が出にくい。残尿感。認知・精神障害では、理解力の低下やもの忘れがある。気分が高揚する。うつ状態になる。発熱、入浴、運動などにより体温が上がると、それまでにこの病気であったしびれ感などの症状が一時的に悪化することがあります(ウートフ徴候)。また、頚部を前屈すると肩から背中にかけて放散する電撃痛を生じることがあります(レルミッテ徴候)。

漢方と鍼灸

 MRIの画像から白くなっているところが脱髄病変。問診とツボから免疫の状態、感染、炎症などを探り漢方をお出しします。心身が整えられれば免疫も正常化し炎症もなくなります。鍼灸も異常箇所からの波長を読み取って経絡に落とし込み治療していきます。多発性硬化症と診断を受け来店。漢方で良くなった方がおられます。

てんかん

 「てんかん」とは、「てんかん発作」を繰り返し起こす状態です。「てんかん発作」は、脳にある神経細胞の異常な電気活動により引き起こされる発作のことで、突発的に運動神経、感覚神経、自律神経、意識、高次脳機能などの神経系が異常に活動することで症状を出します。そのため、「てんかん発作」ではそれぞれの神経系に対応し、体の一部が固くなる(運動神経)、手足がしびれたり耳鳴りがしたりする(感覚神経)、動悸や吐き気を生じる(自律神経)、意識を失う、言葉が出にくくなる(高次脳機能)などのさまざまな症状を生じます。
脳が発生する過程で生じた構造の異常、代謝異常症、遺伝子の異常などの生下時からの原因だけではなく、頭部外傷、中枢神経感染症、自己免疫性脳炎、脳卒中、認知症等のさまざまな脳の疾患が原因となります。

 「てんかん発作」には様々な種類があり、異常な電気活動を起こしている脳の部位に対応した様々な症状が出現します。「てんかん発作」は、ほとんどの場合数秒~数分間で終わりますが、時には数時間以上続くてんかん重積状態も起こります。

 例えば「全般性強直間代発作」では多くの場合、意識がなくなり、全身が硬くなった後(強直相)、全身をガクガクとさせます(間代相)。症状が軽い場合には、一方の腕や顔の一部だけが数秒間だけ固くなるだけの方もいます。また、突然反応がなくなり数秒間だけ宙をみつめるのが発作の症状の方では、転倒したりけいれんしたりすることもなく、他者からは気づかれないかもしれません。発作の前に決まって何かの臭いを感じるなど、何らかの感覚でこれから発作の起こることがわかる方もいます。こうした前触れの症状は「前兆」と呼ばれます。

 てんかんのある方は1000人に5~8人(日本全体で60万~100万人)と言われています。乳幼児から高齢者のいずれの年齢層でも発症します。特に小児と高齢者で発症率が高くなりますが、30~40代の方でも発症することもあります(厚生労働省hpより)

漢方と鍼灸

 異常な電気活動を起こしている脳の部位から波長をとり、問診による症状と体質、現病歴などから複数の漢方を出していきます。異常波長から経絡に落とし込んで鍼灸治療を行います。

網膜静脈閉塞症・網膜分枝静脈閉塞症

 40歳以上の日本人では網膜静脈閉塞症の有病率は2.1%との報告があります。 男女共に有病率は年齢と共に増加する傾向にあります。網膜静脈閉塞症は、年を重ねると発症しやすい病気で、高血圧や動脈硬化と深い関連があります。網膜静脈閉塞症の患者さんの多くは、高血圧のある方です。これは、高血圧により、血管がダメージを受けること、つまり動脈硬化が影響しています。高血圧のほかにも、血管自体の炎症により発症したり、糖尿病などの血液の粘性が増す病気がある方でも発症しやすくなります。また、緑内障のある方も発症しやすいと言われています。

 網膜静脈閉塞症は、詰まった静脈の場所により、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症などに分類されます。

 網膜中心静脈閉塞症は、網膜中心静脈という血管が、詰まっている状態です。
網膜中心静脈が詰まると静脈の圧力が上がり、網膜の血管が広がったり、蛇行したり、出血したりします。また、網膜に血液中の水分がたまったりして、むくみ(黄斑浮腫)を起こします。

 網膜静脈分枝閉塞症は、網膜の静脈(血管)が詰まっている状態です。主に網膜の動脈と静脈が交差している部分に血栓ができ、血管が詰まります。
網膜の静脈が詰まると静脈の圧力が上がり、網膜の血管が広がったり、蛇行したり、出血したりします。また、網膜に血液中の水分がたまったりして、むくみ(黄斑浮腫)を起こします。

漢方と鍼灸

 高血圧、動脈硬化、糖尿病などを考慮して漢方を出していきます。出血しているなら出血を止める漢方、血栓ができているなら血栓を溶かす漢方、動脈硬化なら血管を柔らかくする漢方、黄斑浮腫を起こしているなら浮腫みをとる漢方を合わせていきます。
鍼灸も中心静脈なのか網膜の静脈なのかを見極め、そこの波長から経絡に落とし込んで治療していきます。

煎じ

桂枝茯苓丸(桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬)『金匱要略』
桃仁・牡丹皮に駆お血作用があり内出血や腫瘤を除きます。
桃核承気湯(桃仁・大黄・甘草・芒硝・桂枝)『傷寒論』
温清飲(当帰・川芎・芍薬・地黄・黄連・黄芩・山梔子・黄柏)『万病回春』
病状が長引いているときに使われます。
苓桂朮甘湯(茯苓・桂枝・甘草・白朮)『傷寒論』
浮腫みなどに使われます。
五苓散(猪苓・沢瀉・白朮・茯苓・桂枝)『傷寒論』
・決明散(決明子・菊花・防風・車前子・川芎・細辛・山梔子・蔓荊子・玄参・茯苓・山薬・地黄)『証治準縄』
・冲和養胃湯(柴胡・人参・炙甘草・白朮・升麻・葛根・黄耆・姜活・芍薬・防風・茯苓・五味子・乾姜)『証治準縄』
など(薬局製剤以外も含む)

ドライアイ

 ドライアイの症状は「目がかわく」だけでなく「目がかすむ」、「まぶしい」、「目が疲れる」、「目が痛い」、「目がゴロゴロする」、「目が赤い」、「涙が出る」、「目ヤニがでる」などさまざまです。

ドライアイの危険因子として、加齢(加齢で、涙の量や性質が低下)、女性、ライフスタイル(長時間画面を見る)、生活環境(低湿度、エアコン下、送風)、コンタクトレンズ装用、喫煙、飲み薬(涙の分泌を減らす作用のある飲み薬)、目薬(防腐剤など)、涙の油を作るマイボーム腺の病気、加齢でできる結膜(白目)の皺、全身の病気(涙腺が免疫の作用で傷つくシェーグレン症候群や関節リウマチなどの膠原病)などがあります。

 目の表面は、角膜とよばれる透明の薄い膜で覆われています。角膜は5層構造になっていて、その一番外側にある角膜上皮とよばれる層が、目を外の刺激などから守るバリアの役割を果たしています。角膜上皮は目の最も外側にあるため傷つきやすいという特徴がありますが、新陳代謝が活発で、その傷をすぐに自己修復する能力を備えています。しかし、涙が不足すると修復が追いつかず、目の痛みや充血などの症状が出る場合もあります。

 ドライアイになる要因のひとつに、加齢があります。目の表面は涙で覆われており、その涙によって目がうるおった状態になっています。しかし年齢とともに分泌される涙の量が少なくなったり、質が悪くなったりすることで、目に十分な量が行き届かず、乾きやすくなります。

 涙は、油、水、ムチンという3つの成分からなる3層構造をしています。最も外側で空気に触れているのは油層で、外側に油の膜を作ることで涙の蒸発を防いでいます。しかし、この油の分泌量も年齢とともに減ったり、油の質が悪くなったりして、油の膜が正しく作られなくなって水が蒸発しやすくなっていきます。年齢とともにドライアイの症状が出やすくなるのは、このように涙の量が減ったり、涙の質が悪くなったりすることでさらに蒸発しやすくなることが原因です。

 目の表面にある涙は、まばたきによって目の全体に行き渡る仕組みになっています。しかし、画面を注視するVDT作業では、まばたきが不完全(上瞼と下瞼をしっかり閉瞼しないまばたき)となってしまったり、まばたきの回数が通常の1/4程度まで減ってしまうため、目全体に涙が行き渡らず、乾燥した状態になりやすいのです。パソコンやスマートフォンなどを使って仕事をしている人のうち、ドライアイの疑いがある人の割合は非常に高いと言われています。現代では、VDT作業は仕事をする上で必須に近いものとなっており、VDT作業に従事する人は増加傾向にあります。

 コンタクトレンズにはハードレンズとソフトレンズがありますが、水分を含んでいるソフトレンズのほうがドライアイのリスクが高いといわれています。ソフトレンズは、長時間の装用でレンズが乾くと、涙を吸い取って失った水分を補おうとする性質があります。含水率が高いコンタクトレンズほど、蒸発する水分も多く、その分吸い取る涙の量も多くなるため、目が乾きやすくなります。ドライアイを心配している方はコンタクトレンズを選ぶ際に含水率にも気をつけてみてください。また、コンタクトレンズを汚れたまま装用したり、使用期間を過ぎて使い続けたりした場合にも、目が傷ついたり涙のバランスが崩れやすくなります。コンタクトレンズは、使用方法を守って正しく装用しましょう。

 上述の通り涙には油層があり、その油はまつげの付け根付近にあるマイボーム腺から分泌されています。マイボーム腺は上下両目をあわせると100本ほどありますが、アイメイクでふさがれてしまったり、汚れが詰まったりしてうまく分泌されなくなることがあります。油は涙の蒸発を防ぐ役割を持っているため、油の分泌量が不十分だったり、油の質が悪いと涙が蒸発しやすくなり、目が乾燥してしまうのです。

漢方と鍼灸

 まずはまばたきの回数が極端に減っているなど問診で聞き取り、原因を見つけ対策することを一緒にみつけていくことが大切です。加齢による涙の量の減少は陰虚(うるおい不足)傾向なので目を潤す漢方や食養生が必要です。水をめぐらす通り道が塞がれている場合はそこを通す漢方が必要ですね。目の周りの筋肉が緊張している場合、自律神経を緩める漢方だったり、ホットタオルで血流を良くしたり、目の周りのツボの刺激などもいいでしょう。
鍼灸の場合、角膜の乾燥部位の波長を取って経絡に落とし込んで究極のツボの鍼灸治療をしていきます。

煎じ

麦門冬湯(麦門冬・半夏・人参・甘草・粳米・大棗)『金匱要略』
皮膚が乾燥して、のぼせて目のかわく方に使われます。
炙甘草湯(炙甘草・生姜・人参・地黄・桂枝・阿膠・麦門冬・麻子仁・大棗)『傷寒論』
疲れやすく、口が渇き、動悸のある方に使われます。
・滋陰降下湯(当帰・川芎・芍薬・黄柏・知母・熟地黄・括蔞根・甘草・玄参・桔梗・竹茹)『寿世保元』
皮膚が浅黒く、便秘がちの方に使われます。
など(薬局製剤以外も含む)

白内障

 白内障とは、目の中でカメラのレンズの役割をしている水晶体という部位が濁ってしまう状態のことです。水晶体が濁ってしまうと、視界がぼやける、かすむ、二重に見える、まぶしさを感じるといった症状が起こり、徐々に視力低下が進行していきます。
加齢に伴い白内障の罹患率は増加し、70歳代では80%以上、80歳代はほぼ全ての人が罹患していると考えられ、誰もが発症する可能性のある目の老化現象と捉えることもできます。加齢による白内障の場合、数年単位で徐々に視力の低下やものの見え方の変化が起こるため症状に気付かず、ある程度進行してしまってから発見されることも少なくありません。
視力低下を引き起こす白内障ですが、近視や遠視、乱視などとは異なり、眼鏡やコンタクトレンズでは矯正できないことが特徴です。しかし、現在ではその治療法が確立され、必要とされる場合には手術により視力は回復します。

 白内障の原因でもっとも多いのは加齢です。白内障の初期変化として、加齢により水晶体の弾力性がなくなってピントの調整が難しくなり、徐々に近くのものが見えにくくなる老視(老眼)を生じます。さらに加齢が進むと、レンズ自体がひずみを生じてしまい、乱視、遠視といった屈折の異常が認められることもあります。ここからさらに水晶体が硬くなり白濁し、白内障と診断されます。さらに進行すると水晶体は黄色、褐色になり、放置した場合は失明に至ります。

 加齢以外にも、リウマチ、喘息、膠原病などによって長期にわたり副腎皮質ホルモン(ステロイド)を服用している場合は、白内障発症のリスクとなります。また、糖尿病の人や多量の放射線を受けた人も白内障発症のリスクが高いといわれています。20歳代、30歳代ではアトピー性皮膚炎が白内障のリスクになります。白内障発症時の目の見え方は、患者の水晶体の濁り方によって異なります。水晶体全体に混濁がある場合には、視界全体がぼやける、かすむといった症状が認められます。

 水晶体の中心のみに混濁が認められる場合は、水晶体の屈折力が強くなるため、近くが見やすくなります。一時的に老眼が治ったように感じるのが特徴ですが、進行すると近くも遠くも見えにくくなります。水晶体の一番奥の中心が濁るタイプはステロイド内服で生じやすく、比較的短期間に視力低下が進行します。いずれのタイプも混濁により眼球内で光が散乱してしまうため、明るい場所にいる場合や逆光になった場合にまぶしさを感じて対象物が見えにくくなります。また、対象物が二重に見えてしまうこともあります。夜間の運転など暗いところでものが見えにくいのも白内障でよくある症状です。

漢方と鍼灸

 多くの方は手術でよく見えるようになります。ですが手術ができない方、手術がうまくいかなかった方でご相談に来る方がいらっしゃいます。水晶体の濁りを取っていく漢方を使います。また水晶体の濁りだけを見るのではなく硝子体、目に栄養を送っている組織や血管、身体全体をみることが大切です。「木を見て森を見よ」が東洋医学の神髄です。
鍼灸では濁った水晶体の波長から経絡に落とし込み究極のつぼを見つけ治療していきます。

煎じ

八味地黄丸(地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂枝・附子)『金匱要略』
腎虚で視力が衰えた場合に使われます。
明朗飲(茯苓・桂枝・白朮・甘草・車前子・細辛・黄連)『本朝経験』
白内障の進行を緩和するために使われます。
苓桂朮甘湯(茯苓・桂枝・白朮・甘草)『傷寒論』
滋腎明目湯(当帰・川芎・芍薬・地黄・熟地黄・桔梗・人参・山梔子・黄連・白芷・蔓荊子・菊花・甘草・細茶・燈心草)『万病回春』
・益気聡明湯(黄耆・甘草・人参・升麻・葛根・蔓荊子・芍薬・黄柏)『東垣試効方』
・還晴丸料(川芎・・蒺蔾子・白朮・木賊・姜活・莬絲子・熟地黄・甘草)『証治準縄』
・二陳湯加味(半夏・陳皮・茯苓・甘草・生姜・山梔子・海桐皮・枳殻・桔梗・芍薬・蒼朮・香附子・川芎・姜黄)『出典不明』
など(薬局製剤以外も含む)